Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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覚醒 ~つくられしモノ~
22:「王子」は彼らだ! 「シンデレラ」は誰だ!?


文化祭当日。

僕らのクラスは学校の中でもかなりの人気を誇っていた。

それは、学校の中で唯一男子がいるクラスだからしょうがないか。

そして、来る女子のテンションが高い高い……。

 

「聡里、注文だぞ」

「了解、姉さん」

これで、七人目かな。

まだ始まってからそんなに時間経ってないんだけどなー。

そんな事を考えつつ、僕は接客に入る。

 

「おや、サーノお嬢様。ようこそいらっしゃいました」

「あ、私の事知ってるんですか?」

お客さんは同じ一年のサーノ・シエロちゃん。イタリアの国家代表候補生で、

操縦しているISはテンペスタⅡのトライアルモデル。

 

「ええ、専用機持ち同士ですから、少々。

 それでは、メニューをどうぞ。内容が判らなければお聞き下さい」

そう言って渡したメニューには、いろいろ凄い名前のメニューがある。

 

「ねえねえ、『執事にご褒美セット』ってなんですか?

 それと、こっちの『執事がご奉仕セット』も、良く判らないんですけど……」

「ああ、そのメニューですか……。

 前者は、お客様に私、あるいは一夏がポッキーを食べさせて頂く物となっております。

 後者は私が、お嬢様にお好きなメニューを召し上がっていただくのを

 お手伝いさせて頂くものです。こちらは通常メニューに50円加算となっております」

その説明を聞いたサーノちゃんは悩んだ後言う。

 

「えっと、それじゃあトリプルアイスパフェを『執事がご奉仕セット』でお願いしますです!」

「かしこまりました。トリプルアイスパフェを、執事がご奉仕セットでございますね」

僕は復唱し、一旦キッチンへ戻り調理開始。

 

大き目のカップにストロベリー、ソーダ、バニラのアイスを乗せ、

それをフルーツで飾りつけチョコチップをかけ、

仕上げにウェハースを二本飾りつけ、お盆に載せて持っていく。

 

「お待たせしました、お嬢様。トリプルアイスパフェでございます。

 では、失礼いたします」 

そう言って、僕は彼女の隣の席へ座る。

 

「それではお嬢様、お口をお開けください」

「はいですっ! あーんっ」

口を開けたサーノちゃんの口に、小さめのスプーンでアイスを入れてあげる。

 

「お味は如何ですか? お嬢様」

「お、美味しいです~っ!」

なにやら頬を押さえて顔をキラキラと輝かせている。

 

なんでも、サーノちゃんは学園内ランキングで、

『妹にしたい子ランキング』の上位に入っている……らしい。

まあ、確かにこの子は守ってあげたくなるタイプだけど、シャルにはかなわないかな。

 

 

「むーっ、聡里ってば、他の女の子にあんな風に優しく……」

どうせなら僕だって、とシャルは思わずに居られなかった。

その時、聡里が待機スペースへ戻って来る。

 

「ごめん、シャル。遅くなった。あのお客さんが放してくれなくてね」

「ホントに遅いよっ! もう、そろそろ休憩だから、一緒に回ろうって言ったのに!」

ボクが怒って見せると、聡里は両手を合わせてボクに頭を下げる。

 

「御免なさい! だから、許してよ。お願い」

「……もう、しょうがないなぁ」

しっかり怒ってるのは伝わったみたいだし、もういっか。

 

「着替えてる時間がもったいないから、このまま行こうか? メイド姿も可愛いし」

「ほ、ほんとっ!? そ、それじゃあ、このまま行こうか!」

嬉しいな、聡里に褒めて貰っちゃった♪

 

 

と、いうわけで僕らが休憩に行こうとすると、例の盾無先輩が居た。

 

「先輩、何やってるんですか?」

「んー? 一夏くんと聡里くんのクラスだから遊びに来たよ」

しれっと言われて、僕はあきれてしまう。

そしてその先輩の横には、一夏がぐったりとしていた。

 

