Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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18:猫三匹のラプソディー

「***-***、貴様はやはり、***のようだな」

……やはり、そうか。

 

「では、お前はこの後****される事になる」

……仕方ない事、ですね。

 

「こちらに来……ぐあっ!?」

……一体、何。

 

「こんなちっちゃい子を、好き勝手するなんて許せないよ!

 それじゃ、貰って行くよん! ふっふ~ん♪」

……あなたは、誰?

 

「私? 私は束さんだよん♪ いっくぞー!」

 

 

「……ん」

久しぶりに思い出したな、僕の『最初の記憶』。

これより前の記憶は、どんなに頑張っても思い出せないんだよなぁ。

何でなんだろう。

僕は一度見たら、忘れないはずなのに……。

 

「あ、聡里やっと起きた」

「遅いぞ、兄さん。今日は一緒に買い物に行く予定だろう」

僕が起きると、すでに着替えを終了させた二人が待っていた。

 

「ああ、ゴメン。じゃあとりあえずごはん食べて来ようか」

僕は言って、パジャマにしているジャージのまま食堂へ向かう。

 

「うん!」

「ああ」

その後から、シャルとラウラもついてきた。

 

 

「というわけで、いただきまーす」

「「いただきます」」

僕らの朝食のメニューは、シャルとラウラがマカロニサラダとトースト、ヨーグルト。

それにラウラはステーキが付く。

で、僕のメニューはクロワッサンとコンソメスープ、コーヒー。

 

「ラウラ、朝からステーキって、胃にもたれない?」

シャルの心配もごもっとも。というか、僕もアレは無理。

 

「何を言っている。朝に高カロリーの物を食べた方が、身体の稼働率はいいのだぞ」

ははーん。これは大方、一夏にでも言われたな?

 

「確かにそうだけど、気分の問題かな。 ま、いいけどさ。

 シャル、どこへ服を買いに行くつもり?」

「んー、とりあえず、駅前のショッピングモールで。

 それからみんなでちょっと回ろうかなって」

シャルはパスタをフォークに通しつつ言ってくる。

 

「む、姉さん。それは何だ?」

「え、何って……マカロニ?」

「それは判っているが、なぜフォークに通したのかと聞いているのだ」

ラウラが興味を持ったらしい。珍しい……のかな?

 

「なぜって言われても、なんとなく? ラウラもやってみなよ。結構楽しいよ」

シャル、こういうちょっとしたところも可愛いなぁ。

 

「ふむ……む。これは確かに楽しいな。せっかくだ、全部の先端に通してしまおう」

ラウラもマカロニを通して遊び始めた。確かに楽しそう。

僕もマカロニサラダにしとけばよかったかなー。

 

「く、む、このっ」

どうやら最後の先端にマカロニが通らないらしい。

こんな不器用なところがなんか、猫みたいだな。

微笑ましい光景だ。

 

「できた」

「「おー」」

全部の先端にマカロニが通ったフォークを持ち上げ、ラウラはこちらへ見せてくる。

それに僕らは拍手し、周りの生徒たちは何事かとこちらを見てきた。

 

 

「で、着替えたわけだけども」

食事の後、僕らは部屋に戻り着替えた。

僕はズボンがスラックスで、上半身が半袖のワイシャツ。

シャルに『制服?』って聞かれたけど、れっきとした私服。

 

で、シャルは女の子らしく白を基調に淡い水色をアクセントに入れた、

涼しげな格好。ラウラはというと……

 

「そういえば、この間ラウラの私服買うの忘れてたね……」

「そうだな。だが、必要性を感じないのだが……」

その台詞にシャルがダメ出しして、ラウラはまた制服で出かけることになった。

 

 

「それじゃ行こうか、二人とも。シャル、まず何処から行く予定?」

「うん、まずはバスで駅前に行って、そこのショッピングモールのお店に行こう」

「私は良く判らんな。兄さん達に任せよう」

そんなことを言いながら僕らは丁度来たバスに乗り、一番後ろの席に座る。

すると、周囲からこんな会話が聞こえてきた。

 

「ねえ、一番後ろの席の人たち、すっごくキレイじゃない?」

「ねー。あの二人の女の子達、金髪と銀髪……凄いわよね。

 でも、あの銀髪の子の制服、どこのだろ。見たことない制服だけど」

「バカ、あれIS学園の制服よ!? カスタム自由の!」

「うっそ、あそこ倍率一万超えてるんでしょ!?」

乗り合わせた女性たちがシャルとラウラの事を話してる。

と思ったら、また別の話題に変わっていた。

 

「あー。思い出した! 隣の男の人、篠ノ之聡里よ!

