ウマ娘 ひび割れた祝杯   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

引き続きです。…いよいよ、ここに書き記す事が尽きてきました。どうしましょうか。…因みに、完結までは、まだ折り返しに着いてません(多分)。ですので、まだまだこの小説は続きます。完結した後、このサイトに居続けるか、少し悩んでいます。その話は、追々。

では、どうぞ。



皮被りな乙女、泥塗れの王者

[とある病院 中庭]

 

「角田さん、いよいよ秋も終わりそうですね~。寒くなってきましたし、冬が近くなった証拠ですね」

 

「…そうですね、少し肌寒くなりましたもんね」

 

今日も、中庭に連れてもらっている。…ただ、未だにハッキリと、色は分からない。……気がする。

 

それはさておき、今日も面会の予定が入っている。前回と同じく、二人来るらしい。…予定、大丈夫なのか?中トレに在籍する身として、そこまで休暇が得られるとは思えない。トレセンは中央含め、トレーナーとウマ娘、共に人数不足だ。トレーナーは足りないし、ウマ娘は毎年設けている定数に満たされる事は殆ど無い。中央は、定数までウマ娘を取る体制を取っている訳では無く、実力に満たないウマ娘は落とすという体制を取り入れている。

 

そんな中で、面会を取れる程の時間を確保出来るとは、俺は思えなかった。トレーナーにしろ、ウマ娘にしろ。…中トレ以外の人間が来る事は考えにくい。何せ、中トレ以外の友好関係がない。トレーナーになる前に築いた人間関係は、時間が経つにつれて関係は薄れていった。連絡を取る事も減り、顔を合わせたり、飲みに行く事も無かった。それまでの友好関係だったと言われればそれまでだが、その当時は固く結ばれた絆だと思っていたし、今でもそう思っている節はある。

 

「……冬、か」

 

季節が巡って来る事を認識すると、ふと、ある事を思い出す。

 

──ブライアンの、有馬記念。

 

あの時の情景が、脳裏に浮かぶ。あの時のブライアンの切迫した、顔。鬼気迫るような、言葉の圧力。今でも、アレが冗談だと言ってくるんじゃないかと、思っている。…というより、そう言って欲しいと、思ってしまう。本来ならば、トレーナーとして有馬出走は応援すべきなのだろう。ただ、あの時のブライアンの脚で有馬を制するというビジョンが、今ですら見えてこない。トレーナーである身として、赦されざる事ではないだろうけど。

 

……俺は、後の一度も、大切なヤツが苦しむ姿を、目の当たりにしたくない。その時、自分が正常な人間でいられる自身も無いし、そうでないにしろ、その後にもう一度立ち上がれるビジョンは、ブライアンの有馬制覇以上に見える気配がない。

 

「そろそろ、戻りましょうか」

 

「…はい」

 

 

 

──今日の景色は、どこか哀愁を帯びているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[面会室]

 

「……久しぶり、ね」

 

「…だな。俺より元気無さそうにしてるのは、予想外だがな」

 

今日の面会相手の一人目は、東条 ハナ。俺の同期で、チームリギルを率いるトレーナー。普段は厳格な印象を周囲に与える程の堅物だが、内面は普通の人と変わらない。

 

そんな彼女だが、ここまで気を落としている姿は中々見ない。…と言うより、見る事自体初めてかもしれない。恐らく誰もいないところで気を落としたり反省したりするタイプだと思うのだが、こうして表立って表れるような事は無かった。

 

「…そんな風に目に見えて気を落とすのも、初めて見るな。アイツ同様、らしくない」

 

詳しく形容化出来ないが、沖野同様に東条らしくない。もっと毅然としていて、カリスマ性溢れる人間。東条 ハナとは、そんな人物なのだ。少なくとも、俺の中では。沖野のように立腹こそしないが、何処かむず痒くなる。

 

「…沖野にも言ったが、アンタらが気にする事でも無いだろうに。当事者であるなら納得いくが、お前らは被害者でも加害者でもなく、第三者だろうに」

 

