Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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24:Faster than Cannonball(砲弾よりも速く)

「それでは皆さん。 今日は高速機動の授業をします」

山田先生の声が第六アリーナに響き渡る。

 

この第六アリーナはシールドバリアの範囲が広く、中央タワーまで飛ぶ事ができる。

そこで、高速機動訓練の場所として使われている。

 

「では最初に専用機持ちの皆さんに実演してもらいます。

 まず、高速機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備したオルコットさん!」

説明を受け、セシリアがスタート位置へ踏み出す。

セシリアのブルーティアーズはビットを全基機体に固定し、

すべてを推力に回している。

 

「そして、追加装備は無いものの、スラスターに全出力を集中するように調整して、

 仮想高速戦仕様にした織斑君! この二人に一周してもらいましょう!」

そして一夏もセシリアに並び立ち、二人は飛び立つ。

それを見ている生徒の中には、シャルの姿もあった。

 

「姉さん、大丈夫か?」

「あ、ラウラ。 ボクは大丈夫だよ。 ……ボクが強くなって、聡里を助けないと」

相当思いつめているシャルを見て、千冬は眉をひそめていた。

とそうこうしているうちに一夏たち二人はすぐに戻ってきて、

授業が再開される。

 

「うーん、高速機動の時のブースターは良いとして、コース調整が……。

 よしっ、飛んでみようかな」

シャルはそう言うと、飛行を開始してみた。

 

「うわっ、早い!?」

「何考えてるのあのスピード!? あれじゃちょっとミスしたら大事故よ!?」

クラスの女子はシャルの速度に驚愕する。

その速度は最早、本番の時の機動に達していた。

 

「もっと、もっと速く。 じゃないと、追いつけない……!」

 

 

「ね、姉さん……? 大丈夫だったのか、あの速度で?」

ラウラはスタート地点に戻ってきたシャルに、ラウラは聞く。

 

「うん、なんとかね。 でも、まだ制御と調整が甘い。

 もっと、もっと速く飛べるようにならないと……」

そういうと、シャルはぶつぶつと言いながらリヴァイヴの調整を始めた。

 

「かなり思いつめているようだな、デュノアは」

「きっ、教官!?」

ラウラはいつのまにか背後に来ていた千冬がいきなり話しかけてきたので驚いてしまう。

 

「ここでは『先生』だ。 デュノアのあの態度は、やはりアイツの事が影響しているか」

「ええ。兄さ……零は、我が軍のネットワークでも捕捉できません」

「無理をするな。 呼び方くらい、昔のままで居てやってくれ」

ラウラは千冬の言葉に首を振る。

 

「いえ、『零』は単なる戦闘兵器なのでしょう。 ならば、あれは兄さんではありません。

 あれは……敵です」

ラウラは言い切るが、手を強く握り締めている。 それも、血が滲むほど、だ。

 

「そう、か。 だが、日本の諺にこんなものがある。

 『罪を憎んで人を憎まず』。

 お前も、罪を憎んでアイツを憎むな。 アイツの居場所がなくなるからな。

 そうだろう? 待っていてやれ、『妹』としてな」

それだけを言うと、千冬はシャルの下へと行った。

 

 

「デュノア。 お前は明らかにオーバーペースだ。

 このままだと、いつかは事故を起こすぞ」

千冬に声を掛けられたシャルは、そちらを見ずに返事をする。

 

「そうかもしれませんけど、ボクはもっともっと速くなって、力もつけないと……」

などと言いつつ設定を調整するシャルの頭をつかんだ千冬は、

シャルの目を覗き込む。

 

「それで、どうなる?」

「……」

「それだけで、聡里は戻ってくるか?」

それを言われたシャルは激昂し、千冬に怒鳴る。

 

「じゃあ何もするなって言うんですか!?

 聡里が帰ってこないなんてボクは嫌だ!

