Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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09:男子二人とブロンド貴公子(ジェントル)・登場編

六月頭、日曜日。

一夏は昔からの友達の五反田弾の家に遊びに行っているので、

今日の僕は学校の寮で一人で居る。

 

「……ひまだー」

持っていた本もとっくに読み終えてるし、

一夏が遊びに行く事は弾の妹の蘭ちゃんに送っておいたし。

どうせ弾は教えないだろうし、リークさせてもらったよ。

身支度くらいはしてるだろうねぇ。

 

「とにかく、ご飯でも食べてきますか」

現在時刻、正午。

朝は一夏に便乗したけど、さすがにお昼も自炊は寂しいからね……

 

 

とりあえず食堂でに来ると、のほほんさんがご飯を食べてた。

のほほんさんの方もこっちに気がついたらしい。

 

「おお、さとりんじゃないか~。おはよ~」

「おはようって、もうお昼だよ?」

「そーだねー、あはは」

こんな感じで談笑するのがいつもの光景。

 

「今日は相川さんと谷本さん居ないんだね」

「うん、二人とも他の友達とお買い物。

 私は先生に呼ばれてたから行けなかったのだ~」

何で呼ばれたかは詮索しないようにしとこうっと。

 

「なるほどね。……あ、このベーコン美味しい」

「どれどれ~?」

どうやら僕の料理の味に興味を持ったらしい。

 

「ん、いる?はい、あーん」

丸めたベーコンをお箸で差し出すと、

エサを差し出された猫みたいにぱくっと食べるのほほんさん。

 

「確かに美味しいね。さとりんのメニュー選択は間違ってないよ~」

「お褒めに預かり光栄だよ、のほほんさん。

 にしても、一夏は友達の家に行ってるし暇だなぁ……」

そう呟くと、のほほんさんはきらりと目を光らせた、ような気がした。

 

「あ、さとりん暇なの~?だったら部屋で一緒に遊ぼうよ~」

「え?男子が行って大丈夫なの?」

僕が聞くと、のほほんさんは頷いて、

 

「だいじょぶだいじょぶ。こないだ掃除したとこだから」

と言ってきた。

 

「う、ん?……わかった。じゃあ、部屋に書置き残しとくね」

言われた僕はオーケーし、のほほんさんの部屋へ行くことになった。

 

 

「本当にいいの?ルームメイトの人とかにも悪いし……」

「だいじょーぶだよー、ルームメイトに確認は取ったから。

 じゃあ、なにしよっか。ボードゲームとかならあるよ?」

と言って出してきたのは、人生ゲームやらすごろくだった。

 

「……さすがにこれは二人でする遊びじゃないんじゃない?」

「あ、そっか~」

「そうそう、えっと……ん、コレは?」

僕が見つけたのは、何色もの丸が書かれたマットと、

両手両足のどれかと色が書かれたルーレット。

 

「あー、ツイスターゲームだよー」

「ツイスター!?」

なんでそんな物置いてるの!?

 

「丁度いいね、やってみようよさとりーん」

「え、でも」

「さとりんってば~~~~~~」

だめだ、これ一回はするまで許してもらえないパターンだ。

 

「……わかった、やろうか。でもちょっとだけだよ?」

「わ~い!じゃ、私からね。ルーレット回すよ~!」

 

 

「聡里~、書置き見てきた……何やってんだお前?」

「あ、一夏」

「やっほーおりむ~」

一夏は僕らを見た瞬間変な表情をしてた。

そりゃ男女二人でツイスターなんかやってたら、ねぇ。

あ、ちなみになんだかんだ言って、数時間ツイスターやってます。

だって勝ちたいじゃん! 負けまくってるし!

 

「ツイスターゲームだよ~。さとりんすっごく弱いけどね~。

 目下29戦28勝だよ~。おりむ~、ほめてほめて~」

「うーん、ぜんっぜん勝てないよ。のほほんさんは(間接が)柔らかいね」

と、僕が言った瞬間に、のほほんさんが真っ赤になってバランスを崩した。

 

「やった、これで30戦1勝1引き分けだよ、のほほんさん」

「も~ずるいよ、さとりんのえっちぃ」

「え!?いきなり何言ってるののほほんさん!?」

などと言う僕らを見て、一夏は苦笑いしてた。

 

「楽しそう?だな。あー、それはいい。

 ちょっと早いが夕食食べに行かないか? 女子ばっかだと辛くてな」

「え、もうそんな時間……うわぁ、もう六時。四時間近く遊んでたね」

「風船のセロテープはがし面白かったよね。さとりん強かったし~」

「心臓に悪いからやめて、ほんとにああいうの苦手なんだよ僕……」

のほほんさんはきゃーきゃーいいつつ楽しんでたけどね。

 

