Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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13:オーシャンズ・ティーンズ・前編

おはようございます、聡里です。

今日はシャルがあらためて女子デビューした翌朝。場所は僕とシャルの部屋。

で、もはやお約束でシャルと同じベッドで寝たのはいいんだけども。

 

「え~っと、なんだこの状況」

OK、今の状況を箇条書きにしてみよう。

 

1.僕の右にはシャルがいる。

これはまあいい。

 

2.僕の左にはラウラがいる。

……言いたい事はあるけど、まあ良いとしよう。

 

3.ラウラは全裸(着けているのは待機状態のISのみ)である。

って、ちょ。

 

「ラウラ、何て格好で居るんだよ!? っていうかなんでここに居るの!?」

勿論ラウラは別室です。ルームメイトは知らないけど。

 

「む……起きたか、父上」

と、むっくり起き上がるラウラ。

うわ、見える、見えるって!

 

「ん~、聡里。そんなところ、ダメだよぉ……」

ってこの子も何て夢みてんの!

 

「シャル! 夢で僕に何されてんのか知らないけど起きてこの子止めて!!」

僕の心からの叫びでようやくシャルは起きだし、ぼ~っとこっちを見る。

で、数秒フリーズの後こっちを無表情に見てくる。

……なんか眼が赤くなってるんですが。

 

「さとり?」

「は、はいっ!!」

あれ、なんで僕こんなうろたえてんの、っていうか何でシャルこんな怖いの。

 

「なんでラウラがはだかでさとりのとなりにいるの?」

台詞に漢字(ってか感情)がない! 怖い!!

 

「起きたか、母上。おはよう」

ラウラはシャルにそう話しかける。

 

「母上って……ボク?」

「うむ。 父上の恋人なのだろう?」

ちょ、まっ!?

 

「「いや、まだ付き合ってないからね!?」」

「という事は、付き合う予定があるのだな」

「「あっ」」

僕とシャルは顔を見合わせて真っ赤になる。

そんな僕らを気にせず、ラウラは話し出す。

 

「娘は父と母のそばで寝るらしいからな。一緒に寝ていた」

一緒にって、なんで服着てないの。

 

「寝る時に着る服が無い。故に寝る時はいつも裸だが?」

……ラウラらしいっていえばラウラらしいのかなぁ。

 

「シャル、今のでわかった?」

「……うん」

「よし、買い物に行こう、そうしよう」

そして僕とシャル、二人して頭を抑え小さく溜息。

ラウラは首をかしげていた。頭の上に『?』が出てる感じで。

 

「それでラウラ、その親子は一緒に寝るって教えたのは誰?」

「ああ、うちの部隊の副隊長だ。なかなか日本に詳しい奴でな。

 いろいろと参考にさせてもらっている」

日本に……っていうか、この発想だと漫画とかか。

って、ちょっとまて。副隊長で日本のオタク文化に詳しいってまさか。

 

「その副隊長、まさかハルフォーフ中尉じゃないよね」

僕の言葉で、ラウラは驚いたようだった。

 

「父上はクラリッサを知っているのか? その通りだ。

 だが今は昇進して、大尉になっている」

あ゛~……。あの人か。

 

「僕が『ドンナー・オージェ』に適応するための訓練をしてくれたのが彼女だったんだ。

 昔から少女マンガなんかの影響を受けてると思ったら……やれやれ」

僕は携帯を取り出し、久方振りにある番号に掛ける。

 

 

同刻・ドイツ軍某施設。

『シュヴァルツェア・ハーゼ(通称・黒ウサギ隊)』の司令室にて。

 

「そこ! 現在で一分弱の遅れだ! 戦場なら死んでいるぞ!」

檄を飛ばす女性司令官こそ、黒ウサギ隊副指令であり、頼れるお姉様こと、

クラリッサ・ハルフォーフ大尉。

彼女が厳しく隊員に指示を出していると、彼女の携帯に着信が入った。

(ちなみに着メロはdoaの『英雄』のインスト)

 

「おや、この曲は。失礼」

彼女が電話を取ると、その相手に話しかける。

 

「久しぶりだな、聡里。あれから『眼』の調子はどうだ?」

『そちらは問題ないです、クラリッサ。

 それはそれとして、そちらの隊長のことですが』

その内容になってから、クラリッサは周りの隊員に目配せをし、

電話をその場の全員に聞こえるよう設定し、

筆談で内容を伝える。

 

[隊長が父と仰ぐ人物より接触あり]

 

かかれた文面を見て、息を呑む十代(一部二十代)女子たち。

特殊部隊だなんだといって、結局は女子の集まりである。

ちなみに部隊内にあったラウラへのわだかまりは、

ラウラが「娘は、父にどう接すればいいのだ?」という、

とんでもない質問をした時から氷解した。

 

 

『クラリッサさん、貴女ちょっと何て知識を教えてんですか!

