Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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17:Bienvenue à la France

「フランス、か。とうとう到着したね。 シャル、大丈夫?」

僕らは今、フランスの国際空港、シャルル・ド・ゴール国際空港に居る。

それというのも、シャルのお父さんで、デュノア社の現社長である、

『クロード・デュノア』氏から僕が夜会に招待されたから。

なんでも、フランスの上流階級の人間が集まるパーティらしく、

僕は一度直接クロード社長に会っておく事にしたんだ。

しっかり挨拶もしておきたかったし。

 

「……うん、ボクは大丈夫。 それより聡里、大丈夫なの?

 第三世代ISの情報のリークなんかして」

「もちろん。何度も言うけど、僕は束姉さんの弟だから。

 ヘタな手出しは出来ないはずだよ、どの国もね。

 それに、純粋な技術交換として日本政府には話を通してあるし。

 こう見えて、いろいろ考えてるんだ」

ボクがそう言い胸を張ると、シャルが微笑んで来た。

それともう一人。

 

「さすがは兄さん、作戦はあったのだな」

そう、ラウラです。

呼び方は臨海学校で兄さん、姉さんに治してもらったので多少落ち着いた。

 

「さて、と。それじゃ行こうか。

 ちゃんと衣装も用意してきたし」

僕の台詞と同時に黒服の人が僕らの周りに来て、

僕らを車へと案内し、デュノア邸へ行く事になった。

 

 

「失礼いたします、旦那様。篠ノ之様とボーデヴィッヒ様、

 シャルロットお嬢様がお着きになられました」

僕らを案内してくれた使用人さんはそれだけ言い、

書斎のドアを開き僕らを内へ入れる。

 

「初めましてだね、篠ノ之聡里くんと、ラウラ・ボーデヴィッヒさん。

 私がシャルロットの父、といっていいものかどうかは判らんが、

 クロード・デュノアだ。まあ、そのソファに掛けたまえ」

言われるがまま、僕らは座り話を始める。

 

「一度電話でお話しましたが、面と向かってお話するのは始めてですね」

「ああ。成程、聡明そうな顔をしている」

「お世辞は結構です。では、まず例の交換条件からですね」

僕はそういい、持ってきていた携帯端末を起動、

三つのデータを見せる。

 

「これが君の言っていた『ラファールの汎用パッケージ』かね」

「はい。高速戦、砲撃戦、格闘戦として、それぞれ

 『リュミエール(光)』、『フラム(炎)』、『ラーム(刃)』です。

 一応、第三世代機の技術の応用ですので」

その台詞に、腕組みをし考え込むクロード氏。

 

「……だが、これを受け取るわけにはいかんな」

「「え!?」」

正直この返事は僕とシャルにとって、かなり予想外だった。

 

「娘の好きな人物を、技術で娘を買った人間と思わせたく無いのでな。

 だが君はどうやら、私が思っていた以上に聡明なようだ。

 これなら、安心して娘を任せられる」

そして、デュノア社長は立ち上がり、僕に頭を下げる。

 

「頼む、シャルロットを幸せにしてやってくれ。

 私では何をしても与えてやれない物だからな」

クロード氏が言うには、

彼自身はシャルのことを嫌ってはいない。

だが、今の奥さんがシャルを毛嫌いしていて、

事あるごとにシャルを追い出す、あるいは殺そうとまでしていたらしい。

 

「酷い……」

「私が止められればよかったのだが、私にそんな勇気がなかったばかりに

 シャルロットを学園に送るしか手段が無かったのだ。

 すまん、シャルロット。 だが、お前の事は、親として愛している」

シャルはその言葉を聞き、目からきらりと涙を零す。だが。

 

「また来たの!? この泥棒猫の娘が!!」

そう怒鳴りながらいきなりドアを開け入ってきたのは、

クロード社長の奥さん、つまりデュノア夫人だ。

 

「カーラ! いい加減そのような事を言うのはやめないか!

 シャルロットは私の娘なんだ!」

「まぁっ、やっぱりたぶらかされてる!

