Infinite Stratos Another   作:来迎 秋良

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08:転校生はセカンド幼なじみ・後編

一夏を僕が殴ってから時間は飛んで、試合直前。

僕は一応一夏の補佐として、一夏側のピットに向かう。

そして、その途中で一夏側のピットから来る鳳さんに出会った。

 

「ああ、鳳さん。こんにちは」

「……どうも」

これは、一夏、あのバカまだ気づかないのか。

 

「対抗戦、お互い頑張ろう。あと、一夏はほどほどにボコボコにしちゃって良いから」

「勿論、アイツには多少痛い目に遭って貰わないと割に合わないわよね……」

「うん、もういっそ気持ちを拳にでも乗せて打ち込んでみたら?

 そうでもしないとあの鈍感には伝わらないよ」

それを聞き、自分の右手を見つつ鳳さんは呟く。

 

「そう、ね。あのバカにはしっかり叩き込んでやる。

 アドバイスありがと。でも、アタシは勝ちは譲らないわよ?」

「そんな事期待してないさ。じゃ、頑張って一夏と戦ってきなよ」

「オッケ、アイツの折檻は任せといて!」

そんな会話をし、僕は鳳さんと別れ一夏側のピットへ向かい、

到着した時試合が始まった。

 

 

~一夏Side~

結局聡里に殴られた原因は判らなかった。

鈴のあの発言に関することってのは判るんだが……

と、そんなことを考えていたら鈴がスタジアムに出てきた。

そのまま、アナウンスに促され俺たちは空中で向かい合う。

 

そして、俺と鈴はオープン・チャネルで会話を始める。

 

「一夏、今謝るなら痛めつけるレベルを少しは下げてあげるわよ」

「すずめの涙くらいだろ。そんなのいらねぇよ、全力で来い」

俺の台詞に失笑する鈴。

セシリア戦でもそうだったが、俺は真剣勝負て手を抜く・抜かれる双方嫌いだ。

全力でやってこそ意味があるからな。

 

「一夏。一応言っておくわ。ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。

 ''シールドエネルギーを破る攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる''」

鈴が言うとおり、『殺さない程度にいたぶる』ことは可能だ。

そもそも、俺みたいな素人がセシリアと渡り合えたのは、

聡里の指導があったとはいえ奇跡だ。

 

そして、奇跡は二度も続かない。

 

『それでは、試合を開始して下さい』

アナウンスの声と同時に鈴が俺に切りかかり、

俺はどうにか展開した『雪片弐型』で流した。

 

 

~聡里Side~

「一夏、まぁまぁ動くようになってきてるな。姉さんやセシリアとの訓練が効いてるか」

言いつつ僕はモニタを睨むように見る。

 

「『三次元躍動旋回(クロスグリッドターン)』か。セシリアにでも教わったかな。

 でも、よくもまああの短期間で覚えたもんだ」

そして、一夏は一度間合いを取り体勢を立て直そうとした。

 

「……甘い」

僕が呟いた瞬間、一夏が何か『見えないもの』に吹き飛ばされた。

シールドエネルギーを見ると、一瞬で76削っていた。

 

「あれが、『龍咆(りゅうほう)』

 ……中国の第三世代IS『甲龍(シェンロン)』の特殊武器か。

 ふぅん、何かと思えば衝撃砲か。

 空間に圧力をかけ砲身とし、副産物の衝撃波で砲撃する、ねぇ。

 ……ある程度なら再現できるかな?今度試してみるか」

僕はそんなことを考えつつ試合を観戦する。

 

 

~一夏Side~

「バリア無効化攻撃か……」

俺は千冬姉さんから聞いた、白式の『欠陥』を思い出す。

 

「ふぅ……やっぱ俺には、判らない事だらけだな」

言いつつ、俺は鈴に向き直り、言う。

 

「鈴」

「な、何よ?」

「本気で行くからな」

そして、言いながら雪片弐型を構え鈴に向き直る。

 

「な、何よ。そんな事当たり前じゃない。

 ……ああもう、とにかく!格の違いって奴を見せてあげるわ!」

鈴が叫び、巨大な両刃青龍刀を振りかぶり俺に向かってくる。

 

