Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
聡里たちが学園に帰還してから数日。
パイオニアを学園で検査した結果、判明した事実が聡里に伝えられる。
「あの暴走のきっかけは、ハッキングだったんですか」
「ああ、その通りだ。 コアネットワークのハッキングなど、そうそうできない。
聡里、心当たりはないか? 束はそれをする理由はない。
むしろ、宇宙探査技術でのトラブルは避けたいはずなんだが……」
それを聞いた聡里はくらい顔をし、千冬に言う。
「だったら、おそらく『亡國機業』だと思います。
僕らみたいにISコア・ネットワークに介入できる技術もありますし、
あの組織なら、総力を挙げれば束姉さんを出し抜くくらいはできます」
実際、汎用型
コアネットワークへのアクセスが可能だった。 そんな存在が何人も居るのだ。
制圧・ハッキングができないほうがおかしい。
「でも、問題は動機です。 何でこんな事をしたのか、それは流石にデータが足りません。
今後はもっとセキュリティや迎撃対策などもしなくてはいけないでしょうね。
……それで、一つお願いがあるのですが」
聡里が切り出した事を聞き、千冬は聡里の顔を見、結論を出す。
「お前の事だ。止めてもするんだろう? ならば許可を出す他無い。
今のお前を止めるには、それ相応の被害を覚悟しなければならんからな。
だが、できるだけ早く済ませろ」
「……できれば。 では、失礼します」
退室する聡里。 その彼の体の端は僅かに発光し、粒子が散っていた。
◇
「さて、まずは何処へ行こうか……」
リュックを背負い学園の正門から出ようとする聡里。
だが、彼の後ろから複数の足音が聞こえてくる。
「待って、聡里!」
「いきなり出て行くとは、どういう事だ!?」
「シャル、箒姉さん……」
そこにいたのは、シャルロットを始めとする専用機持ちたち。
後ろの方では、唯が目を伏せていた。
「……唯、話したな? 黙っててくれって言ったのに」
「ごめんなさい……でも!」
反論しかける唯を止め、聡里はISスーツごと宵闇を展開。
唯に指示を出す。
「ナノマシン・カタパルト展開。 射出角調整はこちらでする」
「でも……はい」
「ちょっと待ってよ!」
言いながらシャルは宵闇の腕部分を掴む。
「……」
「またボクを置いて、無茶する気でしょ!? どうして!」
言い募る彼女を振り払い、聡里は言う。
「これは個人的な『復讐』と『けじめ』だから。
巻き込みたくないんだ」
それだけ言うと、腕を振り一瞬手を振りほどいた隙にカタパルトを作動、射出。
「
フランス語の別れの挨拶を残し、超高速で射出される宵闇。
シャルロットもラファールの高速仕様装備で追従しようとするが、
展開装甲を完全に高速形態にし、なおかつカタパルトの初速がある宵闇は
すぐに視界から消えて行った。
◇
聡里はそのまま行方知れずとなり、学園では休学扱いになる。
学園では以前のような平穏が戻ってきたが、一組の中には
少し空虚な空気が流れていた。
それから数日、世界各国でIS技術の研究機関に侵入し技術などを盗み出し、
あるいは破壊し、その犯人が施設の情報がIS委員会にリーク。
『亡國機業』との繋がりが浮かび上がるという事件が連続する。
それらの施設の記録には、必ず『黒いIS』の姿が一度だけ映っていた。
その画像をISデータに照会したところ、その正体は『宵闇』と判明。
しかし表向きはまともな施設も襲撃しているため、
彼は国際的に手配される事となる。
そして学園では、消えた聡里など忘れたかのように復興が進められた……。
続く。