Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
亡國機業・強化兵士研究機関『Evo.』秘密基地
「みなさん、お久しぶり。零です。何年ぶりになるでしょうか」
僕、PTS-AP00……通称『零(ぜろ)』は数年ぶりの帰還に、仲間や上司に挨拶をする。
「良く戻ったな、零。いや、今は『篠ノ之聡里』だったか」
「ドクター。なぜ皆、僕を聡里と呼ぶのでしょうか。
僕に知らされずに、コードネームが確定されたのですか?」
僕の質問に、ドクター……僕を生み出し、調整してくれていた女性が笑いながら言う。
「そうか、君はその間の記憶が混乱しているんだな。
よし、記憶データをインプットしておくか。ついでにシステムエラーも調整するから、
準備をしてくる。その間、皆に挨拶しておくといい。新たなメンバーが殆どだがな」
ドクターはそれだけ言うと、メンテナンスルームへ入った。
「……さて、では皆さん、改めてよろしく。 僕が居た時からのメンバーは……?」
その声に、数人のメンバーが出てきた。
「久しぶりですね、零兄様。覚えていますか? 私は疾風です」
そう言った彼女は黒髪をショートカットにし、鋭い眼光を放つ瞳をこちらに向けている。
「ああ、なるほど。刃金 疾風(はがね はやて)さん。久しぶりですね。
そちらの四人も、かつての同僚ですか?」
僕の台詞に、彼女達はそれぞれ紹介しなおしてくれる。
「忘れちゃったの、零お兄様? お兄様が居なくなる直前に製造された、
クロエ・クラリーだよ! それとこっちがエイミーお姉さま!」
小柄で金髪のぱっつん髪の少女がそう言い、
流れるような銀髪を縦ロールにしたいかにも『お嬢様』といった女性を示す。
「あらあら、わたくしの紹介もさせてくださいな。
お久しぶりね、零さん。 エイミー・エアリーです」
「ああ、クロエにエイミーさん。 本当にお久しぶりです。
またいつか、貴女たちの料理と紅茶をいただけますか?」
「ふふっ、喜んで」
そういったところで、中性的で凛々しい顔立ちの、
僕より背が高いラテン系の女性が声を掛けてきた。
「ハーイ、ゼロ。 私のこと覚えてる? 波乗り女のフィオナちゃんだよ」
「フィオナ! 久しぶりだというのに兄様に失礼を!」
そう言って女性的ながら、よく鍛えているゲルマン系の女性がフィオナに怒鳴る。
「いいんですよ、ハンナ。 二人もお久しぶり。
フィオナ・フィーノとハンナ・ハインリッヒ、で合っていますよね?
皆さん綺麗になっているので、判りませんでした」
そう言われ、五人は笑顔を返してくる。
「それでは、残りの皆さんも紹介していただけますか?」
「おっと、それは後だ」
僕が残りのメンバーの事を聞こうとすると、ドクターが呼んできた。
「ドクター。メンテナンスデッキの用意、終わったんですね」
「ああ。紹介の機会は後で取ろう。 それと、『壱』の事なのだが」
その言葉を聞き、僕は表情を変える。
「壱が、どうかしたのですか?」
「ああ。壱は今、亡國機業の実行部隊に出向している。
だが、促成栽培故、やはり実働データが圧倒的に少なくてな。
お前のデータをできれば流用させてもらっていいか?」
その質問を肯定し、僕はメンテナンスベッドに寝る。
「ふむ……ドンナーオージェシステムとPICが、思考サーキットと干渉しているな。
それにワンオフ用や通信機能の神経回路に、対抗ナノマシンが注入されている。
これを作ったのは篠ノ之博士か……。だが、除去は可能だな。
零。少々苦しい事になるが、良いか?」
その質問を再び肯定。 その直後、全身に電流が走る。
「……」
「流石だな、零。この程度の電流なら平気というわけか。
……よし、システム正常化完了だ。 干渉部分の調整も済んだぞ。
