Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
それでは、どうぞー
「一夏、箒姉さん!」
「二人とも大丈夫?」
聡里は簪から離れ、シャルと共に、一夏と箒に加勢する。
「聡里、お前大丈夫なのか!?」
「当たり前でしょ、一夏。 みんな頑張ってるのに、
戦うために作られた僕が寝てるわけにはいかないよ!」
聡里はショットガン『礫(つぶて)』を展開しつつ、無人機の頭部にそれを叩き込む。
それにより怯んだ隙に、一夏と箒にコアを狙うように言って、聡里たちも向き直る。
しかし、その時宵闇のセンサーがアラートを鳴らした。
「ッ! 危ない、シャル!」
シャルを突き飛ばしつつ物理シールドを展開、飛んできた物を防ぐ聡里。
彼らに飛んできたそれは、一本の矢だった。
「この矢は……! 出て来い、あの時のIS」
叫んだ瞬間、建物の影からひとつの機体が出て来る。
その機体は、いつかの宵闇に似た機体。
だがフルスキンではなく、本当に宵闇のようになっていた。
「よお、
ISの操縦者……壱は言うと、手にした大きな弓型の武器から、聡里に向けて矢を放ってくる。
「くっ……。 やめろ! こんな事してる場合じゃないんだ!」
「いいから戦えよ! もっと動け! もっと楽しませてくれよ!」
聡里の言葉を聞きもせず、さんざん矢を打ち込んでくる壱。
「オラオラ、真面目にやらねーと、お前の女狙うぞ! まずは一発!」
「ッ!? させるか、バカ!」
壱がシャルに放った矢を左手部に突き刺させる事で受け止め、引き抜いて投げ返す。
聡里の反撃を軽々と避け、壱はにやりと不敵な笑みを返す。
「やっぱお前に『形態移行(トランスシフト)』は使えねーんだな!
んじゃ、俺も見せてやるよ! やるぜ、『無間』!」
壱は言って聡里から距離をとり、叫ぶ。
「無間、『開放移行(オープンシフト)』!」
壱の台詞と共に、無間の装甲が、宵闇と同じ様にスライドし展開される。
しかしあの時の宵闇のような追加ブースターは無く、また露出したフレームの輝きも鈍い。
「……まさか、宵闇のシフト時のデータまでコピーしたのか!?」
「そうだ、
その強化形態が……コイツだ!」
一声吼え、彼は右腕で殴りかかる。
聡里は両腕を重ねその一撃を受け止めるが、出力がハネ上がっていて吹き飛ばされる。
「がぁっ!?」
「聡里!」
「ああ、そうだ! それで良い! 俺と遊んでくれよ!
お前が動いてる間はあの女には手出ししないから安心しろよ、ハッハァ!」
壱は言いつつ、聡里に再び弓を向け、再び宵闇の左腕部を矢で貫く。
「ぐっ!」
「痛いだろ!? 俺たちは、痛覚含めた感覚までISとリンクしてんだからな!」
その状態で残った右腕部、両足をさらに貫き、そのまま地面に叩きつけ磔にする。
「やっぱこんなもんか。 俺と同型って言っても、大した事ねーな。
んじゃ、死ねよ。 まあまあ楽しかったぜ」
そして聡里に向け矢を放とうとした壱だったが、そこにミサイルの弾幕が飛んできた。
「んなっ!? なんだこのミサイルの量!?」
八連装マルチロックシステム『山嵐』。
合計四十八発のミサイルを同時にロックオンし、複数の目標を追尾させる事も可能な
打鉄弐式の特殊装備。
「聡里さん、無事ですか!?」
「簪さん! ありがとう、助かった!」
簪さんは壱に向けて大量の追尾型ミサイルを撃ちこみ、その間に聡里とシャルに並び立つ。
「聡里さん、今のうちに言っておきます。 私、貴方の事が好きでした」
「……えっ!?」
簪の突然の告白に、聡里は思わず簪のほうを見る。
「聡里さん……その、こんなこと、言うのは駄目だって思います。でも……」
そこまで言いかけた簪に、聡里は人差し指を唇に当て止める。
「それ以上は言わないでね。 言ったら、君を少し嫌いにならないといけなくなる。
……簪さん。その言葉は嬉しいけど、受けられないよ。
僕は、シャルが好きだから。この世の誰よりもね」
その言葉を聞き、簪は目を伏せ、シャルは赤くなり、聡里を見る。
そして聡里は、言葉を続ける。
「でも、嬉しいよ。 そう言ってもらえて。
だから、離れてて。 多分、僕らの全力でやると、周りが酷い事になる。
シャルを連れて行ってあげて。 ……頼んだよ。
それと、シャル。 これが終わったら、言い訳するから待ってて」
それだけ言って、聡里はミサイルを撃墜し終わった壱に向け飛び出す。
「さて……壱。 ガチで行くよ!」
「やっと本気かよ、旧式!」
その壱に向け、聡里はISの拳を向け殴りかかる。
が、その拳は無間の手に難なく受け止められる。
「甘いよ! 宵闇、制限開放(リミットオーバー)! 対人非殺傷設定、解除!」
聡里の台詞と共に、宵闇の出力が跳ね上がる。
そして宵闇は無間を逆に投げ飛ばし、聡里は空中で体を広げる。
「宵闇、言いたいことは言ったから全力貸してくれよ!
