基本的にガール視点を主軸に進めるつもりですので、
オリ主タグではなくオリジナルキャラタグを使用しました。
……そのつもりが、当初ついておりませんでした(遠い目)
何度か投稿と途中保存のボタンを押し間違えてまして、うっかりタグに入れ忘れておりました。
穴があったら埋まりたい……
人生を変える出会いがある、と私は信じている。
事故で記憶を失って、両足も動かなかった私を絶望のどん底から救いだしてくれたのは、一人の少女との出会いだったように。
東郷美森、という女の子はどこにでもいる普通の女の子である。
……というのは流石に冗談ですからそんな目で見ないでください。我ながら普通の女の子と比べると少しズレている自覚はありますから。
「少し?」
ええ。ほんの少し前まで私は歩くことができなかったから、車椅子を使っていた。学校内では珍しいものを見る目で見られることも少なくなかったし、歩けるようになった今でもたまにふらつくことがあるからまだ普通とは言えない。
「確かにそうだけど、東郷さんだからすぐに普通に歩けるようになるよ」
それはそうかもしれないけど。でもまだ歩けなかった間に衰えた足の筋肉も回復しきったとは言えないのよ。
「身体的特徴に触れるのならその大きな物にも触れるべきだと思うんよ。勇者部一のビッグサイズだぜ~。どうしてそんなに大きくなるんだろうね?」
か、からかわないで。そうは言われても……胸に溢れる愛情の産物かしら?ぼた餅作りはいつも愛を込めてるから、その影響じゃないかな、とは。
そうそう、特技の和菓子作りも普通の女の子と比べると悲しいことだがズレていることかもしれない。
悲しいことに現代の一般的な女子中学生が和菓子作りをするという文化はあまりないものと見ていい。クラスメイトとの会話でそれを口にすると驚かれることがしばしばある。
故に私はこの状況を打破すべく、ここ讃州市……否。香川に、四国に、日本に、全国に。和菓子作りを広めることを検討している。
日本が誇る和菓子作りを通して国を愛する心を、日本を愛する心を──
「東郷さんー、ストップストップ。話ズレてるよ」
そんな!まだまだ、いえ、これからが本番だというのにどうして!?
「……わっしー、また、愛国って書いてあった回数数えられたいの?それが嫌なら短く簡潔に済ませよっか」
うぐぅっ。くっ、ここは涙を飲んで我慢するしか……
……私は今の日本には愛国精神が足りていない、と考えることがある。かつての日本のように国を愛する人が少しでも増えることを祈って、私は護国精神を、国防を広めようとしているのだ。
ただし、それはあまりうまく行っているとは言えない。小説を執筆して広めようとしたら作品内に愛国と書いた回数を数えられてネタにされたことが。
しかし誰かに笑われようとも、めげることなく私は──
「わっしー、また国防談義始めようとしてるよー」
くっ、またやってしまった……!
「あのー、ここは他の大好きなことの話を始めるのはどうかな?」
他に?となるとあの事でしょうけど……変わっていることかしら?
「わっしー。愛は人を変えるんだよ。そしてそれに気づく理性すら飲み込むほどに大きいんよ」
そうだろうか?確かに私は友奈ちゃんのことは好きだけど、誰かを好きになった人というのは皆このようなものでは?とりあえず勧められた通り、友奈ちゃんについて話を始めよう。
友奈ちゃん。結城友奈ちゃん。私と同じ中学二年生で、クラスも同じで家も隣。
足が動けなかった私とは逆に運動神経抜群で私たちが所属している部活動、勇者部のエースの一人と言ってもいい女の子。とても明るくて元気を形にしたような性格で、いざという時には頼りになって……そして、誰よりも強い心を持っている私の親友だ。
友奈ちゃんは初めて出会った頃から変わらない。自らの境遇に打ちのめされてふさぎ込みがちだった私の手を取って明るいところに連れ出してくれて──勇者部で行っていたとある活動がきっかけで私が暴走した時も、全力で止めてくれた。私はそんな友奈ちゃんのことが大好きなのだ。
私の全てを捧げても構わない、そう思えるほどに私は──
「あはは……もう、そんなに褒めないで東郷さん。褒められても私はマッサージくらいしかできないよ」
友奈ちゃんのマッサージなら喜んで!!
「うん、帰ったら一杯してあげるから楽しみにしててね!」
ふふふっ……今日は眠れないかもしれないわ……!