 おかげで朝起きたらラウラにベッドに潜りこまれてたんですよ!?』

聡里の絶叫が、司令室内に響き渡る。

至近距離でその声を聞いたクラリッサは、耳を押さえていた。

で、隊員の数名は聡里の発言に顔を見合わせてくすくす笑ったり、

昔からは考えもつかない隊長の行動に呆然としていたりした。

 

「ま、まあ娘のする行動としてはまちがってはいないだろう?」

『間違ってないけど間違ってる!

 言うなれば風呂上りでタオル一枚の幼なじみを目撃するような暴挙だ!!

 そんな少女マンガみたいなこと今の日本で……あ、一夏ならありうるか』

聡里は名前通り察しがいい(悟り)。

 

「そうだろう! それで、隊長の様子はどうだ? 織斑教官とはお話出来ていたか?」

『理解してないし……もういいか。

 ラウラは、一夏と和解したみたいです。千冬さんとの関係も良好。

 まあ、ちょっと暴走するきらいがあるけど。

 あ、そうだ。ラウラの好きなものって知ってますか?』

「え?」

『今度、僕とシャル、ラウラの三人で服とかの買い物に行くので、

 気に入ってるものとかあれば。ささいなものでも』

 

聡里の台詞を聞き、一斉にガッツポーズをする黒ウサギ隊。

それでいいのか、ドイツ精鋭部隊。

 

「ああ、隊長の好きなものか。隊長はココアが好きらしいぞ。

 それと、隊長は私服を持っていないので、それを伝えておく」

『それはもう痛感しましたよ、早いトコ買い物に行かないとなぁ。

 そろそろ臨海学校があるから、水着と一緒に買いに行きます』

臨海学校と聞き、色めきたつ黒ウサギ部隊。

 

「そうか、そろそろ臨海学校か! そして水着となれば……ふふふ」

クラリッサ暴走、そして聡里を放置して乙女たちは井戸端会議を始めた。

 

 

「……だーめだこりゃ。あっちも乙女だな~」

僕は諦めて通話を終了させる。

 

「どうした、父上?」

「いや、クラリッサと話してて疲れただけ……

 それはそれとして、『父上』ってちょっと恥ずかしいんだけど、やめてくれないかな」

その台詞に、シャルもうなずく。

 

「うん、ボクもちょっと『母上』って言われるのは恥ずかしいかな」

「成程、では『お父さん』と『お母さん』でどうだ?」

「「ううっ!?」」

 

ラウラがそんな事を言うなんて!

ちょっと小首をかしげて言うのがまたなんか可愛い!

というか、子ウサギを見てる気分!!

 

「「……父上(母上)でお願い」」

なんだろう、この愛娘を見てる感覚。

ほんと素直だねこの子。

 

 

その後ラウラにお説教込みでいろいろ教え込み、

朝食をかっ込んで僕らは教室へ急ごうとする。

しかし時間は非情で、このまま校舎へ回り込んでいたら遅刻する時間だった。

 

「しゃーない、シャル、ラウラ、こっち来て!」

と呼び、近づいて来た二人を両脇に抱える。

 

「アーイ、キャーン、フラーイッ!」

「ええええええっ!?」

「おお、さすがは父上」

スリーステップで向かい側の校舎の渡り廊下へ飛び移り、

ギリギリで教室に滑り込んだ。

 

「せ、セーッフ……」

「聡里、ISも使わずにあんな事ができるなんて。

 しかもボクら二人を抱えてって、すごいね……」

「我がドイツ軍で鍛えられた兵士でも、あそこまで出来る兵はそうはいない。

 流石だな、父上」

と、二人から褒めてもらったけど、こっちは息を整えるだけで精一杯だった。

 

「聡里、校則を破るのを良しとしないその精神は評価しよう」

うわ、織斑先生! 出席簿構えてる!!