 ほら、前ニュースでやってた男性IS操縦者の!」

「マジ!? ……ほんとだ」

「ってことはあの二人のうちどっちかが恋人さんなのかな?」

 

……さすがに僕がここまで有名になってるとは思わなかった。

そんな感じで少々恥ずかしがっていると、目的地に到着した。

 

「シャル、ラウラ。目的地着いたから降りよう」

それで僕らが降りたのを、車内の何人かの視線が追ってきた。

 

 

「やれやれ、やっとだよ……。で、ここが最初のお店?」

「うん。『サード・サーフィス』。変わった名前だけど、

 人気のお店みたい。ほら、沢山お客さんいるし」

その言葉通り、店内には沢山のお客さんが居た。……女性客が。

 

「あ゛ー……。これはまた、えらく肩身が狭そうだな」

「大丈夫だよ。いこっ♪」

「その通りだ。兄さん、この程度で臆してどうする」

「臆してって……。ま、いっか。行きますよっと」

 

 

「お客様、こちらが先ほどのお洋服に……」

店長がそこまで言ったとき、彼女は手渡そうとした服の紙袋を落としてしまう。

 

「店長?」

「ユリ、お客さんお願い……私ちょっと行って来る」

紙袋を落とされた客の女性も店長の視線を追い、入ってきた三人を見て固まる。

タイプが違う美少女二人に、美男子が一緒に入ってくれば嫌でも注目する。

 

 

「どっ、どんな服をお探しで!?」

そういってきた女性は、さっきの会話からどうやら店長らしい。

その、ちょっと混乱した様子がおかしくて、僕は話しかけることにした。

 

「ああ、こっちの銀髪の子に似合う服を探してるんですが、良いの、ありますか?」

「はっ、はいっ! 今すぐ見立てます! はい!!」

彼女は言って、マネキンから服を脱がせる。

 

「へぇ……。 本気みたいですね。それじゃ、僕とシャルも協力しますよ。

 あとラウラ、どんな服が良い?」

「わから……」

「「わからない、はナシで」」

僕とシャルのハモりで、ラウラはちょっとふくれっつらで『むー』となる。

 

「白か……。だが、今来ているものと同じ色だぞ」

「は、はぁ」

ラウラの女子力の低い(?)回答に店長は気が抜けたらしい。

 

「うーん、そういうのはいいから、好きな感じで選んでみようか。

 ほら、たとえば好きな人に見せたい、とか」

僕が言うと、ラウラはこっちをじっと見てから顔を赤くする。

 

「ラウラ?」

「で、では……もう少し可愛いのがいいな、兄さん」

ラウラに珍しい女の子らしい台詞に、僕とシャルは思わず顔を見合わせる。

そして二人で頷きあい、ラウラに言う。

 

「判った! もうちょっとかわいいのだね!!」

「だ、だがあまり派手なのは、その」

「だいじょぶだいじょぶ、わかってるよ、ラウラ!」

僕らの勢いに圧されたらしく、のけぞりながらラウラは聞いてくる。

 

「二人とも、本当に大丈夫か……?」

「「もちろん!!」」

そして僕とシャルは店長も交えてラウラの服を選んでゆく。

ラウラも可愛い事、言うようになったじゃん!

 

 

そして、二十分後。

 

「き、着たぞ……どうだ、兄さん、姉さん」

試着室から出てきたラウラに、僕とシャルは思わず見とれる。

周りの人たちも、

 

「綺麗ねぇ……」

「妖精さんみたい!」

などと口々に言い、流石のラウラも照れていた。

 

「それにしても、靴まで用意したのだな」

「せっかく可愛いんだし、靴もそろえないとね」

「うむ、だが、歩きづら……あっ!」

「おっと」

初めて履くヒールでバランスを崩し、転んでしまそうになるラウラをシャルは抱きとめる。

それはシャルには悪いけれど、お嬢様と王子様、といった感じだった。

 

「す、すまない。姉さん」

「いえいえ、どういたしまして」

シャルは体勢を立て直したラウラの手を取りお辞儀。

そのメロドラマのような光景にとうとう女性客が我慢の限界に来た。

 