「……とまぁ、こんな感じだけど、役に立つかしらそのっち?」
「うんうん、バッチリだよー」
パソコンの前でキーボードを叩きながら一人の女の子がぐっ、と親指を立てる。ここは私たちが通っている讃州中学にある私たちの部活動、勇者部の部室だ。
今日は活動内容の関係で部室にいるのは私と友奈ちゃんともう一人、そのっちの三人だ。
そのっち、もとい乃木園子は私の親友……いえ、ズッ友というべきかしら。友奈ちゃんと同じくらいかけがえのない友達。彼女も私と同い年の中学二年生で、勇者部の部員だ。
そのっちは趣味で小説を書いていて、インターネットに投稿した小説はかなりの高評価を得ておりこの学校にもファンが少なからずいる。最近は自分が書いた小説を学校の図書館にも置いてもらっているそうで、今は新作の執筆途中なのだとか。
ただ、珍しくその作業が難航していて私たちに助けを求めてきた。曰く私をモデルにしたヒロインの内面描写に少し手間取ってるそうで、参考に自己紹介をしてほしいと頼まれて現在に至る。
「それでそのちゃんはどんな小説を書いてるの?」
「うーん……まだ頭の中にぼんやりとしか考えれてないけど、最初は切ないけど最後は幸せに終わる恋愛の話にしようかなーって」
「やっぱり恋愛ものなのね。相手は友奈ちゃんモデルなのかしら?」
「そういうのも書いてるけど、今回は特にモデルがない男の子だよー」
「……相手が友奈ちゃんじゃないのなら出版停止を命じようかしら」
「やぁーっ、ゆーゆ、わっしーが横暴だよー!」
「そのっち。自業自得って言葉知ってるかしら?」
「あはは、東郷さんは本当に私のことが好きだねー。私も大好きだよー」
「大変だ、今日の勇者部はツッコミ役がいない……!!」
どんな文章を書いているのか気になって画面を覗き込む私を必死に止めようとするそのっち。でも、私は友奈ちゃんとの至福の一時を勝手にメモして小説に使おうとしていることを許したわけじゃないのよ?
そういった意味を込めて笑うと友奈ちゃんに少し怯えられた。ごめんなさい、友奈ちゃん。
──東郷美森は、今日もいつもの一日を過ごしていた。
早起きして弁当を作りつつ親友を起こして、一緒に登校して授業を受けて、部活動の一環で友達の悩みを聞いて、それを解決したらいつも通り親友と一緒に家へ帰る。
そんないつもの日常を過ごしていて、それがいつまでも続くと思っていた。
「およ?勇者部に依頼のメールだよー」
だから、だろうか。事故が原因とは言え、忘れてしまった日々がある。
「そのちゃんみーせーてー。えーっと……初恋の女の子を探しています、だって!わぁ、ロマンチックな感じがするよ」
「うんうん。依頼の詳細は──っ!?」
私が忘れてしまった想いがある。それを清算する物語を、始めよう。
「どうしたのそのっち?急に止まっちゃったけれど」
硬直したそのっちの後ろから依頼のメールを確認する。初恋の女の子を探しています、とタイトルに書かれたそのメールの詳細には女の子と出会ったきっかけになるエピソードと、その女の子の名前が記されていた。その名前は私もよく知っていた。
──女の子の名前は、鷲尾須美さんです。
──僕が小学校を卒業する少し前に死んでしまった、という噂があり実際連絡は取れません。
──死んでいるかもしれない女の子の調査という変な依頼であることはわかっています。
──ですがどうしても諦められず、人助けで有名な讃州中学勇者部にこのメールを送りました。
鷲尾須美。それはとある事情で鷲尾家の養子になっていたころの東郷美森の名前。だけど、鷲尾須美だった頃の記憶は事故でほとんど失ってしまった。今でこそその記憶は少しずつ回復してきているが、完璧とは程遠い。故に、東郷美森にはわからない。
鷲尾須美に初恋した、という依頼人の名前を見ても。
何もわからなかった。ほのかに胸の奥が熱くなるだけだった。
――彼女が本当に死んでいたとしても構いません。
――ずっと、胸の奥でくすぶっている初恋に決着をつけられるのならそれでいいから。
僕が彼女と出会ったのは今から三年前になります。
当時の僕は小学生で、家がちょっとした名家だったこともあっていわゆる名門の小学校に通っていました。当然授業の難易度も高くて、勉強を教えてくれる教師も優秀だったとはいえ、頭の出来がそんなに良くない僕にとっては学校の授業は苦痛でした。
そんな僕にとって唯一の楽しみと言っていいのは学校の図書館。
