Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

32 / 33
今回は聡里・シャルロットのカップルコンビです。

そして、まーた性懲りも無く新たな単語を登場させてしまいました。
どんどん勢い任せで書くようになってしまった。

こんな駄文で宜しいなら、お読みください。


31:私を宇宙(そら)へ連れて行って

「……」

聡里と戦い疲弊しきり、三日間部屋で寝込んでいた聡里は

医務室でぼんやりと天井を見上げている。

 

(僕は……やはり、シャルたちと一緒には居てはいけないのかもしれない)

 

腕を斬りおとされても、修復し戦いを続けた自身を思い出す。

亡國機業に居た時、その身体強度を利用し様々な技術を奪っていたことも。

あえて思い出さないようにしていたが、それを思い出してしまったのだ。

 

(僕の再生能力と細胞組織じゃ、肺炎や心臓病にすらかからない。

 寿命も、普通の人間と同じってわけじゃないだろう……)

 

実際、人工兵士として覚醒してから身長がかなりの速度で伸び、

元々高かった背はもはや、大人と変わらないような体格になっている。

体に残っていた深い傷は無くなり、筋肉もついている。

 

(身体調整用のナノマシンの効果で、最も力を出し切れるような体にされてる。

 はは、もう高校生なんて名乗れないかもなあ……)

 

ベッドの中で手を握り、足を動かし、動きを確認する。

もはや聡里の体は、ある程度動いていなくても体が訛る事はない。

それはつまり、押さえようと思っても力が付いてしまい、

軽く力を振るうだけでかなりの力になってしまうことも意味する。

 

人間を超える力。 戦うための力。

それは、愛する人を自ら傷つけるという事にも繋がりかねない。

彼は、それを恐れているのだった。

 

聡里が考えていて混乱してきた時、部屋のドアが開いた。

 

「あ……。 聡里、起きてたの」

入ってきたのはシャルロットで、彼女は起きている聡里を見て体を硬くする。

そんな彼女を見て、聡里は疲れたような、それでいて悲しい笑顔を浮かべた。

 

シャルロット(・・・・・・)、この三日、変わったこと、あった?」

「え? ……うん。 アメリカとドイツから、二人の戦闘指導員さんが来てくれたの。

 イーリス・コーリングさんとナターシャ・ファイルスさん、

 それとクラリッサ・ハルフォーフさんだって。

 それと聡里、はい。 お見舞い」

シャルロットに渡された花束を受け取る時、シャルロットと聡里の手が触れ合い、

シャルロットは弾かれたように手を離す。

 

「あっ……」

「……ごめん、シャルロット。 すごく疲れてるんだ。 寝かせてくれないかな」

聡里は花束を置き、シャルロットに背を向け横になる。

シャルロットは聡里を気にするが、拒絶された以上もう話すことはできなかった。

 

「うん……ごめんね、聡里」

 

そのまま退室するシャルロットに、聡里は気を落とす。

 

「本当にごめん、シャル。 やっぱり、君と僕とでは生きてる時間が違うんだ」

それだけを言い、聡里は自身の心臓であるISコアを利用して、

ISのコアネットワークに接続する。

 

「ネットワーク・アクセス。 認証ネーム『ブランク・ゼロ』」

 

◇Network-LogIn◇

 

「……久しぶり、みんな」

聡里がISのコアネットワーク、データトレードスペースに接続すると、

そこには多数のISが接続し『会話』していた。

 

「あっ、久しぶり聡里! キミまたボクのマスターと喧嘩したでしょ?

