徐々に、徐々にクラスメイトたちと打ち解けていく香澄達。かつて、置いてきてしまった"青春"のようなものを一つずつ拾い上げ、再び咀嚼する。
改めて学校というものを実感している中、香澄達は文化祭のシーズンへと突入することになる。
「……じゃあ、うちのクラスはパン喫茶で決定!」
クラス皆の同意があり、香澄達はパン喫茶をする事となっていた。
きっかけは、香澄。当初、喫茶店をやろうとはなっていたものの、肝心は食べ物が何も決まっていなかった。
そこで、香澄が勇気をだして、「パンならどうかな?」と提案。友達がパン屋をやっているということを伝えつつ発言してみると、案外乗り気に。具体的な内容も決まり、"パン喫茶"をすることになった。
「じゃあ、戸山さんの言うパン屋さんの子とはまた打ち合わせさせてね」
「うん」
特に沙綾ちゃんの許可を取らなかったが、大丈夫だっただろうか……。とりあえず、SNSで沙綾に連絡を入れておくことにする。
……おや、返信が早い。『大丈夫だよー。後で詳しくお話させてね』。
1つ返事で問題ないとの事だった。
「沙綾ちゃん……あ、パン屋の友達の名前なんだけど。沙綾ちゃん大丈夫だって」
「本当? ありがとう! 戸山さん仕事早い!」
褒められてむず痒い香澄だった。
その後は、どこに誰を付けかというシフトを決めていった。準備する物、その他諸々は今後決めていくという。
学園祭。学生生活の中で、一二を争うイベント。青春のイベント。しっかり噛み締めていかないと、砂時計のように過ぎ去ってしまうイベントだ。
ただ、香澄達はもっと大事なイベントがあった。かけがえのない、大切なものがあった。
「……じゃあ、"学園祭ライブ"のセトリ決めてこっか」
「「はーい」」
Poppin’Partyは、放課後の蔵で集まっていた。皆の中心に"成り上がりノート"が置かれており、それを囲むようにして円形に座る。
あーじゃない、これはどうか。こっちの方がいいんじゃないか、それならいいかも。そんな風に決めていく。
「ねぇねぇ、何歌いたい?」
「"Yes! BanG_Dream!"入れたいわね」
「私は、"STAR BEAT~ホシノコドウ~"を入れたいな」
「うちは"夏色SUNSUNSEVEN!"を入れたい」
「ロック調で盛り上げるのもいいかもっすね。自分は、"ティアドロップス"入れたいっす」
気がついたら、去年とほとんど同じようなセトリになっていた。やはり、去年演奏した思い出が大きいようだ。
けれど、香澄はもう一つ新しい物を残したかった。Poppin’Partyがもう一つ上のステージに行けるような、突き抜けたものを作りたかった。
それは、新曲という形でもいいし、新しい技術を披露するということでもいい。
「でも、新曲も作りたいよね」
「そうっすね。歌い慣れたのもいいっすけど、また違う面白さがあると思うっす」
「じゃあ、作詞作曲はどうする?」
「うーん……。作詞はかすみんでいいとして、作曲とアレンジを私たちで考える?」
「それがいい。今までの曲は、師匠の作詞があってこそ光ってるからな」
「だって。かすみん、それでいい?」
「うん! 大丈夫!」
あれよあれよといううちに、新曲を作ることになった。どんな物を作りたいのかは全然検討もつかないが、それも皆で決めていくだろう。
香澄の負担が少し多い気もするが、今の香澄は楽しみの方が大きかった。
「なら、修行ね」
「修行!」
その単語に、りみがいち早く反応する。身を乗り出し、目をキラキラさせて、その発言をした有咲を見る。
「修行って……?」
沙綾が首を傾げた。たえ、沙綾と香澄が"修行"と言い出した有咲の顔を見る。
「だって、去年の私達と同じような感じじゃつまらないでしょ。私達自信も技量はアップしているはずだし、見てくれる人達もマンネリ化しちゃうかもしれないしね。……だから修行よ」
有咲は立ち上がった。指を香澄立ちに突きつけ、精一杯の笑顔を見せて、胸を貼りながら言う。
「大切なのは"今"よ! 修行して、1秒ごとに新しい私達に変わっていきましょ!」
ーーReady,Steady Go!
いつだって、何かが始まる時はこうだった。
ドキドキして、クラクラしちゃうような感覚。キラキラした何かが仲間たちの間を飛びまわり、みんなが同じ気持ちになっていく。
「それじゃあ、頑張りましょう!」
「「おー!」」
掛け声を合わせる。2回目の学園祭に向けて、Poppin’Partyは走り出していく。