「しゃ、写真撮らせて!」

「私も! それと握手もお願いしますぅ!」

「私もっ!」

そして騒然となった店内を静かにするのに、十数分を要した。

 

 

「すごい騒ぎだったね、シャル、ラウラ」

「あはは、そうだね……」

「うむ。まさかあそこまで人が集まるとは……」

そりゃこんな美少女が二人もいればしょうがないでしょ……

僕がそんな事を考えつつ食事をしていると、僕の後ろから溜息が聞こえてきた。

 

「はぁ……どうすればいいのよ」

声の主はスーツを着こなした女性で、表情はとても暗かった。

 

「ねえ、二人とも」

「おせっかいは程ほどにな、姉さん」

言おうとしていた事を先取りされたらしいシャルは、驚いた顔をしていた。

 

「ラウラ、ボクの事判ってくれてるんだね」

「た、たまたまだ! で、どうしたいんだ?」

「んー、とりあえず話だけでも聞いてみる」

「そうだね」

それでシャルが声を掛けると、彼女はシャルを見る。

そして一瞬驚いたような顔をして、イスを蹴倒すほどの勢いで立ち上がり、

シャルの手を取る。

 

「あ、あなたたち!」

「は、はいっ!?」

 

「バイトしない!?」

「「「……はい?」」」

 

 

「……つまり話をまとめると、あなたはメイド&執事喫茶のチェーン店『@・クルーズ』の

 ここの支店長で、いきなりバイトが三人やめちゃったので代役を探していた、と」

「そうなのよ……。というか、そのうち二人は駆け落ちしちゃったらしいんだけど。

 でも、今日は本社からの視察がある超重要な日なの! だからお願い!」

その店長にそこまで言われたら、僕らはさすがに断りきれなかった。

そして@・クルーズに来て、衣装合わせをしてみる。

 

「店長さん。着替え、終わりましたよ」

僕は店長に声をかける。

 

「あら、やっぱり似合うわね!

 でも私はあっちの金髪の子にも、執事をしてもらいたかったのだけど……」

「絶っっっっっ対に、ダメです!! 僕の彼女は可愛いんですからね!」

僕がそう力説した瞬間に、シャルがそろ~っと物陰から出て来る。

彼女がメイド服を着ているのは、もう……。

 

「……私が間違ってたわ。この子はメイドじゃなきゃ!」

「でしょう! こんなにも可愛いんですから!」

「聡里、恥ずかしいってばぁ……」

「姉さんはもう少し自信を持つといい。兄さんの言うとおりだ」

そう言ってラウラも登場。彼女もまた、似合っている。

 

「ラウラも。よく似合ってて可愛いね」

「かわっ……!?」

ラウラは顔を真っ赤にしてオーバーヒート。

だけど瞬時に思考を切り替え、仕事をしようとする。

 

 

「いらっしゃいませ、お嬢様。『@・クルーズ』へようこそ。

 (わたくし)がお嬢様方をお相手させていただきます、執事の『サトリ』でございます。

 こちらがメニューです。ご注文が決まりましたら、一声お掛け下さい」

そう言い一礼する聡里の言葉と流れるような動作に、三人組の女性客は顔を赤くする。

 

「え、えーと。それじゃあ、おすすめを教えてくれませんかっ!?」

「私のおすすめ、ですか……。

 ふむ、ではこちらの『リフレッシュ・レアチーズケーキ』は如何でしょう。

 濃厚なチーズの味わいとさっぱりしたレモンの風味が絶品ですよ。

 ちなみに、一緒に飲む紅茶は、

 セイロンのオレンジ・ペコをおすすめさせていただきます」

「あの、それじゃあ、それを三人分お願いします!」

「かしこまりました。それでは、しばしご歓談下さい」

聡里がその台詞とともに一礼しその場を一旦離れると、

女性達はきゃーきゃーと会話を交わす。

 

「今の人、凄いわね……」

「え? 本業? いや違うよね? え?え?え??」

「……かっこいい」

 

 

「……何故こうなったのでしょうか」

店内は、僕ら三人の指名で一杯になってます。

ざっくり例を挙げると、

 

「あの執事さんでお願いします!」

「俺はせっかくだから、あのボクっ子のメイドさんを選ぶぜ!」

「じゃ、じゃあアタシはあのキツいメイドさんを!