「さ、聡里……。先輩の相手を代わってくれ……」

「ゴメン、それ無理。 これから僕らは学園祭を見て回るから。

 一夏、先輩のことヨロシクね。じゃね~」

そういって出て行く僕らの背中に、一夏の「は、薄情者~~~~~っ!!」という叫びが

追いかけてきたけど、無視無視。 一夏もたまには苦労しなきゃ。

 

 

「それじゃ、何処行こうか」

「あっ、それじゃあ、ボクは料理部を見に行きたいよ。

 日本の家庭料理が作ってみたくて」

と言うシャルの言葉により、僕らは家庭科部へと到着した。

 

「あっ! 篠ノ之くんと、一時は男子だったと噂のシャルロットさんだ!」

そう言っていきなり部長と思しき女子がこっちに寄って来た。

 

「ねぇねぇ、噂は本当なの? 二人が付き合ってるって!」

「ええ、紛う事なき事実です。 ね、シャル」

「う、うん……」

僕らの言葉を聞いて、その場に居た女子は落胆の溜息半分、黄色い悲鳴半分で声を上げた。

女子校だから色恋沙汰に縁が無かったんだなー。

 

「あー、それじゃあ何か戴きます。シャル、何にする?」

「ふえっ? え、えっと、じゃあ肉じゃがを下さい!」

シャルは真っ赤になってるけど、どうにか肉じゃがを受け取った。

ついでに僕も同じものを注文する。

 

「特別にタダでいいわよ? その代わり、カップル二人の写真撮らせて?

 あとうちに投票して?」

公然と不正勧誘しないで下さい……。

 

「いえ、ちゃんと払います。はい二人分。あと写真はいいですよ?」

そう言って代金を払った後、僕らは肉じゃがを食べる。

 

「……もしかしてこの肉じゃが、圧力鍋使ってますね。

 あとなんか隠し味がありそう……あ、蜂蜜ですか? みりん少な目で、代わりに」

僕の言葉に、部長は驚く。

 

「へぇ、篠ノ之くんって舌良いんだね。その通りだよ。

 これは勧誘は難しいかもなぁ」

勧誘しようと思ってたのか……。

 

で、とりあえず肉じゃがを食べ終わって、写真を取らせて上げる。

その時シャルを抱き上げた絵をあげたのは、ちょっとしたサービス。

 

 

「もう! いきなり抱き上げるなんて、ビックリしたよ」

「あっはは、ゴメンゴメン。それじゃあ次、行こうよ。

 ちょっと美術部に興味があってさ」

と言ってシャルを連れて美術部に行く途中、正門の前を通ると見知った男子とその妹、

生徒会役員にしてうちのクラスメイトのお姉さんがいた。

 

「あれ? 虚先輩と蘭ちゃんと……弾! 久しぶり! 一夏にチケット貰ったの?」

「お久しぶりです、聡里さん。 あの時は教えてもらってありがとうございます」

「久しぶりだな……っておい聡里、そっちの金髪の女子は?」

弾は言ってシャルを見る。

 

「初めまして。 シャルロット・デュノアです。聡里、この人たちは?」

「昔なじみの五反田弾と、その妹の五反田蘭ちゃん。それから、生徒会役員の布仏虚先輩。

 弾、蘭ちゃん、虚先輩、この子は僕の『彼女』のシャルです」

僕の言葉に、シャルはいい加減馴れたのか腕を組んでくる。

 

「ま、マジかよ!? 聡里、お前うらやましいなこのっ!

 女の園に入学とか、立場替わりやがれ!!」

「そんなことで聡里さんを叩こうとしないでよバカ兄っ!」

と、五反田兄妹のナイスな漫才を、虚先輩はにこやかに眺めている。

って、こっちに寄って来た?

