Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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16:銀の福音、白い雪・後編

僕ら二人が一夏を連れ、帰還した後。

姉さんは、旅館の裏でただ立ち尽くしていた。

 

「姉さん」

「聡里か。私はもう、ISには乗らない。

 そもそも、私は力を持つ資格は、もう……」

 

「なーに言っちゃってんのよ、アンタは」

「鳳……何の用だ。こんな私に」

姉さん、大分落ち込んでるな。

 

「あーあーあー、わっかりやすいわね!」

鈴は言い、姉さんの胸ぐらを掴み睨みつけ、怒鳴る。

 

「それで、私は反省してますってポーズ? ふざっけんじゃないわよ!

「だが! 私は、もう、ISに乗る資格は……」

「姉さん、それは違うよ」

僕も、言いたいことは言わせてもらおう。

 

「姉さん、一夏も力を持ってるけど、暴走しなかった。 なんでか判る?」

「それは、あいつが強いから……」

姉さんの言葉を、首を左右に振って否定。

 

「違う。一夏は、姉さんたちを護る為に力を使ってるから。

 一夏は『皆を護る為に』剣を振るってる。

 ……姉さん。姉さんは一夏のために、剣を振るえば良いんじゃない?

 力に目標を与えてやれば、正しい方向に振るえるから。

 剣道だって、そうなんでしょ?一夏に勝ちたくて鍛えたって言ってたじゃない。

 それを今、やってみればいいんだよ。ね、姉さん」

それだけ言って、僕は姉さんに背を向ける。

 

「聡里、何処へ行く?」

「みんなの手伝い。といっても、いらないかもしれないけど」

僕らは、反撃の準備をしているんだ。

もし姉さんが来なくても、僕らだけでも行く。

その覚悟でね。

 

「だが、織斑先生には待機していろと言われただろう!?」

「少なくとも、僕は命令されて、従う義務は薄いからね」

 

そこにラウラがやってきて、告げる。

 

「父上、福音の位置は特定できたぞ。

 ここから三十キロ離れた洋上で停止している。

 衛星の目視での確認だ」

「さすが、シュヴァルツェア・ハーゼの『お姉様』だね。

 鈴! パッケージのインストールは?」

僕の言葉に、サムズアップで返す鈴。

 

「勿論、終わってるわよ! あとはシャルロットとセシリアだけ」

「それなら、終わっています」

丁度、その二人も集合。

 

「たった今、完了しましたわ。

 超高感度ハイパーセンサーの調整も終了しております」

「ボクの方も大丈夫。ガーデン・カーテンの準備はできたよ。

 聡里の調整のおかげでね。いつでもいける」

そして、全員が箒姉さんに向き直り、言う。

 

「あとは、姉さん次第。 ……どうする?」

「私、は。 ……やる」

姉さんの瞳には、消えていた決意の火が灯っていた。

 

「戦い、勝つ! 今度こそ負けはしない!」

 

その言葉に全員の意思はまとまり、玄関に集合する。

 

◇

 

「……よし、紅椿の調整は終了。これでエネルギーは持つはず。

 それじゃあ、皆、こっちからの指揮系統の受け入れ準備を……」

「貴様ら、何をしている」

僕の言葉を遮り現れたのは、鬼教官こと、織斑先生だった。

 

「……織斑先生」

「貴様らは全員待機と言った筈だが?」

鬼の形相ってこのことなんだろうか……。だけど。

 

「織斑先生、僕らはまだ、作戦終了はしていません。

 あくまでも、一時撤退というだけで。

 故に、作戦の再開、という事です。

 今回は少なくとも目標が損傷しており、速度も出せない状態。

 勝算はあると判断しました。

 そして、僕に委譲された戦闘行動時の指揮権はお返ししていません」

僕が並べたかなり強引な理屈に、織斑先生はにやりと笑う。

 

「まだまだだな、小僧。行かせるとでも思ったか?」

織斑先生はISの近接専用ブレードを抜き放ち、僕へ向けかまえる。

 

「やはり、そうなりますよね。でも、姉さん達だけは行かせる!」

僕の叫びと同時に宵闇が展開され、バヨネット『秘刀(ひめがたな)』を展開。

先生に向き合う。

 

「……フ、本気にしたか?」

「え?」

織斑先生が、剣を降ろした。

 

「待て、私からの命令は、これだ。総員、これより福音の再度攻撃に入る!

