99点のヒーロー   作:極丸

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虚偽

 まさかあいつ(エフォート)を上回る記録が本当に出るとはな。発破かけるつもりで言ったんだが……まぁいいか、どの道除籍処分はねぇんだ。どう言い訳しても生徒(あいつら)相手なら筋は通るだろ。

 

「まじだ。麗日お茶子、記録は測定不能で一位だ」

「測定不能!?どういうこと?!」

「無重力を発動させてボールを投げた。以上だ」

「やばい……やばいぞ……深刻なまでにやばい」

 

 なんか急に追い詰められたみたいな顔してんな。

 別段全て一位にならなければ認めないとは言ってねぇんだが……まぁ黙っとくか。事実、あの個性(麗日お茶子)はアイツ以上に種目と個性がマッチしていたからな。

 合理的に動くには時に虚偽も交えねぇとな。

 

「第六種目行くぞエフォート。さっさとしろ」

「こっからどうやって巻き返す……無茶したらプロ失格だし、かといってこれ以上記録抜かれんのは……」

 

 すこしやり過ぎたか?

 ま、こいつもヒーロー引退して長いからな。勘が鈍ってる確かな証拠だ。

 それに、結構いい収穫が出来たしな。

 

 

 

 

 

 その後、結果は軒並み変わらず俺がTOPだった。すまんな少年少女諸君、これ以上は負けられんのよ。我ながら大人げないとは思ったが、これもプロと割り切ってくれ!!

 

「なんかエフォート後半矢鱈目ったら気合入ってなかったか?」

「わたくし長距離マラソンで周回遅れになるなんて初めてですわ」

「校庭見たか?エフォートの走り込みで靴底が釘刺した後みたいにめり込んでたぜ?」

 

 うーん、なんか印象がヒーローよりもヴィラン寄りになってる気がするけどいっか。

 

「さて、そんじゃ成績発表と行くか。長ったらしい前説とかは無しでいくぞ……

 

 

 

 

 ちなみに除籍処分は嘘な」

 

 

 そう言ってイレイザーは手ごろなディスクを掲げてSF映画に出てくる液晶画面みたいな映像を映し出した。あれってシステムどうなってんだろ。

 ……ん?

 

 

「お前らを本気にさせる合理的虚偽」

「はぁあああああああああ!!!???」

「あんなの嘘に決まっていますわ。ちょっと考えれば分かる事です」

 

 除籍処分は嘘?イレイザーさんがそう告げた数舜後、理解に及んだ生徒達から感嘆の声が上がる。特に緑谷君の顔が凄い。中には除籍処分に対して冷静に判断している生徒もいたけど……俺には疑問が残る。

 

「あれって本気じゃないの?」

 

 

 

 俺の疑問の声は生徒の感嘆の声で搔き消えた。イレイザーさんって口に出したことは基本的に守る人なんだけどな……やっぱ俺が抜けてる間になんかあったな?

 

「よし、今日のとこはこれぐらいにしとくか。各自適当に着替えてもう今日は帰っていいぞ。それと、穢した奴等は保健室でリカバリーガールに見てもらう様にしろ。んじゃ、解散」

 

 

 その一言でみんな蜘蛛の子を散らす様に去っていった。いやはや一日目から波乱だなー、今年の一年。

 

「ところでイレイザーさん、なんかありました?」

「何のことだ」

 

 帰る道中でイレイザーさんにそう聞いてみるが、イレイザーさんはすっとぼける。

 

「イレイザーさんって基本的に有言実行の人だと思ってたんですけど。今回の除籍も本気だったでしょ?」

「…………ただ除籍処分にする必要ないと判断しただけだ」

 

 それだけ言い残してイレイザーさんはさっさと足早に去っていった。

 うーん、合理的。

 

 

 

 

 

「相澤君の嘘つき!!!」

「…………暇なんですか?あなた?」

 

 急に出てきたと思ったらなんだ?今日はやけに突っかかれる。

 

「合理的虚偽って、エイプリルフールはとっくのとうに終わってるぜ?君は過去に受け持った生徒を154回除籍処分にしている!それってつまり、最下位の彼にも、可能性を見出したって事じゃないのかい?」

「…………少なくとも可能性はゼロではなかった、それだけです。いざとなればすぐに切り捨てますよ」

 

 ったく、相変わらずこの人とは反りが合わねぇ。

 