これで、エラーを吐いていた部分は大方元に戻ったはずだ」
言われ、メンテナンスベッドから起き上がり、手足を動かす。
「ふむ、久しぶりに運動機能を再稼動させてみるか?」
「そう、ですね。 では、トレーニングルームを使わせていただけますか?」
僕が言った瞬間、ドクターはトレーニングルームの使用許可証を出してきた。
「そう言うと思ってたよ。 もう準備はしておいた。
難易度はどれくらいでするつもりだ?」
「そうですね……久しぶりなので、難易度設定はvs.ハンドレットで。
そういえば僕が使っていたIS……宵闇の解析はどうなりましたか?」
「なかなか変わった奴だな、あの機体は。 従来のどのISとも違う進化だ。
だが、今は『唯』がコアネットワークリンクで『対話』している。
零、お前のコアネットワーク機能はどうだ?」
ドクターに聞かれるが、僕はまだ使用することが出来ない。
その事を伝えると、ドクターは苦笑しながら返事してきた。
「まあ、仕方ないな。お前は試験体第一号の上、数年のブランクがあるのだから。
では、身体テストに行って来い。その間に、そっちのナノマシンも用意しておくさ」
その声に送られ、僕はトレーニングルームへ向かった。
◇
「……ここか、例の『
「ッ!? 何者だ、貴様! ここは関係者以外……ぐわっ!?」
基地への侵入者……エムを呼び止めた兵士は瞬間、吹き飛ばされる。否、蹴り飛ばされる。
「貴様、止まれ! お前は今、ここに居る全員に狙われている!」
一人が吹き飛ばされたことで警戒した兵士たちは、一斉にそれぞれの武器でMを狙う。
しかし、エムはにやりと笑うと『展開』と呟いた。
そして、彼女の周りで光の粒子が舞い踊り、その光が収まった後には、
蒼い機体……サイレント・ゼフィルスを纏い立っていた。
「あ、IS!? 総員、退避!」
部隊長が叫び、総員がその場から移動した瞬間、隊員たちがいた所をビームが通り過ぎる。
それも、確実に『致命傷にならない』部分を狙って、である。
(ふん、殺さないというのも、面倒なものだ)
そう、エムは上官である『スコール』からの指令を受け、
『ISを使った殺人』をしないように戦闘をしているのだった。
だが、いい加減敵の数が多いことが面倒になったエムは、
ゼフィルスの出力に任せて突撃し吹き飛ばすという暴挙に出る。
(最初からこうしておけば良かったな。……ん?)
そう言うエムの進行方向……
『銀の福音』が封印されているという情報がある区画への進路に、
一人の人物が立っていた。シルエットからして、女だ。
(……ふ、くくっ)
エムは口の中のみで笑い、その女のあばらを砕けばどんな感触か、などと考えていた。
しかし、ゼフィルスの腕に羽根のような形状のエネルギー弾が突き刺さり、爆ぜる。
「ッ!」
その攻撃を受け、すぐに体制を立て直すが今度は脚部装甲に着弾、爆発。
慢心していたが故の被弾だ。
「お前は……」
「ナターシャ・ファイルス。国籍は米国、ISテストパイロット。
そしてこの子、『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の登録操縦者。
『あの子達』に救ってもらったこの子を、易々とは渡さない!」
その女……ナターシャは、銀の福音を完全に展開し、こちらに狙いを定める。
福音自体も暴走した時のままではなく、腕部に『銀の鐘(シルバー・ベル)』の
試作一号機である、腕部装備砲(ハンドカノン)型を接続していた。
「ち、封印は偽装情報か」
エムは言った瞬間、違和感を感じその場から飛び退る。
その瞬間、エムが居た場所のすぐ横の壁が吹き飛び、
粉塵を纏いつつ『虎模様(タイガーストライプ)』が飛び出してきた。
「……アメリカ製・第三世代型IS『ファング・クエイク』か」