 今回の目標は、操縦者の救出、および福音の撃破だ。

 ……貴様らの覚悟、見せてみろ!」

「「「はいっ!!」」」

 

その激と共に、僕ら専用機持ちは大空へと飛び出した。

 

◇

 

「……」

洋上で、ひざを抱きまるで胎児のごとく浮かんでいる『銀の福音』。

だが、ふと『彼女』は空の一角を見上げ、緊急回避。

飛来した砲弾を回避する。

 

◇

 

「くっ、外したか!」

ラウラの初弾は、やはり外される。

 

「ラウラ、鈴! レールカノンと拡散衝撃砲で牽制!

 セシリアはパッケージ換装して、特殊兵器に備えて!」

「「「了解(ですわ)!」」」

三人は言い、各々の行動に入る。

 

「当たれ!」

「簡単に回避させないわよ!」

ラウラが直撃コースで、鈴が拡散衝撃砲で逃げ道を塞ぎ砲撃。

セシリアは防御のためパッケージを量子化し、格納を始める。

だが、その時。

 

[La...♪]

 

マシンボイスの歌声が響き渡り、特殊兵器『銀の鐘(シルバー・ベル)』が起動。

パッケージ換装中のセシリアを攻撃する!

 

「きゃあっ!」

「シャル!」

「オッケー、聡里!」

そこに、防御専用パッケージ『ガーデン・カーテン』を装備したシャルが飛来。

セシリアとエネルギー弾の間に割り込み、受け止める。

 

「こっちは大丈夫! 聡里! 篠ノ之さん! 二人で決めて!」

「二人の大火力で、落としてしまえ!」

シャルとラウラの声を受け、僕はミカドを展開解除。

そして、アマテラスとスサノオを展開し、二本の刀、

クサナギとムラクモを構え、福音の頭上へ。

 

「姉さん!」

「判っている!」

箒姉さんは、福音の真下へ。

 

そして。

 

「「堕ちろぉっ!!」」

僕ら二人の四本の太刀筋が重なり、福音の二つの羽根を切り落とす。

そのまま福音は海の中へと没していった。

 

◇

 

「やった、落とせたよ聡里!」

「シャル、まだ終わってない! 福音の操縦者を救助しないと……!?」

そう言いかけたとき、海中からまばゆい光がほとばしる。

直後海の水が蒸発し小規模な水蒸気爆発が発生、僕らは吹き飛ばされる。

 

「これは……第二形態移行(セカンド・シフト)!?

 マズい、総員退避! コイツにセカンドシフトされたら、勝てない!!」

そう叫ぶがすでに遅く、瞬時加速で接近され鈴が捕まってしまう。

 

「鈴っ!」

「くぁ……」

鈴は気を失い、そのまま海に投げ捨てられる。

 

「よくも鳳さんを!」

「待て母上、無茶だ!」

「シャル、待って! 今は……ッ?!」

シャルが突進し、ラウラが止めようとするも振り切られる。

 

そして、そのシャルを砲撃しようと福音は『エネルギーの翼』を展開。

一斉にエネルギー弾がシャルとラウラに降り注ぐ!