 あの冷ややかな眼で見つめられたい!」

最後、なんか別の意味で危ないなぁ。

 

「それにしても、お客様が途切れませんね。まあ、仕方ないですか。

 っと、いらっしゃいませお嬢様」

言いつつ水の入ったグラスを持ち、入ってきた女性客の相手をしようとすると、

いきなり乱入者が現れた。

 

「全員、動くんじゃねぇ!」

 

そいつらは三人組で、目だし帽をかぶっている。

腕には、札束がたっぷりとつまったカバンと複数の銃。

そして外には沢山の警官隊。

……なんてレトロな。

 

「てめぇら! 今から一時間以内に車を用意しろ!

 用意しねーとここに居る人間、一人ずつブッ殺すぞ!」

 

これは、強盗の後、逃走手段を手に入れようとしているのか。

でも、ここで下手に暴れられても困るな……。

 

「へへ、でもそれまでの間、メイドさんに相手してもらいましょうよ!

 俺、メイド喫茶なんて来たの初めてで……」

「あ、俺もっす!」

「テメーら、今がどういう状況か判ってんのかよ。

 まあ、喉も渇いたしな。おい、そこの金髪のメイド!」

リーダー格の男はそういい、シャルを指差す。

 

「なんですか?」

「ちょっとこっち来て俺らの相手、してくれや」

そういい、男の一人がシャルを掴み、連れて行こうとする。

コイツ!

 

「申し訳ございません、お客様」

僕は言いつつ、その男の手をはたきシャルから手を離させる。

 

「あぁ、ンだよテメェ! 俺らはこっちのメイドさんに用事があるんだっての!」

そう凄まれるが、実戦に比べればどうってことない。

 

「申し訳ございません、お客様。彼女は私の恋人ですので、手出しはご遠慮願います。

 そして、ここは喫茶店。貴方がたのように、

 犯罪を犯した人間が来る場所ではございません。

 故に……お引取り願います」

僕は言いつつ、手にしていたお盆から氷水のグラスを投げ上げ、

男たちの手に、顔に、氷を弾き、当てる。

そしてシャルを掴んでいるが持っているショットガンを下から蹴り上げ、

手から弾き飛ばすのと同時に顔にブチ当て気絶させる。

 

「シー!? てめっ、このクソガキャア!」

 

言って、リーダー格の男がハンドガンを向けてくる。

 

「その程度の武器、私には通用致しませんよ」

僕は発射された弾丸を、テーブルナイフで『斬った』。

 

「んなっ、嘘だろ!?」

「いえ、現実ですよ。 発射される時の銃口を見ていれば、この程度は。

 では、失礼いたします」

その言葉と共に、手にしたナイフを投げその男のハンドガンに当て銃口を逸らし、

怯んでいる間に接近し回し蹴りを手首に当て、へし折る。

 

「シャルロット、ラウラ。そちらはよろしいですか?」

「沈黙を確認。他愛もないな」

「僕のほうも終了だよ」

僕がリーダー格の男を倒している間に、ラウラとシャルももう一人を撃破していた。

 

「ありがとう、聡里。 こんな人たちをお世話したくなかったんだ」

「それはよかった」

僕らがそこまで言ったところで、リーダー格の男が立ち上がる。

折れていないほうの手には、予備のハンドガンがあった。

 

「キサマらぁぁぁぁぁっ!」

「はぁ、まだやりますか。では、死になさい」

「聡里っ!?」

 

その男が最初に持っていたハンドガンを持ち、僕は宣告。

相手が凍りついた隙を突き一瞬で接近、ハンドガンの銃身を持ち、

グリップを相手の頭に叩きつけ、気絶させる。

 

「全目標、制圧。ただの作戦にございます。

 あれほどの状況、多少の事では対応できませんゆえ」

「ほ、ほんとに撃つかと思った……」

「いや、まだらしいぞ兄さん、姉さん」

 

ラウラが視線で示した先には、よろよろと立ち上がる男が居た。

その男がジャケットを広げると、そこには……

 

「ば、爆弾っ!?」

「どうせ逃げられないなら、いっそコイツで!」

その男は起爆ボタンを押そうとする。

パニックに陥る店内、僕はラウラに手をむけ、声を掛ける。

 

「ラウラ、ナイフを。 シャルロットは射撃を」

「「了解!!」」

僕に答え、ラウラは僕にミリタリーナイフを一本渡し、自分もナイフを持つ。

そしてシャルの銃撃と、僕、ラウラの斬撃が爆弾の起爆装置、導線、信管のみを無効化。

だが。

 

「む、これは独立型の、時限式信管内臓タイプ!?

