Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
生徒会長に一夏がからかわれた翌日、SHRと一限の半分を使って生徒総会が開かれた。
議題は今月の中ほどにある学園祭。
勿論、女子校だからかわいらしい出し物が多い……と思いきや、
剣道体験やらボクシングのスパーリングなど、
なかなか熱い物もあったりする。
といか美術部、すごい出し物だな……。
そして全校の生徒が集まり、待機しているんだけど……とにかく騒がしい。
というか騒がしいを通り越して姦しい。それすらも通り越してる。
そんな事を考えていると、舞台上に生徒会長……楯無さんが上がる。
生徒会役員の一人であろう人から生徒会長の挨拶の言葉が出されると、
ざわめいていた会場は一瞬で静かになる。
すごいカリスマだな。
「やあ、諸君。おはよう」
そう言った彼女は僕と一夏を見つけたのか、こちらに微笑んでウィンクしてくる。
「今年は立て込んでてちゃんとした挨拶がまだだったわね。
私は更識楯無。君達生徒の長よ。以後よろしく」
そして彼女が扇子を懐から取り出し、それを持った手を横へと伸ばす。
するとスクリーンに僕と一夏の顔が映し出され、
その下には『I want you to come(あなたに来て欲しい)』と書いてあった。
「今年のみ、学園祭に特別ルールを設けるわ!
題して『各部対抗・男子争奪戦』!!」
「「……は?」」
僕と一夏、いきなりの宣言にぽかーん。
そして周りの女子たちはと言うと。
「え……」
「「「「「ええええええええええええええええっ!?」」」」」
ホールが揺れました。割と冗談抜きで。
「静かに」
また楯無生徒会長の声で会場が静まる。
「学園祭では毎度各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、
上位組の部活の部費に上乗せする形でした。
しかし、今回はそれではつまらないと思い……」
そこまで言うと、楯無さんは『なんと!』と書かれた扇子を広げ宣言する。
「優勝した部に織斑一夏、篠ノ之聡里両名を強制入部させましょう!!」
その台詞に、会場は再び沸騰する。
「流石生徒会長、話が判る!」
「これはもう、終わったらすぐ準備しなきゃ!!」
「秋季大会ィ? ほっとけ、あんなん!」
秋季大会をあんなん扱いは無いでしょうが……。
まあ、学園で二人しかいない男子を占有できるチャンス、
逃したくないのも判るけどさぁ……。
「僕らにまったく話が来てないんですがね、楯無会長……?」
◇
「では! そんなワケでうちのクラスの出し物、決めちゃいましょう!」
生徒総会のあった後、授業も終わり放課後。
一組のメンバーは山田先生の音頭で出し物を決めている。
でも、出たアイデアが……。
「篠ノ之聡里の三分執事、織斑一夏のマッサージ教室、男子二人とポッキーゲーム……」
なんか、僕らの貞操が怪しくなってくる企画があるんだけど。
一夏? ……は、まあいいか。 一夏だから鈍感で流すだろうし。
まあ、とにかく。
「「却下」」
僕と一夏、ハモる。さすがに一夏もコレはきつかったか。
「「「「えええええ~~~」」」」
「あ、アホか! こんなん誰が喜ぶんだ!!」
「女子みんなだよ?」
そりゃそうか。
「僕はシャルって言う心に決めた女性(ひと)が居るから、
ポッキーゲームとかはちょっと……ね。遠慮したいんだけど」
そう苦笑いしながら言ったとき、思わぬ人物から救援がきた。
「メイド喫茶などはどうだ?」
ドイツの軍人少女、ラウラである。
「……え?」
僕も含め、ラウラ以外の全員があっけに取られている。
山田先生なんか、メガネがずれてるし。
「客受けはいい、喫茶なら経費回収も行えるだろう。
また外部からも招待客も来るんだろう。であれば、休憩所としての需要もあるだろう」
「ああ、なるほど。いいんじゃないかな」
あ、シャルから援護射撃が来た。
「一夏と聡里には、厨房とかを担当してもらえば良いんじゃない? それか執事、とか」
執事……夏休みのアレを思い出すなぁ。
「男子が執事! それ、いい!」
「ねえ、衣装どうする!?」
「私演劇部の衣装係だから衣装縫えるよ! 縫おうか?」
「あ、それならいいよ。僕にちょっとした心当たりあるから」
僕の発言に、シャルが苦笑してくる。
ちなみに彼女の左手薬指には、僕があげた指輪が輝いていた。
「心当たりって、もしかして、あの……?」
「まあね。 ダメでも僕がいろんな方面に頭下げて回るさ。
それじゃ、みんな。頑張ろう!」
「「「「おおおおおーーーー!!!」」」」
僕の号令でクラスのメンバーが腕を突き上げ、気合を入れる。
その様子を一夏とラウラは圧倒されたような顔で見ていて、
シャルはちょっと困ったような顔で、それでも楽しそうに僕らを見ていた。
◇
「……という訳で、一組の出し物はメイド喫茶に決定しました」
「ほう。発案者は田島か、リアーデか?