 メンタルグラフがブレまくってるよ」

「いや、その……うん、リヴ。 その通り」

金髪のショートカットでオレンジの袖なしシャツを着た

活発そうな少年が語りかけてきて、

聡里は肩を落として頷く。

 

「それにしても俺たちIS(・・・・・)を使う側のお前が、

 まさかコアネットワークに接続できるとはな」

「いや、僕は一応ISを操縦するためのISなんだけどね。

 そういう君は、まーた大出力でストレスのはけ口にされたの、ロン」

「言うな、俺だって最大出力衝撃砲はキツいんだ……。

 だが、俺のマスターはいろいろあるからな、鈍感キングへのアプローチとか」

「それは良くわかるよ……」

落ち込む黒いカンフー服を着た辮髪(べんぱつ)の青年を聡里も励ます。

 

「私もお嬢さまのお力になりたいのですが、何分決定的な火力が無く……」

「そんなことないよ、ティア。 君とセシリアの偏向射撃は凄いもんさ」

蒼い貴族風の服を着た青年も聡里に励まし元気を取り戻す。

 

「拙者は聡里殿とシャルロット嬢を相手できて楽しゅう御座った。

 御主はどうだ、しろ」

「私も同じです、つばき。 ですが宵闇と聡里さん、そして無間と聡留には勝てる気がしませんね」

「そんなことは無いですよ、しろさん。 つばきさんと並んだら勝てませんって」

白い鎧を纏った流麗な女性と赤い武者鎧の屈強な男性が聡里を賞賛、聡里は謙遜する。

 

「マスターの兄上、今日ここに来たのは、どのような理由で?」

「ちょっとみんなと話したくてね。 みんな、調子はどう?」

長い銀髪の少年に応え、全員に質問した聡里の台詞に

一人(?)ずつ自分の調子を言っていく。

 

「私、白式は問題はありませんが、一夏さんにもっとメンテナンスして欲しいですね」

「拙者、紅椿も万事快調。 しかし箒嬢はどこか迷っている様子だが」

「私、ブルーティアーズも問題はございません。

 セシリアお嬢様も、以前の迷いを振り切ったようで良う御座いました」

「甲龍であるところの俺も、全力出せるから結構楽しいぜ。

 鈴の嬢ちゃんも何気にかなり頑張ってるみてーだ」

「自分、シュヴァルツェア・レーゲンも問題はありません。

 しかしサトリさん。 最近、マスターが寂しがっています。

 たまには構ってあげて下さい」

「ボクのマスターもだよ、サトリさん。 

 ボクでも、マスターの恋愛をお手伝いなんてできないんだからね」

オレンジのシャツの少年の姿のラファールリヴァイヴカスタムⅡ、

通称リヴの台詞に、聡里は苦笑。

 

「心がけるよ……。 で、新入りが何機か来たんだって?」

「うん。 みんな、こっちにおいでよ!」

リヴの呼びかけに、隅の方で話していた何人かが集まってきた。

 

「えっと、はじめまして! 俺、テンペスタⅡって言います!」

「僕は打鉄弐式です。 直接会話するのは初めてですね、サトリさん」

「はじめまして、テンペスタⅡくんに打鉄弐式くん。 シノノノ・サトリです。

 長いから、テンペスタくんは『ドゥーエ』、弐式くんは『にしき』で良い?」

二人の了承を聞いたその時、聡里は一人の女性に呼び止められた。

 

「マスター、一夏さんがお呼びです。 ログアウトを」

「ああ、真宵。 ありがとう、すぐ行く」

それだけ告げて去って言った女性を見て、シキは聞く。

 

「どうしたんですか、聡里さん?」

「ん、メインの方で呼ばれちゃったみたいだ。

 今度いつログインできるかわからないけどまたね、みんな」

聡里はそれだけ言うと、コアネットワークの仮想会話モードを終了し、

現実時間の体を起動させた。

 

◇Network-LogOut◇

 

「聡里、聡里って! 起きろよ!」

「……ちょっと、起きてる、起きてるから揺らすなーっ!」

聡里が意識を体に戻すと、襟首を掴まれ一夏に揺すぶられていた。

 

「やっと起きたか……ってそうだ、聡里!