 いい加減、私から夫を奪おうとしないで頂戴!

 まったく、親子そろって泥棒猫なんだから……!?」

そこまで言ったところで、夫人は押し黙る。

なぜなら、僕が彼女を『見た』からだ。

 

「言いたいことはそれだけですか」

「な、何よ貴方は! この泥棒猫の娘の仲間!?」

「さっきから聞いていれば泥棒猫泥棒猫と……! 彼女は僕の恋人だ!

 アンタみたいな自己中心女より、シャルのほうが比べ物にならないくらい可愛い!

 申し訳ありません、デュノア社長。帰らせていただきます。

 こんなくだらない事、シャルに聞かせたくありませんから」

僕はそういいつつ、シャルとラウラの手を掴み部屋から出て行こうとする。

が、デュノア夫人に呼び止められる。

 

「待ちなさいよこの詐欺師!

 どうせそうやってデュノア社に取り入って会社を横取りする気でしょう!」

「くっだらないことを何度もさえずらないで戴きたい、大人のくせに。

 『そんなもの』興味はありませんよ。貴女と違ってね。

 ああ、クロード社長。今夜の夜会、楽しみにさせていただきます。

 シャル、ラウラと三人で必ずお伺いいたしますので。では、失礼します」

それだけ言い、僕ら三人は退出する。

 

 

「シャル、ごめんね。やっぱり待っていてもらったほうがよかったかな」

「ううん、聡里。ボクもお父さんの気持ちが聞けて嬉しかったよ。

 お父さんは、ボクのことを思ってくれてたんだね」

「ああ、母上……ではなかったな、姉さん」

ラウラもそう言ってシャルに抱きつき、語りかけていた。

 

「それじゃ、そろそろ夜会に行く準備をしようか。

 まずは、シャルとラウラのパーティドレスは……うん、大丈夫だね。

 それじゃあラウラ、シャル。ちょっとプレゼントがあるんだ。

 会場に着いたら、渡してあげるよ」

そして、僕らは着替えを持ち、会場へ向かう。

 

 

「お嬢様、お待ちしておりました。そちらの方々が……?」

会場に着くと、僕らは初老の執事さんに声を掛けられた。

 

「うん、二人はボクの大事な人なんだ。

 あ、聡里、ラウラ。紹介するね。

 彼はアドルフ・ベルナールさん。ボクがお世話になってた執事さんだよ。

 アドルフさん、こっちの二人は、篠ノ之聡里とラウラ・ボーデヴィッヒ。

 ボクの恋人と、可愛い妹です」

そう紹介され、アドルフさんは綺麗なお辞儀をしてくれる。

 

「よろしくお願いいたします、篠ノ之様、ボーデヴィッヒ様」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「か、可愛い……ゴホン、こちらこそよろしく頼む」

そんな会話を交わした後、僕らはドレスアップルームに案内される。

……勿論別々ですがね。

 

「篠ノ之様、礼服はお持ちになっていらっしゃいますか?」

「はい、アドルフさん。ちょっと特別な生地で出来た服ですが、大丈夫ですか?」

そういって見せた服を、彼はじっくりと調べてから驚いた顔をする。

 

「ほう、これは良い服でございますね」

「ええ。ちょっと知り合いに服飾業界の人が居まして。

 お願いして作ってもらったんです」

そう言い、僕はその服を着てゆく。

 

 

「よし、と。こんな感じで大丈夫でしょうか。

 今まであまりこういう服を着たことが無いのですが」

「はい、大丈夫にございます」

アドルフさんのお墨付きを貰って、僕は部屋から出る。

そしてシャルたちの部屋の前で待っていると、

しばらくしてドアが開き、二人が出てきた。

 

「えーっと、聡里、似合ってる、かなぁ。このドレス」

「ううむ、こういうフリフリの格好は、やはり慣れんな……」

そう言って恥ずかしがっている風な二人だったけど、

それがまた愛らしい。

 

「二人とも似合ってるよ。 凄く綺麗だ」

「綺麗!?」

「ラウラ、いつまでそんなにびっくりするつもりなの?

