新作の執筆を開始しました。アプリをやっているうちに、自身の脳内でストーリーが出来上がっていたので、それをここに載せようかと思います。
この小説では、お気に入り登録者と評価者は紹介しません。誰を紹介したのかしてないのかの確認に時間を喰う事が懸念されますので、ご了承ください。
では、どうぞ。
期待に塗れ、道を行く
──フジキセキだッ!この弥生賞を制したのは、9番フジキセキだッ!!
その実況に、その走りに、多くの者が奮い立った。一着予想を違えた者の悲鳴とも取れる声もあったが、それを埋め殺す程に溢れたのは、歓声。そして、
──クラシック三冠も、夢じゃないかもしれないな
そんな声すら、歓声から漏れ出す程の走り。
クラシック三冠。皐月賞、日本ダービー、菊花賞を一着でゴールしたウマに与えられる、ウマにとってはこれ以上に無い程の名誉。桜花賞、オークス、秋華賞を制したウマに贈られるトリプルティアラ、シニア期の大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念を制したウマに贈られる春シニア三冠、同じくシニア期の天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念を制したウマに贈られる秋シニア三冠と同等の価値を持つソレが、目に見える所までになった事を、誰が興奮せずにいられようか。
今回彼女が制した弥生賞は、あくまでもソレらの踏み台。そこがゴールではない。ウマとしても、本能のまま走り、最上級の名誉を得られるのだ、これを目指したいとも思うだろう。それを観客らは知っている。だからこそ、彼女が何処までのし上がるのか、ソコに期待を抱いているのだろう。この歓声は、その応援の意を込められているとも言えるだろう。
──ウマ娘。
馬の存在しないこの世界における、馬と人間のハーフのような存在であり、走りたいという本能が非常に強い。それに応えるように、身体のつくりも人間以上に走る事に特化した構造になっている。ただ、見てくれだけでは違いを判断する事は大変に困難であり、今でも盛んに研究が行われているそうな。
ウマ
かくして、ウマ娘という生き物は、人間らしくも違う、謎の多い生き物であるのだ。ただ、今日に至るまでに、日本……いや、世界では、ウマ娘の走りたいという本能に目を付け、レースという形でウマ娘に走る事を合法的に認めている。如何せん、ウマ娘の走行速度は車程であり、その辺りの公道を走られては、どうしても危険極まりないのだ。ウマ娘の本能と、人間の娯楽を求める心を同時に満たす、画期的な案として今日まで浸透している。
浸透するのみならず、ここまでの発展を遂げた。ウマ娘のレースは、ただの一石二鳥な案から、多くのウマ娘と人間にとって欠かせないモノとなったのだった。
それでは、ウマ娘はレースに出る為にどのようにして鍛錬を重ねているのか。少数派ではあるが、個人で鍛錬を積むという解答が返ってくるだろう。しかし、
レースの体制が確立するまでに、ウマ娘のレース出場条件をどうするかについて、非常に多くの時間の議論があったと言う。ウマ娘には、非常に多くの危険が伴う。先程の危険もあれば、ウマ娘本人の怪我についても、考えなければならない。ウマ娘にとって命の次に大切とされる足の骨折や脱臼等、大小含めて怪我への懸念についてが、特に議論対象になった。そんな中で提案されたのが、ウマ娘の管理者の存在、所謂トレーナーという者だった。
今ではトレーナーという職業は、ウマ娘のトレーニングやスケジュールの管理をはじめ、ウマ娘のケアをもこなす、かなりの優秀者でないとなる事が出来ない職業という認識が浸透している。議論の際に出たトレーナーの定義も、これに似たものだったと言う。
今では、トレーナーとウマ娘を同時に育成するトレーニングセンター学園(略称:トレセン)という機関が存在する。ここでは、トレーナーを育成しながら、同時に学園に在籍するウマ娘の能力向上を行っている。因みに、中央と地方、両方にトレセンが存在しており、当然ながら中央の方が指導の質が高い。そこから分かると思うが、中央のトレセンからは多くの名バが誕生している。今回弥生賞を制したフジキセキも例外ではない。
そんな彼女にも、例外なくトレーナーが存在しており、彼もまた中央トレセン在籍であり、トレーナーの中でもかなり優秀な人間だった。
「トレーナーさん、どうだったかな?私の走り、トレーナーさんのお気に召したかな?」
「うん。と言うより、想像以上にずっと良い走りだったよ。全く……トレーナー要らずな実力だね」