 帰ってこないなら首に縄つけてでも連れ戻します!」

と思い切り怒鳴ったシャルを見て、千冬は笑う。

 

「なんだ、元気が無いかと思ったら、案外元気じゃないか。

 その元気があれば、『キャノンボール・ファスト』の時の対策もできているな」

シャルは頷き、そこに居る専用機持ち全員で立てた作戦を千冬に話した。

 

「……なるほどな。 自分を撒き餌に使うか。

 しかし、援護が居たらどうする気だ?」

「みんなに任せます」

再び、シャルは言い切る。

そして、それを聞いていたラウラも同意する。

 

「姉さんが『兄さんを連れ戻す』まで、私たちで時間を稼ぐ。

 そのくらい、軽くこなして見せます。

 我々『シュヴァルツェア・ハーゼ』は、仲間を見捨てるような真似はしません」

ラウラは言い、胸を張る。 そして二人を見た千冬は、安心したような、

何か心配なような表情でその場を離れた。

 

 

そして迎えた、キャノンボール・ファスト当日。

現在は二年生のレースで、一年生専用機持ちは直後のレースに備えて、

最終調整をしていた。

 

「良いかお前達。 今年は一年の専用機持ちがこの数という事で、

 一年専用機持ちのみでのレースという異例の措置になる。 ……しかしだ。

 『敵』が本格的に動き出した以上、恐らく妨害があると思われる。

 各自、気を引き締めて、しかし全力を出して来い!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

一年専用機持ちがそう言って答える。

その中の一組・二組の選手、一夏たちの気合の入り方はひとしおであった。

 

 

「えっと、Fの45、Fの45……」

一夏にチケットを貰い、キャノンボール・ファストを観戦に来た蘭だったが、

蘭は自分の席の場所がわからず、迷子になっていた。

そして席を探しながら歩いていた結果、一人の女性とぶつかってしまった。

 

「おっと」

「きゃっ!」

蘭はぶつかってバランスを崩してしまったが、

ぶつかられた女性の方はびくともせず、そばにいた青年が蘭を支える。

 

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。 すみません、お姉さん。 ぶつかってしまって」

蘭の謝罪を、手をひらりを振って受け取る女性。

女性の方は、女の蘭でも見蕩れるほどの美人だったが、

青年のほうはサングラスをかけていて、

よく顔がわからなかった。

 

「スコール様、もう間もなく時間です。 移動しましょう。

 僕も間もなく出番になりますし」

「そうね、ゼロ。 じゃ、気をつけてね」

それだけ言うと、女性はゼロと呼ばれた青年を連れ歩き去っていった。

 

(……あの男の人、どこかで見たことがあるような……?

 で、でも今は、一夏さんのレースを見に行かなくちゃ! えっと、Fの45……)

蘭は思った疑問を一度振り払い、自分の座席を探して走っていった。

 

 

「みなさーん、準備はいいですかー? スタート位置まで移動しまーす!」

山田先生の監督に従い、一夏たち専用機持ちはスタート位置へ移動する。

 

(やるからには、勝つ!)

出力をスラスターに全振りし、高速戦闘仕様に調整した一夏。

 

(戦いは武器で決まるものではないからな)

同じく、スラスターを手動制御でエネルギー不足を解消した箒。

 

(サラ先輩に教わった事、しっかり活かして勝ってみせますわ!)

BT兵器を封印した強襲用パッケージ『ストライク・ガンナー』を展開したセシリア。

 

(このパッケージなら、優勝はイタダキね!)

キャノンボール・ファスト用パッケージ『(フェン)』を展開し、不敵に笑う鈴。

 

(姉さんのためにも、兄さんのためにも、負けられん!)

姉妹機『シュヴァルツェア・ツヴァイク』の三つのスラスターを調整・装着したラウラ。

 

(来るなら来なよ、聡里。 絶対に眼を覚まさせてあげるから)

同じく三つの追加スラスターを装備し、速度を徹底的に突き詰めたシャル。

 

それぞれの思いを胸に、スタート位置に全員がつく。

 

『それでは皆さん、一年生専用機持ち組のレースを始めます!』

そのコールと共に、カウントダウンが開始される。

同時に全員がブースターに点火、エネルギーを通し始める。

 

3...2...1...GO!!

 

 

まず真っ先に飛び出したのはシャルだった。

しかし、その後ろからセシリア、鈴、ラウラと、

イタリア代表候補生であるサーノ・シエロの『テンペスタⅡ』が続く。

 

「シャルロットさんだけに行かせませんわ!」

「油断してると先行くわよっ!」

セシリアは衝撃砲の砲撃をかわすためにスローダウン。そこを鈴が抜き去るが、

スリップストリームに付けていたラウラに抜き返される。

 

「しまった!」

「ふっ、甘い!」

衝撃砲で迎撃しようとするも間に合わず、

逆にレールカノンを零距離で喰らい大きくコースがずれる。

さらにそこをボード型高速機動装備『オンダ・カヴァルカーレ(波乗り)』を装備した

テンペスタⅡを操るサーノにも抜かれてしまう。

 