「ところで、相澤君」

「なんです」

「エフォート君はどうかな?」

「…………」

 

 エフォートの野郎か。そうだな、強いて言えば。

 

「ヒーローとしての勘は鈍ってますね。けど、一応腕は鈍ってませんし個性の使い方も現役時代に通用します。ま、及第点と言ったところですね」

「……そうかい。それだけ聞けて嬉しいよ」

 

 なんだその目は。この人は分かった気でいるから面倒だな。さっさと帰るか。

 

「それじゃ、これ以上は合理的じゃないんで。失礼します」

「ああ、後日よろしく頼むよ」

 

 俺は特に言葉は返さず手を振って応えた。さて、これはほんの小手調べ。こんなんで躓く様じゃヒ-ローには到底なれない。本番はまだ始まっても無いからな、新入生(ひよっこ共)

 

 

 

 

 

「しかし、さすがは雄英高校だ。まさか入学初日にプロヒーローと勝負が出来る場を設けてくれるとは」

「飯田君意気揚々と挑んで負けとったもんね?」

「うぐ!」

「ス、ストレートすぎるよ麗日さん!」

 

 激動の入学初日、僕は初めて友達と一緒に帰るという経験をしていた。そして話題は当然今日の雄英高校体力テストでの出来事だ。ヒーロー目指す上で見るプロヒーローの活躍はやっぱり圧巻だった。

 

「いや、いいんだ緑谷君!俺の実力不足が招いた結果だ!プロヒーローに勝った麗日さんの言葉は甘んじて受け入れよう!!」

「いやー、でもあたしも正直言って種目がたまたま個性と合ってただけだったしなー、他は全部負けちゃったし勝った気がせんよー?ね、緑谷くん」

「そ、そうだよ飯田君!元気出して!エフォートの個性は身体強化の個性なんだし、仕方ないよ!それに言ってたじゃないか!プロヒーローとして個性の使い方は熟知してるとかなんとか!まだ飯田君でも分からないような個性の使い方もきっとあるよ!!」

「麗日さん……緑谷君……ああ、そうだな!これをいい機会としてまた躍進していけばいいだけだ!」

 

 僕と麗日さんの言葉に飯田君はまたやる気を取り戻したみたいだ。よかった。

 

「けど、やっぱりすごかったねーエフォート!あたしテレビでしか見たことないからびっくりしちゃったよー」

「ああ、あのオールマイティな身体機能向上の個性はシンプルながら凄まじいな。速度特化の個性である俺を追い抜くレベルとは思わなかった。同じ身体強化型の緑谷君としても、参考にしていたんじゃないのか?」

「へあ!?え、えっと……僕は……」

 

 突然の飯田君からの話に僕は動揺を隠せなかった。なんせ僕がこの個性を手に入れたのは本当につい先日で、個性に体が追いついていないレベルなんだから。何か誤魔化す為の言葉を言おうとするが、動揺で言葉に詰まる。

 

「そういえばエフォートって活動してたの結構前じゃなかったっけ?あたしが中学生くらいの頃にはもう名前聞かなかったなー」

「そ、そう!僕がヒーロー目指してた時はもう活動辞めちゃっててあんまり見れてなかったんだ!!」

「なるほど、さすがの緑谷君もそこまではいかなかったという事か」

 

 嘘だ。何だったら()()()()も知ってるし、期待の新ヒーローとして世間を騒がせてた時期も知ってる。心苦しいけど、ここは誤魔化そう。

 

「う、うん。だからびっくりしたよ。エフォートが雄英就任になった時は」

「確かにねー。一時期はウチもよくテレビでエフォート見てたよー」

「俺もよく目にはしていたな。だが、いつからか活躍を見なくなったが……」

「……」

「……」

 

 飯田君の言葉に僕と麗日さんは言葉が詰まる。それは飯田君も同じだ。みんな何となく察しているのだ。エフォートと言えば()()()()は切っても切り離せない話題だから。けど、それを言うのはヒーローを目指す身として言うべきか悩ましいのだ。

 

「……正直さ、戸惑うよね。聞くべきなのか」

「麗日さん!?」

 

 最初に口を開いたのは麗日さんだった。その声は恐る恐るというった具合だ。

 

