ロックンロールは裏切らない   作:冴月

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 夕方と、夜の間の時間。紅掛空色の時間。香澄達は、練習の休憩中にコンビニへ向かっていた。

 次の日が休日であれば、Poppin’Partyは夜まで練習する事になっている。その為に、夕方のおやつの買い出しに5人で向かっていたのだ。

 2年生が始まり、最初の夜蔵練。新しいクラスという事もあり、雑談の話題は尽きない。

 

「私達のクラスは、バンドやっている子がいたよ。"ハロー、ハッピーワールド!"って言って6人でやってるんだって」

「バンドっすか!どんな感じだったっすか?」

「えっとねー。なんだか、元気いっぱい! って感じだったかな。……あ、あと熊がバンドメンバーに居るんだって」

「おおー……。それはかなりロックだね」

「まぁ、熊って言っても、キグルミのマスコットみたいな感じらしいけどね。ピンク色のクマがDJやっているんだってさ」

「ピンク色のクマで、DJ……。ふむ、なんだか他人の気がしないな」

 

 クラスの事を話す。あんな人が居た、こんな子が居た。今日あったことまで色々話していく。

 コンビニが近づくにつれ話題は移り変わり、たえとりみのクラスの事になった。

 

「りみりんのクラスはどんな感じ?」

「ふむ。うちのクラスには武士が居たな」

「……武士?」

「日本とブシドーが好きなアイドルっすね。若宮イヴさんっていう」

「あー、"Pastel*Palette"だね。アイドルだけど楽器を弾くバンドなんだって。お父さん、今日の朝見てたなぁ」

「あとはバンドやってるっていう子も居たっすね。ヤマブキパンの近くでコロッケ屋やってるみたいっす」

「あー、だったらあの子かな……?」

 

 どうやら、2人のクラスも賑やかになりそうだった。

 雑談を続けている内に、気がついたらコンビニに着いていた。4人で商品を物色し、購入し、外に出る。そうしたら、また雑談タイムの始まりだった。

 

「そう言えば、暫くライブやってないよね」

 

 思い出したように、香澄が言った。有咲の家の少し前、橋を渡っている最中だった。

 

「そうね。最近ご無沙汰だったわね」

「最後にやったのは……。数ヶ月前の"CiRCLE"っすか?」

「そうなるな。……となると、そろそろ勘を取り戻したいところだが」

 

 りみが言うと共に、香澄は足を止めた。ちょうど坂道を昇る直前だった。

 

「……ライブ、したいな」

 

 呟くように言う。足を止めた香澄に習って、有咲達も少し後ろで足を止めた。

 

「2年生になったし、これから忙しくなるかもしれないでしょ? それなら、今できることは、今やっておきたいなって。商店街でも、ライブハウスでもどこでも」

 

 思い出すのは学園祭。初めて5人で立った、遠くて近い夢のようなライブ。あんなライブが二度できるかと言われれば分からないけど、遠くで輝く星に向かって、香澄は歌いたかった。遠い音楽に、この五人で近づきたかった。

 

「……私もしたいな。皆で、ね」

 

 次にに言ったのは沙綾だった。香澄、有咲、りみ、たえの顔を一度ずつ見回した後、笑顔で告げる。

 

「2年生にもなったし、心機一転って感じで。皆でやりたいな」

 

 今まで置いてきてしまった思い出を拾い集めたかった。もう一度、リスタートした沙綾は、"自分のせいで"だなんてもう思わない。ちょっとだけ、欲張りになった沙綾は、素直に自分を出していく。

 

 その笑顔と、告げた言葉。その裏の真理に、反対する人は居なかった。

 香澄、有咲、りみ、たえの4人の情熱と心は、どんどんと高揚してくる。

 

「久しぶりの実戦(ライブ)! ウチの練りに練った低音を解き放つ時だな!」

「自分も、5人で演奏したいっす!」

「新曲もあるし、実践を積むのはいいわね。やりましょう!」

 

 この五人ならどこまでだって音楽を届けられる気がした。あれをしたい、これをしたい。セトリはこうで、衣装はこれがいい……とか。香澄達の話は膨らんでいく。

 

「……あれって、もしかして……?」

 

 そんな事を話しているポピパに、来訪者があるようだった。電柱の裏から様子を伺い、此方を見ている人影に香澄たちは気づく事が出来なかった。

 

「……あ、あの! "Poppin’Party"さんですか?」

 

 シュシュをつけた女の子が、Poppin’Partyに声をかけた。やいのやいのと話をしていた一行は、話すのをやめて女の子へ向き直る。

 

「そうだけど、あんたは?」

 

 代表して有咲が答えた。"Poppin’Partyですか"という問に肯定した瞬間、女の子は何故かビクッ! っと反応していたが、首を振って何かを振り払うようにする。

 

「……あ、あの! ……助けてください!!」

「……えっ?」

 

 香澄の素っ頓狂な声が、夜の江戸川公園に染み渡って言った。

 

 

 

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