「やっぱり、この速度での姿勢制御は厳しいかな……!」

シャルは自分の周りで暴れまわる風に翻弄され、時々姿勢が崩れていた。

 

(落ち着いて、リヴァイヴ。 キミ自身が風なんだから、一緒に飛べるよ)

シャルのその思いに答えるように、乱流に揉まれ不安定化していたバランスが修正される。

が、そこにラウラが追いついてきた。

 

「追いついたぞ、姉さん!」

「ラウラ! もうこんな所まで来たんだ」

そして二人は互いに銃撃を打ち込みあいながらレースを続けていく。

が、そんな二人目掛けて、二条の光線が打ち込まれる。

 

「「!!」」

 

 

「なっ、何ですかあの二機のISは!?」

山田先生は、サイレント・ゼフィルスと同時にいきなり会場に乱入してきた

全身装甲(フルスキン)で、漆黒の機体を見て驚愕の声を上げる。

しかし千冬はあくまで冷静だった。

 

「山田先生、すぐに警報と、避難誘導を! 競技中の生徒にもすぐ避難するように通達!」

その通達を出し、自身も誘導に回る。

 

(今は私には手伝えん。 連れ戻してやれよ、デュノア。お前の『大事なもの』をな)

 

 

「やっぱり来たね……聡里!」

攻撃を急速回避したシャルはそれを言うと、セシリアのようなレーザーライフルを構えた

黒いIS=増加装甲パッケージ『日緋色金(ヒヒイロノカネ)』を展開した宵闇に

向かって突撃して行く。

それを牽制しようとしているゼフィルスには、セシリアが攻撃を仕掛ける。

 

「シャルロットさん! こちらは任せて下さい!

 シャルロットさんは聡里さんの目を覚まさせてあげて下さい!

 私に教えてくれる約束、破られたのけっこう気にしていますから!」

そう叫びセシリアはゼフィルスに突撃して行く。

 

「ありがとう、セシリア! 聡里なんでしょ! そんな装甲、外しなよ!」

気合一閃、シャルはアサルトカノン『ガルム』を展開して砲撃を仕掛ける。

しばらくは装甲で直接耐えていた宵闇だったが、すぐに装甲を解除して高速機動に入る。

 

「やっぱり聡里! 聡里、もうやめてよ!」

シャルの呼びかけに、素顔を見せた聡里は答える。

 

「僕は今は『零』です。 今は亡國機業の兵器。

 貴女とすごした時はとても楽しかったようですけど、

 今の『僕』には関係ない」

零は言うと、ミサイルを展開しシャルに向かって射出。

 

「くっ……じゃあ、無理にでも連れて行く!」

ミサイルをショットガンで打ち落としたシャルは、

聡里が以前作った近接用ブレード『チャーム(お守り)』で、峰打ちで切りかかる。

しかし聡里も二本の銃剣『秘刀』で応戦し、互いに押さず退かずの攻防を続けていた。

 

 

「貴女の相手は私でしてよ!」

セシリアは叫び、ゼフィルスへと連射する。

だがその射撃は難なく外され、またシールドビットで防御される。

 

「くっ……!」

「セシリア! アンタ何やってんのよ!」

その声と共に鈴の拡散衝撃砲がゼフィルスに叩き込まれ、

一瞬だが体制を崩す。

そのスキを突き、鈴がセシリアの隣に並び立つ。

 

「アンタ一人で倒そうとしても、ただ混乱させるだけなのよ!

 自国の事は自分でケリ付けたいのはわかるけど、責任感じるんだったら、

 力合わせてサッサと倒すわよ!」

そういうと、鈴はセシリアの肩を叩く。

周りを見ると、一夏と箒の二人やラウラもシャルを支援しつつ牽制し、

サーノもわけがわからないなりに協力してくれていた。

 

「セシリア! 俺たちで攻撃は止める!」

「だから、お前は倒す事にのみ集中しろ!」

「自身の決意は突き通せ、セシリア・オルコット!」

「な、なんだかわからないですけど、お手伝いしますです!」

 

その全員の声を聞き、セシリアの瞳に決意の炎が燃え上がった。

 

「皆さん……! 判りました! では、鈴さん! 多角攻撃で行きましょう!

