Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
オルコットさんから一夏への宣戦布告があった日の授業。
前では山田先生が話している。で、一夏はというと。
「……」
腕を組んでしかめっ面になってる。内容がサッパリ判ってない様子。
「というわけで、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。
これは心拍数など、人体の内部へも影響が……」
そこまで山田先生が行ったとき、クラスメイト(勿論女子)が手を上げた。
「先生、それって大丈夫なんですか?体の中をいじられるって、ちょっと……」
「ああ、そんなに心配する事ありませんよ。
そうですね、たとえば皆さんはブラジャーを着けていますよね?
あれはサポートをしてくれても、人体に影響は……あ!」
そこまで言って、ようやく山田先生は僕ら『男子』が居るのを
思い出したらしい。
「あ、その、織斑くんと篠ノ之くんはしていませんけどえとそのあう……」
と、見る見るうちに真っ赤になっていく先生。
やっぱり、すごい若々しいし同年代に見えるんですが。
「えっとその、先生。わかりやすい?説明、ありがとうございます。
どうぞ先に進めてください」
苦笑している一夏に代わって、同じく苦笑しながら山田先生をうながす。
「は、はいっ! えーっと、それともう一つ大事な事です。
ISには意識のようなものがあり、お互いの対話……
つまり操縦時間、ですね。
それに比例してISも操縦者の特性を理解しようとします」
それを聞いて、一夏は納得顔で頷いている。
というか基本なんだけど、これ……
「それによって相互で理解しあい、よりISを使いこなせるようになるわけです。
ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして見てあげてください」
その台詞を聞いて、一人の女子がすかさず挙手、目をきらきらさせながら発言。
「それって、彼氏みたいな感じですかー?」
「えぇっ!? 先生には経験がありませんから、その、なんとも言えませんが……」
また山田先生が真っ赤になってしまう。
女子も雑談を始めて、収集がつかなくなってきた。
「なぁ、聡里。ちょっと愚痴っていいか?」
一夏に言われて、僕は了承する。
「空気がハンパなく甘ったるい」
「たしかに、これはね。いわゆる女子校のノリって奴なのかなぁ」
◇
そしてその授業も、混乱のうちに終了。
次の授業の準備をする僕らの机の周りに、
クラスメイトのうち半数以上が押しかけてきた。
「ねぇねぇ、織斑(篠ノ之)くんさぁ!」
「質問、いいですか?」
「今日のお昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ!?」
と、まるで雪崩のごとくきたもんだから、圧倒されるよ。
しかも、商魂逞しい女子が整理券を有料で配ってるし……
「ねぇ、千冬お姉様って家ではどんな感じなの?」
「え?案外だらしな[スッパァン!]いってぇ!」
質問に答えようとした一夏の頭に出席簿アタック。
見ると背後に千ふ……織斑先生が居た。
「休み時間は終わりだ、散れ」
その一言で、モーセの海割りのごとく女子がざぁーっと引いていった。
さすが『千冬お姉様』だなー。とか考えていたら、
考えを読まれたのか僕も出席簿アタックを喰らってしまった。
「ところで織斑、篠ノ之聡里。お前らのISだが、準備に時間がかかる」
「「え?」」
「予備機が無い。だから少し待て。学園側が専用機を用意するそうだ」
そう言われ、僕は硬直、一夏はワケがわからない顔をしていた。
「僕らに専用機って、一年のこの時期にですか!?」
「ああ。お前らは状況が状況だからな。データ収集として専用機が与えられる。
理解できたか?」
いわれて僕は納得したけれど、一夏がこっちをつついてきた。
「なぁ、それってどういうことなんだ?」
と聞かれて、それを見た千冬さんが一夏に言う。
「はぁ……。篠ノ之聡里。説明してやれ」
と、僕にお鉢が回ってきた。
「わかりました。織斑先生。一夏。今現在、ISのコアに関する技術は
まったく明かされてないのは覚えてるよね?
で、そのコアを作ったのは篠ノ之束博士。
彼女が作った467個のコアの分しか、ISは作れないんだ。
で、そのうち二つが僕ら専用に回されるって事。
これは、本来なら国家の代表とか、企業の専属操縦者にしかありえない事だよ。
だからこそオルコットさんもあんなに大きな態度に出たんだからね?」
僕が言ったことが聞こえたのか、オルコットさんが
「おーっほっほっほ!」とばかりに胸を張っていた。
「な、なるほど……」
ここでようやく事情が飲み込めた一夏。
で、そこにもう一つ千冬さんが爆弾発言を投げ込んできた。
「ああ、現存するコアだが、つい先日468になったぞ。お前の分だ」
……はい?
「え、千冬さん、どういうこ[ガスッ]いたっ!?」
「織斑先生だ」
「織斑先生、468になったってどういうことですか?