あるいは聡里、もしやお前の発案か?」
「違いますよ」
面白いと思いますけどね。
「発案者は、ラウラですよ」
「……は? 一夏、今聡里は何と言った?」
ああ、うん。信じられないだろうね。
織斑先生は二回瞬きをして、それから大爆笑。
「はははははっ、アイツが? あのラウラ・ボーデヴィヒがか!?
くっ、ははは! アイツがコスプレ喫茶……ははは」
織斑先生はひとしきり笑った後、職員室の視線を集めていることに気づき咳払い。
「ん、んっ。……さて、報告は以上か?」
「はい、まあ一応は。だよね、一夏」
「あ、ああ」
というわけで、必要機材や食材なんかの申請書を渡されて僕らは退出する。
「……なあ聡里、書類のk「じゃあ一夏は機材の記入をお願いね。僕は食材」……はい」
と一夏に仕事を分担しつつ職員室を出たところで、猫座の女に遭遇した。
「やっほう」
「……何ですか?」
楯無生徒会長だ。ちなみに一夏は厳戒態勢。
そんな一夏を放っておいて、僕は会長に話しかける。
「会長、何か御用ですか?」
「いやー、ちょっと生徒会室へ来て欲しくてね」
そういう先輩から、一夏は距離をとる。
「いえ、俺t「あ、いいですよー。行くよ、一夏」聡里!?」
嫌がる一夏の首根っこを引っつかんで引きずり、僕は先輩の後を歩く。
と、その時。
「覚悟ぉぉぉぉぉっ!!」
「なっ、なんだぁっ!?」
竹刀を持った女子が会長へ切りかかってきた。
一夏は彼女から会長を守ろうとしたけれど、僕にひっつかまれて引き戻される。
「何すんだよ聡里!?」
「良いから。見てなよ、会長の動き」
僕が言っている間に会長は扇子を使って竹刀をはじき、左手の手刀でその女子を沈める。
続けて窓から矢が打ち込まれたが、それも竹刀を投げつけ撃墜。
その直後、三人目が掃除用具入れの中から、四人目が割れた窓から飛び込み、
一度に会長に襲い掛かる!
「へぇ、二人で同時に来るのね」
「「勝てばいいのよ、勝てば!!」」
と、そのボクシングコンビは叫び殴りかかる。
流石の会長でも二人分のラッシュは厳しいらしく、何発か掠っていた。
「やれやれ……卑怯ですよ、あなたたち……それっ!」
僕は言いつつ、四人目の方の腕を掴み、投げ飛ばす。
投げられた方は再び会長に殴りかかろうとしたけれど、僕が間に入り止める。
「邪魔しないで、篠ノ之くん! これ以上邪魔したら、無理やりどけるよ!」
「どうぞご自由に。できるなら、ね!」
僕はそのまま彼女の怒涛のラッシュを受け流し続ける。
秒間二発のペースのラッシュを継続できるのは凄いな、流石だ。
でも、その全てを手で受け止め、横へ流す。
「あー、篠ノ之くん。もういいわよ。こっちは片付いたから」
その言葉を聞きそちらを見ると、確かにもう一人のボクシング女子は倒れていた。
「了解です。それじゃ、はい」
「えっ!?」
最後の一人が殴ってきた腕を掴み、会長のほうへ流す。
そしてその勢いのまま走って行った彼女は、会長の手刀で沈んだ。
◇
「流石会長。強いですね」
「いやー、篠ノ之くんもなかなかのもんだよ? あのラッシュを全部流すのは凄いね」
「同じようなラッシュを全部避けといて何を言うんですか、更識会長」
僕と会長はそんな会話を交わしている。
「んー、まあこんなこともあるから、とりあえず生徒会室へ行きましょう。
来るよね、篠ノ之くんに織斑くん?」
「ええ、勿論。 一夏も一緒に来るように」
「選択権は無しか!」
あるけど『同伴してくる』『別行動で来る』『用事を済ませてから来る』の三択だぞ。
「あー、先輩。僕は聡里でいいですよ。姉さんもいるので。
そう? じゃあ私は楯無、あるいはたっちゃんでも可」
「了解ですよ、たっちゃんさん」
「聡里、たっちゃんさんって……もういいか」
そう脱力した一夏を引っ張り、僕らは生徒会室へ移動した。
◇
「いつまでぼんやりしているの」
「眠……夜……遅……」
「しゃきっとしなさい、い・い・わ・ね?」
「…………了解」
なんか今、すごい聞き覚えのある声がしたんだけど。
「あら、今はあの二人がいるのね。 来たわよ、本音。虚」
本音って……あー!