 シャルロット、ラウラ、お客様を!」

言いつつ、僕は男から爆弾を切り離す。

そして店の前に飛び出し爆弾を空中に蹴り上げる!

 

「破っ!」

 

蹴り上げた爆弾は店の上空で爆発。

完全に脅威を無効化し、僕は店内に戻る。

 

 

「お客様方、お騒がせ致しました。ですが、終了にございます。

 もうお客様方の身に危険が及ぶ事はございません。

 では、私どもはこれにて失礼致します。行きますよ、シャルロット、ラウラ」

僕らはそう言って退出しようとする。だが、後ろから声を掛けられる。

 

「あ、ありがとうございます、メイドさん、執事さん!」

「貴方達は命の恩人です! ぜひ、ぜひお礼を!!」

などと、口々にお礼が飛び交う。

だが、僕は一度立ち止まり、彼ら、彼女らに一言。

 

「お褒めに預かり、光栄にございます。

 ですが、私どもはあくまで、使用人の身。

 旦那様、お嬢様にお楽しみいただくのが私どもの仕事ですので。

 それでは、またいつか。ご縁があったらお会いしましょう」

そして一礼し、僕とシャル、ラウラの三人は今度こそ退出した。

 

こうして、強盗たち三人はさながら、

『宵の黒い(シュヴァルツェア)風(ラファール)』により、

駆逐されたのであった。

 

 

「やれやれ、すごい休みになっちゃったね」

「あはは……そうだね」

「だが他人の役に立てたのなら良いのではないか?」

ラウラの台詞ももっともで。

 

「シャル、買い物も終わったし、次はどこに行くの?」

「えっと、城址公園。城跡にある公園だって。

 夕日が綺麗だって聞いたから、行ってみたいなーって」

「なるほど、日本の城は守るに易く攻めに難いと聞いている。

 城跡でも、見る価値はありそうだな」

ラウラはミリタリー観点から興味がありそうだな。

 

「じゃ、行こうか。それにしても店長、こっそりお金入れてくれて助かったよ。

 学園に入学してから、バイトできなかったからお金があんまり入らなかったんだ」

「そうなのか? 私は口座に二千万ユーロほどあるが……」

「「え!?」」

軽く家の一軒も立ちそうな金額をさらっと!?

 

「まあ、私は生まれたときから軍属だからな。

 国家代表候補生として選抜されてからは、その分も上乗せされている」

「なるほどね……あ、公園ってここ?」

「うん! ねぇねぇ、クレープ食べに行こうよ、クレープ!」

シャルは僕を上目遣いに見つつ、言ってくる。

そんな顔されて、断れるわけないでしょうが……。

 

「わかったよ。 でも、なんで?」

「ここのクレープ屋さんでミックスベリーのクレープを食べると、

 幸せになれるんだって。まあ、おまじないになるのかな?」

「オマジナイ……とは、なんだ?」

あれ、ラウラ知らないのか。

 

「えーっと、まあ……ジンクスになるのか」

「なるほど、ゲン担ぎか」

「それのもうちょっとかわいらしい言い方なんだけどな……まあいいや」

そんなことを言いつつ、僕らはそのクレープ屋を探す。

といっても、ちょっと道沿いに歩いたらすぐに見つかったけど。

 

「ここ、みたいだね。シャル」

「そうだね。 すいませーん、クレープ三つください。ミックスベリーで」

シャルが店主に言うと、彼は苦笑しつつ、こういってきた。

 

「悪いね、お嬢さん。ミックスベリーはもう売り切れなんだ」

「あ、そうなんですか……それじゃあ、どうしようかな」

……ん? もしかして、このお店。

 

「あ、じゃあ僕が決めるよ。

 二人は、そうだな……そこのベンチででも待っててよ」

僕はそういって、店主に向き合う。

 

「さて……それじゃあ、ストロベリーとブルーベリー、それと……ラズベリーかな」

「お、キミ気付いたのかい?」

店主の男の人はにやりと笑って聞いてくる。

 

「ええ、まあ。全部でいくらですか?」

「200円が三つで六百円。でも、鋭いキミに免じて五百円でいいぞ。サービスだ」

「いいんですか?ありがとうございます。はい」

「五百円丁度ね、毎度」

そしてクレープを買った僕は、二人のところへ戻る。

 

