ロックンロールは裏切らない   作:冴月

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 5人が集まることで出来上がる音楽は繋ぎ、結び、編んでうねっていく。

 各々が感じている事を、内に秘めた何かを解放する。自分の中にある渦巻く熱風を、赴くままに解禁する。

 

 それは、強くて、明るくて、優しくて、鮮やかで。軽やかで、熱っぽくて、怖れず。陽気な発想としなやかな戦略によって、ロックンロールの神様が大きく笑った。

 Poppin’Partyは感じる。拡大と収縮、原理と応用、熱くてクールで馬鹿みたいだけどクレバーで。格好悪いくらいに格好良い。泣けて笑えるロックンロールを、ふくろう星雲まで届かせる。

 

 ざわばしざわばしと音の波が押し寄せる。普通とは違う、日常には無い非日常のナニカ。そんなナニカを、そんなフィクションを香澄達は確信的に演出する。

 

「ーー最後の曲! "Yes! BanG_Dream!"」

 

 ーーさあ、飛び出そう!

 初めての音、始まりの音。奏でるのは、無敵で最強の音楽。自分達の音楽を、遠くの誰かに届ける。

 指で銃を作り、空にあるナニカを5人で撃ち抜く。

 それは、5人の確かな願いだった。

 

 

 

ーーーー

 

「せーの……。ありがとうございました!」

 

 ライブ終わり。今日出演したバンドメンバー全員で、観客たちに頭を下げる。

 観客のボルテージは最高潮。他のバンドの演奏も最高、アンコールは時間の都合で出来ないが、オープニングライブとして大成功のように香澄は思った。

 Poppin’Partyとしてのライブも、かなりいいものであったと思う。久しぶりのライブだったとはいえ、それを感じないほどぴったりに思えた。

 楽しい。その感情のみが、Poppin’Partyを支配しているような感じ。演奏を終えた後、五人で声もなく互いに顔を見合せたのは、言葉にならないこの感情を伝えたいからだった。

 順番に降壇する。手を振りながら、観客に手を振りながらステージを出た。

 1番最後に降壇したポピパは、準備室に入ったのも1番最後だった。今日のライブも楽しかったねー、最高だったねーと、そんな話をしながら部屋に戻る。

 

 ……1時間後。ライブハウスの入口付近で固まっていたバンド間の交流もなくなり、Poppin’Party以外のバンドは既に帰ってしまっていた。私達もそろそろ帰ろうかー……。なんて話をしていると、GALAXYの入口から六花が慌てて表に出てくる。

 

「あ、あの!」

 

 なんだか緊張している様子だった。話す言葉を選んでいるのか、なかなか続きを話出さない。

 とりあえず、香澄は今日ライブをさせてもらった感謝を述べることにした。

 

「えっと、今日はありがとうございました」

「えっ、ええっ! そ、そんな! ぽ、ポピパさんから感謝を頂くなんて恐れ多い……」

 

 ーー何故、こんなに謙遜しているのだろうか。香澄達には、理由がよくわからなかった。

 ワタワタと手を振り感謝の念をかき消そうとしていた六花だったが、急に我に戻ったのかコホン、と咳払いをする。

 

「え、えっと。まずは……。き、今日はいきなり声をかけてしまったにもかかわらず、参加していただきありがとうございました!」

 

 ーーあれは、カンペ?

 六花の左手に、若干だが白い紙のようなものが見える。

 

「そ、それでですね……。その……」

 

 何かを言い留まっている。

 右を向き、左を向き、最終的には下を向いて俯く形になる。

 

 ーー更にそこから数十秒、俯いたままの六花。

 香澄は流石な心配になり、声をかけようと近づくと……。不意に顔を上げた。何かを決意したような表情で、大声で六花は告げる。

 

「わ、私! ポピパさんの大ファンなんです! サインして下さい!」

 

 それは、見事なお辞儀だった。90°に腰を曲げ、最も敬意のある形で頼み込む。

 だが、頼み込む内容が香澄にとって新鮮すぎた。

 

「……へ?」

 

 香澄の気の抜けた声が、夜の商店街に消えていった。

 

 

 

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