さて、Episode1も順調(?)に進んでいますが、今回もとあるウマ娘の回です。キャラ選については、「何となくこのキャラが良さそう?」という考えに沿ったものですので、深く考えず、「あ、推しウマ出てきた。どんな風になるんかな?」みたいな感じで読んでもらえればと。
では、どうぞ。
[中山レース場]
「久々だね、トレーナーとレースの観戦をするのは」
「だね。僕の場合、君達に観てもらいたいレース以外は基本一人で観るからね」
「相変わらず水くさいな、トレーナー。そんなに私達と一緒に観戦したくないのか?」
「そんな訳。ただ、
相変わらず容赦がないなと、少し引き気味に言うのは、両腕を組んで仁王立ちしているブライアン。それを見て苦笑するのは、フジ。
…まぁ、今日は練習を無くし、代わりにレースの観戦に時間を充てる事にした。二人が観なくても僕の分析が出来たり、二人が直接観ても成長のカギに繋がりにくいレースはこうして三人で観戦はしない。
つまるところ、今日の目玉レースである
……何故か観客席のあちらこちらを周って焼きそばを売っているゴールドシップは、見なかった事にしておこう。そして、何故横にメジロマックイーンまでいるのだ。君は止める側だろうに。……あぁ、止められなかった上、ゴールドシップに巻き込まれたのか。ご愁傷様。
それはそうとして、辺りを少し見渡してみると、何とまぁ中トレの生徒会長兼皇帝の異名持ちのシンボリルドルフに、生徒会副会長兼女帝の異名持ちのエアグルーヴまでいるではないか。あの二人が足を運ぶとは……注目のウマ娘でもいるのだろうか。……
──テイオーさんだよ!
──メジロマックイーンさんに決まってます!
……時たまいる、子供の言い争いだろうか。大方、どのウマ娘が一番かとかだろうか。メジロマックイーンは出バしていないので、一番凄いウマ娘は誰か、とかそんな具合だろうか。まぁ、あれしきの事で荒立つ事も無いだろうし、放置が吉かな。
っとと、そろそろゲートインの時間かな。G1レースなだけあって、様々な有名バがいるね。これに勝てば、三冠バの第一歩だし、それもそうか。
注目株は様々だが、とあるウマ娘が一番気になる。そのウマ娘の走りを分析、そして知ってもらう事こそ、今回二人を連れてきた最大の理由。正直、
「良いかいフジ、ブライアン。トウカイテイオーの走り
「……随分と容赦のない言い方だな。らしくない」
「僕もそう思う。でも、それすらどうでも良く思えるくらい、このレースは大事だ」
「……心得た」
僕がそう言い放つと、ブライアンはコクリと頷いた。フジの方を見ると、苦笑いを浮かべながら小さく頷くのが確認出来た。仕方ないなぁ、と言いたいのだろう。
そうしているうちに、ウマ娘のゲートインが完了していた。先程までにこやかだったウマ娘も、緊張していたであろうウマ娘も、打って変わって真剣な眼差しに変貌し、開始の合図を待っていた。
そして、クラシック三冠の第一歩、皐月賞が幕を開けた。
「第四コーナーに差し掛かるまで観たが、差し寄りの先行だね。シンボリルドルフの走り方に寄せてるのかな?それとも無意識かな、或いは不調……ふぅむ」
…いけない、僕の方が分析してしまうとは。ここまで来ると、かえって悪癖だ。不安に思い二人を見るが、それは杞憂に終わった。僕の言葉に耳を傾ける事は無く、無言のまま思考に暮れていた。この観客の歓声の中でここまで集中出来る二人に、僕は驚かされた。
「……第四コーナーだ。さて……どう出る?トウカイテイオー」
僕が静かにそう言い放った時だった。僕は次の瞬間には、先程以上に驚いたのを、ここに示しておこう。
「…ここでスパートをかける!?しかも追込レベルのスピードか!……やっぱり、観に来て正解だった!!」
大声になってしまった僕は、悪くないと思う。だって、仕方ないだろう?
その走りに、観客やフジとブライアンはおろか、シンボリルドルフとエアグルーヴの方を見やると、彼女達も驚いた表情をしていた。
そうだろう、そうだろう。自分の担当では無い以上、過度に肩入れしたくはないのだが、あれは僕が見てきた中で一番才能に満ちている。
それを強く実感し、僕は嬉しく、そして羨ましく思った。あんなウマ娘がいるのか。あんなに魅力的に夢を魅せつけるウマ娘がいるのか、と。
成る程、この言葉はこの時の為にあったのか。
──天才はいる、悔しいが。
[インタビュー会場]
──今回の一着で、クラシック三冠が見えてきたと思いますが、いかがでしょうか?