「はい。シャルはこっちの、ラウラはこれ」

「ありがとー」

「うむ、助かる」

そう言って、シャルがストロベリー、ラウラがラズベリーのクレープを食べ始める。

 

「あ、シャル」

「なに? 聡里」

「えいっ」ぺろっ

 

「いいい、いきなり何してるの!?」

「んー、ほっぺたにソースついてた?」

「だからって、いきなり舐めないでよ!」

あらら、ちょっとやりすぎたかな。

 

「ごめんごめん、お詫びに僕のクレープちょっと食べていいよ」

「もー……はむっ。 あ、これブルーベリー?」

「うん。結構美味しいでしょ?」

「よかったな姉さん。ミックスベリーを食べることができた」

ああ、ラウラ気付いてたんだ。

 

「どういう事?」

「姉さん、姉さんが今食べたクレープの味は?」

「え? ブルーベリー……あ!」

「そういうこと。元々メニューにミックスベリーはなかったし。

 まあ、たしかにこれは幸せだなー」

その言葉にシャルは赤くなり、言う。

 

「えっと……僕も、幸せ、かな」

「……ははっ、それは良かった」

 

 

「こ、これは、何だ……?」

「何って、パジャマだよ?」

聡里ら三人が自室に戻ると、聡里のみが呼び出しを受けたので、退室している。

そしてその間に、二人はパジャマを着てみようという事になったのだが……

 

「ん~っ、かわいいっ!」

「こ、こら、抱きつくな。動きづらいだろう」

「だめだよ~。猫っていうのはひざの上で大人しくしないと」

「お前も猫だろう……」

現在、ラウラとシャルはいわゆる、ねこみみパジャマを着ていた。

それも、白と黒のおそろいの。

 

「ね、ね、ラウラ! にゃーんって言ってみて、にゃーんって!」

「こっ、断る! 何故そんな事を私が!」

「だってー、かわいいんだもーん」

シャルの勢いに押し流され、ラウラは言う。

 

「にゃ、にゃぁん?」

身振りまでつけて言うラウラに、シャルのぽわぽわとした雰囲気はさらに上昇。

今のシャルのしあわせゲージがあるなら、その数値は天元突破しているだろう。

そして、その時。

 

コンコン。

「あ、どうぞー」

シャルは言ってから、ドアを開けた人物を見て赤面。

 

「ただいま、シャル。やっと終わったよ」

 

 

「あ、今日買ったパジャマってそれ? 白猫と黒猫だったのかぁ」

僕が言うと、シャルがあたふたしながら聞いてくる。

 

「さ、聡里!? もうちょっと掛かるんじゃなかったの!?」

「んー、あんまり作業が遅いから、手伝ったらすぐ終わったよ」

その間にラウラはシャルのひざの上から脱出し、仁王立ち。

 

「さ、流石兄さんだな」

といっても、覇気よりもかわいらしさ二割り増しだけど。

 

「あははっ、やっぱり二人とも可愛いにゃあ」

「「か、可愛い……」」

僕の台詞で二人とも赤くなって、大人しくなる。

と、そこでシャルが僕の『違和感』に気付く。

 

「え、そういえば聡里、その頭の、どうしたの? それとさっきにゃあって」

あー、これ。

 

「この、ネコミミのこと?」

「うん。どしたの?」

「実は、作業してる時にいつの間にか付けられてて……。

 どんなに取ろうとしても、取れないんだよにゃ。

 周りの人が言うには、生徒会長の仕業だって。

 明日の朝には取れるって言ってたけど、どうにゃんだか」

なんか言語野に干渉して、勝手に『な』とかの発音が『にゃ』になるらしい。

厄介な……。

 

「ま、そんにゃことはいいでしょ。

 それじゃ二人の子猫のために、ホットミルクでも作ってくるよ。

 あとは……あ、そうだ。クッキーを作り置いてあったっけ。持ってくる」

そしてホットミルクを三人分作り、クッキーを持って調理スペースから帰ってくる。

それで三人で食べていると、眠気が襲来。

 

「ふぁ……」

「あ、シャル、眠くなった?」

「うん……」

「私も、少々眠いな」

それは、あれだけの事があればね……。

 

「にゃはは、そっか。それじゃそろそろ寝ますか」

言って、僕らはベッドに向かう。

 

「それじゃお休み。シャル、ラウラ」

「おやすみー」

「ん……グーテン・ナハト」

 

二匹の子猫と兄猫の夢は、楽しいものになるだろうか。

 

続く。

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