ロックンロールは裏切らない   作:冴月

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 次の日、たえはとある高層マンションの最上階に来ていた。

 

 マンションの入口はとても普段なら高級過ぎて目にも止めないような場所だった。なんだか色々なところがツヤツヤしているし、キラキラ輝いている装飾品があったり、たえには価値が分からないほどの絵も飾ってある。たえは、すでにお腹いっぱいだった。

 何十階あるのか分からないくらいのエレベーターを最上階の"R"まで登ると、市営のものくらい大きなプールがあった。ポピパの5人で入っても泳ぎの競走が十分に出来そうな広さであるう上に、テレビで良くやっている高級ホテル特集なんかで出てきそうなクオリティである。

 そんなプールを横目に、たえは長い廊下を進んでいった。レイから聞いた話だと、ここにほぼ一人で住んでいるのがRASのリーダーらしく、きゅうりばっかり食べている自分の家とは大違いだなと思った。

 

 ーーこれ、正装じゃなくていいんっすかね?

 そんなことまで心配になってきた。正直言って、場違い感が凄かった。いつも通りのパーカーを羽織ってきたたえは、長い廊下を歩く間も絶えずむず痒さを感じ続けている。

 

 ……とても長い廊下の先には、現代的と言うにふさわしい建物があった。建築には詳しくないたえだったが、それがとても効率的で、高級感があることだけは解る。

 

「……し、失礼します」

 

 恐る恐る、たえは部屋に入る。

 

 

 

 

 中は、個人の家とは思えない。本当に音楽スタジオだった。

 楽器を引く区切られたスペースと、編集する為の機材たち。そして、沢山のアンプやらの機材が綺麗に並べられている。たえ自信も分からない機材もある。

 そんな演奏スペースには、金髪のジャケットを着たドラマーと黒髪のベーシスト……レイが、一緒に演奏していた。何かの曲の合わせをやっているようで、楽しそうに笑みを浮かべて楽器を弾いて、叩いている。

 

 そんな編集スペースには、巨大なイスがひとつ置かれていた。がさらに近づくと、椅子はくるりと反転し、座っていた人物が明らかになる。

 ーーと、同時に。カラフルな髪の女の子がいつの間にか視界の先にいた。

 

「いらっしゃいませ! あなたがレイヤさんご紹介の方ですか?」

 

 ライトピンクとライトブルーの髪色。あまり、普段見かけない髪色をした女の子が深々とお時期をする。まるで、どこかのメイドのような感じだ。

 

「は、はい。自分が花園たえっす」

 

 名乗ると、パステルメイドの彼女はまたもや深々とお辞儀をする。それに釣られて、たえも深々とお辞儀をした。

 お辞儀が終わると、パステルメイドは横にズレる。そこには、赤い髪の自分より小さな女の子。けれど、どこか自信満々な表情の少女が、椅子に深く座っていた。

 

「貴女がタエハナゾノね! 私はプロデュースサーのチュチュよ。そっちはパレオで、あそこでレイヤと合わせてるのがマスキングよ」

「あ、自分は花園たえっす。よ、よろしくお願いしますっす」

 

 一人一人の紹介を受ける。紹介をされ、丁寧にスカートの端を少し持ち上げお辞儀する、カラフルメイドのパレオに、ちょっとヤンキーにも見えるドラマーのマスキング。そして、プロデューサーのチュチュと、ベーシストのレイ。話していた、4人が勢ぞろいしていた。

 チュチュと自称した少女は、続けて口を開く。

 

「レイヤから話は聞いてるわ。何でも、昔からの仲だとか。……レイヤのお墨付きなら、ある程度期待はできるわね」

 

 どうやら、レイが前もって話を通してくれていたらしい。それも、チュチュの言い方的にレイヤは相当信頼されているようだった。

 

「けど、誰でもいいワケじゃないの。私の聞きたい音が出せなければ、問答無用で帰ってもらうわ」

 

 なんと、いきなり始まるようだった。オーディション、のようなものだろうか。気づけばレイとマスキングがスタジオから既に出て、近くのソファに座っている。

 RAS全員で、たえのギターを聞くようだった。

 

「とりあえず、貴方の中での1番を弾いてちょうだい。それを聞けばわかるわ。……Redy?」

 

 スタジオに入る。たえの体に、一気に緊張感が降り注ぐ。

 普段使ったことないような高級ギターアンプに、自分の分身である青のスナッパーを繋ぐ。繋ぐ作業なんてただプラグを挿すだけなのに、手が少し震えてしまった。

 

 ちょっとだけ音を出して、音の感覚を確認する。今日も問題なし、精一杯たえのギターは答えてくれそうだった。

 スタートは、自分のタイミングでいいということになっている。たえは、今弾くべき曲を胸に浮かべ、気分を高めていく。

 

 ーーたえの中で、カチッと音がした気がした。

 心の信号機が赤から青になる。止まったままではいられなく、走り出していく。

 

「それじゃあ、あの曲をーー。いくっす」

 

 それは、あの時起こった革命の曲。涙滴型のギターピックを、ティアドロップを自分のスナッパーに当てて、たえはありのままを解き放つ。

 

 イントロのギターソロの中、たえは思った。

 ーーやっぱり、ギターを弾くのは楽しい! 触ったことも無い高級アンプの音が気持ちよかった事もあり、緊張感なんて吹き飛んだたえだった。

 

 

 ギターが目立つこの曲ーー"ティアドロップス"を、たえは感じるがままに奏でていく。新しい何かが見つかりそうな、そんな場所を目指す為にも弾いてく。

 どこからか、我らがPoppin’Partyのリーダーの声が、聞こえてる気がする。本来なら聞こえるはずはないが、たえの耳にはしっかりと届いている。

 

 難しい顔したチュチュに見つめられる中、幻想のボーカルを確かに聴きながら。たえは音楽を奏でていく。

 

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