 

「さ・せ・る・かぁぁぁぁぁぁっ!!」

「「聡里(父上)!!」」

僕は先ほどのシャルのように、エネルギー弾と二人の間に割り込む。

そして、僕は固有武装のシールド『明鏡(めいきょう)』を十数枚展開し、

多層でエネルギーシールドを発振させ、エネルギー弾を受け止める。

が、数発抜かれてしまい、その全てを僕が受け止めた。

 

「聡里っ!」

「あはは、やっぱ僕って、不可能を可能にする、なんて、ね……」

何発か頭や腹に当たってしまっていて、力が抜ける。

そのまま海に落ちそうになる僕をシャルとラウラが支え、箒姉さんにかばわれる。

 

「デュノア、ボーデヴィッヒ。聡里を頼むぞ! 私が決める!」

「ねえ、さん。無茶だ」

「無茶だとしても、せめて一矢は報いる……!」

そういい、二本の刀を構え斬りかかるも、双方の刀は両腕に止められる。

そして、福音の翼が輝きを増し、姉さんを砲撃する……ハズだった。

 

しかし、それは遠距離から飛んできた砲撃により阻止される。

 

「荷電粒子砲……!? こんな装備を持ったIS、どこに……」

「姉さん、アレ、見て」

僕がどうにか指差した先には、姿を新たにした純白のISが。

それは……

 

「「「一夏!!」」」

 

そう、そこに居たのは、白式第二形態・雪羅。

そしてそれを纏った、一夏だった。

 

一夏は砲撃を行った後、すぐに紅椿に近づき姉さんに話しかける。

 

「待たせたな、箒。それと、心配かけた。だが、俺はもう大丈夫だ。

 ……それと、これな」

「これは……リボン?」

「ああ。 こないだお前と一緒に買い物に行った時、欲しそうにしてたからな。

 こっそり買っておいたんだ。誕生日おめでとう、箒」

一夏はそう言って、リボンを姉さんに渡す。

姉さんは、それを顔を赤らめて受け取り、そして一夏は姉さんから離れる。

 

「それじゃ、決着つけてくるぜ。 まだ、終わってないからな」

そういう一夏の視線の先には、ふらつきながらも動き続ける福音。

 

「再戦と行くか!」

 

◇

 

一夏が叫ぶと同時に、福音はエネルギー弾を一夏に放つ。

それを一夏の白式・雪羅の腕が『変形』し、受け止める。

 

「そう何度も喰らうかよ!」

「あれは……零落白夜のシールド? なら、しばらくは負けないか……」

零落白夜のシールドは、シールドエネルギーをかき消すもの。

ならば、エネルギー武器しかない福音は、現状不利だ。

 

だが、それを福音も理解したのか、最大火力での全方位砲撃にシフト。

僕らを巻き込むほどの過剰なまでの攻撃を仕掛ける!

 

「しまった! 守りきれるか……!」

「一夏! こっちは、大丈夫! 仮にも僕らも専用機持ちだ!

 一夏は福音を落とす事だけを考えろ!!」

僕は叫び、姉さんとシャルの支えを振り切り、飛び上がる。

そして残ったシールドユニット『明鏡』数十基を全部投擲し、遠隔操作する。

 

「被害は最小限に、相手の損害は最大限に。 明鏡、直接反射!」

僕の声と共に、明鏡のシールドに当たったエネルギー弾は、

福音の方へと引き返してゆく。

 

「みんな、砲撃は、僕が引き受ける。 一夏は攻撃、箒姉さんは一夏の支援!

 シャル! ガーデンカーテンで、僕自身の護衛を頼む!

 ラウラ、鈴、セシリアは僕らの後ろから射撃、砲撃で牽制!」

僕の台詞を受け、全員がそのフォーメーションに移動。

僕が全方位砲撃を打ち返す、あるいは逸らし、

シャルが流れ弾を防ぎ、ラウラたちが足止めした福音に、一夏が迫る。

しかしその時、零落白夜の輝きが白式から消えた。

 

「しまった、エネルギーが!」

「どんだけ大喰らいになったんだよ、白式!