 

「それで死んだり怪我をされたら面倒だろうが、阿呆!」

「でぃすぬふっ!?」

変な悲鳴が出てしまった。

 

「と言うわけで、無茶をした処罰に今日の放課後、教室を清掃しろ。

 まあ、自主的になら、誰かが手伝ってもいいぞ」

とまあそんなこんなでドタバタがあったものの、週末の授業は過ぎてゆく。

 

 

そして放課後。聡里が教室の清掃を始めたとき、シャルが到着した。

 

「聡里、手伝いに来たよ」

「ありがとう、シャル。じゃあ、机運んでおいてくれるかな。

 その間に僕は窓を磨いとくよ」

聡里が磨いた窓は完全に透き通り、業者が清掃したような状態になっていた。

 

「うわ、すごい綺麗にするんだね」

「うん、束姉さんの部屋を掃除してたから馴れた。

 あの人の部屋、いっつも物凄い状態になってるから」

ネジやスパナが落ちてたり、金属のけずりカスが部屋中に散布されてたりする。

 

「大変なんだね、聡里も……うわっ、この机重い!」

それは岸里さんの『フルアーマー机』だった。

 

「それは僕が運ぶよ。だからとりあえず、シャルはあっちの列から運んでくれる?」

 

このような感じでつつがなく掃除は進み、

掃除が終わったころには業者がしたような状態になっていた。

(床はワックスでもかけたかのようにツルツルのピカピカである)

 

「よし、こんなもんかな。

 それじゃ、シャル。遅くまでつき合わせて悪かったね。 帰ろうか」

「うん、聡里。ってきゃあっ!」

「おっとと、床が! シャル!」

シャルは掃除したばかりの床ですべって転びかけ、

それを聡里が抱きとめるも彼も足を滑らせ、

二人してもつれ合って転んでしまう。

 

「いてて、シャル、どこか打ったりしてない?」

「うん、ボクは大丈夫。ありがとう、聡里。 それより、その……どいて?」

僕は倒れた時に、シャルの頭が地面に当たらないように支えた状態で、

シャルのうえに覆いかぶさるようにこけていた。

 

「ご、ゴメン!」

「いいよ。じゃあ、部屋戻ろう!」

真っ赤になった二人は、どちらからともなく手を繋いで自室に帰る。

そしてそのままシャワーを浴び(さすがにこれは別々)、眠りに着いた。

 

 

「さて、今日は休みなわけですが、シャル」

「そうだね。手のかかる娘のために、買い物に行こうか」

そう言って苦笑を交わす僕とシャル。

その視線の先には、またラウラがいた。

 

「ほら、ラウラ。早く服来ておいで。今日はお出かけだよ。

 ラウラの服とか、全員の水着とか買っておかなきゃ」

僕が言うと、ねぼけていたラウラはしゃっきりと眼を覚まし、

瞬間服を掴み着替え始めた。

 

「終わったぞ」

「「はやっ!?」」

着替え始めてから終わるまで、その間十数秒。

僕はまだズボンを履き替えたところ。

まあ、早いのはいいことなんだけど。

 

「ラウラ、その服、何?」

「母上、この服は部隊の制服だ。

 本来式典などの公式な活動に着ていくものだが、

 私は学園の制服以外にはこれしか持っていないからな」

彼女は言って胸を張る。

いや、かっこいいんだけどさ。

 

「……ラウラ、学園の制服でいいよ。

 それ着てたら、今度はドイツの方で問題になりそうだ」

「む、それもそうだな。では、着替えておく」

そしてまた高速で着替え、僕らは全員準備完了。

そのまま三人で外出許可を取り、街へ出かけた。

 

 

「ふんふんふんふんふ~ふふん♪」

シャルは最近アイドルグループが歌って有名になった、

『SUPER∞STREAM』て曲を鼻歌で歌ってる。

 

「とりあえずラウラのパジャマにジャージを買ったし、

 あとは水着か。 ……ってあれ?あの二人は」

僕が見つけたのは、セシリアと鈴だった。

そして鈴は右腕にISアーマーを展開して物陰から飛び出そうとした。

で、僕は彼女を止めるために数回咳払い、そして声を張る。

 

「『そこの小娘共、許可されていないISの使用は、

 学園内ですら禁止されているのを忘れたか……?』」

と、僕は千冬さんの声を真似して二人に言う。

ちなみにラウラは「教官!?」ときょろきょろしていた。

シャルは一度やって見せたから笑っていたけど。

 

