Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
入学当日の放課後。僕と一夏は一緒に寮へ戻る事になったんだけど。
「これは……なんというか」
「先が思いやられるな……」
後ろからわらわらと女子がついて来ると言う、
ハメルンの笛吹き男の気分を味わう羽目になった。
で、僕らの部屋の前に着いた。
「僕ら二人で同じ部屋で良かったね」
「ああ。もし女子と一緒だったら、寝られたものじゃないからな」
だろうね。……でも一夏、少々残念そうなのは自覚してないのかな~?
「おお、ここが俺たちの部屋か!」
「わお、でっかいベッドだねぇ。これならのんびり眠れそうだ」
僕はベッドの上でトランポリンの真似事をする。
「んじゃ、俺は箒に挨拶してくるか」
「……僕もついて行くよ。なんか、いやな予感がするし」
で、僕らは箒姉さんの部屋へ行ったのはいいんだけど、
案の定というかなんというか、
一夏が不用意に部屋を空けたものだから箒姉さんの湯上り姿を見ちゃって、
姉さんが振る木刀を、僕が白羽取りするはめになった。
「なんで、いつもいつも俺はこんな目に……」
「一夏、もうちょっと用心というか、女の子への気遣いを覚えなよ」
だから箒姉さんの気持ちにも気づかないんだってば。
で、さらに翌日。
一夏と箒姉さんが朝ごはんを食べているので、
僕も横に座って二人の様子を見守る事にした。
「なぁ、箒。いつまで怒ってるんだよ」
「怒ってなどいない」
一夏、あいかわらず本っ当に鈍感だよね。それはもう、見事なまでに。
「顔が不機嫌そうじゃん」
「これは生まれつきだ」
などと話しつつ、二人は箸を進める。
周りの生徒が一夏のことを見てざわざわしてるのはご愛嬌。
「ねぇ篠ノ之くん。隣、座っていいかな?」
僕らが食事を続けていると、三人の女子が集まってきた。
「うん、いいよ」
「「「やった!!」」」
なんていいつつ、その三人も横に座る。
「うわぁ、織斑くんも篠ノ之くんも、朝からそんなに食べるんだ!」
「男の子だね」
と言われ、僕と一夏は顔を見合わせる。
「うーん、僕らからすれば普通くらいかな」
「っていうか、女子は朝それだけで大丈夫なのか?」
と一夏。ほら、女子たち苦笑いしちゃってるよ。
「一夏。僕ら男子の『普通』は女子には通用しないよ。だよね」
「「「そうそう」」」
三人がそう言ったとき、箒姉さんが立ち上がった。
「私は先に行くぞ」
「ああ、またな」
「箒姉さん、頑張ってね」
僕らは端的な会話を交わし、箒姉さんは移動した。
「ねえ、織斑くんって篠ノ之さんと仲良いの?」
「それに篠ノ之くんも。篠ノ之さんと同じ苗字だけど、どんな関係なの?」
篠ノ之率が会話の中で高いなぁ、早口言葉みたいだ。
「俺は、箒とは単なる幼馴染さ。で聡里は、箒の弟ってわけ」
「っていうか、戸籍上はね。血のつながりはないんだけどさ」
そう、僕はどこかから、束姉さん……箒姉さんのさらに上の姉さんに拾われて、
一応篠ノ之家の人間になったって訳。
「まあ、僕みたいな他人が迷惑ばっかりかけるわけにも行かないし、
中学に入ったときに、優しい人の家に住み込みで働いて、
それから独立したんだけどね」
僕が言うと、さすがに女子たちはビックリしたらしい。
「まさか織斑くんが、篠ノ之さんの幼馴染だったなんて」
「篠ノ之くんも、そんな波乱の人生を送ってきたんだね……」
「聞いちゃってごめんなさい、そんな事があったなんて」
っと、空気が重くなっちゃったかな。
「あ、別にいいって。僕はむしろ、姉さん達に会えて幸運だって思ってるし」
そんな事を話していると、千冬さんが食堂に入ってきて、一喝。
「何時まで食べてる! 食事は迅速に効率よく採れ!
