相変わらず、Pixivでの小説活動を考えています。Pixivとの並行か完全移行か、悩みどころです。バンドリはこっちで投稿するつもりですが。
ところで、今のところ日常回が殆ど無いこの小説ですが、日常回もあった方が良いでしょうかね?アンケートを貼っておきますので、宜しければ意見を。
では、どうぞ。
──まさか、まさかの悲報だった。
「は?おいおい、これは流石に嘘だろ?」
「いよいよ、あのトレーナーの指導の質を疑うぞ」
「立て続けに二度も……不運にも程があるわ」
──誰もが、夢だと思いたかった。
「ナリタブライアン先輩だけでなく、フジキセキ先輩まで?」
「……本当に過度なトレーニングを課していたんじゃない?」
「そんな事言うべきじゃない、って言いたいけど……この状況だとそうも言えないね」
──ある者は憐れみを、ある者は憤怒を抱いた。また、ある者は失望した。
「トレセンは、そのトレーナーをどうするんだ?」
「さぁ?解雇が普通だと思うけど、トレセンは人手不足って噂もあるし、優秀な戦績を収めているから残留、って結論になるかもね」
「流石に解雇だろ、でなきゃ示しがつかないだろ」
──哀しくも、世間に彼の味方はいなかった。
──フジキセキ、屈腱炎を患う
[中トレ トレーナー室]
「……トレーナーさん、来ないね」
「…あぁ。久々にニュースを見てみたが、酷い言われようだった。詳細を知らない上、第三者目線というのもあるが、それを加味しても聞くに耐えない罵詈雑言が大半だ」
私が屈腱炎を患った事がニュースを介して世間に知れ渡って以降、トレーナーさんの姿を見る事は未だ叶っていない。学園側には精神的な理由で休暇を貰う事を伝えられているらしく、私達はたづなさんに聞き出して、ソレを初めて知った。
それまでは、トレーナーさんに聞こうとメッセージを何度も送った。でも、既読は付くものの、返事はついぞ返ってこなかった。
…トレーナーさんが学園に来なくなって、4日が経つ。日にちが経つにつれ、私の不安は比例するように増していく。言葉にしないだけで、ブライアンもそうなのだろう。ここ最近、生きた心地がしないと言いたげな表情ばかり浮かべている。
「…ブライアン、怪我は治りそうかい?」
「…分からん。リハビリはしているが、完治は難しいとは聞いている。後遺症が残る可能性が高いとか何とか言われたな」
「…ブライアンもなんだ」
私達がウマ娘である以上、命の次に大事なモノは脚。
「私としては、トレーナーさんの方を診察して貰いたい気持ちなんだけどね……」
「全く同感だ。アイツは元々引き籠りがちな性格じゃない。寧ろ、興味があるような事や仕事なら、進んで取り組むようなヤツだ。そんなアイツが、外に出ようとしないどころか連絡すら絶っている。精神的にヤられているのを判断するのには、寧ろそれだけで事足りる」
ブライアンの言う通り、トレーナーさんは掴みどころが無いけれど、自分が興味を持った事は進んで知ろうとし、時には突拍子の無い行動までする。それに仕事熱心でもあって、夜遅くまで仕事をしていて同僚やたづなさんに止められていた、なんて事もしばしば。仕事で籠りこそすれど、外へ出なかったり連絡を絶ったりはしない性格の人だった。連絡の面からしても、ブライアンが「そこまで細かく連絡しなくても良い。自分で確認する癖が取れそうだ」なんて言ってしまう程だったと、記憶している。
そんなトレーナーさんが連絡も返さずに外を出ようとしないのは、私達からしたら非常事態とも呼べる状態。私達も中々に重症状態ではあるけれど、それよりもトレーナーさんがどんな状態なのかの方が、気になって仕方ない。
「…トレーナーさんの家、行ってみる?」
「そもそも、知ってるのか?トレーナーの家」
「たづなさんなら知ってるんじゃないかな。今回は非常事態のようなものだし、説得出来れば教えてくれるかもしれないだろう?」
私の無策っぷりに、呆れるように溜め息をつくブライアン。普段なら無策で動く事はしない私だけど、トレーナーさんの事を想像すると…そうとばかり言ってられない。自分でも己の無策具合には呆れるが、今回は目を瞑ろう。
そう決めた私は、トレーナーさんの様子を見に行く為にたづなさんのもとへ向かった。
「……大丈夫だよね、トレーナーさん」
[トレーナー宅]
「……二人に、合わせる顔がないや」
自宅で独り、僕の呟きが寂しく響く。その呟きを、僕以外の誰かが聞く事はないだろう。
ブライアンが股関節炎を患ったと発覚したその少し後、フジの様子がおかしい日が増えてきた。それに気付いて病院で検査してもらったのだが、その時には既に遅かったと言うに相応しく、フジは屈腱炎を患っていた。その時はフジ達がいる手前、出来るだけ平常心を取り繕っていたが、やはりあの練習は止めておくべきだったのか、もう少し早く気付いていれば等といった事ばかりを考えてしまう日々。
そんな自分が知り合いに見られるのが怖くなり、トレセンには(少し弄った)事情を話し、こうして休暇を得ているに至る。連絡を絶っているのは、連絡をし合う気になれないからだ。特段、深い理由がある訳でもない。…いや、担当や同僚を心配させて家にまで来られる可能性を少しでも下げようとしているのかもしれない。
…兎に角、今は誰とも会いたくない。会ってしまって、何を言われるのか怖いから。会ってしまって、僕の心が持つ自信がないから。
「……夜ご飯…食べないと。食材……きれてないかな」