 千冬姉が呼んでたぞ! また何かあったらしいから、会議室に来いってさ!」

「ん、わかった。 今行くって伝えておいて」

聡里はそれだけ言うとベッドから起き上がり、制服へ着替える。

そして待機状態の宵闇を装着し、救護室から出て会議室へと向かった。

 

そして会議室に着いてドアをあけたとたん、金髪の砲弾が飛び込んできた。

 

「おまたせしまし「さとりーっ!!」がっ!?」

聡里にタックルじみた突撃で飛びついたのはいつものごとくシャルで、

抱きついたとたん左腕を確認している。

 

「聡里もう大丈夫なの左腕斬りおとされたけどまともに動くよね聡留ブッ飛ばしてきたい!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてシャル! あと最後怖い!」

慌ててシャルロットをなだめる聡里を見て、千冬は頭を押さえる。

 

「お前達……一体何をやっているんだ」

「「ご、御免なさい千冬さん!」」

二人はそろって頭を下げ、顔を見合わせる。

 

「で、だ。 今回のミッションは、またIS委員会直々のものだ。

 ……聡里、デュノア。 『I-Sp(アイエスピー)』は知っているな?」

千冬の言葉に、聡里とシャルロットは共に頷く。

 

I-Sp。 正式名称・インフィニット・スペース(Infinite-Space)。

IS本来の目的である宇宙探査のための機体のプロトタイプで、

形状は通常の宇宙船そのものだがISと同等のパワーがある。

束が委員会の提案を聞き、特別に新たなコアを一つ与えたもので作られたのが、

I-Spの一号機、『パイオニア』だ。

 

「そして、そのパイオニアが今日試験飛行していたのだが……

 突然、コントロール不能に陥り、外気圏で暴走を始めた」

コンソールに表示されたパイオニアの姿は、普段と変わらないように見えた。

しかし、その座標データは恐ろしいまでの速度で移り変わっている。

 

「この速度……このままじゃ、重力を振り切って宇宙に飛び出しちゃいますよ!」

「だよね……。 シールドエネルギーバーニアをかけっぱなしか。

 この子(・・・)、有人型なんですよね?」

聡里の台詞に、千冬は首を横に振る。

 

「束が開発に関わっているんだぞ。 試験機だから万全を期して、

 無人動作システムを搭載したらしい。 無論コア内蔵だからこちらで解析はできんが」

そして千冬が切り出した内容は、聡里が話の内容から予想した通りだった。

 

「聡里、このI-Spの暴走を止めてくれ。 できれば私が行きたいのだが、

 生憎、暮桜は調整中でな……。 すまん」

千冬はふかぶかと頭を下げる。その時、部屋のドアが開き、松葉杖をついた楯無が入ってくる。

 

「本来、それは私の役目なんだけど、私がこのザマじゃね……」

本当に申し訳なさそうに目を伏せる楯無に、聡里は笑いかける。

 

「へぇ、楯無先輩も素直に謝ったりするんですね」

「失礼ね。 私だって罪悪感くらいあるのよ」

拗ねたように頬を膨らませる楯無を見てから、聡里は言う。

 

「わかってます。 そういう仕事は、空気がなくても行動できる僕向きですからね。

 ……で、シャルロット。 なんで君はここに居るんだ?」

言われたシャルロットは「てへ」とばかりに舌を出す。

 

「聡里が一人で無茶をするから、千冬先生に頼んで

 聡里への任務を教えてもらったんだ。

 いっつも聡里ってば、一人で頑張りすぎて倒れてるじゃない」

シャルに言われて聡里は苦笑するしかない。

 

「確かに……。 すいません、先生。この任務、パートナーを連れて行ってもいいですか?

 宇宙でのミッション、何が起きるか判りませんからね」

聡里の台詞に千冬はにやりと笑い、シャルロットは顔を輝かせる。

 

「ああ、もとよりそのつもりでデュノアを呼んだからな。

 では、篠ノ之聡里、シャルロット・デュノア。 ミッションを伝える。

 お前達二人はこれより成層圏で、パイオニアの暴走を止めろ!」

「「了解!!」」

聡里とシャルロットは揃って敬礼、会議室を飛び出した。

 

 

「聡里、この装備は?」

ラファールを展開したシャルロットは、展開した宵闇の背中に装備された大型のバーニアを見て言う。

 

「大気圏離脱用の大型ブースター。 一応、二機分打ち上げるくらいならできるはず。

 ……ただ、それだと突入用の姿勢制御スラスターが焼ききれて、突入には使えなくなるけど。

 まあ、今回は突入時、パイオニアに乗っていればいいから問題ないかな」

聡里は言ってメンテナンスカバーを閉じ、宵闇のシステムを起動。

すると大型ブースターを装備した機体が浮かび上がり、ガレージからのろのろと移動する。

 