 だめだ、これじゃあ……!」

このままでは、押し切られる。

僕らの誰もがそう思ったとき、姉さんが呟いた。

 

「……私は、一夏と共に、戦いたい!」

その声に反応したように、紅椿が黄金色の輝きを放つ。

 

「これは……ワンオフ・アビリティ……!?」

「ならば、行くぞ、紅椿!」

 

「くっ、もう動くエネルギーすらロクに残ってない……!」

そしてエネルギーが限界の一夏の元へ、姉さんが駆けつける。

 

「一夏!」

「箒! お前、ダメージは……!?」

「私は問題ない! そんな事より一夏、これを受け取れ!」

姉さんが言い白式の手を取ると、白式のエネルギーに変化があった。

 

「これは……白式のエネルギーが回復してる!?」

「姉さんのワンオフアビリティは、エネルギーの生産……いや、増幅かな?

 とにかく、一夏、姉さん! そろそろ、決めて!」

もうこっちも限界。 早く決めてもらわないと、僕が落とされそう。

 

「判った! 行くぞ、箒!」

「勿論だ!」

二人はそのまま、息のあったコンビネーションで戦闘を繰り広げる。

 

一夏に向けられた拳は姉さんが弾き、

姉さんに向けられたエネルギー弾は一夏のシールドがかき消す。

そして、姉さんと一夏が福音を挟み、

福音に二条の零落白夜の光と二振りの日本刀を叩き込む!

 

「こいつで、終わりだぁぁぁぁぁっ!!」

[L...a...]

 

そして、福音はエネルギーの全てを削り取られ、解除される。

そのまま操縦者の女性が、海に落ちて行ってしまう!

 

「しまった!」

慌てて全員が彼女の元へ向かおうとするけれど、遅い。

僕がすでに下で待機して、受け止めていたから。

 

「まったく、一夏は学習しないね。セシリアのときも、こんなだったでしょ?

 それじゃあ、僕のほうから作戦終了の報告はしておく。

 みんな、おめでとう! 僕らの勝ちだ!!」

 

◇

 

僕らが旅館へ帰ると、織斑先生が待っていた。

 

「聡里、報告しろ」

「了解です、織斑先生。

 福音は撃破。操縦者の女性は先ほど、医療班の方に預けてきました。

 福音のコアも回収済み、作戦は成功です」

僕の報告を聞き、満足そうに頷く先生。

 

「よし、織斑以外はダメージ診断に行け。

 だが、織斑。お前は無断で出撃したな。後で反省文を提出するように」

「……はい」

ありゃりゃ、一夏、ドンマイ。

 

「織斑先生、一夏が中核を担ったんですから、お手柔らか、に……」

あれ、なんかめまいが。

 

「聡里? 大丈夫? フラフラしてるけど」

「えーっと……大丈夫、じゃ、ない、かな……」

「聡里? 大丈夫か、聡里!?」

どうやら無理しすぎたみたいだ。

そのまま、僕は気を失ってしまった。

 

◇

 

「……ん、ここは?」

僕が眼を覚ますと、布団に寝かされていた。

 

「ふぅ、ちょっと無茶しすぎちゃった、かな? みんなはどこだろう」

そう呟き部屋から出ようとふすまを開けると、そこにはシャルが居た。

 

「あ、シャル」

「聡里、よかったぁ!」

「うわぁっ!?」

シャルはそのまま、僕に飛びついてきた。

僕も起きたばかりなのと、まだ本調子じゃないから、そのまま倒れてしまう。

 

「聡里! さとりぃっ!!」

「ちょ、ちょっとシャル、落ち着いて!」

「落ち着けないよ! 聡里ってば、僕がどれだけ心配したと思ってるの!?

 あのまま死んじゃうかもしれないって思ったら、僕、もう……!」

涙目で言ってくるシャル。

相当心配をかけちゃったみたいだね。

 

「……ごめんね、心配かけて。でも、約束、したでしょ? シャル。

 『シャルの前から居なくなったりしない』ってさ。

 約束は破らないよ。ほら、ぎゅーっ」

「聡里……」

僕が抱きしめると、シャルはようやく安心したようだった。

そしてその時、入り口から声が聞こえてきた。

 

「おうおう、相も変わらず仲睦まじいな、デュノア、聡里」

「「お、織斑先生!?」」

「私も居るぞ、父上、母上」

そのまま部屋に入ってくる織斑先生とラウラ。

 

「ほう、ボーデヴィッヒはこの二人を親だと見ているのか。

 だが、その考えだと、デュノアに同い年の娘が居る事になるな」

「ええ、それが、ちょっと」

僕は苦笑いしつつ、ラウラを撫でる。

 

「なら、いっそのこと娘ではなく、妹として見てやればどうだ?