 

「聡里さん、あの男性はお知り合いですか?」

……ほう。

 

「ええ。かつての同級生ですよ。姉さんと引っ越す直前まで、一緒のクラスでした。

 ……先輩、最近では五歳差の夫婦とか居るのは当たり前ですからね?」

「な、何を言ってるんですか聡里さん!?」

先輩も真っ赤になった。面白いなー。

 

「まあ、頑張って下さい。という訳で、弾。

 一夏はしばらく来れないと思うから、先に案内するよ。

 鈴のクラスへ案内するよ。後で戻る時にね。うちも隣だから」

「お、おう。ありがとな」

弾は肩で息をしながら、こっちに手を挙げて返答する。

 

「それじゃー行きましょーっと」

 

 

「あっ、篠ノ之君! それに、男友達とデュノアさんも一緒だ!」

「篠ノ之君ですとっ!? では、爆弾解体ゲームやって行ってよ! はい爆弾!」

そう行って投げ渡された爆弾を、僕は調べる。

 

「……この配線がこれなら、ジャンパー線は要らないし、

 投げてきたってことは振動センサーもなし。

 ってことはコレがこれだから……」

と呟きつつ僕は爆弾を解体していく。

 

「な、なぁ聡里。 お前ら、こんな勉強もするのか……?」

「ん? 勿論。 ISを使えるってことは、物騒な立場に身を置く事になるからね。

 あ、あとコード二本だ」

僕の呟きに、美術部の部長は驚きの声を出す。

 

「うそっ!? まだ一分も経ってないのにもう最終フェイズ!?」

「んー、これは……しょうがない、この手で行くか」

そういって僕は、二本のコードの表面のカバーをはがし、

それぞれむき出しになった導線を掴む。

 

「……よし、この電気の流れならこっちだな」

そう言ってケーブルを切断する。

すると時間を表示していたモニターに、『祝・解体成功!』の文字が表示された。

 

「おめでと~~~っ! しかもきっかり一分で解体成功って、新記録だよ!」

そんな記録をたたき出しちゃったか……。

 

「いえ、そんな……」

「それにしても、コードを掴むだけで電気の流れが判るなんて、聡里くん、一体何者?」

部長はそういうと、にやりと笑っていた。

 

「ただの高校生ですよ。 ……弾? どしたの?」

「……やっぱり俺、ここ入学できたとしても遠慮しとく」

妥当な反応、というか賢明な判断だ。

 

 

「んー、それじゃ戻ろうか。弾、鈴のとこへ案内するよ。蘭ちゃんもついておいで」

僕は爆弾解体成功の景品であるお菓子の詰め合わせ(これ結構助かる)を持って、

シャルと弾、蘭ちゃんを連れて、二組へ着た。

 

そこには、チャイナドレスを着て、いつもはツインテールにしている髪を

シニョンでまとめた鈴が居た。

 

「やっほ、鈴。調子はどう?」

「聡里、アンタたちのところへ持っていかれっぱなし……って、弾と蘭!?

 なんでここに居るのよ!」

鈴は弾と蘭ちゃんを見て相当驚いていた。

蘭ちゃんは鈴に見とれていたけど、弾は鈴を見るなり大笑いする。

 

「す、鈴っ!? 何やってんだお前、似合わねー!! 大体、なんで……がふっ!?」

そう言った弾の顔面には鈴が投げたお盆が、後頭部には蘭ちゃんのチョップが、

わき腹には僕の掌底が入り、弾はうずくまる。

 

「「「もうちょっとデリカシーを持てよお前(アンタ・バカ兄)!!」」」

僕らのそのツッコミに、二組にいた女子たち全員が大きく頷いた。

 

「お、お前ら……」

弾はそう言ってくずおれた。

 

「すいません、ウチのバカ兄が失礼を……」

「あー、もういいのよ。 コイツは昔からこうだったし」

どうやら鈴と蘭ちゃんは意気投合したらしい。

 

「それじゃあ、僕らはそろそろ自分らのところに戻るよ。

 三人とも、またね。行こう、シャル」

「うん、聡里」

と三人に言い、僕はシャルと一緒に教室へ戻った。

 

 

「相変わらず凄いなこの人数。……って、もしかして一夏も休憩入っちゃった?」

「そうなのよ! ほら篠ノ之くん、五番テーブルと二番テーブルに紅茶セット!