小学校とはいえ、名門ということもあって本のラインナップがかなり凄くて、流石に漫画はないけれど市民図書館よりもずっと本があるそこは僕の居場所でした。
「──、迎えに来たわよー」
仕事の都合で両親が毎日学校に送り迎えに来てくれてたこともあって、授業が始まる前や放課後はいつも図書館で本を読んだり、宿題したりと……普通の小学生らしく過ごしていたのです、が。
ただ、そんな時間もも何度も続けばそのうち飽きてしまうわけで。卒業が近かった頃には本を読む量はかなり減っていて、ノートに落書きする時間になっていました。
教師の顔だったり、昼飯だったり、偶然見つけたスポーツカーだったりと。適当に取った本に掲載されていた写真の風景とか、面白そうなものは大体模写していた落書き少年だったのを覚えています。
雑食的に色々と書いていたある日、手に取った本に載っていた一枚のモノクロ写真を見て……きっと、一目ぼれしたんだろうなと思います。その写真に写っていたのは一機の飛行機。
色濃いボディと綺麗な翼に描かれた丸マーク。シンプルながらも洗練された雰囲気を感じるプロペラで飛ぶ飛行機。その飛行機の名前は零式艦上戦闘機。通称、ゼロ戦。
「か、かっこいい……!」
同級生の間ではいわゆる変身ヒーローやロボットアニメ、魔法少女とかそういうのは流行っていたけれど何かが違うな、と思っていたのです。しかし、この写真を見た瞬間ようやく気付きました。
これだ。こういう無骨なメカが僕は好きなんだ。
その日は鉛筆しかなくて描ける絵も白黒しかないことはわかっていたけれど、使わないノートのページを破ると夢中になって書き進めました。5分、10分、20分。時の流れを気にすることなく書き進めたそれが完成したのは両親が迎えに来るギリギリのタイミング。
「できた」
無機質なノートのマス目が彩る空を飛ぶモノクロの戦闘機。力具合を調節して羽や胴体を灰色で塗装したりと小学生なりに頑張った代物は正に宝物で、凄く満足したことを覚えています。
「家に帰ったら飾ろうかな……ふふっ」
満足げに頷いていると少しお腹が痛くなった。長い時間集中してたからトイレにも行ってなかったしそれかな。荷物を置きっぱなしにして一旦席を外して……戻ってきたら。
「……あれ?」
絵がなくなっていたのです。風に飛ばされた様子はなく、他に荷物が荒らされた様子もない。書いた絵だけが消えていた。呆然としていると、両親が迎えに来たのでそのまま帰ることになりました。
席を外していたのは長く考えても10分くらい。そんな短時間に絵はどこに行ったのだろう?
その真相は、同じタイミングで図書館で勉強していた鷲尾須美が僕の絵を盗んだことだった、と依頼主は書いていた。私はそのことを思い出せなかったけれど、やりかねないと考えていた。
護国精神を胸に抱く私はかつての日本、いわゆる大日本帝国時代に造られた兵器についても詳しくて戦艦や戦闘機の模型も作ったことがあるし、絵も描いたことがある。上手に描かれた零式艦上戦闘機を見た私が思わず持ち帰った可能性が0とは言い切れなかった。
メールによると依頼主は次の土日、つまり明日と明後日は讃州市に来るらしい。
依頼主に会うのか、と友奈ちゃんとそのっちに尋ねられたけれど、あの場の私は上手く答えることはできなかった。人を愛したことはある。愛されたことも……ある。
だけど、依頼主を忘れている私が会っていいのか。それは、傷つけるだけではないのか。
不安にむしばまれる私の心に……一人の女の子の笑顔が浮かんだ。屈託のない、溢れんばかりのまぶしい笑顔。友奈ちゃんの笑顔。私が初めてあなたに出会った時に見せてくれたあの笑顔。
そして、気づいた。人には人生を変える出会いがあるということに。
私が事故で記憶を失って、両足も動かなかった私を絶望のどん底にいた時、そこから救いだしてくれたのは、友奈ちゃんとの出会いだったように。
きっと、鷲尾須美に恋をしたあなたにとって私との出会いは人生を華やかに彩ってくれたのでしょう。別れが彩りをどうしようにもないほどに塗りつぶしてしまうほどに。
わかっている。記憶を失った私は知らないけれど、わからなければならない。
鷲尾須美があなたと出会った責任を、東郷美森は果たさなければならない。あなたを悲しませる答えしか出せないとしても、答えもなく迷い続けるよりはきっといい!
東郷美森は依頼主に会う覚悟を決めた。
Q:R-15タグいる?
A:ゆゆゆシリーズ1の胸部を持つヒロインなのにいらないとでも?