ダンジョンで鬼殺の英雄を目指すのは間違っているだろうか 作:ミキサ
ベルくん寄りの性格のイメージをしてたのでアルゴノゥトの雰囲気に驚きました!
ユーリくんすこです。広場の英雄宣言鳥肌立った……!
スキルの名前めっちゃ迷って決めました
懐かしい夢を見た。まだベルが幼く、祖父とともに村で暮らしていた時のことだ。
祖父はベルに様々なことを教えてくれた、数多の英雄譚や物語。それに女の子のこと。
『いいかベル、男ならハーレムを目指すのじゃ。ハーレムは男のロマンじゃ!!』
『オラリオには金も、可愛い女子との出会いもなんでも埋っておる!!』
『手っ取り早く女神の眷属になるのもありだ! あ、でもヤンデレだけは勘弁な?』
「うん! わかったよお祖父ちゃん!」
『ベルに覚悟があるならば、わしの知り合いの老いぼれに紹介状を出そう! 鬼狩りになって、冒険者になって、夢の女子とのイチャイチャライフがお主を待っておる!!』
そう言い残して祖父は亡くなった。
ベルはその後祖父の紹介に与り、鱗滝左近寺のもとで厄介になるのだが、少し時を進ませる。
ベルが水の呼吸の修行を行っている時のことだ。兄弟子である炭治郎が友人の善逸を連れてきたことがあった。女の子の話を色々としてくれる善逸は、鱗滝や炭治郎とは違ったどちらかと言えば祖父に近い人格であり、ベルは親近感からか祖父に聞いた話を善逸にもした。そしたら善逸の様子が一変した。
それはもう。
血走った目で怒り始めた。
「おま、お前えええええ!! 言うに事欠いてハーレムうううう!? おま、冒険者になって、鬼狩りになればハーレムが作れるだって!? んなわけねぇだろ!! 世の中そんな甘いわけないでしょ!? 俺が禰豆子ちゃんと良い仲になるのにどんだけ苦労したと思ってるの!? それを言うに事欠いて一夫多妻!? お前の爺ちゃんどんなお花畑な頭してんの!!!」
一息で叫びきった善逸を前にベルは呆然とし、反論する気にもなれなかった。そこには間違いなくわかりたくない善逸の重みを感じたからだ。
ベルが固唾を呑むと一転、善逸が落ち着きを取り戻し話を続ける。
「まぁそれはそれとして、ダンジョンで可愛い女の子と出会いたいっていうのはわかる。男なら誰でも抱く夢だよね」
「そ、そうですよね!」
「男として女の子と仲良くなりたい。女の子を助けたい。そんな気持ちで戦うのは何も間違ってない!」
「ですよね!」
「だが一つ! ベルは知っておかないといけないことがある!」
「何ですか!」
「ダンジョンにいる女性は、強くて怖い」
「えっ!?」
「確かに、冒険者の女の子は可愛い子が多い! けれど、あの子たちめちゃくちゃおっかないんだヨぉ! 俺が話しかけるとすごい顔するんだよぉ! 下手したら”柱”と同じくらい強い女の子もいるんだぜ? そんな可愛い女の子と出会えたとしても、助けるどころか助けられるのが関の山……」
「そ、そんな……それじゃダンジョンに出会いを求めるのは――」
「落ち着けベル! 最後まで話を聞け!」
「はい!」
「確かに女の子を助けてハーレムを築くのは難しいかもしれない。だけど、もしダンジョンで女の子が俺たちを助けてくれることがあれば……」
「あれば……」
「その子は俺たちに気があるってことだ!!」
「おぉ!!」
そんな訳あるか!