 それから四番テーブルでゲームね! 急いで!」

「了解です」

そう言って僕は紅茶セットのお盆を両手に持ち、

それぞれのテーブルへ配膳、その後四番テーブルへ移動しゲーム。

そんな事を小一時間繰り返したところで、召集が掛かった。

誰あろう、生徒会長様からだ。

 

「ハァーイ、こんにちはー。 聡里君、演劇へ出演するように!」

……とうとう来たか。

 

「やっと来ましたか。それじゃ、さっさと行きますよ」

「おっけー。それじゃデュノアさんに篠ノ之さん、オルコットさんに鈴音さんも来てね」

「「「「ええっ!?」」」」

という訳で、僕はステージの近くの更衣室で着替え、あれよあれよという間に舞台に居た。

 

 

「先輩、準備はどうですか?」

僕は隣に居る一夏に聞こえないように、逆隣の盾無先輩に耳打ち。

 

「計画は順調ですか?」

「勿論。あの時言っていた条件、しっかり通しておいたわ。

 というわけで、頑張ってシャルロットさんに渡してあげてね。

 ……それと、一つお願いがあるわ」

先輩は、表情を引き締め言う。

 

「どうやら、織斑君を狙う人物が学園に入り込んでいるらしいわ。

 ……聡里君、貴方に織斑君の護衛をお願いしたいのよ」

なるほど、そういう事ですか。

 

「了解しました。 会長が肩入れするわけには行きませんからね。

 演劇は、全部アドリブなんですよね?」

「勿論よ。それじゃ、そろそろ始まるから。 頑張ってね、二人とも」

といわれて、僕らは手を挙げて答える。一夏は力なく、だったけど。

 

 

『むかしむかしあるところに、シンデレラという少女がいました。

 ……否、それは最早個人名ではない。

 群がる邪魔者をなぎ払い、数多の舞踏会を駆け抜け、

 灰燼をかぶる事をも厭わぬ可憐な乙女の称号。それが『灰被り姫(シンデレラ)』!』

「「……はい?」」

僕らは流石にあっけに取られる。というか、ムチャクチャするな、生徒会……。

 

『今宵もまた、シンデレラたちの戦いは始まる。

 王子の冠に隠された隣国の秘密を目指し、少女が舞踏会(せんじょう)を舞う!』

そのアナウンスと同時に、一夏に鈴が飛び掛る。

 

「あっぶねえっ?!」

「いいから王冠を寄越しなさい! それさえ渡せば文句は無いわ!」

鈴はそう言って一夏に攻撃を仕掛ける。

その一夏の頭に、レーザーサイトが当たっている……って!?

 

「ッ!?」

反射的に宵闇を起動し、実体シールド『鉄(くろがね)』を展開。

一夏を銃弾からかばって発射点を見ると、セシリアが居た。

 

「……セシリアだったか。 だったら大丈夫かな」

そう言って宵闇の展開を解除すると、僕は声を上げる。

 

「国の秘密を明け渡すのは心苦しいが、僕には心に決めた人が居る!

 さぁ、ここへ来てくれ、私の愛する人よ!」

その声にこたえるように、顔を赤らめながらも僕の隣に来るシャルロット。

そして僕は彼女の前で片ひざをつき、彼女に言う。

 

「祖国のため、などといいつつ、僕自身が大きな秘密を背負わされてしまった。

 だがしかし、君という人が居なければ、王子と言う立場にいても仕方ない。

 さぁ、僕の王冠を取ってくれ。 そして僕は、君とともに往こう」

そういわれたシャルは驚いていたが、すぐ僕の思惑に気付いてくれた。

 

「判りました。貴方の覚悟は、そこまで固いものなのですね。

 私も、貴方のことをいつも思っていました。

 では……ともに往きましょう」

シャルが王冠を取り、僕の差し出した手を掴む。

その時、会場からは大喝采が沸き起こった。

……ヤバい、今になって物凄く恥ずかしい。

そして僕がシャルの手を取り、舞台袖に引っ込むとまたアナウンスが流れた。

 

『デュノア嬢に自らの全てを託した聡里王子は、

 そのまま何処とも知れぬ場所で平和に暮らすのであった……』

 

 