「ん、じゃ行こうか。のほほんさんも来る?」

「うん、私もいっしょ~」

 

 

のほほんさんと一緒に、僕らが食堂に来るとそこには鈴が居た。

 

「お、鈴」

「い、一夏!?アンタも夕食食べに来たの?」

いきなり一夏に会って戸惑っている鈴。青春してるよねぇ。

 

「ああ。俺と聡里とのほほんさんでな」

「やっほ、鈴。調子はどう?」

「やっほ~りんりん」

「りんりんはやめてよ!」

そのあだ名で昔何かあったのかな。一夏は知ってるみたいだけど……

となると、大方あのクラスメイトの悪ガキ共に茶化されたとみた。

アイツら、ねちっこかったからなぁ……いやな事思い出した。

 

で、僕らはとりあえず料理を受け取ってから四人がけのテーブルに着いた。

 

「そういえば一夏。姉さんに何か言った?

 こないだ姉さんが一夏の部屋の前で固まってたんだけど」

「ん?俺は何も言ってないぞ?

 この間『学年別個人トーナメント』で優勝したら買い物に付き合ってくれ』

 とは言われたが」

「なっ!?」

鈴は気付いたらしくて、固まってた。

 

「一夏……それ、『学年別トーナメントで優勝したら、付き合ってくれ!』

 って言われたでしょ」

「ああ。アイツよく主語を抜いて話すからな」

違う、そうじゃない一夏! 

抜けてる主語は『買い物に』じゃなくて『私と』だ!

姉さん……ドンマイ。

 

「おりむ~、男の子が女の子に付き合うってどういうことかわかってる?」

あ、のほほんさんの発言。

 

「ん?荷物持ちとかじゃないのか?」

「だめだね、おりむ~は。女の子が男の子に『付き合って』って言うのは、

 恋人になって欲しいってことだよ~?」

うわ、のほほんさんド直球で言うし……

 

「え……」

「つまりしののんはおりむーが好きなんだよ!」

そう言って、袖で隠れた手を一夏に突きつけるのほほんさん。

 

「え、でも俺なんかに箒は釣りあわないだろ。あんなキレイだし、俺は顔悪いし」

「「顔が悪いとはどの口が言うか!!」」

と、僕と鈴がハモる。

一夏は男の中でも少なくとも中の上は行ってるだろうが!

あと、さっきの『箒姉さんはキレイ』発言を鈴さんの前で言うか!?

 

「ほんと一夏ときたらキングオブ鈍感だな……もうちょっと考えようよ」

「え?え?何だ?確定事項!?」

それ以外にあるかってのに。

 

こんな感じに一夏に爆弾発言をのほほんさんが投げつけた後、

女子の歓声が響き僕らのところに数人の女子が来た。

 

「ねぇねぇ織斑くん篠ノ之くん、あの噂ってほんと……もが」

「アンタちょっと待ちなさい!女子の間だけって取り決めだったでしょ!?」

「いやでも本人だし……」

と言っている女子たち。何のことなんだろう?

 

「噂って何だ?」

「いやそのあの、人の噂も三百六十五日って言うよね!」

「何いってんのよミヨは!四十九日でしょ?」

どっちも間違ってるって。

 

「それを言うなら『人の噂も七十五日』だよ。それで、噂って言うのは?」

と僕が聞くと、なにやら妙な表情になった女子たちは超高速で撤退していった。

 

「……なんだったんだ、あれ?」

「(のほほんさん、女子の噂ってなにか知ってる?)」

あっけに取られてる一夏を他所に、僕はのほほんさんに尋ねる。

 

「(あれ、さとりんが持ち出したんじゃないの?

  今度の学年別トーナメントで優勝と準優勝した人が

  さとりんやおりむーと付き合えるんだって噂だよ?)」

なにそれきいてない。

 

「(僕らどっちもそんな事言ってないんだけど!?

  というか、どうしてそんな噂が!?)」

「(さぁ~。でも、しののんの告白を誰かが聞いてたんじゃないかな~)」

姉さん、まさか廊下で言ったのか。姉さんのことだから大声だっただろうな……

 

「はぁ、やれやれ。しょうがないな」

「一夏……いいかげん軽々しく約束するのやめなさいよ」

と、僕と鈴があきれ返り、その後は四方山話で夕食は終わった。

その翌日に大きなサプライズがあるなんて事は、誰も知らなかったから。

 

 

「やっぱりハヅキのがいいな、あのデザイン良いわよね!」

「え~、ハヅキのってデザインだけって評判悪いわよ?