「……そう言う訳にはいかないわ。私は同期でありながら、貴方の苦しみを把握する事も出来なければ、事件があってから貴方に声をかける事も出来なかったわ」

 

……相変わらず沖野と同じだ事。良い意味でも悪い意味でも、コイツらは揃いも揃って責任感が強い。沖野に関してはソレを日頃から発揮すりゃあ良いだろうと思うし、東条に関してはそう少し肩肘張らずに過ごせないものかと思う。見ているこっちが、気が気でなくなる。

 

「…まぁ良いか。そんな事より、だ。リギルはどうなんだ?ブライアンやフジも気にはなるが、アンタのチームの具合が気になってな」

 

ブライアンやフジの調子が気にならないか、と言われれば気になるが、正直な話、関わりが少ないリギルの方が話を聞く時の新鮮さがある。それに、東条はあまり自身の事(チームの事も含む)を周囲に話す事が無い。その為、こうした機会でもない限り、リギルについての話を聞く機会はない。折角東条が来たんだ、ソレくらいは聞いても罰は当たらないだろう。

 

「……そう、ね。折角ここに来たのだし、貴方も刺激が足りないでしょうし。ソレくらいなら話してあげるわ」

 

…よし、今日は退屈しないで済みそうだ。……話の輪を広げるうちに、東条の気も、少しくらいは晴れると良いんだが。…期待しすぎ、か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大分、様変わりしたのね」

 

「まぁな。お前は……相変わらず、か」

 

二人目は、キングヘイロー。特にニュースや新聞で取り上げられているのを見ない辺り、相変わらず結果は付いて来ていない模様。ただ、前回会った時よりも焦りは無いようにも感じる。成長した……と言っても良いのか?この場合は。

 

俺が変わり果てた事には、さほど驚きを示していないのは、少し意外だった。コイツは思ったよりも人の変化には過敏で、表情が良く顔に出るイメージだったのだが。前者のお陰で耐性でもついたのだろうか。…いや、ホントによく見たら、少しだけ憂いを帯びている気がする。…ここに来る奴ら、全員心配性かなんかか?

 

「正直、お前が面会に来るのは予想外だった。どういうこっちゃ?」

 

「……あんまり言葉にするのも恥ずかしいけれど、貴方には感謝しているのよ。あの時の言葉のお陰で、最近の走りに磨きがかかりつつあるわ」

 

「そうかい。ま、アンタが気付いてなかっただけの問題だ。気付いちまえば、走りが良くなるのも時間の問題だろうよ」

 

実際、コイツは才能があった。目に見えて現れるような才能とは少し違う、開花するのに時間と苦労がかかる才能。それに、コイツの得意とする差しと、コイツの泥臭い努力をも厭わない根性は、非常に相性が良い。追い込みは…元々スタミナが少ないコイツとは相性が少しばかり良くない。追い込みは走る距離が長い程、真価を発揮する走法だからな。一応、短距離でも出来なくはないんだろうが、んなマニアックな戦法、ゴルシぐらい頭がぶっ飛んでるヤツくらいしかやらん……と、俺は思うが。

 

恥ずかしい、とは言ったものだが、確かに恥ずかしかったんだろう。コイツの顔、少しばかり紅くなっている。…女性はこういうのに触れられたくないだろうし、触れないでおくが。…何だか新鮮だな、コイツの表情豊かな顔。コイツとあんまり関わっていないからか、ある程度どんな表情でも「コイツこんな表情するのか」と思ってしまう。こういう時も、口に出さん方が良いって、母さんから教わった気がする。……まさか、母さんから(半ば強制的に)教わった女性との接し方が、こんな形で役に立つとはな。

 

「…で?調子は良いのか?走りは良いらしいが、心理状態が伴っているとは限らないからな」

 

「……貴方、ソレを私に言うのかしら?少なくとも、貴方についての知らせも、私の心理状態に影響してるのよ」

 

…まぁ、関わった事のある奴が事故ったって聞いたら、そうなる……のか?俺は実例を知らんから、何ともコメントしづらいんだが。

 