そう、ツッコミを入れ、すぐさま善逸を咎めてくれる人物が傍にいてくれればどれだけよかったことか。
善逸の俺たちが下心をもって女の子を助けるなら女の子だって下心を持って俺たちを助けるはずだという謎理論が展開されていった。頼む誰かこの馬鹿を止めてくれ。
「だからこそ! ダンジョンで出会い、この人こそって思える人が居たら押しに押せ! 大丈夫ベル、お前ならいける!(何の根拠もない)」
「わかりました善逸さん、僕頑張ります!(純粋バカ)」
こうしてベルは、祖父と善逸によってオラリオへの憧れと英才教育を施されていくわけなのだが。その結果がどうなったかは入団試験最終日になってようやくわかることだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
月を見た。
空は見えず薄暗い洞窟の中で兎は確かに月の輝きを見たのだった。
兎は月の美しさに惚れ、分不相応にも暗闇から手を伸ばそうと飛び跳ね。
「んッ! おいアオイ! ベントウの奴が目ぇ覚ましたぞ!!」
「うあああああああああああああああ!!」
突如として現れたイノシシに跳ね飛ばされた。
否、跳ね飛ばされたのはベルの妄想だ。実際には夢を見て起きたら目の前に猪の顔面があったのだ。
「ベントウって……ベル・クラネルさんですよ。まったくあなたは」
そこで第三者の少女の声が響いたことでベルは正気を取り戻す。
ベルはあたりを見渡し状況を確認する。ベルが今いるのはベッドの上、部屋は鱗滝の家によく似ている和室というものだろうか。体には包帯が巻かれているが痛みはない。確か入団試験でベルは鬼と戦い肋骨を数本折っていたはずだが、その痛みは無くなっていた。鬼と戦い勝利した後、ベルは炭治郎に報告しようと戻っていた時にミノタウロスに襲われ。襲われ……。
「ほわあああああああああああ!!」
自分が気を失う寸前、高ぶった想いが暴走した結果溢れた言動を思い出したベルは顔を真っ赤にしてベッドの上で転げまわった。
さすがのベルもあの頃から成長し、善逸の言葉にも些か疑問を持っているため、初対面の女性に求婚する非常識さはわかっているつもりだった。
「こいつおかしいぞ! 頭にたんこぶ出来てるんじゃねぇのか!」
「そ、そんなはずは……!」
ベルの様子を窺っていた猪の毛皮の被り物に鍛え上げられた肉体を持つどこかベルに似た声質を持つ青年と、黒髪青眼の蝶の髪飾りで髪をツインテールにした少女が慌てたような声を上げるとベルの動きがぴたりと止まった。
ベルの行動を監視する二人が息を呑むと。
「はあああぁぁぁあああ」
ベルはベッドの中で蹲り小さな悲鳴を上げ続けた。
これはどうしようもないとツインテールの少女は溜息を吐く。
「どうしようもないですかこれ……」
「変な奴だな! 飯でも食わせれば治るか!」
「あの……」
ようやく二人の様子に気が付いたのか、ベッドから赤い瞳を覗かせたベルが恥ずかし気に二人に尋ねる。
「皆さんは誰ですか? あとここは……」
「俺か! 俺は嘴平伊之助、山の王だ!!」
「神崎アオイです。ここは『蝶屋敷』と呼ばれる鬼殺ファミリアの本拠地に併設された救護施設です。ベルさん、気絶する直前のことは覚えてますか?」
「ひょ、えっと、はい……多分」
それが原因でベッドの上で転げまわりましたと内心顔を赤くするベルは頷く。
「一応こちらからも状況の整合性を確かめるために確認させていただきますね」
「わかりました」
「まず、今は試験最終日の翌朝です。あなたは試験最終日、突如としてダンジョンの上層に表れた鬼と遭遇し、見事鬼を討伐することに成功。恩恵を得た冒険者を素体とした鬼をさっそく倒すなんてすごいですね」
「あ、ありがとうございます」
「俺様にだってできるぞ!!」
「はいはい、わかってますから。その後、ロキファミリアが逃がしたミノタウロスと運悪く遭遇してしまい、襲われていたところを”剣姫”に救われ、戦闘のダメージから気絶。ということで間違いないですか?」
「は、はい、多分間違いないです!」