「だって、やっぱり気になるじゃん!あの事件は正直うやむやで終わったというか、なんというか」

「それはそうだけど……」

「確かにそうだが、これからお世話になる教師を相手に、そういった邪推はよくないだろう?」

「うう……」

 

 飯田君の一言に麗日さんは目に見えて落ち込んだ。ちょっとかわいそうな気もするけど。

 

「…………雄英が決めたヒーローなんだ。何か事情があると思うのは当然だ。けど、今僕たちはそれよりもヒーローを目指すという道程の途中にいるんだ。そんな事を気にしている暇はないだろう?」

「飯田君……」

「そう……そうだよね。よし、この話はおしまい!ごめんね、変な空気にさせちゃって!」

 

 さっきまでの重い空気は晴れて再び和やかな空気に戻った。そうだ。今はヒーローを目指す事で精一杯なんだ。今は目の前の事に集中しなきゃ。

 

 

 

 

 

 

「ふー、初日終了。お疲れさまー!オレ!」

 

 いやーしんどかった。まさか初日にいきなり教師としての課題が付きつけられるとは……さすが雄英って言ったところか?規模感が違うな。

 

「あ!いたぞ!エフォートだ!!」

「ん?」

 

 前の方からスーツの集団がこっちに向かってきた。手にはマイクとメモ帳完備。数年前かなりお世話になった集団だ。まさか数年たった今でもお世話になる日が来るとは……。

 

 

「エフォートさん!なぜ突然ヒーロー活動を再開なさったのでしょうか!?これまで自粛していた理由も含めてその真意をお聞かせ願えれば!!」「近年活動を自粛していたあなたが雄英高校に就任出来たのにはなにか裏があるのではとネット上では物議をかもしていますが何か一言!!」「そもそもなぜ今になって活動を再開なさったのでしょうか!?あの一件以降一切のヒーロー活動をやめたと聞きましたが!!」

 

 ……早速広まったかー、俺の雄英就任。メディアの足は相変わらずはえぇな。

 

「あー、とりあえず帰っていいか?俺今日色々慣れねぇ事して疲れてんだよ」

「教師としてその態度はどうなんですか!!教育者の自覚はあるんですか!?」「非常勤講師という役職らしいですが、それは雄英側からのオファーがあってのものでしょうか!?」「ヒーロー活動には長いブランクがありますがそれで雄英の教師なんて務まらないから今すぐ辞職しろなどの厳しい意見も散見しますがそういった意見に対して何か思う事はありますでしょうか!!」

 

 鬱陶しい……プロヒーローこれ毎回受け答えしてたのかよ?俺には無理だな。

 えーっと確か校長曰く適当に無理矢理振り払えば行けるって聞いたな……

 

「んじゃ、急いでるんでこれで」

 

「ああ!最後に一言……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……グランスカイタワー立てこもり事件の被害者について何か一言!!!!!!」

「!!!!!!!!!!!」

 

 その一言に俺は急いだ足を少しだけ強張らせた。それに目ざとく気付いたのか、記者の奴等は我先にとマイクを近づけた。

 

「やはり何か思う事はあるんですか!?被害者とは未だ話が付いていないと聞いていますが!!」

「何故当時新人だったあなたが現場に強行突破したのでしょうか!?他のヒーローの到着を待った方がよかったという意見もあります!!」

「あの1件で一時ヒーローに関する法改正や採用試験をもっと厳格にするべきだという世間の声もありましたがそれによりヒーローのイメージが悪くなったと思いますが責任は感じないのでしょうか!?」

 

 …………あー、やっぱめんどくせぇわインタビュー。

 俺は足に力を籠める。コツは地面にひびが入らない程度に威力を抑える事だ。

 

 

 

 

 飛んだ。

 

 

 

 

「うわ!……逃げるんですか!!

世間はあなたの言葉を待っていますよ!!

「……」

 

 待ってるね……、それだけだったらまだいいんだが。

 そう言いながら俺はビルを飛び回った。さて、今後どうして行くか考えないとだな。

 

『嘘つき!!』

 

「……!!」

 

 頭の中に浮かんだイメージを振り払う様に俺は足に力を籠める。地面に少しヒビが入った気がした。

 

これはお前の責任だぞエフォート(ヒーロー)?お前がもっとヒーローらしかったら(完璧だったら)こうはならなかった。お前は英雄(ヒーロー)じゃねぇよバーカ

 

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