それはさておき、ふと、コイツの顔を見る。……まったく、立派になりやがって。あの時は焦りやら苛立ちやらを帯びていたが、今のコイツはそんなマイナス感情は持ち合わせていないとでも言いたげだ。己への誇り、自身に妥協を許さない強さ、挫けないと言わんばかりの覚悟。そして……自身の境地から踏み出してやる、と訴えているその目。…あ~ぁ、なーんかヤベェ奴を覚醒させちまった気がしてならねぇな。俺がこれからも担当を持つ事になったら、ゼッテェコイツと対決させたくねぇんだけど。本当の正念場になったら、その高貴さをも捨てて勝利に齧り付く。そういう奴が、闘いにおいては一番厄介なんだよなぁ。

 

「これからお前と競う相手が、不憫に感じて仕方ねぇな。こんな厄介者、相手してたら相手の方が滅入るだろうに。…辞める事にしてなきゃあ、お前をスカウトしてただろうなぁ」

 

「…………ちょっと待ちなさい。辞める…?貴方、トレーナーを降りると言うのかしら?」

 

辞める、このワードを耳にしてから、コイツの纏う雰囲気と口調が豹変する。空気がピリつく、って表現が一番当てはまってるだろう。僅かながらに、言葉が怒気を孕んでいる。

 

その後にコイツから放たれた言葉の圧に、俺は驚きを隠せなくなる。

 

「聞いていないわ!?折角ここまで自分を高めて、貴方と共に勝利を重ねようと思っていたのよ!?そんな時に、貴方がトレーナーを降りる?ふざけないでちょうだい!!」

 

…たまげた。ライスシャワーの時にも思った事だが…コイツ、こんな声も出せるのか。…目に涙まで浮かべやがって。何で俺に固執するかね。……あぁ、そういう事か。

 

「…周りの評価がアレだったから、他のトレーナーが信用ならねぇってか?」

 

「確かにそれもあるわ!!でも!根本はそんな生温いものじゃないわ!!」

 

…っと、違ったのか。自分を評価しなかった奴らが、自分が才能を見せ始めたら掌を返した。そんな事になるのが目に見えているし、そんな輩を信用できない。っていう理由だとばかり思っていたのだが。…ん?じゃあ何だ?もしかして……

 

「…お前、あん時の言葉、未だに真に受けてたのか」

 

「当たり前よ!…あの言葉があったからこそ、今の私があるわ。私の現状を見て嗤う事もなく、私を奮い立たせた。そんな貴方の言葉が、私をここまで導いたのよ」

 

…失礼を承知で言うが、意外だった。コイツがこんなに正直に感謝の意を述べる事があるとは、思ってもいなかった。普段の性格も相まって、言えて精々「…ふん!一応…感謝しておくわ」くらいだと思っていたのだが、礼儀にはそれ相応の態度で応えるのか。…コイツの評価を、改める必要がありそうだ。

 

「いつもなら、『私のトレーナーになる権利をあげるわ!』と言う所だけれど。今日は違うわ。…()()()()()()()()()()()()()()

 

いつもの傲慢な姿は遥か彼方へ。そこにいるのは、己の道を歩んでほしいと心の底から願う、一人の少女だった。…頭まで下げている所を見るに、これは本気だ。バカでも分かる。

 

 

 

──ソレが故に、それに応える事が出来ない事が、言葉では表せない程に、歯痒かった。

 

 

 




はい、いかがだったでしょうか。

今話投稿前に、ウマ娘公式サイトのガイドラインが改正されました。私も一読しましたが、私の小説には影響が殆ど無いとの判断です。8話の描写が、ガイドラインに引っかかるかが少し心配ですが。ただ、明確に描写している訳では無く、私の小説は皆さんの思い浮かべる小説描写に極力影響を与えないよう、遠回しな表現を心がけていますので、この程度の描写ならば、恐らく引っかかる事は無いだろうとの判断です。もし引っかかった等ありましたら、改めてお知らせします。

では、ご精読ありがとうございました。
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