 聡里、ありがとう。嬉しいよ。 聡里の服も似合ってるよ?」

「そう? あんまり着た事無いから判らないけど、シャルが言うならそうなのかな」

言いつつ、僕は二人に小さな箱を渡す。

 

「それじゃ、これがプレゼント。 二人のために選んだブローチだよ」

僕が手渡したブローチは、シャルが金で縁取りされたオレンジの、

ラウラは銀で縁取りされた黒いウサギのブローチ。

 

「おお、黒兎か。 私の部隊の事もあるのか?」

ラウラに言われて、頷く。

 

「それもそうだけど、うさぎは健康の象徴だから。

 幸せを呼び込んでくれるとも言われてるし」

それを聞いて、シャルは笑顔を弾けさせる。

 

「わぁ、ありがとう! 大切にするね!」

「喜んでもらえてなにより。 それじゃ、行きましょうか。シャルロット」

「うん!」

 

 

「さて、皆さま。大変長らくお待たせいたしました。

 我がデュノア社主宰の夜会においで下さり、ありがとうございます。

 では、今宵の主賓を紹介いたしましょう。

 シャルロット、篠ノ之くん、ボーデヴィッヒさん。おいで下さい」

とデュノア社長に呼ばれ、僕らは驚きながらもステージに上がる。

 

「こちらの金髪の子が、『私の娘である』シャルロット・デュノア。

 そしてこちらの青年がその恋人である篠ノ之聡里くん。

 それと彼らの友人で、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

その台詞とともに、会場内は騒然とする。

それはそうだろう。いきなりシャルロットの事を告白したと同時に、

篠ノ之博士の弟で世界でただ二人のIS操縦者のうちの一人を恋人として紹介されれば。

そんな訳で凍りついた会場で、僕は話し始める。

 

「初めまして、皆さん。篠ノ之聡里と申します。

 このたびはフランスへお招きいただいてありがとうございます。

 いい国ですね、フランスは。皆さん陽気で料理も美味しいですし。

 今後も遊びに来させてもらってもよろしいでしょうか」

僕の話しを聞いて会場のフリーズも解除され、来賓の人々は拍手する。

 

「ありがとうございます。

 では、僕らに対してなにかご質問はございますか?

 答えられる範囲でよろしければ、お答えしますよ」

そう言うと、一人の男性が手を挙げた。

格好や持ち物から察するに、夜会があると知って来た記者だろう。

 

「じゃあ、失礼ながら。シャルロットさんは、男性として学園に入学していましたよね。

 それは何故ですか? それにより、世界で三人目として大きな騒ぎになりましたが」

その質問に、僕が答える。

すでにその手の受け答えは社長と打ち合わせ済みだ。

 

「それは、シャルロットの社会的に複雑な立場のためです。

 シャル、これは言って大丈夫?」

「……うん。きっちり向き合わないと」

シャルの台詞とまなざしを受け、僕は続ける。

 

「では、本人の了承も得られましたので、説明させていただきます。

 シャルロットは、言い方は悪いですが、デュノア社長の愛人の子です。

 そしてその後彼女の母が亡くなり、彼女はデュノア社長に引き取られます。

 その後彼女の高いIS適正が判り、デュノア社の非公式テストパイロットとなりました。

 ですが、辛かったのはその後なのです」

そこで僕は一拍置き、こう続ける。

 

「デュノア社長の妻、カーラ・デュノアさんからの辛い『虐め』です」

僕の台詞に、会場に再びざわめきが走る。

そしてデュノア夫人は赤くなったり青くなったりしていた。

 

「デュノア社長も止めようとなさいましたが、いかんせん負い目もあります。

 それゆえ、シャルを夫人から引き離す事となった訳です。

 IS学園へ入学させるという形で。

 その際、夫人から押し付けられた『デュノア社を再び建て直すための道具となる』

 という条件を否応無く受ける形で」

そう言うと一斉に会場の視線はデュノア夫人へ向かう。

夫人はそれで青を通り越して真っ白になり、会場から逃げ出した。

 