『形態移行(トランスシフト)』!!」
聡里の叫びと同時に、宵闇の全身の装甲がスライドし、内部フレームが露出。
そして内部フレームが金色に輝き、第二形態『甲夜』へと変形が完了した。
さらに聡里も『ドンナー・オージェ』を起動する。
「『宵闇・甲夜』……参る!」
聡里は言うと、脚部ミサイルポッド『神楽』からミサイルを連射し、
そのミサイルの群れと同時に無間に向かって突撃する。
「嘘だろ!? 完成品の俺でも『不完全移行(ファイルドシフト)』なんだぞ!
何でお前が完全に第二形態を使えるんだよ!」
壱は言いながらアマノヌボコのエネルギー波でミサイルを切り落とそうとするが、
聡里がシールドユニット『明鏡』を投げエネルギー波を防ぐ。
そのままミサイルの着弾と同時に聡里は無間にショットガン『礫(つぶて)』の弾丸を撃ち込む。
しかし、無間が左手で振るった刀から飛び出してきた龍と狐型のエネルギーに防がれる。
「くっ!」
「こんな装備(オモチャ)でも、役に立つんだな!
んじゃ、俺も本気で行くか! 五剣・開放!」
壱が言い、両手を大きく広げる。
すると、その両手の動きに沿って五振りの剣が空中に展開された。
「んじゃ、コイツで行くか!」
壱が選んだのは、細身の西洋剣と日本刀。
そして、日本刀の方を持った右腕が『消えた』。
その瞬間、宵闇の装甲には浅いが傷が刻まれる。
「っ! 超高速の斬撃!?」
「そうだ! ついでにコイツは!」
と言いつつ、西洋剣を振るう。
とっさにショットガンで受け止めた聡里だったが、難なく切り裂かれ体を剣に叩かれた。
聡里は体制を建て直し、敵の戦力を分析する。
(最初に使っていた刀は攻撃に使用しない、つまり防御用ツールか。
そしてさっきの剣は、武器は切り裂いたけど装甲は切れなかった。
つまり武器破壊のための剣ということ、かな。
あの超高速の抜刀も多分刀の機能。
刀にさほど多数の機能は積み込めないから……あと二つの剣が問題か)
それを判断し、瞬時にデータをまとめる聡里。
だがそんな聡里のことを気にもせず、壱は斬りかかる。
「遅い!」
壱は叫びながら超高速の刀と武器を斬った剣の塚を連結させ
回転させて切りかかるが、その刀は聡里に受け止められていた。
「……君がね」
「嘘だろ、オイっ!?」
そのまま盾にした『ゴーレムの腕』を壱に投げつけ
二挺のサブマシンガン『黒龍』と『白虎』を展開、壱に連射する。
「っち、ならっ!」
壱は叫び、両足と背部の大型バーニアにより二段階加速(ダブルイグニッション)を発動、聡里から距離を取ろうとする。しかし、聡里はその速度に、
個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)で追従して行く。
「そっちが二段階なら、こっちは多段で行くだけさ!」
◇
「どうなってんの、あのスピード!?