 私なら性能でミューレイのスムーズモデルを選ぶわね」

「でもアレってモノが良い分高いじゃん」

 

翌日。身支度をしてから一夏をたたき起こして僕が教室に来ると、

女子たちが何か本のようなものを見つつ喋ってた。

 

「何読んでるのかな?」

「あ、聡里くん。これよ」

そう言って見せてきたのは、ISスーツのカタログだった。

 

「ああ、ISスーツか。確かに、これでいろいろ変わるからね。

 護身用としてもかなりの強度あるし。

 あ、でも。僕が聞いたところでは、ミューレイのは値段とのバランスが悪いらしいよ?

 オオシノあたりのスピードモデルが値段も手ごろで扱いやすいってさ」

僕が言うと、女子がビックリしていた。

 

「え?オオシノってどこのメーカー?」

「ああ、『大篠衣類産業』っていう、今じゃあんまりメジャーじゃない会社なんだけどね。

 オーダーメイドで本人にフィットする服を作ってくれるって評判なんだってさ。

 なんでも老舗の洋服屋が最近になってISスーツにも参入したらしくて、

 デザインなんかも本人好みにしてくれるし、

 一着の値段もさっき言ったミューレイの廉価版モデルくらいだって」

僕の説明を聞いて、女子たちはすばやくメモする。

あの会社のモデルは着心地もいいらしいし、肌にもやさしい、とかなんとか。

 

「いい事聞いちゃた! ありがとね、聡里くん!」

「ん、良いって」

「そういえば、聡里くんと織斑くんのスーツってどこのやつなの?」

「ええっと、どこのだったっけ……」

僕が考えていると、横から助け舟が。

 

「俺たちのスーツは特注品だろ、聡里。

 男性用スーツが無いから、どっかのラボが作ったって聞いてるぞ。

 たしか元のスーツはイングリッド社のストレートアームモデルだそうだ」

「なるほど。サンキュ、一夏。よく覚えてたね」

「俺も最近は勉強してるんだよ」

一夏はそういって胸を張る。

 

「じゃ、一夏。なんでISスーツが重要なのか言ってみて?」

「え?ええと……」

一夏は流石にそこまで細かくは覚えれなかったらしい。

で、ここで一夏にまた助け舟が。

 

「ISスーツは肌表面の微妙な電位差を検知することによって

 操縦者の動きをダイレクトに各部位へ伝達、ISはそこで必要な動きを行います。

 また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾くらいなら

 完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんからあしからず」

そう言いつつ登場したのは、うちのクラスの副担任・山田真耶先生。

 

「山ちゃんくわしい!」

「一応先生ですから……って、山ちゃん?」

「山ぴー見直した!」

「今日がみなさんのスーツ申し込み開始日ですからちゃんと予習をして……

 って、や、山ぴー?」

と、こんな具合に山田先生には大量のあだ名がついてる。

もう十個くらいはあるかな。

 

でも、『ヤマヤ』ってあだ名にだけ過剰反応するんだよね。何かあったのかな。

と、そんな会話を繰り広げていると我らがクラス担任・織斑千冬先生の登場。

 

「諸君、おはよう」

「「「お、おはようございます!!!」」」

のんびりとしていた教室の空気が一瞬にして、

一夏曰く『軍隊式敬礼のような雰囲気』になり全員が席に着いた。

……ん?織斑先生のスーツがちょっと変わってる?ああ、夏用に変えたのか。

 

「今日から本格的な実戦訓練を開始する。

 訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように」

その言葉に教室の空気が微妙に変わった。

ようやくISが使えるのだから、期待も大きいんだろう。

 

「各人のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないようにな。

 忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練をしてもらう。

 それも忘れた者は……まあ下着でかまわんだろう」

「「いや、かまうだろう」」

 

僕と一夏、二人で小声でツッコミ。僕ら以外にも内心でツッコんだ女子は多いだろう。

ちなみにその後、僕にゲンコツ、一夏に出席簿が落ちたのはまた別の話。

というか、学校指定の水着ってスク水でしたよね?

なんて寒そうな格好で訓練させる気なんだ……

 

「では、山田先生、ホームルームを始めるぞ」

「は、はいっ」

さっきの発言はさらりと流し、山田先生に『ぽんっ』っと発言をパスする織斑先生。

めがねを慌ててかけなおす姿が小動物のようで愛らしいのかなんなのか。

 

「え、ええと、ですね。今日もこのクラスに転校生が来ます!しかも二人ですよ!!」

「……え?」

「「「ええええええええええええええっ!?」」」

と、クラス内、が騒然としてしまう。

それはそうだろう。女子の情報網をくぐって、一気に二人の転校生が

ウチのクラスに来るんだから。でも普通分散させるでしょ。

クラス間での対立がまた強くなりそうだな……

そんなことを考えていると、教室のドアが開きその二人が入ってきた。

 

「失礼します」

「……」

その二人を見て、クラス内のざわめきがぴたりと止まる。

それはそうだろう、だって……

 

そのうちの一人が『男子だった』から。

 

続く。

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