ロックンロールは裏切らない   作:冴月

3 / 19
3

『助けてください!』

 

 そんな事を言う女の子を放っておくことは、ポピパの5人には出来もしなかった。あれよあれよと言ううちに、香澄達は何故か"GALAXY"というライブハウスでライブをすることになっていた。

 というのも、この"朝日六花"という女の子に次の日に行われるライブハウスの開店ライブに参加してくれないかと頼まれたからだった。

 

「……まぁ、あんなに謝りながら頼まれたら断れないよね」

 

 ライブステージの裏側、準備室で準備をしながら香澄は呟いた。

 

「けど、まさか次の日にライブだとは思わなかったっす」

 

 隣に座っているたえが言った。衣装の一部である髪飾りを鏡を見てつけようとしているが、上手くいかないらしい。右につけたり左につけたり、あっちこっちに手こずっていた。

 

「ちょうど実戦(ライブ)を考えていたんだし、ちょうど良かったと思うぞ。……うさぎ殿、私が付けよう」

 

 たえの髪飾りをりみがつける。香澄も、自分の衣装に変な所がないか、姿見で確認をする。

 ーーこんなものかな。自分の衣装に変な所がないのを確認し終えたら、香澄は周りを見渡した。

 

 パンクでロックな衣装を着たバンドや、ゴスロリのドレスに身を包んだバンド。パレードの衣装を着たようなバンドの計4バンドが、今日のGALAXYのライブで集まっているようだった。

 

「ねぇ、りみりん。今日来てるバンドの人達がどんな人達かは分かる?」

「分かるぞ。詳細までは話せないがな」

 

 ーー一体、りみりんの情報網はどうなっているのだろうと、改めて思う香澄であった。

 しみじみと感心をしていると、りみが一つ一つ話を始める。

 

「あそこに居るのは"Afterglow"。羽丘女子学園の幼なじみ5人で結成されたバンドらしいな」

 

 赤メッシュのショートボブの子を中心に、全体的に派手な人達だった。ちょっと話しずらそうだな……と、香澄は思ってしまう。

 

「あっちは"Roselia"。ダークな雰囲気とシリアスな感じで、高い実力を持ったバンドだな。プロの世界でも注目さているらしい」

「へぇ……」

 

 それは是非とも見てみたかった。プロレベルのバンドの音楽を身近で感じることなんて、そうそう出来ることは無い。今後の演奏における参考になる筈だ。

 香澄は、ライブが終わったらもっと調べてみようと心のメモをしておいた。

 

「あそこは"ハロー、ハッピーワールド!"だな。……多分、あそこは直接話した方が早い」

 

 そう言って、りみがハロハピを指さす。指した先を目で追うと、沙綾がハロハピのメンバーの1人とと話をしているのが見えた。

 香澄は、ちょっとだけ近づいて聞き耳を立てることにしてみる。

 

「……やっぱり、沙綾だよね! まさかバンドやってるだなんて思わなかったよー!」

「私もびっくり。話は聞いてたけど、"ハロー、ハッピーワールド!"だなんて思わなかったよ」

 

 オレンジ色の髪をした、ショートヘアの女の子……"北沢はぐみ"と話し込んでいる。どうやら、沙綾とあの子は顔見知りの仲ようだった。

 ーーというか、"ハロー、ハッピーワールド!"って事は、まさか……。

 

「……あら、香澄じゃない!」

「あ、弦巻さん」

 

 はぐみの後ろ、メンバーと話をしていたこころが香澄に気づいた。つかつかと大股で歩いてきた彼女は、笑顔で香澄の手を握る。

 

「香澄達もライブをするのね!」

「うん。とある子に誘われて、ちょっとね」

「そうなのね! ライブが出来るだけじゃなくて、香澄達のライブが見れるだなんて……! とーっても楽しみだわ!」

 

 ブンブンと腕を降ってくる。"嬉しい"、"楽しい"という気持ちが、伝わってきているような気がした。

 伝わってくるのはいいが、流石に急すぎた。どう対応したらいいのか香澄が困っていると、りみとたえ、はぐみと沙綾がゾロゾロと集まってくる。

 

「……あれー! りみりんとおたえだ! なんでここに居るの!」

 

 割り込んできたのははぐみ。香澄の後ろに居るのたえとりみに視線は行っている。

 

「む、はぐみ殿か。なに、何を隠そう私達も師匠のバンド、"Poppin’Party"のメンバーなのだ」

「お疲れ様っす、はぐみさん」

 

 まさか、2人に知り合いが居たとは思わなかった。……いや、別に友達が私達以外居なさそうとか、そういう訳じゃない。ただ単に、この2人の場合はポピパ以外の人の話が出ない為そういうイメージが付いているだけで……あれ、それって私もじゃない?

 そんな事を考えて、自爆した香澄だった。少し萎れた気分になった香澄を余所に、それでも雑談は続いていく。

 

「……って事は、この人が噂の"かすみん師匠"?」

「うむ」

「……すっごーい! まさか会えるだなんて思わなかったよ!」

 

 ーーり、りみりんは一体何を吹き込んだの!?

 

 そんなすごい事やってきてないと思うけど……。と、心の中で反論をする香澄であった。

 

「次! "ハロー、ハッピーワールド!"さんお願いします!」

 

 準備室のドアが開き、六花が顔だけ出して出番であるハロハピを呼んだ。こころは元気よく返事をして、香澄達に向き直る。

 

「それじゃあ香澄! 私達のライブ、楽しみにしていてちょうだい! 」

「りみりん、おたえ、沙綾にかすみん師匠! はぐみ達のライブ、頑張るから見に来てね!」

 

 それだけ言うと、2人はスキップしながら部屋を出ていった。

 

「……なんだか、嵐のような人達だったわね」

「あ、有咲ちゃん。どこ行ってたの?」

 

 いつの間にか姿を消していた有咲が、香澄の背後に現れていた。周りを見渡し、それでも足りないのかキョロキョロと警戒をしながら香澄に告げる。

 

「ちょっと話すのがニガテなタイプだったからね。隠密行動よ」

 

 それだけ言うと、持ってきたノートを広げ始める。曲名や、ライブで話す内容などをまとめたPoppin’Partyの"成り上がりノート"が開かれると、ポピパのメンバーは一点に集まってくる。

 

「最終確認をしましょ。他のバンドのライブを見るは、それからでも遅くないと思うし」

 

 有咲主導で最終確認が始まる。香澄達は、有咲の言葉に無言でうなづいて、ノートを覗き込んだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。