「だ、大丈夫なの聡里? すごく遅いけど……」

「ここで高速なんて出したら、バーニアで地面が焼けちゃうよ。

 シャルロット、バーニア上面のジョイントにラファールを固定して、グリップを握って。

 一旦ある程度の高度まで上がってから、垂直離脱機動に入るけど」

その台詞にラファールを接続、コアのバイパスを接続するシャルロット。

データ回線が繋がった事でブースターのデータがラファールに転送され、確認する。

 

「な、何このブースター……! 怪物みたいな出力!!」

そのブースターは、ちょっとしたトラックくらいなら打ち上げられるほどの出力を持っていた。

 

「このくらい無いと、空力を無視してるISは打ち上げきれないんだ。

 ……来た、打ち上げの手段!」

そこに現れたのは唯。 彼女は専用IS『蒼空(あおぞら)』を展開し、

聡里たちを呼ぶ。

 

「聡里さん、言われたとおりスタンバイしてましたよ。

 蒼空、ナノ・カタパルト、展開!」

 

唯の声と共に、蒼空がナノマシンを空中に放出。

そしてそのナノマシンが空中で形を作り、ほぼ垂直なカタパルトを形成した。

 

「サンキュー、唯。 シャルロット、データ支援頼んだ」

「勿論。 今もシステムはオールグリーン。 射出準備OK!」

ナノ・カタパルトに接続された宵闇とラファールは垂直の状態で体勢を整え、

唯のカウントダウンが開始される。

 

「行きますよ、お二人とも! カウント5,4,3,2,1……リフトオフ!」

ナノ・カタパルトで大空へと打ち出される宵闇とラファール。

その速度は瞬時加速クラスで、すぐに上空へ飛び上がり、雲へと迫る。

 

 

「さ、聡里……高度、5000mに到達……! バーニア点火高度だよ……!」

「了解、ブースター点火……! 空を、突き抜けろ、宵闇……ッ!」

聡里に応え、宵闇はブースターを点火、一気に加速する。

 

「ぐ……っ」

「くううぅ……ッ!」

二人はその驚異的な速度で、強大なGと

空気の壁に押し当てられたせいでの体を押しつぶされそうなほどの圧力を受ける。

 

「宵闇……エアロ・シールド、展開……! 空気の壁を、突き破れ!」

宵闇は両腕を体の前で並べ両腕のビームシールドを展開、

円錐形のビームシールドを発振し、機体前面をカバーする。

 

「ラファール、ガーデン・カーテン、オン!

 ビーム・シールド、宵闇のシールドと、共振……!」

シャルロットが展開したビームシールドが宵闇の物と混ざり合い、

接続した二機の全体を包み込む。

そしてバリアの周りでショックコーンが発生し、それを突き抜け音速を超える。

 

「シャルロット、高度は……!?」

「高度、7000、8000、9000、10000……対流圏突破!

 成層圏、突入……!」

そのまま二人は成層圏を駆け抜け、中間圏の入り口へと入る。

 

「シャルロット、もうすぐ中間圏だ。 急激な冷却に用心して」

「わ、判ったよ、聡里」

そして中間圏へ突入し、宵闇の機体や聡里の体には小さな氷が付き始める。

 

「聡里、大丈夫!?」

「僕の体は、絶対零度でも稼動できるから心配はいらない。

 それより、ラファールのシールドエネルギーは?」

「だ、大丈夫。 ブースターのコンデンサから、エネルギーがこっちに回ってる。

 これなら切り離しまでラファール本体のエネルギーは温存できるよ」

宵闇とラファールはそのまま中間圏から高熱の熱圏を突き抜け、外気圏に到達。

限界を超えた加熱で真っ赤になっていたブースターパーツをパージ、排除する。

 

「シャルロット、パイオニアの位置座標は?」

「……ここから上方向に相対距離10km。 すでに第一宇宙速度に入ってるよ。

 もう少しで第二宇宙速度に到達しちゃうよ」

「了解。 これよりファーストフェイズ、ランデブーへ移行する」

言葉通り、二機は上方に見えたパイオニアに接近。

外部からの進入用ハッチのコンソールを操作しようとした。 しかし。

 

「コンソールが、破損してる!?」

船外からの操作用コンソールにはドライバーが突き刺さっていて、

そのドライバーには『Challenger』の文字が書かれていた。

 

「これ……スペースシャトル『チャレンジャー』のツール!?