鉛のような身体を無理矢理起こし、リビングまで移動する。私室からリビングまで大した距離でない筈なのに、その道のりは実際の長さより遥かに遠く感じた。疲労感も凄まじい。
そんな事を感じながら、冷蔵庫を開ける。その中身はたいへん寂しい光景だった。野菜室や冷凍庫も同じ様子。あるのは調味料と、僅かな飲み物くらいだろうか。
……何故だが、冷蔵庫が自分の心の中と似ているなんて思ってしまう辺り、ほぼ末期に近いのだろう。
「…深めのフードを被って、行かないと」
今の自分は、(気持ち的には)指名手配犯並の扱い。見つかれば批判やら何やらを言われかねない……いや、きっと言われるだろう。悲しくも、そんな自信がある。
今の自分が、批判の嵐や視線を受け止めきれる程の精神を持ち合わせていないのは明白。だから、外に出る時には深めのフードが必需品。今では、これが無いと外に出られる気がしない。
服装を整え、買い足す物を紙にメモする。エコバッグをカバンに入れ、財布などがあるかを確認する。…近場のスーパーに行こう。車は……いや、歩いていこう。昨今はネット民が車のナンバーとかでも個人の特定をするようなレベルだ。暫くは車を使わないでおこう。
[トレーナー宅付近 帰路]
「……少し、買い過ぎたかもしれない。…重い」
また暫く外に出ないつもりだったために、かなりの量買い込んでしまった。いつもみたいに車で来ている訳でもないのに、こんなに買い込んでしまう辺り、自分は少し抜けている所があるようだ。……男のお茶目など、需要無さそうだ。
そんな軽い自虐を自分に言いながら、もう少しで着くであろう家まで、重い荷物を運ぶ。…もう少し筋力でもつければ良かったと、こういった時に思うものだ。
……そんな時だった。
「……?駆け足の音?こんな夜中に、しかもこんな道で……?」
不思議だった。ここが広めの道路だったり公園だったりしたら、「成程、トレーニングかジョギングをしてるのか」程度で終わるのだが、生憎、ここでそのような事をする人は見かけた事は無かった。
それに、ここは人目が少ないので、暗い夜となると、怪我の発見などが遅れる事がある為、看板で注意がなされている。それ程、ここはそのような事に向かないのだ。
……その予感は、的中していた。
「…お前が……お前がァァァァ!!」
ソレを視認して間もなく、腹部が熱くなる。……成程、人は理解が遅れると、反応も薄くなるのか。よく考えてみたら、その方が合理的か。狭い道、夜の時間帯、そして……人目の少なさ。
……あぁ、そうだ。
──
「…こんな夜遅くになったけど、トレーナーさん起きてるかな」
「…どうだろうな。……というかこの辺、何だか薄気味悪い。道幅も狭ければ、人目も少ないように見える。街灯も少ないせいか、他の道より灯りが乏しい」
あれから私達は、たづなさんと理事長に許可をもらい、今はトレーナーさんの家まで行く途中。一応、何かあった時は学園に電話を寄越す為に、電話番号を入れる事、危険があれば直ぐに連絡を入れる事を条件とし、今日だけ許可が下りた。
そうして来てみたは言いものの、ブライアンの言う通りで薄気味悪さが目立つ。先程交番のお巡りさんに言われたのだが、今通っているここは、年々事件がそこそこの頻度で発生しているらしい。情報が情報なだけあって、大変怖い。
そんな事を思っていると、かなり近い所から救急車の音が鳴っている。…まさか、近くで事件でも起こったのだろうか。……もし、犯人がいるケースの事件なら、まだ犯人は捕まっていない筈。……帰った方が良さそうだ。
「ブライアン、帰ろう。あの救急車の音が近いのから察するに、近くで事件が起こった可能性が高い。もし殺人事件とかだとしたら、その近くにいる私達が危険だと思う」
「……だな。不思議と、胸騒ぎもする。ここで引き返した方が安全だろうな」
満場一致となった私達は、自分達の学園へと踵を返す。
……一抹の不安を、抱きながら。
[中トレ 理事長室]
「陳謝ッ!朝早くから呼び出してすまない!」
「いえ。今日は大した予定も無いので、大丈夫です」
翌日の早朝。登校して早々、校内放送で呼び出された。理事長室に来て気付いたのだが、呼び出されたのは私だけではなかったようだった。
「…私まで呼ばれたとなると、アイツ関連か?」
「……その通りです、ブライアンさん」
自分だけでなく私まで呼ばれた事から、ブライアンはその結論に至った。それを肯定するのは、たづなさん。……気のせいだろうか、いつもと比べてどこか苦しそうな表情をしている。たづなさんらしくない。
「…それで、何かあったんですか?」
「…………肯定ッ」
私の問い掛けに答えた理事長は、いつものような活気を帯びてはおらず、握っている拳は過剰に力が入っているのか、プルプルと震えている。
そして、次の言葉が、私達の思考を全て吹き飛ばす事になった。
──彼が、殺傷事件に、巻き込まれた。
さて、いかがだったでしょうか。
角田トレーナーは、果たしてどうなるのでしょうか?精神ももうズタボロでしょうし、大変な事になりそうですね。それは次回のお楽しみです。
お知らせです。この度、私の執筆活動をPixivと並行する事にしました。と言っても、こちらで書いた物をPixivにのっけるという方針で行こうかと思っています。ハーメルンを辞める訳では、(今のところ)無いので、悪しからず。
では、ご精読ありがとうございました。