もうずっと瞬時加速し続けてるみたいに早いじゃない!」
鈴は衝撃砲で破壊した敵の残骸を踏みつけ叫ぶ。
「明らかにストライク・ガンナーより早いですわね……。
あれでは、殆どの方が付いていくどころか、見るのも困難だと思いますわ」
「ってことはやっぱり、アイツよね」
「ええ。 ……聡里さん、負けないで下さいませ」
◇
「決めるぞ、シエロ!」
「はいです、ラウラさん!」
ラウラが一瞬の隙を突き、すでに装甲がボロボロの敵をAICで固定する。
「今だ!」
「やるですよ、テンペスタ! オンダ・カヴァルカーッレ!」
ラウラが固定した敵のコア目掛けて、サーノがサーフボード型多機能装備の
『オンダ・カヴァルカーレ(波乗り)』を右腕に装備し先端部のブレードで突き刺す。
その切っ先は正確に敵のコアを刺し貫き、敵の巨体は沈黙した。
「敵機撃破。 サーノ・シエロ、協力に感謝する」
「えへへ、どういたしましてです。 ……! ラウラさん、見てくださいです!」
サーノが指差した先を振り返ったラウラの目に飛び込んで来たのは、
二筋の黒い影がぶつかり合いながら超高速で飛び回っている状況だった。
「あれは……兄さんか」
「ええっ!? 聡里さんなんですか、あれ!?
テンペスタも速度特化なのに、あんなスピードでないです!」
驚くサーノをよそに、ラウラはその影を見つめる。
「負けないでくれ、兄さん」
◇
「あー……めんどくさいけど、一年に負けてられないよなー」
「そッスね、先輩!」
気だるげに呟いた『ヘルハウンド・Ver2.5』を展開したダリル・ケイシーに、
ガッツポーズで気合を入れながら応えう『コールド・ブラッド』の操縦者、
フォルテ・サファイア。
話している間にも熱線は二人目掛けて飛んでくるが、
二人はそれをかわし、そらし、流し、弾いている。
「つっても、一人ってのは面倒すぎるから……やるか?」
「はいッス! そんじゃあ、一丁……」
「「反撃!」」
叫びと同時に、二人の放った回し蹴りが、
敵の胴体にまっすぐ決まった。
◇
「ダメだ、私のスピードでは聡里を追いきれない。
一夏、白式で行けるか?」
「いや、俺は純粋に、あの速度にはついて行けないな……。
くっ、もう少し俺が強ければ……!」
言って、一夏は歯を食いしばる。
だが、そこに聡里が吹き飛ばされてきた。
「聡里っ!」
慌ててシャルが近づき支えるが、聡里は振りほどく。
「ダメだ、速度は追いつけても、相手の剣を押し切れない……。
僕の近接武器は銃剣と、パッケージ専用だけだからどうしようもないか……!」
悔しがる聡里を見下ろし、壱は高笑いしていた。
「ククッ、ハハハッ! やっぱりお前じゃ俺には勝てないかァ!
せいぜい、細かい傷でも付けろよ、先代!」
壱はそのまま、二本の剣を連結。 大きく振り回しつつ、聡里に飛び掛る。
「逝けや、オンボロ!」
そのまま袈裟切りに斬りかかる壱の剣を受けそうになる聡里だが、
一夏の声に反応する。
「聡里、これ使え!」
一夏が聡里に投げて寄越したのは、雪片弐型。
それを受け取った聡里は、すんでのところで壱の連結剣を受けとめる。
その時雪片が、白式が持っているわけでもないのになぜか展開し
零落白夜と良く似ているが黒い輝きを溢れさせていた。
「……助かった、一夏!」
「んだとっ!?」
壱は慌てて連結剣を振るい、再び斬りつけようとした。
しかし、連結が勝手に解除されてしまう。
その隙を突き、聡里が振るった雪片が細身の剣に直撃。
神速の抜刀能力を与える刀を砕いた。
「しまった……」
「よそ見してる暇は無いよ、壱!」
聡里は壱に対する怒りを込め、雪片で無間を峰打ちする。
「がっ!」
「痛いだろ、お前も! だから、すぐに終わらせる!