 船外活動時の忘れ物か!?」

コンソールパネルが破損し、シャッターを開放する『まともな』方法は無かった。

 

「仕方ない……。 シャルロット、僕の体預ける」

「ど、どうするの聡里?!」

「コアネットワークで、パイオニアのコアに直接アクセスして説得する。

 ……じゃ、お願いね。 ネットワーク強制アクセス。 認証ネーム『ブランク・ゼロ』」

聡里が呟いた瞬間彼の体から力が抜け、宵闇の展開が解除。 生身のまま宇宙空間に放り出される。

 

「さとりっ!」

シャルロットは慌てて体を抱きとめるが、彼の体には全く問題がなかった。

それどころか、ラファールは彼の生体ISコアが過剰動作している事を示していた。

 

「聡里……また無茶して」

シャルロットは苦笑しつつ、力の抜けた彼の体を抱きしめる。

その苦笑は、どこか優しいものを含んでいた。

 

◇Network-LogIn◇

 

聡里がログインした空間は、漆黒の中に色とりどりの光が浮かぶ、まるで宇宙空間だった。

 

「ここは……?」

その空間の中では、黒いワンピースを着た一人の少女がうずくまり泣いていた。

 

「なんで……? なんで、わたしをいじめたの?」

「いじめた……? 何があったの?」

聡里の声に、その少女は驚き飛びのいた。

 

「あなた、誰!? わたしをいじめたひと!?」

その少女に対し、聡里はなるべく怯えさせないように話しかける。

 

「僕は君を苛めたりしないよ。 僕は聡里。 認証ネームは『ブランク・ゼロ』。

 束姉さんに作られた君なら、わかるよね」

彼に言われた少女は考え込み、ぽんと手を打ち合わせる。

 

「……わたしを作ってくれたお姉さんの弟さんで、わたしたちのお兄さん!」

納得したらしい彼女に、聡里は微笑みかける。 と、その時一人の少年が現れた。

 

「聡里さん、また無茶して~。 僕のマスターがすっごくビックリしてたよ」

「あの、あなたは……?」

黒いワンピースの少女は小首をかしげ聞く。

 

「ボクはラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。 リヴって呼んで。

 キミがパイオニアだよね?」

「う、うん。 私が宇宙探査船試験機『パイオニア』だよ。

 それで、聡里さんとリヴさん、何の御用ですか?」

彼女の台詞に聡里が答える。

 

「実は、キミの外部コンソールにデブリが直撃したらしくて、外からの操作を受け付けないんだ。

 外部からのハッチを開けてくれないかな?

 そうじゃないと、僕らは地球に帰れないんだ」

聡里の台詞にパイオニアは慌てだす。

 

「あわわ、それは大変です! それじゃ、聡里さんにボディの操作回します!

 あの、早く中に乗ってください!」

「ありがとう、助かる。 リヴ、キミもコントロールコードを受け取っておいて。

 それと、シャルロットにメッセージ。 『気密ハッチを空けるから、僕の体を持って乗っておいて』って!」

「了解! 聡里さん、先にログアウトしてるね!」

言って姿を消したリヴを見送り、聡里はパイオニアに向き直る。

 

「じゃあ、僕もログアウトするよ。 お願いね、『ニア』!」

「! ……はい!」

力強く頷くパイオニア改め、ニアに頷き返し、聡里もログアウトした。

 

◇Network-LogOut◇

 

「……ん」

「聡里! 良かった、起きた……!」

聡里が眼を覚ますと、そこはメカメカしい空間。

周りを見渡し、そこがパイオニアの内部である事を理解した聡里は、

起き上がりシャルロットに質問をする。

 