 箒さん、一夏さんは援護をお願いします!」

セシリアは言い、近接ブレード『インターセプター』を展開しての格闘戦。

 

「狙いはなんですか、『亡國機業』!」

セシリアの叫びを鼻で笑い、ゼフィルスの操縦者……エムは笑う。

 

「茶番だな」

「何ですって!?」

たやすくインターセプターを受け流したゼフィルスは、そのままセシリアを蹴り飛ばす。

どうにか体勢を立て直したセシリアだが、背中から壁に激突し、一瞬動けなくなる。

 

「かはっ……」

そして無情にも、セシリアを狙い複数のビームが

『偏向射撃(フレキシブル)』で撃ち込まれた。

 

 

「ふふ、さすがはエム。あれだけの専用機持ちと互角に渡り合うなんてね。

 それと……零。 あの子、やっぱり学園での事、忘れてないのね」

スコールは戦いを見ながらひとりごち、ある方向へナイフを投げる。

 

「じゃあ、イベントに強制参加してくれたことに対する謝罪でも貰おうかしら?」

ナイフを投げられた人物・楯無はISを展開し、蛇腹剣『ラスティーネイル』で叩き落す。

 

「貴女のIS『モスクワの深い霧(グストーイ・トゥマン・モスクヴェ)』だったかしら」

「今は違うわ。今のこの機体は『ミステリアス・レイディ』と言うの」

それだけ答え、突撃槍に内蔵された四連装ガトリングでスコールを撃つが、

金色の『繭』に包み込まれたスコールにはダメージが無い。

 

「『亡國機業』、狙いは何かしら?」

「あら、言うと思ったの? ……と、いいたいところだけど、私個人の狙いなら言うわ」

スコールのその台詞を聞き、楯無は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「どういう事?」

「零よ。 あの子、まったく感情が無いの。

 一応社交辞令的に会話は出来るけど、それだけ。

 あれじゃ、あの子が可哀想よ。 

 ……もっとも、そう作った組織の人間が言う事じゃないけどね」

それだけ言うと、自嘲気味にスコールは笑う。

その表情に、楯無は嘘を見ることはなかった。

 

「じゃあ、一つだけ教えておくわ。 零は今、不安定な状態にある。

 あの子の『恋人』と今は戦闘しているんでしょう? だったら、人格の復帰は可能よ」

そしてスコールはゼフィルスを指差し言う。

 

「今はエムがコントロールを握っているけど、

 あの子には撤退する時、そのコントロール装置を破棄して帰還するように言ってあるわ。

 だから、あの子さえ倒せれば……」

「聡里君が元に戻せるかもしれない、という事かしら」

楯無の台詞にスコールが頷く。

 

「どうしてそんな事を言うの? 貴方達にはデメリットしかないのに」

「強いて言えば、自分を満足させるためよ。自分の虚栄心と優越感を守るため。

 それに……『あの子』から頼まれたの。彼を自由にしてやって、ってね。

 私も『Evo.』は嫌いだし、丁度いいわ」

「『Evo.』?」

楯無は疑問に思うが、スコールは口を押さえて笑う。

 

「これ以上はヒ・ミ・ツ。 それじゃ、またね」

と言うと、いきなり楯無にナイフを投げつける。

するとナイフが爆発を起こし、

その爆煙に紛れスコールは追いつけないほどの距離へ逃げていた。

 

 

「はぁぁぁっ!!」

被弾しそうになったセシリアをかばい、

一夏が雪羅のシールドですべてのビームを受けきった。

 

「一夏さん!? どうして!」

「セシリア、お前が、自分で決めるんだろ。……頑張れよ」

そう言うと、一夏にやりと笑った。

一夏に笑い返し、セシリアも攻撃態勢に入る。

と、そこに楯無から通信が入った。

 

『みんな、聞こえる!?』

「生徒会長! どうしたんですか、一体!?」

『時間が無いから手短に話すわ。 聡里くんを取り戻す方法が見つかった』

楯無の台詞に、全員が驚愕の表情を浮かべる。

 

「本当ですか!?」

『本当よ、デュノアちゃん。 今の[零]はゼフィルスの装備で安定化されている。

 そして、ゼフィルスさえ撃退することが出来れば』

「零は、聡里に戻せるかもしれないということですわね!」

セシリアの言葉を肯定し、会長は指示を下す。

 