「それにしても鬼とミノタウロスに入団試験で遭遇するなんてとことん運がないんですね……」
「ははっ……えっとあの、”剣姫”っていうのは」
「”剣姫”アイズ・ヴァレンシュタイン。あなたをミノタウロスから助け、あなたが鬼の討伐を行ったところを見ていたロキファミリアの第一級冒険者ですね。炭治郎さんは彼女から事情を聴き、あなたを屋敷まで連れて帰ってきたそうです」
「あの時のベル、牛野郎の血で真っ赤になってたからな! 臭いで顔顰める炭治郎に代わって俺様が風呂に投げ込んでやったんだぞ! 感謝しろ!」
「ありがとうございます伊之助さん!」
「おう!」
満足気に笑う伊之助を横目にベルの脳内で一人の少女の名前が循環する。アイズ・ヴァレンシュタイン、それがあの月のような少女の名前であり、ベルの……。
「アイズ、アイズ・ヴァレンシュタインさんかぁ……」
「ベルさんも、原因はあちらにあるとはいえ助けてもらったんですから。あったときにきちんとお礼を言うんですよ!」
頬をだらしなく緩めるベルを叱責するようなアオイの言葉にベルは背筋を伸ばして返事をした。
そして思い出したかのようにベルは冷や汗をかく。
「そ、そういえば……」
「どうかしましたか?」
「僕気絶しちゃったみたいなんですけど、試験の結果って」
「あぁ、そのことですか」
アオイは手に持ったカルテを机に置くと、ベルに着替えを手渡した。綺麗になった羽織も一緒である。しかし服の方がベルがもともと着ていたものではない見たことのない黒い服になっていた。正確にはベルが着たことのないものか。それは背中に当たる部分には黒の服に白い文字で『滅』と書き記された詰襟であった。炭治郎や善逸が着ているものと同じ、鬼殺ファミリアの隊服と呼ばれるものだ。
「これって!」
「お館様と私たちの主神がお待ちです。詳しいことはそれに着替えてからお館様が話すそうです」
「わ、わかりました!」
慌てて隊服に着替え羽織を纏ったベルを、アオイが主神とお館様?が居る部屋へと案内する。伊之助は飽きたのか、どこかに走って行ってしまっていた。そうして屋敷の奥の部屋へと連れてこられたベルに、アオイはこの先は一人で行くようにと促しベルは一人部屋の中へと入っていく。
「失礼します」
恐る恐る襖を開け、ベルが部屋の中に入れば中には二人の人影があった。
「やぁ、よく来たねベル」
心が落ち着くとともに妙な高揚感がベルを包み込んだ。
その声はベルにとって初めて聞いたにも関わらず、まるで母がわが子を愛おしむように安らぎを与える声だった。
そんな声を発したのは、黒髪を左右に分け流し、額と紫色の瞳がはっきり見える状態で微笑む父性の塊のような男性だった。彼が神様だろうかと呆とするベルを慈しむように男性が自己紹介をしてくれる。
「私の名前は
「ぼ、僕の名前はベル・クラネルです! 団長ってことは、あなたがお館様……ですか?」
「……私の子供たちからは、そう呼ばれることもあるね」
なんと、神様だと思った人はファミリアの団長であり、噂のお館様と呼ばれる人物であった。炭治郎も善逸も、皆敬意を払っている様子だったが、なるほどこのカリスマ性では当然かもしれない。現にベルも既に目を輝かせて耀哉のことを見ていた。
「すまない耀哉、私のことも……」
「そうだね縁壱。ベル、私の隣にいるのが私たちの主神、
「よろしく頼むベル」
それまで耀哉の方ばかり見ていたベルは慌てて隣に座る主神に目をやる。長い黒髪を頭後で括り、炭治郎のように額には痣がある。耀哉とは別の物静かさがある男神だった。真っ赤な着物も相まってかベルが抱いた情景は真っ赤な日だった。
はっと正気を取り戻したベルは慌てて頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします神様!」
縁壱はベルに静かに微笑みかけてくれた。
「それで、入団試験の結果だけれど」
「はい」
「おめでとうベル、新しい子供たちが増えて嬉しいよ」