「シャルロット、現在の状況は!」

「う、うん。 機体のコントロール系は操作できるけど、シールドエネルギーが無いみたい。

 大気圏突入用のエアロバリアシステムが起動できないって。

 とりあえず、軌道計算はしたよ。 はいこれ」

シャルロットから転送されたデータは、IS学園近海への降下コース。

聡里はそれに目を通す。

 

「コースに乗る時間まで数時間あるか……。

 よし、とりあえず突入軌道の入り口で、所定の時刻まで待機しよう」

「そう、だね。 それじゃ、聡里。 ナビはボクがするよ。

 聡里はコントロールをお願い」

「任された。 ……よし、行くよシャルロット、ニア!」

「ニア……?」

怪訝そうな顔をするシャルロットを急かし、聡里はナビに従い指定のコースの入り口へ。

後は時間が来たらそのコースで降下するのみだ。

 

「でも、どうするの聡里? 降下用のエネルギーシールドは展開できないんだよ?」

「それなら大丈夫。 今からパイオニアと宵闇、ラファールのコアシステムをリンクさせて、

 エネルギーを流し込む。

 そうすればエアロシールドの展開くらいはできると思う」

それだけ言うと聡里は宵闇とパイオニア間にエネルギーバイパスを形成。

シャルロットもラファールからエネルギーを送ったところで、彼女はふと気付く。

 

「ねえ……聡里。 なんか、息苦しく、ない?」

「え? ……! 船内の酸素レベルが低下してる!?」

聡里が慌てて船体を確認すると、気密が甘く空気が漏れ出していた。

 

「くる、しい……たすけ、て……」

「くそっ、無人機だからって気密をサボったな!?

 リヴァイヴ、バイパスを強制切断! 生命維持モード起動!」

意識を失ったシャルロットの代わりにラファールを遠隔操作し、

シャルロットの生命維持のみをさせる。

そして応急処置で船体からの空気漏れを止め、状況を確認。

 

「ラファールはギリギリの突入速度での突入時間、生命維持が持つ程度、

 パイオニアは姿勢制御が精々で、シールドは張れない……。

 となると、かなり無茶が要るな」

聡里は宵闇を展開し、船外へのエアロックから外へ出る。

そして、船外からパイオニアのボディを支え宵闇各部の装甲をスライド、展開。

しかし両腕部のみ装甲をスライドさせず、そこに大きな手甲状装備を装着する。

 

「シールドエネルギープラント、起動!」

左腕部装備、エネルギー生成プラントシステム『伊邪那美(イザナミ)』。

紅椿の『絢爛舞踏』を機械的に再現した装備で、ごく少ないエネルギーを増幅させ、回復させる。

そしてそのエネルギーは、右腕の装備を介してパイオニアのコアへと転送される。

 

「パイオニア、大容量エネルギーバイパス接続」

右腕武装備、補給用エネルギー伝送システム『伊邪那岐(イザナギ)』。

特殊なアンカーケーブルを対象に打ち込むことで、対象へのエネルギーの大量送信、

あるいは対象から大量のエネルギーの吸収が可能な装備。

 

これら二つをまとめたパッケージ『夫婦神(メオトガミ)』でパイオニアのエネルギーを回復させ、

遠隔操作でエアロシールドを展開する。 しかし、そのエアロシールドを展開したことによって

姿勢制御に回せるエネルギーは無くなっていた。

 

「さぁて……宵闇、ちょっと熱いけど、耐えてくれよ!」

大気圏突入軌道に乗り、大気との摩擦で過熱され始める宵闇とパイオニア。

パイオニアはエアロシールドで大気との摩擦に耐えるが、

宵闇は加熱で装甲面が真っ赤に焼け、聡里の肌もチリチリと熱に焼かれる。

そう、聡里も耐える事はできても、痛みを感じない訳ではないからだ。

 

「っ……! 降下軌道、調整……!」

宵闇の数倍の質量があるパイオニアを、腕部以外の装甲を展開した宵闇の

強大な出力で押し、軌道を調整する。

そのまま流星のように炎を纏い、大気圏に向けて落ちていった。

 

(熱い……けど、ここで諦めたら、シャル(・・・)まで燃え尽きる!