「「……恥ずかしかったぁぁぁっ」」

舞台袖に戻り、僕とシャルは同時にそういった。

いつの間にか主演男優・主演女優になっちゃってたよ僕ら……。

 

「お疲れ様、聡里くんにデュノアちゃん。

 それじゃ、言われた通り同室になれるように計らっておくわね。

 ……それで、もう一つの方は」

「わかってます、盾無先輩。 宵闇の部分展開許可を。

 迷彩パッケージを使って、影から守りますよ」

と許可をとり、僕は宵闇の右腕と胴体部分だけ展開し、

右腕に特殊万能迷彩パッケージ『蜃気楼(シンキロウ)』と、

背中にエネルギータンクパッケージ『器(ウツワ)』を装着。

そして、僕は光学迷彩モードを起動し、一夏の行った方向へ駆け出していた。

 

 

僕が一夏を見つけた場所は、一夏が着替えていた更衣室だった。

 

「あの女性は……もしかして」

そういって僕は一夏たちの後をついて、気付かれないようにその更衣室に入った。

 

「あ、あの。巻紙さん、どうして俺を助けてくれたんですか?」

一夏はその女性を知っているらしい。

でも、あの女の人、どこかで見覚えがあるんだよね……。会っていれば絶対覚えてるのに。

 

「はい、この機会に白式を頂こうと思いまして」

……!?

 

「は?」

「一夏、その女から離れろッ!」

僕の声が聞こえたのか、一夏がその場からバックステップした瞬間、

その女の蹴りが一夏がいた空間を凪いだ。

 

「ッチ! 何処に居やがる、篠ノ之聡里!」

僕の事を知っている!?

言われた僕は一夏とその女の間に割り込み、光学迷彩を解除。

そして、宵闇を完全展開し、一夏をかばう。

 

「聡里!? 何でお前、ここに……」

「一夏、いいから白式を展開しろ! この女、ISを持ってるぞ!!」

僕が叫び、一夏が白式を起動する。その瞬間、その女はにやりと笑い、言う。

 

「待ってたぜ、ソイツを起動するのをよぉ」

その声とともに、女のスーツを内側から引き裂き、機械の爪が飛び出してくる。

 

「やぁっとコイツを使って暴れられるからなぁ! 食らいやがれ!」

その声とともに、背後にある『爪』……装甲脚が僕と一夏に向き、砲口を開く。

 

「「ッ!!」」

一夏はかわし、僕は物理シールドを展開して防御。

その装甲脚は、アメリカ製のIS『アラクネ』の物だった。

 

「お前、何者だ! なぜISを狙う!」

「ああん? しらねーのかお前。 悪の組織の一人だよ」

悪の組織……まさか!?

 

「『亡國機業(ファントム・タスク)』……!?」

「やっぱりお前は覚えてた(・・・・)か! そうだ! 私はオータム!

 秘密結社『亡國機業』のメンバー、オータム様だ!!」

そう言って女……オータムは装甲脚で僕に殴りかかってくる。

僕はそれを流すだけで精一杯だった。

 

「聡里! こいつっ!!」

「やめろ一夏、来るなッ!」

僕は叫んだがすでに遅く、一夏はオータムのIS……『アラクネ』に斬りかかっていた。

だが、白式の雪片は八本の装甲脚のうち四本でがっしりと掴まれ、

そちらに気をとられた僕も四本の装甲脚に両腕を掴まれてしまう。

 

「っく! しまった……!」

「そして、コイツでお前らを捕まえる、っと」

その言葉とともに、あやとりのようにエネルギーワイヤーをもてあそび、

一夏と僕に向けてそれを投げてくる。

そしてそれらのエネルギーワイヤーは僕らに絡みつき、

すぐに動きを封じてしまう。

 

「そして、『コイツ』だ」

そのまま、四本足のメカを取り出し、それらを僕らの目の前に放る。

そして、そのメカは僕たちのISの装甲に組み付き、

電流のようなエネルギーが僕らの体に流れた。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 

電流が収まった時、俺は拘束が緩んでいるのに気がついた。

 

(今なら……!)