「そんな事ないさ。私の今の実力も、ひとえに貴方の指導の賜物さ。私個人のお陰ではないよ」
優秀な者同士、皆の予想と同じく優秀な成績を収めており、且つ絶対の信頼関係を築いている。これが、トレーナーとウマ娘の理想の形とも言えるだろう。…しかし、彼の担当はフジキセキ1人ではない。
「…相変わらず、嫉妬する程良い走りだな、フジキセキ」
「ふふっ、そう言ってもらえるなんてね。嬉しい限りさ」
そう言い、フジキセキの所に寄るウマ娘こそ、彼のもう1人の担当ウマ娘である、ナリタブライアンである。彼女は、前年に皐月賞と日本ダービー、そして菊花賞を制覇し、かの有名な皇帝ことシンボリルドルフ以来の三冠ウマ娘となった。そんな怪物の異名を持つ彼女の言葉に、偽りの意は見られない。
このような今現役で活躍を見せている2人のウマ娘を担当している彼の名は、
「…取り敢えず、帰ろうか。まだこれからの事も考えていかないといけないからね」
「そうだね。私も、三冠を目指してみたいからね。正直、これからの事を考えるとワクワクするよ」
「フジキセキの三冠を目指すのも良いが、私の渇きも満たしてくれるのだろう?トレーナー」
勿論だとも、と、少し顔を綻ばせながら角田は言う。それに満足した彼女達は、彼の背中について行った。未だに止まない歓声は、彼女達のこれからを応援するようにも聞こえた。
[中央トレセン 理事長室]
「見事ッ!弥生賞制覇、素晴らしかったぞ!」
「フジの頑張りがあったからこそです。それに、ここで止まるつもりはありません」
中央トレセンに戻った彼等がまず顔を出したのは、この学園の理事長がいる理事長室だった。学園であるので、取り纏める頭的存在も勿論の事いる。それが、
発言の度に二字熟語を発したり、二字熟語が書かれている扇子を持っていたり、帽子の上にネコが乗っていたりと、何とも個性的な要素が詰め込まれている人物ではあるが、頭として君臨するだけあって、肩書きに相応しいだけの能力は人以上。ウマ娘やトレーナーの事を第一に考えている彼女は、正しく理想の頭と言って差し支えないだろう。
「そんな事無いさ。何度も言うけど、貴方がいなかったら、ここまで登り詰める事は出来なかったさ」
「そうですよ、角田さん。ウマ娘の才能を開花させ、それを伸ばす事も、トレーナーの才能が深く関わっていますから!」
フジキセキの言葉に強く同意を示した彼女は、
理事長の多少の無茶振りにも対応し、上手くトレーナー側に伝え、円滑に事を進める事が出来る秘書の鑑である。理事長は勿論、トレーナーはかなりの頻度でお世話になる事がある。特に新しいトレーナーが入る時期となると、かなり忙しなく動き回っている姿が目撃される。恐らく、この学園で一二を争う程に忙しい人物であろうか。
「相変わらず、自己評価が低いな。私が知るトレーナーの中では、アンタが1番優秀だと思うけどな」
「そんな事無いと思うけどな…」
角田は、周りからよく自己評価が極端に低いと言われる。自身の功績を自慢気に話す事は無いが、自身に向けられる高評価の悉くを、相手の手柄だと言うのだ。それも、1度や2度ではなく、毎回だ。謙虚も過ぎれば嫌味、とはよく言ったものだが、彼のソレはそれすら超えて、そういうモノ扱いである。
「休止ッ!無事にレースも終えたのだ、明日はしっかりと身体を休めるように!」
「分かりました」
弥生賞は重賞であるG2レースである為、出走したウマ娘はおろか、トレーナーも気付かぬうちに疲れている事もしばしば。それを知っているからこその、この理事長の気遣い。ウマ娘とトレーナーがどれ程大切に扱われているかが分かる。
良くある不祥事や傷害事件等は、中トレでは未だ起きておらず、そういった面でも世間からの評価は高く、安心してここへの入学を目指せるのだ。今の時代、ここまで潔白な組織も珍しい。
先程の理事長の一言に軽く返事をし、角田一同は理事長室を後にした。彼等が部屋を後にした後、理事長はこう述べた。
「驚愕ッ!相変わらず、彼等は優秀過ぎる!かの皇帝やシンザンを超えるやもしれない勢いを感じる!」
「ですね。私も、彼等がどこまでの高みに辿り着くのか、今から楽しみです」
彼女達もまた、彼等の道行きを見守り、そして期待する声を上げた。ただ、それは彼等に届く事は無かった。
はい、いかがだったでしょうか。
ウマ娘のファンは、史実の再現に関してに厳しいイメージがありましたので、今でも不安が残っていますが、個人的には悪くない出来だと思っております。
次回以降は、日常的な場面を書ければと思っております。
では、ご精読、ありがとうございました。