「ですが、私はお義母さまに感謝しています」

そのシャルの台詞に、後を追おうとした数名の記者さんが、こちらを向く。

 

「何故ですか? 先ほどの話だと、かなり陰湿なことをされていたようですが」

「それは、ですね。 そのおかげで、私は聡里に出会えましたから」

それを聞き、会場の誰かから口笛が吹かれ、

さらに会場の女性客のかなりの数がひそひそと話していた。

 

「デュノア社長! ではやはり、社の後継者は篠ノ之氏になるのでしょうか!」

社長はその記者の言葉を否定する。

 

「いえ、彼はわが社の後継者にはなりません。

 それが彼と、シャルロットの意思でもあります」

その言葉で、僕とシャルロットに視線が突き刺さる。

 

「それは本当ですか、篠ノ之さん!」

「ええ、本当です。僕らはあくまで静かに暮らしたいので。 ね、シャル」

「うん。 という訳ですので、基本私たちは今後、一個人として過ごさせていただきます」

シャルがその台詞を言い、質問は終わった。

 

 

「では皆さん、一騒ぎしましたが、ダンスの時間とさせていただきましょう。

 アドルフ、音楽を」

「かしこまりました、旦那様」

アドルフさんは言って奥へ行き、音楽が会場のダンスホールに流れ出す。

 

「それではシャルロット、聡里くん。楽しんでおいで。

 ラウラさんは……」

「私は良い。周りで兄さんと姉さんのダンスを見させてもらう」

そして僕はシャルに手を差し出し、言う。

 

「では、Shall We Dance? シャルロット(おじょうさま)」

「ええ、よろしくお願いしますわ、聡里」

シャルは僕のエスコートを受け、壇上からダンスホールへと降りる。

そして音楽に合わせ、僕とシャルは円舞曲(ヴァルス)を踊りだす。

 

 

「聡里、踊るの上手なんだね」

「勿論、こっちに来るまでにいろいろ勉強したからね」

 

僕はシャルの手を取り、ダンスを踊りつつ微笑む。

シャルも微笑み返し、そのまま穏やかにダンスは続く。

けれど、シャルが久々のヒールの高い服を履いたために、

バランスを崩して転びそうになってしまう。

 

「きゃっ!」

「おっと、危ない」

慌てて抱きかかえ、転ばないように助ける。

 

「大丈夫? シャル」

「うん……ありがとう、聡里」

 

そんな僕らはラウラによると『暖かい視線で見られていた』らしい。

 

 

「本当にもう帰るのか、シャルロット、聡里くん、ラウラさん。

 もっとゆっくりして行っていいんだぞ」

デュノア社長の言葉に、僕ら全員は否定する。

 

「うん、ボクらはまだ、日本でいろいろしたいことがあるから」

「うむ。それに我々はそれぞれ、専用IS持ちだ。

 あまりIS学園を離れ他国へ行くのは国家間の関係として良い事ではないからな」

「二人の言うとおりです。それに僕らはまだ学生ですから。

 あんまり遊んでいるわけには行きませんよ。

 それに、試験場をお借りできて助かりました。

 新装備のテストできる場所が無くて困ってたんです」

そしてシャルたちを先にゲートへ向かわせて、僕は社長と少し話す。

 

「聡里くん」

「はい、なんですか? デュノアさん」

「私の娘を、頼む。 彼女は自分で気付かないうちに、いろいろ抱え込むからな。

 キミに無理を押し付けるようだが、私も自己中心な人間でな。……すまん」

「こちらとしても、彼女は僕の恋人ですからね。

 なんとしてでも、守りますよ。それに、貴方たちもです。『お義父様』(おとうさま)

「……フ、心強いな」

「あははっ、どうも」

そうやって笑い交わしていると、女子二人にせかされた。

 

「聡里ー、もうすぐ搭乗手続き、おわっちゃうよー!?」

「兄さん、急げ!」

「うん、今行くよ! お義父様、またいつか会いましょう!

 オ・ルヴォワール!」

そう言い、僕は二人の下へと走っていった。

 

続く

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