というか僕の分って!?」
おろおろしつつ聞く僕に、織斑先生が簡潔に説明。
「つい先日『うちの弟にヨロシクね★』というメッセージと共に、
倉持技研にコアが送りつけられて来てな……まったく、あの大馬鹿者が」
という先生の発言を聞いて、クラスがざわめいた。
「弟って……篠ノ之ってやっぱり!」
「先生、もしかして篠ノ之くんと篠ノ之さんって、篠ノ之博士の……?」
というクラスメイトの一人の質問に、簡単に先生は答えてしまう。
にしても良く噛まずに三回も「しののの」って言えたね。
「ああ。篠ノ之両名はアイツの妹と弟だ」
先生、勝手に個人情報ばらさないでいただけますか?
「え、うっそー!このクラス、有名人の関係者が三人も居る!」
「ねぇねぇ、篠ノ之博士ってどんな人?」
僕は聞かれて、とりあえず答える。
「えーっと。とりあえず、天才、いや天災かな?
あるいは添災(災いを添付してくるという意味)か……」
僕も少々あの人には手を焼かされたし、苦笑しつつ言う。
「っと、時間が。先生、すいません。授業始めてください」
僕は姉さんが嫌そうにしていたのに気づいて話をそらした。
一夏も気づいたらしく、難しい表情になっていた。
ほんと、こんなとこばっかり鋭いんだよな。それが一夏の魅力なのかな?
「安心しましたわ!まさか訓練機で対戦しようなどとは思っていなかったでしょうけど!」
授業後、僕らの机の前に来たのは、オルコットさん。性懲りも無く……
「確かに、オルコットさんは専用機持ってますしフェアじゃないですよね。
確か、『ブルーティアーズ』でしたっけ。
あのオールレンジ攻撃は、相手するのに苦労しそうです」
僕は言いつつブルーティアーズについて、調べた情報を思い出していた。
「勿論!このわたくしを……って、なんでわたくしのISを知っているんですの!?」
オルコットさんはかなり驚いたらしい。
僕は一夏に目配せしつつ、オルコットさんに言う。
「いや、ちょっとあっちこっちでいろいろと。
ブルー・ティアーズ。第三世代型で一対多に長けた機体ですね。
まあ、このくらいしか判らなかったんですけど」
「し、信じられませんわ。ブルー・ティアーズはまだ機密扱いですのに……」
と驚愕をあらわにするオルコットさん。そりゃそうか。
「まあ、それはいいです。で、用件はなんですか?」
「え、ええ。まあ、どちらにしてもクラス代表にふさわしいのはこのわたくし、
セシリア・オルコットであることをお忘れなく」
なんて台詞を僕と一夏に向け言い放とうとして、彼女は気づく。
「あら?織斑先生の弟さんは?」
「ああ、一夏ならさっき、箒姉さんと食堂に行ったよ」
僕が目配せしたので気づいた一夏はオルコットさんに気づかれないように
箒姉さんのところへ行って、箒姉さんと食堂へ行っていたのだった。
なにやらもめてたけど、いつもの事か。
「なっ、どこまでわたくしの事を馬鹿にしていますの!?
これでわたくしは失礼いたしますわ!」
そういい、僕から離れていくオルコットさん。
「やれやれ……僕も食堂に行こうかな」
と、僕も姉さんと一夏の居る食堂へ向かった。
◇
食堂に着くと一夏と姉さんがなにやら言っていた。
「今日の放課後。剣道場に来い、一夏」
「いや、俺はISの事を……」
「腕がなまっていないか見てやる」
「……はい」
一夏が姉さんに押し切られていた。
「やっほ、一夏。
箒姉さん、その後一夏借りていい?ISについては僕が教えるよ。
姉さんは剣道の方を教えてあげて。
最近は全然、剣道の練習してなかったみたいだから。
多分、中学校全部部活すらしてなかったんじゃないかな?」
僕にいわれて、「ぎくっ!」っとする一夏。図星みたいだね。
「……判った。一夏、必ず来い」
って言って、姉さんは自室へ帰っていった。
で、その日の放課後。
僕が部屋でのんびり一夏の帰りを待っていると、
ボロボロになった一夏が帰ってきた。
「さ、聡里。今終わったぜ」
「一夏……また姉さんに余計な事でも言った?」
「んな訳あるか!」
大方あまりにも弱くなってたのを怒られたから言い返したとかだと思ってたよ。
「そ、それはいい!早くISについて教えてくれ!」
「はいはい。それじゃ、一夏。まずオルコットさんのISについて説明するよ」
そういい、僕は説明と、一夏の質問への回答をしていた。
束姉さんの雑用を昔してたから、用語とかは覚えてるし。
「……ってわけで、とりあえず一番の注意点はあのオールレンジ兵器。
全部で六基あるから、忘れない事。それと射撃は、
相手が狙いを決めた瞬間に横に動いてかわすこと。
それが一番のコツだから。
それと、明日からは射撃の回避を練習しとこうか。
じゃ、今日はこの位で。続きは明日だね」
一時間ほど僕の講義を受けた一夏は、
どうにか礼を言うとベッドに倒れこんでそのまま寝てしまった。
続く。