 

「「お、織斑先生!?」」

と勢い良く振り返った二人に、僕は笑いかけ、また千冬さんの声で言って見せる。

 

「『どうした小娘共。言われて気になる心当たりでもあったか?』」

それでしばらく混乱、そして気付いた二人はくたっとなった。

 

「あ、アンタねぇ……」

「心臓に悪いですわ……」

「あはは、ゴメンごめん。でも、そんな風にISを無断で使用したことがバレたら、

 リアルに千冬さんにお説教喰らうハメになるけど?」

僕の台詞に、二人は大人しく展開を解除する。

 

「で、二人は何をしてたのかな?」

シャルの質問に、鈴は道を指差す。

そこでは、一夏が箒姉さんと話しこんでいた。

 

「はっはぁ。箒姉さんがやけに楽しそうだと思ったら、そういうわけか。

 まあ、ピーピングトムは程ほどにね。それじゃ、僕らは買い物に行って来るから。

 ラウラ、しばらく遊んでていいよ。僕らはちょっとお店を見てくるから」

「わかった。では、私は自分の水着を買いに行こう。

 クラリッサがどのようなものがいいか教えてくれるそうだからな」

ラウラは言って雑踏の中へ踏み込んでいった。

クラリッサのアドバイスってあたり、微妙に不安だな……。

 

「さて、と。ラウラの番号は知ってるし、迷子になっても大丈夫だろう。

 それじゃ、ここからはデートとしゃれ込もうか、シャル?」

「さ、聡里……///」

そういって僕が伸ばした腕に抱きついてくるシャル。

はたから見りゃバカップルに見えるかな。

 

「うーん、それじゃあ……とりあえず水着でも見に行こうか。

 シャルの水着姿、楽しみにしてるからね」

「えっ!? あ、うん! それじゃ行こうよ聡里!」

「オッケー、それじゃ、お店はシャルに任せようかな」

そうやって、僕とシャルは駅前のショッピングモールへ行く事にした。

 

 

「ここ……みたいだね、水着売り場」

僕はシャルを連れて、ショッピングモールの水着売り場に来た。

女尊男卑の風潮のせいか、男性のが種類が相当少ないんだけどね。

 

「さて、と。それじゃ、それぞれ水着選んでこようか。

 シャルの水着姿、楽しみにしてるね」

そう言って、自分の水着を選びに言った。

後ろではシャルが真っ赤になっていた。うーん、やっぱりかわいい。

 

で、その後僕がスウェットスーツタイプの水着を選び、

シャルとの待ち合わせ場所、お店の入り口まで来た時には、もうシャルが居た。

 

「あれ、シャル。もう決めたの?」

「あ、ううん。聡里に一緒に選んでもらおうと思って」

「それはまた、嬉しいね。それじゃ手伝わせてもらうよ」

そうして連れ立って女性の水着売り場へ来た時、僕は女性に声を掛けられた。

 

「ちょっと、そこのあなた」

「え? 僕ですか?」

「そうよ。そこの水着、片付けておいて」

と言い、水着の山を指差してくる。

この女尊男卑の社会で、こんな風に男性にいきなり命令してくる人もいる。

 

「いきなり見ず知らずの人間にそういう事言うのは、どうかと」

「何? あなた男のクセに女の私に逆らうの?」

うわ、腹立つなぁ。

 

「ちょっと、やめなさいよ」

「そうよ、相手は男って言ったって同じ人間なんだし」

その女性の取り巻きも、止めるような事を言っているけどにやにやしていて、

本当は止める気がないらしい。

 

「あの、その人はボク、じゃなかった私の連れで……」

シャルが止めようとするけど、僕は止める。

 

「聡里?」

「申し訳ありません、お嬢さん方。僕はいきなり見ず知らずの人間に命令されるのは、

 好きではないので拒否させていただきます」

僕があえて丁寧語で拒否すると、どうやら神経を逆なでしてしまったらしかった。

 

「ふう、そういうこと言うの。

 どうやら自分の立場が『何? あなた男のクセに、女の私に逆らうの?』え?」

 

女性は驚いている、そりゃ、いきなり自分が言った事が再生されれば誰でも驚く。

 

「と、言うわけであなたとの会話はすべて録音しています。

 じゃあ、警備員を呼びに行きましょうか、お嬢さん方?