『ここに生徒会長として、貴女達に命令を下します。

 作戦目標は[篠ノ之聡里の奪還]! サーノさん、貴女も協力してあげて』

「了解しましたです、生徒会長!」

サーノは、テンペスタⅡのオンダ・カヴァルカーレで突撃をかける。

そしてシールドバリアーにオンダ・カヴァルカーレを叩きつけ、

一気にシールドに穴を開けた。

 

「……っく!」

「学祭では聡里さんにお世話になりましたし、助けるのをお手伝いしますです!」

言いつつ高速戦でゼフィルスを翻弄する。だが、決定打は決まらない。

 

(このままでは、聡里さんを正気に戻すどころかゼフィルスを落とすのは……。

 仕方ありませんわね。 ……御免なさい、皆さん。でも……)

そしてセシリアは、心の中でトリガーを引く。

 

「喰らいなさい、サイレント・ゼフィルス! ティアーズ・フルバースト!!」

その声と共に、封印されているBT兵器すべての咆哮から、ビームが発射される。

……超高速機動時の、全砲門射撃。 本来ならご法度とされているコレは、

ティアーズの機体を激しく揺さぶり、セシリアに大きなダメージを与える。

 

だが……ゼフィルスはすべてのレーザーを回避し、セシリアに銃剣を突き刺した。

 

「あああああっ!!」

 

セシリアは自身の叫びの中で、蒼い雫が水面に落ちる音を聞いた。

そして……悟った。

 

(そう、でしたの……。 ブルー・ティアーズとは……)

思い、セシリアは傷ついた左腕を持ち上げ、銃の形を作る。そして……。

 

「Bang」

当然、その指からは何も発射されない。

しかし……ゼフィルスの背を『四本の光線が襲った』。

 

「くっ……この局面でか。 しかし、もうお前は動けない」

エムの言葉通り、ブルーティアーズは空中分解を起こす。

そのセシリアを、一夏が抱きとめた。

 

「一夏さん……」

「ありがとな、セシリア」

そして一夏の腕の中で、セシリアは気絶する。

だが、そんな二人を傷つきながらも見下ろすものが居る。

 

「貴様……」

「……お前を落とすのは簡単だが、呼ばれたからな。帰投する」

それだけ言うと、ゼフィルスは一つの装置を放り投げ、射撃で壊す。

 

「何だ、今の装置は!」

「フ、それはあの『兵器』の様子を見れば判るさ」

それだけいい、飛び去るエム。

そして一夏は、慌てて聡里のほうを見る。

そこには、宵闇を纏った状態で瞳を真紅に染め、頭を抱えた聡里がいた。

 

 

「skdfg>kn<hcSuhb'n(mission)skfl#dnmzxigf$as'error'd&b\@pui/d...!?」

聡里は頭を抱え、おかしな声を上げていた。

 

「聡里! 目を覚まして、聡里!! 聞こえてるんでしょ!?」

シャルは必死で叫び、聡里はシャルのほうを向く。

 

「シャ、ル、ロッ、ト……!? ああああアアアアァァァァッ!!」

聡里は叫ぶと、今までとは打って変わり荒っぽい動きで、シャルに殴りかかる。

 

「危ない!」

殴られそうになったシャルを鈴がかばい、殴り飛ばされる。

 

「かはっ……!」

「鈴! 大丈夫!?」

「大丈夫に決まってんじゃない! いい、アイツに、思いっきり叫んでやりなさい!

 アンタの思いを、言いたいことを! それまでは……アタシたちで相手するわ!」

そう言って、鈴はシャルの額をつついて聡里に飛びつき、組み付く。

 

「...!!」

「アンタは暴れてないで、落ち着きなさいよ! 恋人の告白でも聞きなさい!!」

それだけ言って、鈴は必死に宵闇を抑える。

 

 

「ねえ、聡里。 ボク、聡里がいない間、全然落ち着かなかったんだ。

 皆だって。 聡里がいないと、うまく行かないんだ。

 ねえ、聡里。 聞こえてるでしょ?」

シャルは、自分の心に浮かんだ言葉を言う。

 

「ボクが転校して来てから、聡里はずっとボクを守ってくれた。

 知ってるんだよ? 学校で、ボクに対する『いじめ』があったこと。

 でも、聡里はボクに知られないように止めてくれてたんだよね」

 

