Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
夏季補修ェ……
「それでは、せーのっ!」
「「「一夏のお誕生日&聡里の帰還、おめでと~っ!!」」」
ここは、一夏の誕生日会パーティの会場になっている、織斑家。
僕は帰還して、まず学園の施設で身体検査を受けた。
そして、コントロール用、そして自壊用のナノマシンの無効化処置を受け、
無理やり外出許可をもぎ取り、一夏の誕生パーティに出席することにした。
「よかった……こうして、みんなと一緒にまた話せて」
僕はそう呟く。 と、隣に居るシャルがそれを聞きつけたらしい。
「本当に、良かったよ。 聡里がまた帰って来てくれて、嬉しい」
「ありがとう、シャル」
シャルにまた会えた嬉しさで、
無意識のうちに手に持ったコップに強い力を与えていたらしい。
そして……ガラスコップを『握り割ってしまった』。
「だっ、大丈夫、聡里!?」
「うん、この程度なら……」
僕は言って、手を振ってガラスの破片をゴミ箱へ入れる。
すると、ほんの数秒のうちに手の傷がふさがってしまった。
「え……?」
「……こんな体、僕は欲しくなかったかな。
この力じゃ、シャルを思い切り抱きしめる事もできないし」
苦笑するしかない。
いきなり自分が人間型兵器だってことを思い出し、恋人に手を挙げたんだから。
「……変な空気にしちゃったね。ゴメン、皆。 僕は外の空気でも吸ってくるよ」
とだけ言って、僕は一夏の家を後にした。
◇
「……くそっ」
一夏の家を後にした僕は、何処へとも知らず歩く。
僕の足はIS学園へは向かわず、近くの公園へ向かっていた。
いや、歩いて行ったわけではない。ただ、跳んだ。
今の僕は、ISとしての全能力を開放されている。
つまり、生身でもPICを応用して大ジャンプが可能、と言うわけだ。
……もう人間じゃない証明のように。
そして公園に到着し、ISのネットワーク通信を起動する。
相手は……束姉さん。
「姉さん、今僕の居場所、補足できてる?」
「さーくん! やっと連絡してくれたね! 補足できないんだけど、どうやってるの!?
私の移動ラボのセンサーでも捕まえられないんだけど!」
……実験は成功、かな?
「今位置情報送る。 姉さん、僕の体にリミッター、組める?」
「うーん……できるけど、ちょっと時間かかるよ? それでいい?」
「うん、ありがとう。それで、できればナノマシンじゃなくて、
外部装置でいつでも任意で解除できるようにして欲しいんだ」
僕の言葉に「できるだけやってみる」と返す姉さん。
そして僕は姉さんにさらに一言言う。
「それと、姉さん。 僕、どこかへ身を隠そうと思うんだ」
それを言うと、姉さんは大いに驚いたらしい。
「ど、どういう事!? さーくん、学園に好きな人がいるんでしょ!?」
そういわれるけれど、僕は答える。
「確かに居るよ。でも、僕が居ても、彼女に迷惑になるから」
僕は言って、笑う。苦く。
「僕はもう人間じゃないからね。
リミッターが掛からないと、全力で動いたらそれだけで人を殺すくらいの、戦闘兵器。
だから、彼女のそばに居ない方がいいんだよ。
そもそも、僕の存在はそろそろ国際問題になると思うから」
そう。僕が『キャノンボールファストを襲撃した』という事実は揺るがない。
つまり、酷ければ国際テロリスト扱い。
IS学園を退学になってもおかしくないような事をやったことになる。
しかも、最後に現れた敵から見て、宵闇の技術も解析されてる。
日本の国家機密漏洩でも、罪に問われる事になるだろう。
姉さんも、それを理解したらしい。
そのうえで、姉さんは僕に怒鳴った。
「さーくん何言ってるのっ!」
「えっ!?」
「その程度の事、束さんがどうにかしてあげるよ!
だから、さーくんはシャルロットちゃんと仲良く暮らせばいいんだよ!」
あんまり聞いた事が無い、姉さんの本気での怒鳴り声。
それに、僕も気おされてしまう。
「ね、姉さん」
「さーくんを作った組織くらい、束さんにかかれば一日で潰せるよ!
だから、さーくんは平和に暮らしていればいいの!」
そう言い出した姉さんの言葉を聞いて、僕は昔の事を思い出した。
『さーくんは平和に暮らしてればいいよ』
その言葉は、僕が拾われた時、どうすればいいか判らないと姉さんに聞いた時の答え。
その言葉で、僕は自分の境遇を感じた。
「本当に僕って、いろんな人に守られてるんだね」
束姉さん、箒姉さん、一夏、千冬さん。
ラウラ、セシリア、鈴、そしてシャルロット。
僕は皆に守られてばっかりだ。
「……そう、だね。 姉さんがそこまで言うなら。僕もギリギリまで頑張ってみるよ」
僕はそう言って通信を終了、織斑家の前まで戻ることにした。
◇
「あ、一夏」
「のわっ、聡里お前何処から戻ってきてるんだよ!?」
跳躍で織斑家に戻っている最中、
一夏が自販機でジュースを買いに来ているのを見つけ、
僕は一夏の目の前に着地した。
「病み上がりでそんなに持つの大変でしょ、半分持つよ」
言いつつ、僕は力を入れすぎないように注意しながらジュースを持つ。
「悪いな、聡里。 助かる」
「いいって……!?」
一夏に返事をした瞬間、僕は異常な感覚を感じた。
この感覚は、何かとリンクした感覚……というよりも。
「一夏、気をつけて。 ……近くにISが来てる」
言いつつ、僕は両眼のドンナー・オージェを起動し、周囲をサーチ。
背後に反応を見つけ振り向きざまに「誰だ!」と怒鳴る。
その先には、二人の人物がいた。
「「……え?」」
僕と一夏は、共に相手の一人、女性のほうを見て驚く。
女性というより女子といった方が当てはまるような彼女は、
千冬さんに良く似ていたからだ。
さらに、その横の男子。彼は……
「僕が、居る……!?」
そう、彼は、僕にそっくりだった。違いといえば、顔の左側の前髪に
白いメッシュを入れてあるくらいか。
その二人は同時に声を上げる。
「「いや」」
女は一夏を、男は僕を指差し言う。
「「俺(私)はお前だ」
その台詞に、僕と一夏は同時に硬直してしまう。
それを見つつ、彼らは言葉を重ねる。
「織斑マドカ、だ」
「で、オレが『壱』だ。久しぶりだな、『兄さん
彼らはそのまま流れるように拳銃を懐から抜き出し、僕と一夏に向ける。
「私が私であるために、お前の命を貰う。織斑一夏」
「裏切り者は処分しなくちゃな、失敗作」
そして、その拳銃から殺意を込めた弾丸が僕らに放たれた。
「「死ね」」
続く。
聡里と一夏が、自分の鏡と言える相手との邂逅を果たす。
織斑マドカ、そして『壱』。
彼らの登場は、一体何を引き起こすか。
次回もよろしくお願いします。