ロックンロールは裏切らない   作:冴月

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例のごとく、書き溜めが無くなったため投稿遅くなります。


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 ライブハウス、dub MUSIC EXPERIMENT。

 普段、香澄が利用しているライブハウスの"CiRCLE"や、この前ライブした"GALAXY"よりも遥かに大きい規模のライブハウスである。

 黒を貴重とした外観は若干の高級感を漂わせているものの、初見の人でも入りやすいようガラス張りの入口になっており、中の様子が伺える。よくあるライブハウスイメージから懸け離れた、とても綺麗な場所だった。

 そんなライブハウスで、本日の"RAISE A SUIRAN"の1stライブは行われる。

 

 

 中では、忙しなくスタッフが動き回っている。入口で列整理をしたり、なにかの荷物を持って走っていたり、受付をしていたり。そんな忙しそうな様子を見ながら、たえを抜いた4人、香澄達はその入口で集まっていた。

 

「かすみちゃん、チケットはちゃんと持ってきた?」

「うん。はい、みんなの分」

 

 沙綾から問われる。それに頷き、たえから貰ったチケットををみんなに振分けた。そして、入り口に向かって恐る恐るみんなで足を進めていった。

 

 受付を終え中に入ると、ステージには既に沢山の人だかりができていた。

 1stライブではあるが、自信のPRを各方向かなりの頻度で行っていたり、動画投稿を駆使した先行配信を行っていたおかげで、RASを目的とした観客はかなりの数になっている。チケットは、当日分含めて完売になっていた。

 

 2階席の最前列。下手すれば、1階のアリーナ席よりもいい席に香澄達は座る。

 

 今日は他のバンドのライブもある中での参加という事なので、曲数は3曲くらい。色々なバンドが聞けることもあり、香澄達はソワソワとその時を待った。

 変な心配事もなかった。4人で、たえが一体どんな演奏をするのか。リアルの"RAS"のR・I・O・Tは、果たしてはどのくらいの熱量なのか。そんなことをライブの合間合間に話しながら、RASの出番を待つ。

 

 ーー刹那。照明が暗転する。

 照らされていた光は全て黒くなり、観客が持つペンライトや、ブレスレットの光のみが当たりを照らす。

 

 バックスクリーンに、電子的な映像が流れ出す。幾何学模様というのだろうか、何重にも重なり合い、絡み、別れていく。バックで流れるEDMであるような、アニソンであるような。ロックであるような、ポップスであるようなDJにこれから奏でられる音を期待する。

 

「……"R・I・O・T"」

 

 自己紹介入らない。ただ音を聞いていけと言わんばかりに、彼女達の音楽が始まった。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

「〜〜〜っ! すっごい! すっごいすっごいすっごい!」

 

 柄にもなく、香澄はとても興奮していた。名前の通り、暴動のような音楽を前進で浴びた香澄は、もはやRASのファンの1人だった。

 

「なんというか……。痺れたわ」

「言葉にならないってこういう事を言うんだなー、って感じだよ!」

「まさか、うちのバンド以外で日本一になりうる可能性があるとは」

 

 有咲はポカンと口を開け、沙綾は香澄と同じように興奮し、りみはむむむと腕組みながら難しい顔をしていた。

 各々が様々な反応を示す。だが、共通していたことがあった。

 

『おたえ(たえちゃん)かっこよかった!!』

 

 これに尽きる、と言った感じであった。

 

「普段のうさぎ殿からは、考えられない程音が決まっていた」

「そうだね! ギターソロの所とか、とってもかっこよかった!」

「途中の……背面ギター? すっごいロックだったよ!」

「衣装も似合っていたし、なによりもたえ自信も暴れている感じがしたわね」

 

 

 やいのやいのとたえに関する話をする。ライブが終わり、観客が出ていく時も。自分達が、ライブハウスのロビーで屯している時もたえの話で付きっきりだった。

 

「……あ、皆さん!」

 

 香澄達を見つけたたえが、駆け寄ってきてくれた。

 黒いベスト型のアンダーに、白い薄手のワンピース。腰あたりを白いベルトで締め、胸元に銀色に輝くティアドロップ型のネックレスがさりげなく主張している。

 普段のたえのパーカー姿からは考えられない、とても魅力的な衣装だった。

 

「たえちゃん、お疲れ様! かっこよかったよー! はい、これ差し入れのジュースだよ」

「ありがとうっす、かすみんセンパイ!」

 

 香澄が、ビニール袋に入れられた5本のジュースを渡す。予め、スーパーに寄って買ってきていたものだった。

 たえは袋を受け取り、嬉しそうに目を細めながら言う。

 

「たえちゃん、すっごくロックだったよー」

「うむ。普段とは違う、かなり決まっていた」

 

 沙綾がたえの手を取りぶんぶんと振って、りみはよくやったと言わんばかりに肩に手を置いた。

 

「あんた、あんな風にも弾けるのねぇ。次のライブ、ギターソロでも考えてみようかしら」

 

 有咲が、ウンウンと頷く。腕を組み、まるでプロデューサーの様な感じではあったが、たえのことを褒めていた。

 ポピパのみんなが褒めまくる。たえを、褒めて褒めて褒めてまくった結果。最初こそは笑っていたたえも、恥ずかしそうにして顔を赤くし始めた。

 

「タエハナゾノ! 今回のライブの反省をするわよ。来なさい」

 

 そんな、わちゃわちゃとした雰囲気の中に喝が入る。声の方を見ると、まだライブ衣装に身を包んだままのチュチュが、腰に手を当てて立っていた。

 チュチュは、なんだか不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。

 

「は、はい! ……それじゃあ、皆さん。また明日!」

「うん、また明日ね!」

 

 たえは、チュチュの方へ駆けていった。

 

「……なんだか大変そうね、あれ」

「そうだな。あのちっこいのに、振り回わされてそうではある」

 

 有咲とりみが、チュチュに目をやる。あまり印象よく思っていないことが、その表情から読み取れた。

 

「まぁ、頑張ってるってことだよ。私達も、頑張らないとね!」

 

 沙綾がそう言う。

 意気込んでいう沙綾に、香澄達は頷いて答えた。

 

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