単一能力『暗黒甲夜(あんこくこうや)』、発動!」
聡里が叫んだ瞬間、展開された宵闇のフレームから『闇』が噴出し、
周囲が夜のように暗くなる。
「なっ、センサーが利かねぇ!?」
壱は無間のセンサーが利かなくなったことに驚愕。 その間に、背後から蹴りを入れられる。
「ぐっ、てめ、何処だ!」
「こっちだよ……」
振り向いた壱に、今度は横からショットガンが打ち込まれ背部バーニアが吹き飛ぶ。
「何処だ! 何処に居やがる!!」
「無理だよ。 君は、この『夜』の中では僕を見つけられない」
それだけ言い、聡里は両腕の展開装甲を閉鎖、そこにスサノオを装着し、
実体刀『草薙』と『叢雲』を展開。両手にそれらを持ち、交差させ構える。
「僕は君を殺したくないから……君の『ムゲン』を闇に堕とす!」
そう叫び、聡里は背後から無間の左腕を斬りおとす。
振り向いた無間の右腕を落とし、両足も二刀で同時に切る。
そして最後に刀を投げ捨て、素手で壱の腹部を殴る。
「がっ……!」
その衝撃で壱のISの展開は解除され、待機状態に戻る。
そのISを聡里は取り、壱をワイヤーで拘束した。
「痛てて……ロープで縛る位で十分じゃねーか?」
「僕らの身体能力なら、ワイヤーくらい軽く引きちぎるだろ」
「ハッ、バレたか」
聡里の呆れたような返事に、壱も笑い返す。
そして壱を連行しようとした瞬間、壱めがけて光学兵器が撃ち込まれた。
「何だッ!?」
「危ない、壱!」
聡里は壱をかばい、背中で攻撃を受け止める。
装甲展開状態の宵闇は特に背部の装甲が薄くなっていて、
直撃した聡里にダメージの大半が襲い掛かる。
「くあぁっ!」
「聡里! 大丈夫!?」
また慌てて聡里に寄り添うシャル。
聡里はダメージから気を失い、宵闇の操縦者保護機能による
昏睡状態に陥っていた。
「誰、さっきの攻撃をしたのは!」
シャルが叫んだ瞬間、空間がゆらぎ何も無かった空間に突然ISが現れた。
「結局役に立たなかったな、君も。やはり男なんてこんな物か。
そんな役立たずは必要無い。 壱、零と一緒に私が壊してあげよう。光栄に思え」
その機体の操縦者の女性は、無慈悲に聡里を貫くコースで壱を狙う。
しかしその時、その女性のISに打鉄が斬りかかった。
「貴女が出てきたか、ブリュンヒルデ」
「私の生徒に手を出されたら寝覚めが悪いからな。 貴様の目的は何だ!」
凄む千冬も意に介さず、肩をすくめ謎のIS操縦者は離れる。
「貴女まで出て来ては、さすがに騒ぎが大きくなりすぎますね。
それでは御機嫌よう。 壱、零、命拾いしましたね」
それだけ言うと、そのISはまた何も無い空間に溶け込むように消えて行った。
「逃がしたか……。 デュノア! 聡里の様子は!」
「大丈夫、生きてます。 ……けど、ISの回復までは起きないと思います」
「ふむ……。では、手当てした後自室に連れて行って寝かせてやれ。
一応今日で懲罰室入りは終了の予定だったからな。
それと、そっちの聡里その二をこっちに渡せ。
コイツなら何かと情報を知っているだろう」
その台詞を聞き、少々むっとした顔になる壱。
「オイオイ、俺を前世代型と同じに扱う気かよ」
「同じなんだろう? まあ、これからいろいろ調べさせてもらうさ。
それでは、後の処理は教師でする。
戦ってくれた専用機持ち一同は手当てを受けた後、自室で待機。
以上だ。解散!」
千冬の台詞で作戦行動は終了。
壱は千冬に引きずられてゆき、シャルが聡里をリヴァイブで抱きかかえ、
専用機持ちは医務室へ行った。
◇
「ッ! 壱!」
聡里は叫び飛び起きる。
周りを見渡すとそこは自分とシャル、ラウラの部屋で、
窓から見える空はすでに真っ暗になっていた。
「……良く生きてたな、僕」
聡里はベッドで考え込もうとすると、
ベッドに突っ伏しているシャルに気がついた。
時計を見てみると、戦いが終わってからすでに三日が経っていた。
「もしかして、三日間ずっとついててくれたのかな?
……ごめんね、シャル。また心配かけちゃった」
ワンパターンに誰かのため倒れる聡里と、
彼を心配しながらも信頼しているシャル。
聡里はそのままシャルの頭を撫でる。
すると、それを感じてシャルがうっすらと目を開けた。
「あ……聡里!」
「おはよう、シャル。 でも今、夜だからこんばんは?」
言って微笑む聡里に、シャルは抱きつく。
「もう、いっつも無茶ばっかりするんだから。
でも、聡里。人を守ってる聡里が、一番かっこいいよ」
「あはは、面と向かって言われるとちょっと照れちゃうな。
ありがとう、シャル。 嬉しいよ、っ……」
思わず聡里の目の端から涙がこぼれる。
「聡里?」
「あ、ごめん。 なんでも、ないんだ。 なんでも、ね……」
言って聡里は涙を拭い、シャルにキスをする。
そのまま疲れていた二人は寄り添い、ベッドに倒れこんだ。
続く。