 それに比べれば、こんな熱さ……!)

 

「何でもないッ! 生体(バイタル)ISコア、臨界突破(リミットオーバー)

 宵闇とのエネルギーリンク確立! !」

 

聡里は全身に力を込め、それに応え宵闇のバーニアの噴射炎が大きくなる。

そのまま加速度をバーニアで殺し、眼前まで母なる青い星が迫ってきた。

 

「突入完了まで、5,4,3,2,1……突破ァっ!」

焼け付くような熱さの空気の層を突き抜けた彼は、宵闇のボディに強制冷却をかけ

青い空をパイオニアと共に飛んでいた。

そして、その時聡里の肩に手が置かれる。

 

「シャル! 良かった、大丈夫だったんだ!」

「うん。 聡里のおかげで助かったよ。

 それと、やっとまた『シャル』って呼んでくれたね」

言いながら微笑み、聡里に笑いかける。

 

「ボクは聡里がどんな体でも、受け入れるよ。 聡里がボクを認めてくれたみたいに。

 ……今回は役に立てなかったけど、ボクだって、手伝えるんだから」

自立飛行するパイオニアの隣で、並んで飛ぶ二人。

その状態で、聡里はシャルを抱く。

 

「シャル……。 そう、だよね。 僕は僕。 怪物じゃない。

 距離を置いててごめん。 これからは、またいつも通り一緒だよ、シャル」

そのまま口付けする二人。 そのまましばらく飛んでいると、IS学園の上空へ来た。

 

「ん、よし。 シャル、学園上空に着いた。 降下するよ。 ニアも追従して!」

聡里の声に反応するように、パイオニアも機体を左右交互に傾け翼を上下させる。

 

「聡里、ニアって誰?」

「あー、うん。 このパイオニアの、コアのあだ名。

 勝手につけちゃったけど、気に入ってるみたいでよかった」

その返事にシャルロットは不思議そうな表情をする。

というか、どういうことか理解できていなかった。

 

「……学園で回収って言っても、かなり無茶な着陸しなきゃいけないんだよね。

 シャル、先に着陸して、みんなを避難させてて。 僕はニアの逆噴射装置役するから」

それだけ言い、聡里はパイオニアと並列飛行。 シャルロットは言われたとおり地上に戻る。

 

 

「……あ、来たよ~!」

のほほんさんの声に、地上に集まっていた女子たちがわらわらと校庭に集まってくる。

 

その頭上からふわりと降りてきたシャルロットは彼女たちに指示を出す。

 

「みんな! 聡里が、これからここにパイオニアを着陸させるから、

 場所を空けてくれって!」

シャルロットの声で、女子たちは慌てて校庭の隅のほうに移動。

その時、遠くから結構な速度で二機の機体が迫ってきた。

 

「あ、見て! 聡里様よ!」

「ホントだ! じゃあ、あの一緒の飛行機がパイオニアかあ。 普通のシャトルみたい」

そうこうしている間にその機体の影は大きくなり、IS独特の飛行音が聞こえてくる。

 

「……って、早過ぎない……?」

「み、みんなよけろーっ!」

彼女らが避けたときには、もうパイオニアと宵闇はグラウンドにランディング。

その寸前に聡里が機首を押さえ、進行方向と逆向きに展開装甲全展開の出力で

無理やりに機体を押し留めた。

 

校庭を滑っていく機体は校舎ギリギリまで滑走したあと、

校舎を宵闇が蹴った反動で完全に停止した。

 

「よし……っ。 着陸成功、っと!」

聡里は言ってガッツポーズ。 周りからは惜しみない拍手と歓声が彼と、

すぐに寄り添ったシャルロットに連れられ、報告に向かう。

 

 

「織斑先生。 篠ノ之聡里、シャルロット・デュノア両名、任務より帰還しました」

「了解だ。 ……それと聡里。 客人を紹介しておこう」

千冬が言って、先に室内に居た二人の女性を手で示す。

 