実際シャルは、聡里と恋人になったことで、妬みからのいじめを受けていた。

机に書かれた誹謗中傷、机の中に仕込まれた釘や画鋲。

だが、聡里が真っ先に教室に来てそれを片付けていたのだ。

 

「ね、聡里。ボク、聡里がいなきゃダメなんだ。

 聡里が兵器だとか、ISだからとか関係ない。

 それに……約束したでしょ? 『ボクの前から居なくならない』って。

 実はボク、約束破られて相当怒ってるんだよ?」

シャルが言っている間にも、聡里は暴れ続ける。

組み付いていた鈴を、衝撃拳『吼拳(ほえこぶし)』で吹き飛ばし、

峰打ちしてきた一夏と箒を『タタラ』で殴り飛ばす。

ラウラのAICは難なくかわし、パイルバンカーを構えてシャルに迫る!

 

「姉さん!」

「でも、今戻ってきたら、許してあげる」

シャルの真剣な顔を見て、聡里の瞳の赤色の中に、わずかながら『金色』が混ざる。

 

「だから……眼を覚まして、聡里!!」

「...! Charlotte...Dunois...! 」

 

 

「……止まった?」

ラウラが声を上げる。

宵闇はパイルバンカーを振りかぶり、

シャルに打ち付けようとした体勢のまま固まっていた。

そして……シャルが笑う。

 

「おかえり、聡里。 いっぱいいっぱい、心配したんだから」

その言葉に、零……否、『聡里』が答えた。

 

「ただいま、シャル。 それに、みんな。ご迷惑、おかけしました」

聡里の台詞を聞き、専用機持ちが歓声を上げる。

 

「……おかえりなさい、ボクの『王子様』」

シャルはそのまま、聡里の唇に口付ける。

聡里もそれを受けようとするが、

あることに気付き実体シールド『鉄(くろがね)』を展開、シャルをかばう。

そこに矢が飛んできて、聡里のシールドを打ちぬき聡里の腕を貫いた。

 

「がっ!?」

「聡里!!」

シャルがその矢が飛んできた方向を見ると、

そこには宵闇・ヒヒイロノカネ装備に酷似した装甲形状で、

間接部など、機体各所に白いパーツが使われている機体が居た。

 

 

「宵、闇……?」

その宵闇に酷似したISは、聡里ではなく、執拗にシャルを狙う。

 

「コイツ、シャルは絶対にやらせない……!」

聡里は言いつつ射撃をかけるが、完全に回避されてしまい、ダメージにはならない。

それどころかそのスキをつかれ、シャルにその敵の矢が命中し、スラスターが破壊される。

 

「きゃぁっ!」

「シャル!!」

このままじゃ、シャルが落とされる。 いや……この攻撃。

 

(完全に、操縦者を狙ってる……!)

 

シャルを、狙われてる。 守れてない。

 

(力を……僕に、力を寄越せ、宵闇)

 

なんだっていい。シャルを守るためなら、人間としての形だって捨てる。

 

「力をくれ、宵闇っ!!」

僕が叫ぶと同時に、宵闇の装甲が『変形』を始めた。

 

いや、変形という表現は違う。

装甲そのものがスライドし、内部フレームを展開し始めたのだ。

 

「宵闇……!?」

脚部側面に、搭載した覚えが無い武器が装着される。

そして、機体各部の装甲がスライドし変形を終えたあと、

僕の目の前でディスプレイに文字が表示される。

 

「『第二形態移行(セカンドシフト)』……! ありがとう、宵闇!」

僕は叫び、脚部に追加された装備……

多連装固定ミサイルランチャー『神楽(かぐら)』を起動、敵を狙う。

 

「マルチロックシステム『覚醒』、システム問題なし。 いっけぇぇぇぇぇっ!!」 

僕の叫びと同時に、十基のミサイルランチャーからハイマニューバミサイルが発射される。

そして敵のISはそれをかわしつつ、どこかへ飛び去っていった。

まるで、僕を形態移行させることが目的だったように。

 

 

「シャル、無事!?」

「う、うん。ありがとう」

「そう、よかっ、た……」

聡里はそれだけ言うと、気を失ってしまい宵闇の展開も解除される。

シャルは聡里を優しく抱きとめ、シャルは聡里を医療班の下へと連れて行った。

そしてそのまま聡里に付き添い検査室へと移動した。

 

続く。




ようやく転載が完了しました。

これ以降も頑張って書き続けていくつもりです。
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