「勿論!ボクは無敗で三冠を目指すよ!何せ、ボクはカイチョーを超えるウマ娘になるんだからね!」
レース後、そしてウィニングライブ後。重賞になると毎回ある、インタビューの時間。数々の記者らが、今回の勝者であるトウカイテイオーの下で、様々な質問を投げつける。トウカイテイオーもトウカイテイオーで、それらに上機嫌ながらに答える。
一応、このインタビューは(遠巻きではあるものの)、一般の者も見聞き出来る。名の知れない新星のインタビューの時も人はそこそこ来るのだが、トウカイテイオーのような一目も二目も置かれている彼女のインタビューを見にくる者は数知れずだ。
僕はここに来る前に「インタビューで何か情報が得られる事もあるから、しっかり聞いておくんだよ」と言ってあるので、二人はインタビューを一言一句聞き取ろうとせんばかりの気迫である。……そこまでしなくても良いんだけどね。
そんなこんなでインタビューも本格的になってきたかな、といった所で、声が一つ。
「ほらっ!今回のレースでテイオーさんが凄い事が分かったでしょ!?」
「確かにそうかもしれないけど……マックイーンさんも凄いんです!」
僕以外のインタビューを聞いている人は集中しているらしく、彼女らに見向きもしない。…が、離れているとは言え少々喧しい程である。僕は構わないけども、周りを気にする事を忘れているのは、少しいただけない。
そう思った僕は二人の方へと静かに歩み、注意をすべくインタビュー会場を背にした。
[廊下]
「君達、少々目に余るよ。ここは公共の場なんだ、周りの事を忘れてはいけないよ」
私達が言い合いをしていると、優しげな、でも少し真剣な声色でそう言われた。その声を聞いた私達はハッとし、恥ずかしさで顔を紅くしつつも、冷静さを取り戻す事に成功した。
そうして私達は、同時にその声の主の方へ振り向く。すると、そこにいたのは襟にトレーナーバッチを付けた人。つまるところ、トレーナーさんだった。しかも、そのトレーナーさんは、新人トレーナーだったり無名トレーナーではなく、最近で名を聞かない日は無い程有名なトレーナーだった。
『つ、角田トレーナーさん!?』
思わず私は叫んでしまったが、今回ばかりは私は悪くない。それと、どうやらダイヤちゃんもそれに気付いたみたい。私と同じタイミングかつ同じ声量で叫んだ。だよね、そうなるよね。
「ど、どうしてここに……?」
「フジ達とレースを観に、ね。君達は……いや、聞かなくても大方分かりそうだ。そっちの子が、トウカイテイオーのレースを観たいって言ったんだろう?」
「…へ?」
突然そう言われて、思わずそんな素っ頓狂な声を上げてしまった……のもそうだけど、私はここに来た動機をドンピシャで当てられた事の方に驚いた。……あっ、もしかして…
「…もしかして、聞こえてましたか?」
「観客席でね。他の人は喧騒で聞き取れてないようだったけどね」
「……はぅ」
己の観客席での振る舞いを思い返し、再び頬が紅潮するのが分かった。……すっごく恥ずかしい。
自分でも、テイオーさんが関わると少し暴走するのは分かっている。…それでも、抑えられない。だって、あの人は……
──自分に、夢を与えてくれた人だから
「はい。……え?」
「ん?何となくそう言うのかなって思ったから、つい言っちゃったんだけど……図星?」
……きっと、この人はエスパーか何かなんだろう。トレーナーが副業等とは言いたくないけど、あまりに人の心を確実に読んでくるソレは、最早トレーナーの域から逸脱しているとしか思えなかった。
「…君の夢は、トウカイテイオーかな?」
「……はい!テイオーさんのようなウマ娘になるのが、私の夢です!」
そのやり取りの後すぐ、角田さんはダイヤちゃんにも同じような質問を投げた。そして、ダイヤちゃんから返ってきた答えは、私と殆ど同じような言葉だった。
それを聞いた角田さんは、少し真剣な表情に。その顔から、私は少々の迷いを感じ取った。…そして、それは正解だった事を、次の言葉で思い知る事に。
「…出会って早々、そして、君達のトレーナーでもない状況でこう言うのもはばかられるんだけど……
どうやら角田さん曰く、私達の夢は叶わないらしい。私達は、その言葉に思わず悔しさとやるせなさを感じざるを得なかった。
何故そう断言出来るのかという思いと、あのレースを観て自分の実力の未熟具合の痛感を、心の中で長い時間混ぜ込んだような気持ち。
「ど、どうしてそんな事言えるのですか!」
似たような心境らしいダイヤちゃんが、ダイヤちゃんらしからぬ様子になり、声を荒らげながらそう投げかけた。その質問に角田さんは、少し考え込むようにし、こう言った。
「中トレに入ってないからっていうのもあるんだけど……まぁ、他にも理由はあるよ。
その言葉を言われ、私達は固まる事しか出来なかった。後者二つの理由について、何も思いつく事がなかったし、真意を理解する事が出来なかった。きっと、それを理解する事で、夢の実現が目に見えてくるんだろう。
「…いつか、答えを出します。その時は……答え合わせをしてくれますか?」
どんな感情からか分からないものの、気付いた時には私はそう告げていた。「これから夢を叶える為に尽力する。だから、その時まで待っていて欲しい」という、私の覚悟を乗せた言葉でもある。
「うん、待ってる。君なりの答えを、君の夢の完成形を、待ってるよ」
それが、静かに一つ、そんな約束が生まれた瞬間、そして、私が夢を叶える第一歩を歩み始めた瞬間だった。
はい、いかがだったでしょうか。
ふと、書きながら思ったのですが、キタサンブラックはまだ未実装なので、適正云々が分からないな、と思いました。史実を漁ってみますが、色々チグハグになる事も考えられますが、目を瞑って頂けると嬉しいです。
では、ご精読ありがとうございました。