「おう、そして国家代表、イーリス・コーリングだ」
「なるほど。では、その機体も戴くとしよう」
エムはイーリスの自己紹介をさらりと無視し、ナイフを逆手持ちにしつつ飛び掛る。
「っと、危ねぇな!」
その台詞と共に、エムのナイフは真っ二つにへし折られる。
そして、その勢いのままエムの顔目掛け拳を向け、寸前で止める。
「お前、バカか? そんな不安定な実験機で私ら二人に勝てるかよ。
降伏しろ。 お前も殴死したくねーだろ?」
その台詞を言われた瞬間に、エムにプライベート・チャネルで通信が入る。
『エム、聞こえるわね。 今ここで貴重なISを失うわけにはいかないわ。
一旦退きなさい。応援はすでに送ってあるから』
「……了解」
スコールの命令に従わなければ、エムは中枢神経を焼き切られる。
『一応』その命令には従っているエムは、素直にその場から後退する。
それも、狭い施設の中で、『後ろ向きに』瞬時加速(イグニッションブースト)
で、だ。
「へぇ、敵ながら器用なマネすんじゃねーか!」
「感心してないで! 急いで追うわよ、イーリ!」
そのまま後を追おうとする二人の頭上から(・・・・)、妨害が入った。
「な、何だ!? このドリル!」
「やれやれ……とんだ失態ですね、エムも。
まあ、あの機体は閉所での戦闘に向いていないですし、仕方ないでしょう」
などといいつつ、ドリルを使い『天井を貫通して』侵入してきた敵は立ち上がる。
その『少年』の顔を、ナターシャは良く知っていた。
「サトリ・シノノノ……!? なんで貴方が!」
「やはり、貴女も僕をそう呼ぶのですか。 もううんざりです。
お仲間にも伝えて置いて下さい。僕は『零』。亡國機業の零です」
聡里、否、零の台詞にナターシャ、イーリス共に固まる。
「では、エムも逃げ切ったようですし、僕はこれにてお暇します。
さようなら、ナターシャ・ファイルスにイーリス・コーリング」
それだけ言うと、零は強行工作パッケージ仕様の宵闇の背部大型ブースターを点火し、
自分が開けた穴を戻っていった。
「ッ、待て!」
慌ててイーリスが後を追おうとするも、すでに遅い。
「あいつ、こんな隙間を戦闘速度で飛んでやがる!
アイツの機体でも、壁まで数センチしかねーんだぞ!?
バランス崩したら壁に激突して粉々じゃねーか! 狂ってる!」
イーリスの叫びを聞きながら、ナターシャは連絡を入れていた。
アメリカ政府、そして、IS学園へ、である。
◇
IS学園、一年一組。
教室の中は、これまでになく沈んだ空気になっていた。
「では、ホームルームを始める。 ボーデヴィヒ。デュノアは、まだ……?」
「はい。 姉さんは相変わらず、放心状態です。
あれからもう一週間も経っているというのに、何もしようとしません。
教官……。兄さんは、あれから、どうなりましたか?」
ラウラの問いに、千冬は溜息をつき返答する。
「あいつの情報はある」
その台詞に専用機持ちを筆頭に、クラスの全員が千冬に注目する。
「本当か、千冬ね[ゴスッ]いってぇぇぇっ!」
「織斑先生、だ。 ……ゴホン。 篠ノ之聡里の事だったな。
アイツは昨日、アメリカに現れた。『零』と名乗ってな。
そして、ISの強奪を幇助した。 つまりは、国際犯罪者だ。
あるいは、テロリスト、と言ってもいい」
その言葉に、クラスの全員に動揺が走る。
「……嘘だ」
「本当だ、織斑」
「嘘だッ! あの聡里が、そんな事をするハズが無い!」
一夏が千冬に怒鳴る。しかし、そんな時に教室の黒板型モニタが勝手に起動し、
そこに、うさみみをつけた人物の顔が大写しになる。
『本当だよ、いっくん』
「たっ、束さん!?」
そう、束がどこからか、学園のシステムをハッキングしていたのだ。
