Infinite Stratos Another 作:来迎 秋良
「そうよ、中国代表候補生、鳳 鈴音(ファン リンイン)。
今日は宣戦布告に来たってワケ」
いきなり一組の入り口に現れた彼女は、ツインテールをゆらしつつ一夏に言い放った。
そんな彼女に一夏は一言。
「何カッコつけてんだ鈴?全然似合わないぞ?」
「なっ!?なんてこと言うのよアンタは!!」
おーい、もうちょっとレディに対する言い方があるでしょうが。
鳳さんだっけ?怒ってるじゃん。
今のは僕の見立てでは、
この久々の再会でちょっと背伸びしたかったってことなんだろうけど。
「おい」
「何よ!!」
と鳳さんが怒鳴った相手は、よりにもよってうちのクラスの鬼担任。
「もうSHRの時間だ。さっさと戻れ、そして入り口をふさぐな、邪魔だ」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ。そして、早くクラスに戻れ。遅刻するぞ」
「は、はい……」
あらら、彼女は織斑先生が苦手みたいだね。
「また後で来るからね一夏!待ってなさいよ~ッ!」
といいつつ織斑先生の殺気から逃亡する鈴さん。
「なんだったんだ、鈴の奴?」
「一夏、実はわざとやってるんじゃ……」
「ん?何をだ?」
だーめだこりゃ。
◇
午前中の授業、ずっと上の空だった箒姉さんとセシリア。
ちなみに山田先生から注意五回、織斑先生から出席簿三回を喰らってた。
「「お前(あなた)のせいだ(ですわ)!!」」
「なんでだよ……」
僕が昼休みに食堂に行くと、綺麗にユニゾンで一夏を怒鳴っている二人がいた。
勿論姉さんとセシリアだ。
で、そこに登場する三人目の恋する乙女。
「一夏!や~っと見つけたわ!待ってなさいって言ったじゃないの!」
といいつつ息を切らせている鈴さん。
「よう、鈴」
「よう、じゃないわよ!
待ってなさいって言ったのに何で女二人連れて食堂に来てる訳!?」
「ああ、腹が減ったからな」
そこじゃないって一夏!
「えっと、鳳さんだっけ? とりあえず君も何か買ってきなよ。
ちなみにここのラーメンはけっこういけるよ」
僕に言われ、しぶしぶながら急いでラーメンを買ってきて一夏と同じテーブル席に座る。
「にしてもひっさしぶりだな、鈴。おじさんたち元気にしてるか?」
「あ、あー、うん。元気……だと思う」
ん……?これは何か、ある、かな?後で(ハッキングして)調べとくか。
そんなことを考えていると、うちのクラスのなかよし三人組が来た。
「あ、さとりーん。こっちでいっしょに食べようよ~」
「ああ、本音さん。いいよ。じゃ、一夏。
僕はあっちで食べてくるから、四人でごゆっくり~」
四人がけテーブルだし、そのほうが都合いいからね。
で、僕は本音さんたち三人といっしょにテーブルについた。
「誘ってくれてありがとね。丁度一夏とだと四人がけから一人あぶれるから」
「いーっていーって~。さとりんと話すと楽しいし、男の子の事わかるし~」
って本音さんはのほほんとこっちに言ってくる。
「ふふ、僕も本音さんと話すとこう、のほほんって気分になるよ。
のほほんさんだねぇ、本音さんは」
僕が言うと、ちょっと驚いたように本音さんは言う。
「さとりんもおりむーとおんなじ呼び方するんだね~。
じゃあ私のことは『のほほんさん』でいいのだ~」
本音さん、いやのほほんさんは言って袖をひらひらしてくる。
「そう?じゃ、のほほんさんで。相川清香さんと谷本癒子さんもよろしくね」
僕の台詞に、のほほんさんの友達二人が驚いたらしい。
「お、私達の名前まで覚えてくれてるんだ!よろしく!」
「むしろこっちがよろしくだよ!IS学園の数少ない男子とお近づきになれるんだもん」
「あ、あはは……」
二人には圧倒されちゃうよ。のほほんさんの、のほほんオーラが救い。
「のほほんさんは癒しだね~ いぇ~い」
「いぇ~い」
二人でハイタッチ。どこか通じるものをのほほんさんに見出したよ。
「ん~、おりむーたちがお話終わったみたいだよ~?」
僕らが料理を食べ終わると、丁度のほほんさんがそう教えてくれた。
「あ、本当だ。のほほんさんたち、また後でね。僕は一夏を励ましてくるから。
あの様子だとまた集中砲火喰らってるっぽいから」
僕はそういって、のほほんさんたちと別れ一夏たちの後を追った。
◇
午後の授業も終わって放課後。
一夏が第三グラウンドに呼ばれたと聞いて僕は野次馬に行って見たんだけど……
「一夏、どしたの」
「ふ、二人に物理的に集中砲火喰らって……」
で、指差した方を見るとセシリアと箒姉さんがこっちを見ていた。
しかもセシリアがブルーティアースを、姉さんが訓練用IS『打鉄』を展開して、だ。
「一夏……お疲れ。でも、二人も一夏のためを思ってるから。頑張れ」
「おう……」
と、一夏は再び立ち上がり雪片を構え、二人に挑んでいった。
……結局惨敗だったけど。
で、その日の練習も終わり、ロッカールームにて。
