ロックンロールは裏切らない   作:冴月

5 / 19
5

 あの後、何故Poppin’Partyを知っていたのか。というか、どこで知ったのか。矢継ぎ早に問う事になった。

 ただ、聞いていたのはほかの4人で。サインなんて求められたことのなかった香澄はそれどころではなかった。

 ……とりあえず、差し出されたミニ色紙に"とやまかすみ"とひらがなで入れてみる。片仮名、漢字、ひらがなの中では、1番ひらがなが可愛らしいという、そんな理由だった。

 ーーなにか物足りない。とりあえず、"とやま"の後に"☆"のマークを追加してみた。……うん、なんだか様になった気がする。

 

 何とかサインを書き終えた香澄は、ミニ色紙を六花に差し出した。手を震わせながら、恐る恐ると言った感じで、空色に縁どられたミニ色紙(サイン入り)を受け取った。

 わなわなと、目を輝かせながら色紙を見つめていた六花だったが、有咲の咳払いでやっと元に戻っていく。

 

「ねぇ、六花ちゃんはどこでPoppin’Partyを知ったの?」

 

 香澄が六花に聞いてみる。六花は、たどたどしくも詳しく答えてくれた。

 

 どうやら前回の学園祭のライブやライブハウスでもライブの映像を見たのだという。その動画が編集され、動画投稿サイトに投稿されていたとか。

 六花に言われるがままに確認してみると、本当にあった。学園祭で披露した"走り始めたばかりのキミに"や、商店街での"Yes! BanG_Dream!"等、4つほど投稿されている。ーーしかも、以外と再生されている。10万再生って……。

 

「へぇ……。これ、そんなに再生されてたのね」

「えっ、有咲ちゃんどういうこと?」

 

 有咲が覗き込みながら言うのに対し、香澄が聞いた。なにか知っている様子だった。

 

「前の学園祭のライブ、おばあちゃんが撮っていてくれてたのよね。ちょっとお試しで動画を上げてみたのよ」

 

 アカウント名を指さす。"蔵パーティ(仮)"と書かれたその名前は、明らかにPoppin’Partyの関係者である事を示していた。

 

「ほら、私達色々やりたいこと話したでしょ? ……なにかの役に立つかなーって、思ってやってみたんだよね」

 

 いやー、びっくりびっくりと、感心しているが。有咲ちゃん、びっくりしたいのは私達の方だよ……。

 

「って事は……うわ。私の顔、バッチリ写っちゃってる」

「うちのバク転のバッチリ写っているな」

「自分の、ちょっとミスした所もバッチリ写っちゃってるっす……」

 

 動画を再生しながら、各々が感想を言い合う。あそこはああだったとか、ここはこうだったとか、そんな風なことを話す。

 そんな様子を見て、六花は何故か目を輝かせている。

 

「こ、これが生のポピパさんなんや……!」

 

 ーーな、生?

 あまり言われない言い回しに、ポピパ達は戸惑うことになるのであった。

 

 とりあえず、立ち話で夜遅くなるのも良くない為、また話す機会を儲けようということになった。普段使っているSNSの連絡先を教え、(なんだか携帯を持ったまま震えていた。)解散する事となった。

 そして次の日……。

 

「おはよー」

「おはようっす」

「おはよう」

「おはよう……ねむい」

 

 ライブの次の日だった為、多少なりとも眠気がある香澄達である。いつもより遅い足取りで学校へ行き、たえとりみと別れる。

 そして、有咲と共に教室に入ると。何故かクラスメイトたちに囲まれる事になった。

 

「ねぇねぇ戸山さん! 昨日のライブで歌ってたの戸山さんだよね!」

「めっちゃかっこよかったよ!」

「いつからバンドしてるの? 次のライブは何時?」

「え、あの、うぇ!?」

 

 恐らく、過去一で人に囲まれた瞬間だったと後の香澄は言った。

 教室に入るなり、普段話したことの無いクラスメイトたちに囲まれた香澄。香澄を中心に人の群れが出来ている中、あまり目立ちたくない有咲は、反対側のドアからひっそりと教室へ入る。

 

「ええっ!? あっ、ちょっ、有咲ちゃーん!?」

 

 結局、香澄が開放されたのは朝のHRが始まる直前だった。普段、仲間内でしか話さない香澄は、急に話しかけられた事と、普段聞かれないようなこと。半分停止しそうな頭を回しつつ答えてた為、ぐったりと机に伏している。

 1時間目が終わった後、香澄が怠んと机に伏せていると、有咲が心配しに来てくれていた。

 

「大変だったねぇ、かすみん」

 

 有咲がニヤニヤしながら話しかけてくる。肩に手を置いて、ポンポンと肩を叩く。

 

「かすみんは歌上手いからね。なんかこう、キラキラしてるし。注目されるのも無理ないよ」

 

 少しだけ、ライブハウス"夢の蔵"の"トゥインクル・スターダスト"を思い出す。

 彼女自信が音楽のような、切なくて、暖かくて、清らかで、愛おしい。そんな彼女の歌声。

 

 それを聞いたお客さん達が、香澄に注目するのも無理はない。

 

「まぁ、今後ライブ活動していくにつれて増えてくだろうね。レベルアップよ、かすみん」

「うへぇ……」

 

 これ以上無いくらいに机に伏す。話すことの全てが苦手だったのに、今は違う。ちょっと疲れるくらいにはレベルアップしている。

 ーー昔のかすみんとは変わったよなー、と有咲は感心していた。

 

「ねぇ、戸山さん、市ヶ谷さん! 昨日のライブの事もっと聞かせてよ!」

「次、移動教室だよね。一緒に行こ?」

「ええ。いこっか、かすみん」

 

 

 あまり話したことの無いクラスメイトからも誘われる。むず痒いというか、緊張するというか。

 今迄体験した事の無い出来事に飲まれていく、香澄と有咲だった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。