「こちらは、アメリカのIS操縦者のナターシャ・ファイルスと……」

「また会ったな、ゼロ!」

ナターシャと共に居た女性……イーリス・コーリングが聡里をブン殴る。

本来なら殴られても逆に跳ね返すほどの身体強度を持っている聡里も、

あえて殴り飛ばされる。

 

「ッ!」

「聡里!? あなたは、いきなり何を!」

その光景を見て、千冬はイーリスの肩を掴む。

 

「イーリス・コーリング。 コイツは今はもう『ウチの生徒』だ。

 ……乱暴は困るぞ」

千冬の殺気にたじろぐイーリスだが、それを止めたのは聡里だった。

 

「いえ……いいんです。 僕が『地図にない基地(イレイズド)』を

 襲撃したのは事実ですし、それは償いきれるものではないと思ってます」

聡里は唇を噛み、拳を握る。 が、殴ったイーリスはやりきったような顔をしていた。

 

「あー、そういうのもう良いんだ。 アメリカとしてはあの感謝状と技術提供で十分だし、

 お前はナタルの恩人でもあるからな。 ま、けじめみたいなもんだと思ってくれ。

 よろしくな、サトリ(・・・)シノノノ(・・・・)!」

イーリスは聡里を殴った手を、今度は聡里に差し出す。

聡里もそれを掴み、握手のようにしながら立ち上がった。

 

「フ、解決したなら良いだろう。

 聡里、デュノア。 クラスの連中が呼んでいたぞ。

 教室で待っていると言っていたから、早く行け」

「「了解しました!!」」

聡里とシャルロットは二人揃って千冬たちに敬礼。

そのまま退室する二人を、大人三人は見送る。

 

「良いもんだな、ああいうの」

「そうね、イーリ。 ……ブリュンヒルデ、協力感謝します」

揃って頭を下げるアメリカの二人に千冬は苦笑。

 

「ブリュンヒルデはやめてくれ。 私はもう一介の教師だ。

 だが、見たか? 聡里の、あの状態を」

千冬の言葉に、ナターシャとイーリスも表情を曇らせる。

 

「彼の体から、少しですが粒子が剥離していました。

 恐らくアレは、彼自身が粒子化するという現象の副作用でしょう。

 ……そして、その粒子の再結合に、不具合が生じている、という事です。

 あのままでは、下手をすれば彼は、粒子になって消えてしまう」

ナターシャが言った言葉が重石になったかのように、室内を重い空気が包み込んだ。

 

 

聡里とシャルロットは教室へと急ぎ、ドアを開ける、

その途端、彼ら二人は破裂音に迎えられ、聡里は反射的にシャルロットをかばう。

が、その音の正体はクラッカーだった。

 

「「「二人とも、お帰り~~~っ!」」」

クラッカーを鳴らしたのは、一組のクラスメイトたち。

中心に立っていたのは、ラウラ、一夏、箒、セシリアと鈴だった。

 

「みんな……!」

「わぁ~っ、みんな、パーティの準備してくれてたの!?」

聡里は驚き、シャルロットは満面の笑みではしゃぐ。

 

「ああ。 兄さん達が作戦を成功させると信じていたからな。

 ……おかえりだ、兄さん、義姉さん」

「ありがとう、ラウラ……ッ!」

聡里は差し出しかけた右手を引っ込める。

それを見たラウラは怪訝そうな顔をするが、聡里は笑顔を取り繕いごまかす。

が、その瞳は勝手に金色……いや、鈍色になっていた。

 

「ど……どうしたんだ、兄さん!?」

「あ、いや、何でもない、よ? ラウラ。 ……ごめん、ちょっと休んでくるよ。

 最後のブレーキ、流石に疲れたからさ。 シャル、みんな。 楽しんで」

それだけ言い、聡里は教室から出て行く。

彼が抑えている右腕から、わずかな光の粒子が溢れているのに気付いたのは、

シャルロットとラウラの二人だけだった。

 

続く。




という訳で、宇宙でのミッションと、以降の伏線でした。

次回はもう一人の聡里、聡留の事をメインに書こうと思います。
では、また次回、お会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。