俺はそう思ってオータムに殴りかかったが、すぐに弾き飛ばされてしまう。

理由は簡単だ。白式が無いからだ(・・・・・・・・)。

 

「白式……!? どうしたんだ、白式!」

「へっへ、お前の大事なISなら、ここにあるぜ。『剥離剤(リムーバー)』つってな。

 ISを強制的に剥がせんだよ! 生きてるうちに見れて良かったなァ!

 ……にしても変だな。もう一人のガキのISは、なんでこっちに飛んでこねぇんだ?」

その台詞で、俺はもう一人、聡里のほうを見た。

 

「聡里!?」

「kァjdmがjpfmchargぁおpjl、ぐdpfk!?」

俺が見たとき、聡里は宵闇が解除された状態で空中に浮かび(・・・・・・)、

のけぞった状態で、おおよそ『人間が出せない声』を上げていた。

 

「さ、聡里……!?」

「へぇ、コイツは面白ェ。 コイツの『本性』が刺激されて復活しやがったか?」

オータムは言い、聡里に向かい叫ぶ。

 

「オイ、PTS-AP00! 再起動しろ! 隊員認証コード、オータム!」

オータムのその台詞を聞いた聡里は、ゆっくりと降下し、地面に立つ。

そしてその両目は、『真っ赤に』染まっていた。

 

「システム再構築完了。エラー多数。機能抑制システム、無効化。

 お久しぶりです、ミス・オータム」

聡里の様子がおかしい。 なにか、機械のような……。

俺がそう考えると、入り口のドアを吹き飛ばし、生徒会長が突入してきた!

 

「盾無さん!」

「織斑くん、聡里くん! その女から離れなさい!」

会長はISを展開し、オータムを牽制する。

……が、聡里が会長に殴りかかる。

 

「何をするの、聡里くん!?」

「聡里、とは誰ですか?」

聡里が、そう返答する。そして、さらに続ける。

 

「僕は、亡國機業製人工兵士(ファクトリーソルジャー)、

 『PTS(Phantom Task Soldier)-AP00』。

 敵性ISを確認。迎撃します。ミス・オータムはこの間に逃亡を……っく」

言いかけた聡里は、頭を押さえふらつく。その瞳は元の色に戻っていた。

 

「聡里!」

「一夏……白式を呼べ! そして、僕を……殺せ!」

「何を言ってるんだよお前! それに、遠隔起動なんて……」

俺はうろたえるが、しかし聡里はすぐに瞳の色が真っ赤になり、宵闇を展開。

先輩にショットガンを至近距離から打ち込んだ!

 

「きゃぁっ!?」

「先輩!! くそっ……やるしか、ないか!」

俺は右手首を押さえ、意識を集中する。

 

「来い……白式!」

その意識に答えるように、オータムの手から白式のコアが『消える』。

 

「なっ!?」

「白式、緊急展開! 零落白夜、発動!」

俺は白式を発動し、オータムに斬りかかる。しかし。

 

「ミス・オータムに攻撃はさせません」

聡里が宵闇で割り込んで来て、俺は止まってしまう。

 

「邪魔するな聡里! お前、なんで……!」

「ですから、僕は聡里ではありません。僕はPTS-AP00。貴方がたの敵です」

そのまま聡里は俺にグレネードを打ち込んできた。

 

「ミス・オータム。予想外のファクターですね。

 ここは早急に撤退を。時間稼ぎはさせていただきます」

聡里の台詞に押され、オータムはアラクネで壁を吹き飛ばし、逃亡してゆく。

 

「ま、待ちなさい!!」

「貴女の相手は僕です、ロシア代表・更識盾無」

後を追おうとした盾無先輩を横から再びグレネードで吹き飛ばす。

そして、そのグレネードからスモーク弾を打ち出し、室内を煙で満たす。

 

「っく、聡里!」

俺は慌てて外へ飛び出す。だが、見えたのは遠くへ高速で飛んでゆく、

アラクネと宵闇の姿だけだった……。

 

 

「くそっ、くそっ、くそっ!!」

オータムはIS学園から遠く離れた公園に着陸した。

聡里はナビデータを送られ別行動で先に帰還しているが、

オータム自身は抑えきれない怒りをある程度落ち着けるため一度降下していた。

 

(あの女、デタラメ言いやがったな!? たった一度しか剥離効果が無い上に、

 一度使用されれば遠隔起動可能なんて聞いてないぞ!)