耀哉の言葉にベルは安堵の息を吐く。隊服を渡された時点でわかってはいたが、言葉にされるとされないでは大きく変わってくる。
「ありがとうございます! ファミリアの皆さんのように精一杯頑張ります!」
「元気があるのはいいことだね。それじゃ縁壱、ベルに
「あぁ、ベル。服を脱いで背中をこっちに」
「わかりました!」
ベルは上半身の服を脱ぎ背中を露わにすると、畳の上に敷かれた布の上にうつ伏せになった。縁壱はそんなベルの背中に一滴の自身の血を指先から垂らすと、淡い光とともにベルの背中に神聖文字が刻まれていく。縁壱はベルの背中に刻み込まれたステイタスを紙に写し取るとベルに服を着ていいという。
「お疲れ様ベル、これで君も正式な私たちの
「はい! あ、それでステイタスは見せてもらえないんですか?」
写し終えた紙をさっさと仕舞ってしまった縁壱にベルは尋ねるが、縁壱は首をかしげてしまう。何かおかしなことを言ったかと焦るベルに耀哉のフォローが入る。
「私たちのファミリアにはね、ステイタスの更新はしても確認をする人はあまりいないから縁壱もいつもの癖で仕舞ってしまったのだろう」
「えぇ!? 皆さん確認しないんですか!」
「皆が皆そうというわけではないけれど、ここでは呼吸法を使っている分、柱の皆は数値じゃなくて体の動かし具合で強くなったかを確かめる子が多くてね」
「で、でもスキルとか魔法もステイタスを確認しなくちゃいけないんじゃ」
ベルのその言葉に耀哉は苦笑いを浮かべる。
「残念だけど、呼吸は恩恵と相性が悪いのか、呼吸を扱う剣士の子供たちには魔法もスキルも顕在することが滅多になくてね」
「そうなんですか……」
魔法というものにひどく憧れていたベルは耀哉のその言葉に愕然としてしまう。そんなベルの様子を哀れに思ったのか、縁壱はベルのステイタスの写しをしまった引き出しを開け紙を取り出す。
「見たいなら見せるが」
「い、いえ! どうせ
「そうか……」
唐突に告げられた真実に肩を落としてしまったベルは慌てて遠慮する。見ても変わらない現実に縋る元気は既になかったからだ。
「それじゃベル、自室への案内は部屋の外で待機している隠の子がしてくれるから戻っていいよ」
「わかりました。神様、お館様、失礼します」
そう言い残してベルは部屋から去っていった。
ベルを見送った耀哉は縁壱へと笑いかける。
「随分と元気のよさそうな子が入ってきたね」
「あぁ、そうだな」
「それはベルのステイタスかい? ……おや」
ベルが去って行ってからも紙に目を落とす縁壱の様子が気になった耀哉は後ろからステイタスをのぞき見すると笑みを浮かべる。
そこに並んでいたのはアビリティオールゼロの数字と何も書かれていない魔法のスロット。
そして一つの
「スキルが書かれているね」
「……書かれていたな」
「縁壱、いつもの癖でよく見ずに仕舞ったね」
「…………」
とはいえ耀哉は思う。神の言葉で言うならば結果オーライというやつだと。
このスキルはベルに伝えないからこそ意味のあるものだ。
ベル・クラネル
Lv.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
《スキル》
【
・早熟する
・
・
「
~オラリオコソコソ噂話~
ベル「お館様! 神様の名前は縁壱様なんですよね?」
耀哉「そうだよベル。なのにどうして鬼殺ファミリアって呼ぶのか気になったかい?」
ベル「はい、他のファミリアは皆主神の名前なのにどうして僕たちのファミリアは鬼殺ファミリアなのかなって」
耀哉「縁壱曰く、鬼殺ファミリアは他の神々のような眷属ではなく。鬼殺の隊士としての同志が集まった集団だからだと言っていたね」
ベル「そうなんですか」
耀哉『ここでオラリオコソコソ噂話。そうは言ってる縁壱だけど、実は自分は神の器じゃないとか言って、名前を大々的にされるのを恥ずかしがってるだけなんだよ』
ベル「それって言ってよかったんですか!?」
耀哉「ふふ次回第七幕、”豊穣の女主人”」
ベル「次回もお楽しみに!」