『ちーちゃん、これからいっくんと箒ちゃん、それといっくんたちの友達の四人を連れて
グラウンドへ来て。 ……さーくんについて、教えなきゃいけないことがあるの』
束には珍しい真剣な表情を見て、千冬もそれを認め、学園上層部と連絡を取る。
その申請が通り、千冬は通話を終了させた。
「聞いての通りだ。織斑、篠ノ之、オルコット、鳳。ついて来い。
ボーデヴィヒ。デュノアを呼んで来い。
……聡里のことを知りたいなら来いとでも伝えてやれ。
残りの生徒は自習だ! 山田先生、頼むぞ」
「はい、任せてください。 織斑先生、篠ノ之君をお願いしますね」
「……ああ、わかっている」
千冬は言うと、四人を引き連れグラウンドへ行く。
ラウラは、自室……シャルとの相部屋へと走った。
◇
「姉さん! 姉さん、来てくれ!」
私は部屋に書け戻り、シャルロット姉さんに声を掛けた。
シャルは、うつろな目でずっとベッドに潜り、布団を被ったままだった。
「……」
「姉さん、来てくれ! 兄さんの事で、篠ノ之博士から話があるという事だ!」
それを聞いたシャルの目に、光が戻る。
「……! さとりっ!」
「そうだ! だから、すぐにグラウンドへ!」
それを聞いたシャルは着替えすらせずに窓から飛び出し、
ラファールを展開してグラウンドへ飛んだ。
その行動速度は、軍隊で鍛えたラウラですら置いていくほどだった。
◇
「デュノア! お前は何を考えて……まあいい。事情が事情だ」
ラウラがグラウンドに着くと、そこには驚いている一夏たち六人と額を押さえた千冬、
そして頭を押さえてうずくまっているシャルがいた。
「あ、あの。教官。なぜ姉さんはこのような状況に?」
「ここでは先生だ。 いきなり校則を破り、ISで飛んできたからな。いつものあれだ」
言って出席簿を見せてきた千冬の様子から、ラウラは状況を察した。
「さて……。聞いているんだろう? 束。出て来い」
千冬の台詞に反応するように、上空から落下音が響く。
それに反応して全員が避難した瞬間、グラウンドに何か大きな物体が降ってきた。
「な、何よ!?」
「一夏さん。このパターン……」
「ああ、セシリア。 多分それで合ってる……」
鈴が驚愕の声を上げ、セシリアと一夏は溜息をつく。
そして落下してきた物体……にんじん型移動用カプセルから束が飛び出してきた。
「お待たせ、みんな。 それじゃあ、さーくんについて、説明するよ。
この情報をどう扱うか、ちーちゃんたちに任せるよ。
私にはどうすればいいかよくわかんないんだ。
でも、この情報を公開してもしなくても、さーくんは凄く不利な立場に置かれると思う」
言って、束は黒板ほどの大きさの空中投影ディスプレイを起動し、
そこに聡里のデータを表示する。
「最初に結果だけ言うよ。さーくんは……『人間じゃない』」
その言葉に、千冬以外の全員が言葉を失った。
「ど、どういう事!? 聡里が、人間じゃないだなんて……!」
シャルは束に食って掛かる。
「落ち着いて。えーっと、シャルロットだっけ?まず、データのここを見て」
束は言いつつ、聡里の心臓の部分の表示を見せる。そこに書いてあった文字。それは。
「……生体、ISコア……!?」
「そう。さーくんの心臓は、私が昔、実験機として作ってたISコアの
プロトタイプと、人間の心臓が融合された物、なんだ」
その言葉を聞き、箒が質問する。
「つまり、聡里は『人間の形をしたIS』ということなのか、姉さん!?」
しかし、束は微妙な顔をする。
「んー、ちょっと違うかな。 人間型のISじゃなくて、ISの機能を持った人間。
それこそ、そこの銀髪の……ラウラかな? の発展系ってとこだよ」
と、唐突にラウラを話題に出す。
「わ、私の?」
「そう。 キミは、左目に擬似的にだけど、ハイパーセンサーを搭載してるでしょ?