そう心の中で叫びつつ、オータムは喉の渇きを癒すべく、

公園の水のみ場で水を飲み始める。 しかし、その途中で水が『空中で』止められる。

 

「ん? ……ッ!? AICか!」

「その通りだ、亡國機業」

オータムは叫び、後ろへ飛び退りAICを交わそうとする。

しかし、着地点の足元へAICを発動され、足を固定される。

そのまま、オータムは背中側へ倒れこんだ。

 

「くそっ、ドイツのISか!」

「貴様に質問は許されない。 貴様のISはアメリカの第二世代型だな。

 何処で手に入れた。 言え」

「言うワケねーだろうが!」

そんな押し問答の中、ラウラに同時に二本の通信が来る。

 

「気をつけて、そっちに何かが行った!」

「こちらにも一機来ています! 応援はできません!」

その声とともに、ラウラに音も無く、グレネード弾のような物が飛んできた。

そしてその弾はラウラの目の前で破裂し、まばゆい閃光を放った。

 

「こ、この装備は……!?」

ラウラが狼狽しているさなか、シャルがラウラの隣に降り立った。

 

「ラウラ、大丈夫!?」

「あ、ああ。だが視界が効かん。何が起こっている……!?」

ラウラが言った瞬間、オータムの横の空間が揺らぎ、『黒い機体』が現れた。

 

「無事ですよね? ミス・オータム」

「お前、先に戻ったんじゃねーのかよ!?」

そう、そこに現れたのは紅い瞳の少年……PTS-AP00となった聡里だった。

 

「さ、聡里……」

「なぜ皆さん、僕のことを聡里と呼ぶのでしょうか。

 僕は亡國機業の遺伝子強化試験体で、貴女がたの敵です。

 では、さようなら。 僕らは帰らせていただきます。

 ゼフィルス、そちらの様子はどうですか?」

聡里はオープン・チャネルでどこかに通信を送る。

 

『AP00か。オープン・チャネルで通信とは無用心だな』

「申し訳ありません。 プライベート・チャネル用の許可コードが無いもので」

『ふっ、まあいい。こちらも一号機は落とした。

 オータムを連れ帰還しろ。 お前なら余裕だろう?」

「勿論です。 通信、終了します」

聡里は言うと通信を遮断する。

そしてその聡里に、二人が詰め寄る。

 

「どうしてだ、兄さん! どうして兄さんが亡國機業に!」

「兄さん、ですか。私は、亡國機業により作られ、完全な兵士となるべく作られた存在。

 貴女は、ドイツの遺伝子強化素体(アドヴァンスド)でしょう? 同じ様な物です」

聡里は言いつつ、シャルを見る、すると、聡里は再びうめき、頭を押さえる。

 

「ぐっ、あっ……!?」

「聡里っ!?」

シャルが聡里に駆け寄ろうとする。だが、それは聡里自身により止められる。

 

「ごめ、んね。シャル。 これが、僕の、本性。 君たちの、敵に作られた、存在。

 早く、殺してくれ。 じゃないと、また、被害が、増える……!」

と、必死で自身の行動を抑える聡里。

だが、シャルもラウラも銃を聡里に向けつつ、撃つ事ができない。

 

「……ダメ。駄目だよ。 ボクには聡里を撃てないよ!!」

「わ……私もだ。 兄さんを撃つなど……っ」

「シャルッ……あ、ぐ、あぁぁぁぁァァァァっ!!」

そして再び聡里は目が赤く染まり、スタングレネードとスモークグレネードを同時使用。

シャルとラウラの視界をふたたび無くした後、高速飛行用パッケージを起動し、

二人を振り切って何処とも知れぬ場所へ飛んでいった。

 

「聡里っ! さとりぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

そして夜の公園に、一人の少女の叫びが木霊した……。

 

続く。

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