私は一年の寮長だ!遅刻したらグラウンド十週させるぞ!」
と言っている千冬さんを見て、僕らは納得した。
「なるほど、だからあんまり家に帰ってこなかったんだ、千冬さん」
で、食事も終わって教室へ行き、授業が始まった。
その授業の中で、一つの話題が持ち上がった。
「これより、クラス対抗戦に出る代表者を決める。
クラス代表者とは、対抗戦だけではなく生徒会や委員会への出席など、
まあ、クラス長と考えてもらっていい。
自薦・他薦は問わん。誰か意見は無いか」
そう千冬さんが言った所で、女子の中から意見が。
「はい、私は織斑くんが良いと思います」
「私は、篠ノ之くんが良いと思います!」
と、クラスメイトのなかからちらほら上がる僕らの名前。
「え、俺!?」
「僕!?」
と、二人して少々狼狽してしまう。
「他に居ないのか?居ないならこの二人のうちどちらかになるぞ」
って、何普通に進めてるんですか千ふ、織斑先生!
「ちょっとまった俺はそ「納得できませんわ!!」
と、一夏に割り込む声が。
その声の主は、オルコットさんだった。
「そのような選出、認められません!男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!」
む、これは典型的な男女差別タイプかな?
「このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?
大体、文化としても後進的な国に暮らさなければならない事自体、
わたくしにとっては苦痛で!」
と言っているオルコットさんに、一夏が言う。
「イギリスだってたいしたお国自慢無いだろ。世界一マズい料理で、何年覇者だよ」
「ちょっと一夏、火に油そそいでどうすんの」
僕も積極的には止めないけどね。
「なっ、貴方、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「でも、先に僕らの祖国を侮辱したのはそっちだよね。
そもそも後進的って言うけど、
日本は世界各国で使用されている精密機械を数多く作っているんだ。
そこは訂正していただきたい、イギリスの国家代表候補生。
君の振る舞いがそのまま、イギリスの考えと思われても仕方ない立場にいるんだから」
僕がそこまで言ったところで、オルコットさんは我慢ができなくなったらしい。
「そこまで言うなら、決闘ですわ!」
「おお、いいぜ!」
と、受ける一夏。
「ってわけで、ハンデはどのくらいつける」
「は?あら、いきなりお願いかしら?」
といい、不敵に笑うオルコットさん。
「いいや、『俺がどのくらい』つければいいかなー、と」
一夏がそう言ったとき、クラスメイトが全員笑い出した。
「織斑くん、それ本気で言ってるの!?」
「男が女より強かったのって、ISが出来る前の話じゃない」
むぅ、ここまで女尊男卑が進んでいるとは。
「みんな、僕ら二人もIS動かせるのを忘れた?」
僕がそういった途端、みんなの笑いが止まった。
「そもそも、『そんな理由』だけで男女差別が起こるのはおかしいと思ってたんだよね。
元々、男性の方が筋力なんかでは上なんだ。
病気なんかに対しては、女子の方が頑丈だけどね。
でも、僕らだけはその点で対等だと思ってる。どうだろう?」
と問いかけると、みんな納得したようだった。
「まあ、そんな事はいい。で、セシリアさん。
さっきの口ぶりだと、ハンデはいらなそうだね」
「勿論ですわ!このわたくしが男に情けを掛けられたなどと、それこそ恥!
なんならお二人同時でもよろしくてよ?」
「いいや、一人でいい」
「うん。一夏なら大丈夫。というわけで、僕は一夏に任せるさ」
と言い切った一夏に僕も賛同、千冬さんがまとめる。
「それでは勝負は次の月曜、第三アリーナで行う。
織斑とオルコットは、それぞれ準備をしておくように」
さーてと、僕も『準備』を手伝わないとね、一夏の。
続く。