さーくんは、それがもっと進化したもの。 さーくんは、全身の筋肉、内臓、骨格、
神経回路にいたるまで、全てにISの機能が融合してるんだよ。
言うなれば、生機融合体……サイボーグ、ってことになるのかな。
多分……さーくんなら、エネルギーシールドとPIC、
それとワンオフアビリティも発動すると思う」
その説明を聞き、その場の全員が驚く。
それはそうだろう。 生身で、ISと同等に近い戦闘能力があるというのだから。
「しかもさーくんには、遠隔コントロール用のナノマシンと、
人格プログラムが搭載されてたの。 その人格のコードネームは……『零』」
その名前で、千冬は頷く。
「アメリカ国籍の基地を襲撃した人物の一人も、『ゼロ』と名乗っていたそうだ。
……やはり、篠ノ之聡里で間違いないだろう」
「だろうね。 しかも、さーくんのシステムは、ISに乗ると本領を発揮するんだ」
「本領、ってなんなんですか?」
今度は鈴が質問をする。
「乗っているISと、一体化することができるんだよ。
だから、操縦のタイムラグが一切無くなる。
……本当は、私が宇宙空間での危険減少用に考えてた、ISとのリンクシステムなんだ。
人体をかなりいじるから、開発中にデータは捨てたはずなんだけど……」
といいつつ、束は手を握り締める。
「それで、多分いっくんたちが『剥離剤』を使われたことで、私が注入してた
抑制用のナノマシンが無効化されちゃったのが原因だと、私は思う」
その説明も重ねてされる。
本来の聡里の機能を抑えるため、束はそれと干渉するナノマシンを製作し、聡里に注入。
結果、PICやエネルギーシールド、単一能力などISとしての機能、
さらに常人離れした身体能力をある程度抑えていた。
だが聡里の意思でそれらのプロテクトはある程度解除できるようになっていた。
聡里がラウラと肉弾戦したときの身体能力や、ドンナー・オージェはその機能。
しかし、その抑制用ナノマシンが『剥離剤』によりすべて崩壊し、
近くに居た『亡國機業』の機体のシグナルに反応して『零』として再起動した。
という事である。
「……多分、今のさーくんは、さーくんじゃない。
体はさーくんでも、中身はただの戦闘機械だよ。
ただ、戦う事だけをプログラムされて、
邪魔になるなら、かつての仲間だって容赦なく殺す。
昔の、優しかったさーくんは……もう、居ない」
それを聞いて、シャルはその場にへたり込む。
◇
(嘘……。聡里が、もう、聡里じゃない?)
……嫌。
『ねえ、シャル。 このブレスレット、どう思う? 可愛いかな』
嫌。
『シャル、僕の事……迷惑じゃない? いつもけっこう強引だから』
嫌!
『シャ、ル。 僕、を……撃て!!』
「嫌だぁっ!」
「っ!? デュノア!?」
嫌だ! 嫌だ!! 嫌だ!!!
「聡里がもう居ないなんて、信じない! 嘘だって言ってよ、束さん!
ねえ、織斑先生! 一夏! 箒さん! セシリア! 鈴! ラウラァっ!!」
なんでみんな、そんな、泣きそうな顔してるの? 笑ってよ。
笑って、嘘だって言ってよ! ねえ、みんな!!
「……成程。すまんな、束。 言いたいことはわかった。
次にアイツが……『零』が来るのは、ここ、なんだな?」
……え?
「うん。そろそろ『キャノンボール・ファスト』の時期だから」
「そうか……。 束、お前は手を出すな。いざとなれば、私が……零を殺す」
零を……聡里を殺す!?
◇
「そんなの、させません」
シャルはゆっくりと立ち上がり、千冬に言う。
「聡里はボクの大切な人です! それを、殺させたりしません!
聡里はまだ生きてるんですよ!? 絶対に、優しい彼に戻ってもらうんだ!
だから、千冬さんにだってそんなこと……かはっ!?」
叫び続けるシャルに、千冬は当身を食らわせ意識を奪う。
「……織斑先生、だ」
それだけ言うと、千冬は後ろを向く。
「このことは部外秘だ。 貴様ら、他の誰にも、今の話の内容は話すな。
ボーデヴィッヒ。デュノアを連れて帰って伝えておけ。 ……以上だ。生徒は解散しろ。
私はこの天才(ばか)に話があるからな」
それだけを伝え、一夏たちを追い払う千冬。
専用機持ち一同は、従わざるを得なかった。
◇
「……それで? 束、まだ話したいことがあるのだろう?」
「流石ちーちゃん、鋭いね」
束は千冬に重要な事を伝える。
「敵が、私が実験の時廃棄したプロトタイプコアをいくつか確保して、ある程度解析したみたい」
「ッ!?」
その発言には、さすがの千冬も度肝を抜かれた。
「それは、本当か?」
「うん。 ……ごめんね。私のせいで、ちーちゃんたちに迷惑をかけて」
「いや、いい。 ……だが、その分、力を貸してもらうぞ、束」
それを言い、にやりと笑う千冬であった。
続く。