「ねえ、一夏。戦ってみてどうだった?」
「やっぱりあの二人は手ごわい。正直、俺一人じゃ追いつけないな」
途中から僕も訓練に加わったんだけど、やっぱ代表候補生のセシリアと、
小さい頃から剣道をしている箒姉さんは強かった。
僕は家を出てからそれどころじゃなかったから、剣道は全然だけど。
「一夏っ!」
なんて会話をしてると、いきなり鳳さんが入ってきた。
「おつかれ。はい、タオル。飲み物はスポーツドリンクで良かった?」
「ああ、サンキュ。さすが鈴だな、良く判ってる」
一夏に渡されたのはタオルと、ぬるいスポーツドリンク。
「へぇ、一夏の好みわかってるんだ。さすがセカンド幼馴染さん」
僕は一夏から聞いたことを言ってみる。すると鳳さんは胸を張って、
「当たり前じゃない。一夏のことくらい判るわよ」
自信満々だね。この自信を少し分けてもらいたいくらいだ。
「頑張ってね、箒姉さんやセシリアさんに負けないように」
と言われ、鳳さんは顔が真っ赤になる。
「な、何言ってんのよ!……あ、そういえばアンタ、一夏と同じ部屋だったわよね」
「そりゃ、男二人だし」
僕はそう言ったとき、鳳さんの目が輝くのを見た。
コレはヤバいかも。
「じゃあさ、部屋代わって」
やっぱり。
「僕の一存で出来ることじゃないよ。それに男女で同室ってのはどうかと思うし」
「何?アンタアタシに喧嘩売ってるの?アタシが代われって言ってるんじゃない。
代わりなさいって」
「駄目だよ。それに、一夏と女子が同室になることを、寮長のあの先生が許すと思う?」
「う……そ、それじゃしょうがないわね」
切札を出した僕に、さすがに反論できなくなったらしい。
というか、鳳さん織斑先生が苦手みたいだから、効果は絶大だろうな~……
「じゃ、じゃあしょうがないわね……そういえば一夏、約束、覚えてる?」
露骨に話題をそらす……でも、約束ってなんだろう。
「あー、あの引っ越すときに言った奴か。確か、鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を……」
「そうそう!」
「おごってくれるって奴か!」
「……え?」
「一夏……いい加減にしとけよ」
鳳さんはあっけにとられた表情。僕は頭を抱えて溜息。
おそらく彼女が言ったのは
『毎日私の酢豚を食べてくれ』=『付き合ってくれ』or『結婚してくれ』だ。
「だから、鈴が料理できるようになったら俺にメシをご馳走してくれるって話だろ?」
この期に及んで……!
「いやしかし、俺は自分の記憶力に自信を……」
パシッ
「ちょっと、何で止めるのよ!」
バキッ!
「がっ!?」
「え……」
ここまでの僕ら三人の行動を整理する。
まず、一夏を鳳さんが平手打ちしようとしたのを、僕が受け止めて『パシッ』、
そして、その直後に一夏の顔面に、僕が右ストレートを打ち込んだのが『バキッ』だ。
「聡里、お前何すんだよ!」
「ちょ、ちょっとアンタ、何一夏を殴ってんのよ!」
一夏と鳳さんに怒鳴られるが、僕は鈍感(バカ)一名に向き直る。
「一夏、いい加減にしときなよ。鈍感もここまで来ると害悪だよ!?
いい、もっとよく思い出して。彼女が別れ際になんて言ったのか」
僕は声に思わずドスを聞かせながら一夏に言う。
「え?……あ」
「気づいた? じゃあ、その言葉の意味を考えといて。
『毎日料理を食べさせてもらう』ってことは、どういうこと?」
「え?どういうことだよ」
一夏、本気で気づけよな。
「一夏、お前って本気で……ッ!?」
もう一発殴ってやろうかと手を上げたところで、鳳さんに止められた。
「聡里だっけ、もういいから。アンタがやってくれて頭が冷えた。
そんな大事なこと忘れたお返しは、今度のクラス対抗戦まで待っててあげる。
いい?アンタなんかボコボコにしてあげるから、覚悟してなさい。じゃあね」
そういい残し、彼女は踵を返し自分の部屋へ戻っていった。
「聡里……」
部屋に戻ってから、一夏は僕の機嫌を伺っているみたいだったけど知ったこっちゃない。
「鈍感一夏なんか知るか。一人で悩んで、一人で練習してろ」
僕はそう言ってドア側のベッドに入る。
普段は面倒がって出さないベッドの間の仕切りも使って、一夏を見ない。
まったく、この鈍感・オブ・鈍感を誰か叩きなおせ。
でも、一回戦で衝撃の相手が来るとは、この時僕らには予想もできなかった。
そして、翌日。
掲示板に表示されたトーナメント表を見て、僕はにやり、一夏は『げっ』という表情をする。
一組の一回戦の対戦相手は、二組。
そう、第一回戦で一夏があたったのは、昨夜喧嘩した鳳さんのクラスだったからだ。
「一夏、僕は手伝わないから一人で練習して、一人で考えてね。
姉さん達に頼むくらいは、許してあげるけど。でも、一夏。鳳さんだけには頼まないでね?
今の一夏は会う資格無し。あっちが会いたければ別だけどね」
僕は何か言いたそうな一夏を放置して歩き出す。
せめてあそこまで言われたら気づけ、バカ。
続く。