 ボーデヴィッヒ、お前もその方が落ち着くと思うが」

「ああ、それなら僕らも変な感じしないし、その方が良いと思うよ!

 ね、シャル!」

「あ、うん! そうだね! ラウラ、ラウラは僕らの妹ってことで!」

僕らは慌てて同意する。

いい加減父上と母上って呼ばれるのは、くすぐったくって……。

 

「ち、父上と母上、が言うなら……」

「その父上、母上っていうのも、違うでしょ。

 そうだな……それじゃ、兄さんと姉さんで良いんじゃないかな」

「ああ、それなら大丈夫だ。それでは……兄さん、姉さん」

そう言うラウラにシャルは抱きつき頬ずり。僕と織斑先生はそんな二人を

笑って眺めている。

 

◇

 

その後。僕とシャルは二人で砂浜にやってきていた。

 

「夜の海も綺麗だね、シャル」

「そうだね、聡里」

僕らは言って、並んで座り海と星空を眺める。

 

「それでシャル、話って……何?」

僕の質問に、シャルはしばらく悩んでいたけれど、

真剣な面持ちで僕に向き直る。

 

「ね、ねえ。聡里。 ボクの事、どう思う?」

「え、どういう事?」

「そ、その……異性として、聡里はボクをどう見てるの?」

シャルに言われて、僕は考える。

 

僕にとってのシャル。大切な友人であるのは間違いない。

でも、それだけじゃない。

僕にとって、シャルは……

 

「大事な女性、だね。 ずっと守ってあげたい。

 そして、ずっと一緒に居たい」

僕の台詞を聞いて、シャルは頬を赤らめる。

 

「それで、シャルにとって僕はどうなの?」

僕の質問の答えは、シャルの中で決まっていたらしい。

 

「聡里も、僕にとって大事な人。ずっと、ずぅっと一緒に居たい」

その答えを聞いて、僕ら二人は笑い合う。

 

「一緒、だね。シャル」

「うん……。 ねえ、聡里。 その……」

シャルの台詞を、僕は待つ。

 

「あの! ボクと、付き合ってください!」

シャルが言った言葉は、僕が言いたかった事。

そして、シャルから言って欲しい言葉だった。

 

「勿論、受けるよ。シャル。 というか、僕もいつ言おうか悩んでたんだ」

そう言って微笑むと、シャルも笑い返してくれる。

 

「それじゃボクたち、両思いってことかな」

「そうみたいだね。 じゃあ、成立ってことでいいんだよね」

そう言って、僕らは寄り添い、互いにもたれ合う。

そして、どちらからとも無く、口付けを交わした。

 

◇

 

「さて、聡里。お前に話しておくことがある」

僕ら二人が戻ってくると、僕だけが織斑先生に呼び出された。

 

「お前に、デュノア社から晩餐会の招待状が届いている。

 おそらく、そこのデュノア関係だろう。 ……どうする?」

「……行きますよ。それに、断ったらシャルがどうなるか、わかりませんからね。

 僕も一度、デュノア社の社長とは直接会って、話したいですから」

僕はそう言って、織斑先生の手から招待状と航空券を受け取る。

 

「でも、あっちをこっちの思惑に巻き込むくらいはしなきゃ、ダメですよね。

 向こうに行くにも猶予はありますし、いろいろしときますよ。

 教えてくれてありがとうございます、織斑先生」

僕は言って、にやり、と織斑先生にのみ見えるように笑みを漏らす。

その笑みは、まるで氷のようだったらしい。

 

続く。

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