「「のほほんさん!!」」
「あ、おりむーにさとりんだ~」
そこに居たのはのほほんさんと、のほほんさんに良く似た女子だった。
「ああ、そういえばのほほんさんも生徒会所属だったよね。
それと、そちらの人はお姉さん?」
僕が聞くと、その女性が丁寧に一礼して答えてくれる。
「初めましてになるわね、篠ノ之聡里くん。私は布仏虚。本音の姉よ」
「あ、はいよろしくお願いします」
そう言って、僕らは同時にお辞儀。 一夏が固まってたから無理やりお辞儀させる。
「えー、と。 それじゃたっちゃんさん。なんであんなこと発表したんです?」
「あー、それね。 いい加減、貴方達二人をどこかの部に入部させないと、
いろんな部活の生徒たちが『うちに入れろ!』ってやかましくてね。
それでこの措置を取らせて貰ったのよ」
ははぁ、なるほど。
「で、交換条件と言ってはなんだけど、君達、これから鍛えてあげるよ」
「え? 何でですか?」
「聡里くんはともかく、君が弱いからに決まってるじゃない」
その答えに、一夏はむっとした表情で先輩を見る。
「それなりには弱くないつもりですが」
そう言うけど、実際。
「「弱いね(よ)」」
「聡里、お前までかよ!」
そりゃ弱いもん。
「うん。一夏もまだまだ弱いよ。でも、会長。一夏は僕が面倒見てますから。
会長はいろいろ、セキュリティとかの対策をお願いします」
僕の言葉に、今度は会長が頬を膨らませる。
「むー、それじゃあ勝負してみる? 多分私が勝つよ?」
「言いましたね? それじゃ、やってみますか」
と、僕と先輩の間で火花が散る。
……一夏を置き去りにして。
◇
「では、一本勝負で会長が勝てば一夏と僕が指導を受けて、
僕が勝てば会長に要求、という事でいいですね?」
「む、なんなら私を床に倒すだけでもいいよ?」
そういわれたけど、僕は首を横に振り一夏に合図をさせる。
「……始め!」
◇
「二人とも、動かないね」
俺の横でのほほんさんが言う。
たしかに二人はにらみ合ったまま、数十秒動いていない。
そして遠くからISの訓練の音なのか、砲撃音が聞こえ、
その瞬間二人が動き始める。
まず、聡里がすり足で近づき先輩の腕を取る。
が、先輩はいとも簡単に腕を返し聡里を投げ飛ばす。
「っと!」
「へぇ、やっぱりやるね」
聡里は空中で回転しつつ、その勢いを利用して先輩にかかと落としを掛ける。
しかし先輩は今度は回転しつつかわし、聡里の足を掴む。
だが聡里はそのまま逆の足を地面につけ、力任せに先輩を放り投げる。
「さとりんって強いんだね~」
「ああ……俺も今観て驚いた」
投げられた先輩はそのまま左手で着地し、跳ね返るように戻ってくる。
そして右手を軸にカポエラキックを聡里の左胸にかける!
「これで、どう!?」
「まだまだいけます!」
聡里はその速度にあわせて体を横回転させて威力を殺す。
そして先輩の手を足払いの要領で払い、体を半回転させ立ち上がらせる。
そのまま先輩の右腕を掴み、聡里は一本背負い。
「コイツで決まりだ!」
「きゃぁっ!?」
先輩はそのまま床に叩きつけられ、一本。
一本勝負は聡里の勝ちとなった。
◇
「……ふぅっ」
どうにか、会長に勝てた……。
正直、かなりギリギリだったかも。
「まさかこの私が負けるなんてね。それじゃ、生徒会長を交代しないと」
会長にそういわれたけど、僕はそれを慌てて止める。
「ま、待ってくださいよ! 僕男子ですよ!? 女子校のリーダーなんてできませんって!
そんなことより、生徒会の出し物に提案があるんですが……」
そういって、僕は会長にアイデアを耳打ち。
興味深そうに聞いていた会長は、にやりと笑い握手を求めてきた。
「面白いじゃない。 その条件、飲むわ。存分に楽しませてもらうわね」
「どうぞ。でも、僕が渡す相手は決まってますからね?」
僕も言いつつ握手をかえし、二人して『ハッハッハ!』と笑い合う。
横で一夏が戦慄の表情でこちらを見ていたけど。
……楽しくなりそうだ。
◇
「と、いうわけで会長のトレーニングから助けてあげたんだから、
一夏は本腰を入れてトレーニングするように。
あ、でも会長にはアドバイザーとして来てもらったから」
僕は放課後の練習で、全員に発表。
僕と一夏、会長以外の全員はあっけに取られている。
「ねえ、聡里? なんでいきなり会長なのかな?」
「シャル、笑顔が怖い……。 会長が一夏の練習を手伝いたいって言ってきたんだよ。
僕はシャル一筋だから安心してってば。」
僕のその言葉に、また真っ赤になって僕を叩いてくる。
「さて、それじゃあまず、僕とシャルで『円状制御飛翔(サークル・ロンド)』をする。
一夏、このスタンスは射撃型だけど、白式にも射撃、というか砲撃武器がついた。
この動きを参考にして頭に叩き込んでおいて」
そう言って、僕とシャルはISを展開。
そのまま射撃と機体制御を同時に調整し、シャルと銃撃しあう。
それを五分ほど続けた後、一夏へのレクチャー。
しばらくはコレを続けていくしかないか。
後はエネルギー配分や戦術の組みなおしと、白式の微調整と、
トレーニングメニューの組みなおしかな。
ま、コレくらいなら余裕か。
続く。