 僕、篠ノ之聡里が一緒に行って差し上げますが」

そう言って不敵に笑ってやると、彼女達は大いに驚いたようだった。

 

「あんた、いつの間に……」

「っていうかちょっとまって、篠ノ之ってあの篠ノ之!?」

「それに篠ノ之聡里って確か、世界でたった二人の男性IS操縦者……!」

それに気付いた姦し娘たちは、そそくさとどこかへ行った。

 

「ゴメンね、シャル。不愉快な物を見せちゃったな。それじゃ、水着選んで来ようか」

「うん。でも聡里ってすごいね。あの一瞬で録音してるなんて」

「ふふっ、録音なんてしてないよ」

僕が言うと、シャルは驚いていた。ま、当然か。

 

「え、じゃあさっきのあの声って……」

「シャルにはもう教えてるでしょ。

 『あなた、私の特技を覚えてる? それを使ったのよ』」

「あ~っ、声まね!」

そう、実は携帯で録音した声を流したと見せかけて、

僕が声真似をしていただけだったりする。

 

「そ。これまで何回かこれで乗り切ったからね。

 ……あ、シャル。この水着なんかどう? リヴァイブと同じオレンジで可愛いよ」

僕が差し出した水着を見て、シャルは顔を輝かせる。

 

「本当だ、かわいい! ありがとう、聡里!」

「どういたしまして、シャルロット。

 それじゃ、次のお店行こうか。

 うちの『可愛い娘』にはもうちょっと待ってもらうとして、

 ちょっとシャルに見せたいものがあってさ。ほら、おいで」

「そうだね。いこっ♪」

 

そして、僕ら二人はまた腕を組み、ラウラと別れた駅前へ移動した。

 

 

「ふむ、水着とはここまで種類があったのだな」

私は駅前を回り終え、聡里たちと同じ水着売り場へと来ていた。

 

「まあ、私は学校規定の水着があれば問題は無いか……ん、あれは、父上と母上?」

物陰から父上と母上を発見。

二人はなにやら話しこんでいて、楽しそうだった。

 

「ふむ、父上と母上が仲睦まじいのはよい事だな」

などと考えていた私の耳に、父上の言葉が飛び込んできた。

 

「……うちの『可愛い娘』にはもうちょっと待ってもらうとして」

「なっ!?」

今、父上は何と言った?

その後、私はクラリッサにプライベート・チャネルを飛ばす。

 

『……受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です』

「わ、私だ……」

『隊長。何か問題が発生しましたか?』

「あ、ああ。とても重大な問題が発生している。

 その、だな……私は『可愛い娘』らしいぞ」

『はい?』

それを聞いたクラリッサは声が半オクターブほど上がり、

口調も事務的なそれから少々間の抜けたものになっていた。

 

「いや、父上と母上がそう言っていてだな……」

『ああ、成程。

 この間電話を掛けてきた聡里と、その恋人予定のシャルロット嬢ですね』

「う、うむ。クラリッサ、こういう場合は、どうすればいい」

私は軽くパニックを起こしつつ聞く。

 

『そうですね、まずは状況確認を。直接言われたのですか?』

「い、いや。おそらくあの二人は私が聞いているとは思っていなかっただろう」

『それは……最高ですね』

そ、そうなのか……!

 

『はい。本人が居ないところで言われる褒め言葉に、嘘はありません』

「そうか……そうなのか! ふふ……!」

『はい。では、もっと可愛い隊長の姿を聡里に見せ付けてやっては如何でしょう?

 貴女を聡里とシャルロット嬢にもっと見せるためにも!』

クラリッサの勢いが凄い。気圧されてしまうな。

 

『隊長、そろそろ臨海学校でしたね。水着は一体何を着るおつもりなのですか』

「学校指定の物を着る予定だが」

『それではいけません!』

私の発言をクラリッサが遮る。

 

『たしか学園指定の水着は旧型スクール水着というやつでしたね。

 ですが、それでは幼い印象しか生みません!

 隊長の可愛さを知らしめるための案は、すでに考えてあります!』

クラリッサは意気込み、私も彼女の助言に従い購入することにした。

これで、父上や母上に私のことを認めてもらえるのか……!

 

 

その後しばらくして三人は合流し、寮に戻る。

そして時は過ぎ、聡里たちは臨海学校へ向かうバスに乗り込んだ。

 

続く。

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