申し訳ございません。
レイからの、サポートギターの誘い。バンドに入るとかそういうことではなくて、ちょっとしたお手伝い。
だけど、どのくらい手伝いをするのだろうか……。学園祭のライブに影響出たりとか、しないだろうか……。
ただ、他のバンドの音楽に参加出来るのは、本当に良い経験になると思った。バンド事に違う伝え方とか、技術とか。そういったものに触れることで、自分の音楽を通した伝え方がもっと掴めると思ったからだ。
そんな心配が、たえの頭を過ぎる。ちょっとだけ、考えさせて欲しかった。
という訳で、連絡先だけ交換してレイとは別れた。次の日にポピパの練習がある為、その時に説明をしてみようと思った。
夜、レイから音源が送られてくる。何でも、"RAISE A SUILEN"の、音楽を送ってくれたらしい。
『これが、私達の音楽だよ』
そんな1文を添えてある。たえは、ちょっとドキドキしながらその音楽ファイルをタップする。
ーーCome into the world! Just follow me, and trust me!
たえは、RASの音楽に飲み込まれていく。
☆
「……という訳っす」
翌日、たえはいつもの4人に昨日の出来事を説明した。
路上ライブをしていたら、レイという昔馴染みと再開したこと。そのレイが所属する"RAISE A SUILEN"というバンドのサポートギターを、修行のためにやってみたいこと。主にその2点だった。
「ふーん。おたえ、そんな風に話せる子が居たのね」
なかなかなことを言い放つ有咲。あはは……。といって笑い、誤魔化しながらもたえは答える。
「友達って言うか、"音楽仲間"って感じが正しいっすかね。家族の事とか、好きな食べ物とか、そういった事は全然知らないっす」
音楽で繋がっているような関係。決して悪くない、むしろ清々しいくらいに心地いい関係。ギターのチューニングをしていた香澄は、そんな関係を羨ましく思った。
「それで、これがそのバンドの音源っす。サポートをやるにあたって、参考にしてくれっていって、送ってくれたっす」
たえが、スマートフォンの音楽アプリを起動する。タイトルは、"R・I・O・T"。黒い背景に、白文字でアートワークが書かれている。
レイヤから貰った音源を、たえがタップをして解き放った。
ーーDon't waste your breath.
息が、止まりそうだった。
この曲から放たれる"意思"の奔流が、香澄達に流れ込んできていた。
「……これは」
「ふむ」
「すっごく、力強い音……」
「……」
世界に音楽が憑依したようだった。そこに法則は無く、ルールも無く。ただただ"RAS"の音楽だけがあった。
物凄くかっこよくて、ポピパとは大違いの音楽で。けれどどこか、私達"Poppin’Party"の音楽に似ているような気がしていた。
「……なんというか、負けてられないわね」
有咲がそう呟く。静かに黙々と聞いていた有咲だったが、決意するように言葉をはく。
何となく、4人は有咲のその言葉の意味を理解していた。
ーー"無敵で最強の音楽"と、"最強の音楽"。しかも、同じガールズバンドときたら、そう思うのは無理もない。
「……うん、大丈夫よ。おたえ、サポートギターやってきていいよ」
「ほ、ほんとっすか!」
「うん。ただし、あくまで"修行"なんだからね。RASとかいうバンドに入っちゃダメだよ」
「そこは大丈夫っす。自分は"ポピパ"なので」
ふんす、と気合が入っていくたえ。香澄が「頑張ってね、たえちゃん」と言うと、「頑張るっす!」と張り切っていく。
どうやら早速、連絡を入れているようだった。これで、これからの練習も身が入ると言うものだ。
「それじゃあ、今日も合わせていきましょう。まずは、みんなに練習してもらってた新曲の合せから……」
有咲の一言で、ポピパの蔵練は始まっていく。