その瞬間、俺は『切札』を使った。

 

 

~聡里Side~

一夏が、翔けた。

 

「一夏、いつの間に『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』が

 使えるようになってたんだ?」

一夏の使っている技術、瞬時加速は一瞬でISをトップスピードに叩き込む技術。

たしかに、この技術なら代表候補生とも渡り合える。だけど。

 

「奇襲は一回限りだよ、一夏」

僕は一夏が鳳さんを追い、スタジアムをそれこそ『翔ける』のを見ていた。

そして、一夏が鳳さんに追いつき雪片が届こうというとき、スタジアムに爆音が轟いた。

 

「何が……!何かがスタジアムのシールドを破ってきた、まさか!」

焦った僕は、専用IS『宵闇(よいやみ)』を起動させスタジアムへ飛び出す。

 

『篠ノ之聡里!何故、スタジアムに出た!』

プライベート・チャネルで織斑先生の怒号が飛んでくるが、僕はそれに怒鳴り返す。

 

「織斑先生、お説教は後で聞きます!それより今は、観客と選手の誘導を!

 僕が時間を稼ぎますから、早く!」

『言われなくてもやっている!一体何が起きたか説明しろ!』

「……未確認のISが、スタジアムに侵入してきました」

 

 

~一夏Side~

『一夏、試合は中止よ!すぐピットに戻って!』

いきなり鈴が言い出したと思ったら、白式が爆煙の中に熱源を確認した。

 

――スタジアム中央に熱源、未確認ISと断定。ロックされています。

 

「なっ……!」

スタジアムの防護シールドは、ISのエネルギーシールドと同様の物。

つまり、それを破るだけの攻撃力を持った機体が俺をロックしていることになる。

 

『一夏、早く!』

鈴からプライベート・チャネルで通信が飛んでくる。

俺はまだP・チャネルは使えないのでオープン・チャネルで返事。

 

「お前はどうするんだよ!?」

『アタシが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!』

……ふざけんな!

 

「女を置いてそんなことが出来るか!」

「アンタのほうが弱いんだからしょうがないでしょうが!」

俺がP・チャネルを使えないからもう鈴も普通に喋っている。

 

「別にアタシも最後までやりあう気はないわよ。

 こんな異常事態、すぐに先生達が来て「危ねぇッ!!」え?」

俺は間一髪、鈴を抱き上げその場から離れる。

その直後、鈴がいた所をビームが薙ぎ払っていった。

 

「ビーム兵器かよ……しかも、セシリアのISより高出力だ」

俺は一人、そう言い悩む。……が、抱いていた鈴があばれだした。

 

「ちょ、ちょっと馬鹿、離しなさいよ!」

「こら、暴れるな!姿勢が……」

「うるさいうるさいうるさいっ!」

さすがにISで殴られると、シールドで守られてても冷や冷やするから止めてくれ!

 

「だ、大体どこ触って……」

鈴が言ったとき、『ヤツ』が動いた。

 

「ヤバい、鈴、逃げろッ!」

俺は鈴を投げ、鈴を狙う未確認ISの射線上に立った。

そして、俺に向かって『ヤツ』のビームが飛んできて、俺に当たる……はずだった。

 

「一夏ッ!」

鈴が叫び、俺をまた殴ってくる。

 

「なんて無茶すんのよ!ビームを受け止めるって……!」

「いや、お前を守らなきゃと思ったら体が勝手に……っていうか、

 俺は受けてないのか?」

「え?」

「え?」

 

俺たちが顔を見合わせたとき、上空から声が聞こえてきた。

「ふぅ、一夏。もうちょっと後先考えてくれるかな。

 おかげでシールドが五枚ほど消し飛んだよ」

といいつつ『黒』が降りてきた。

その『黒』を纏っているのは……

 

「聡里!?」

 

 

~聡里Side~

「おかげでシールドが五枚ほど消し飛んだよ」

僕が言った意味、それは、一夏たちを守った手段の事だ。

その手段とは、宵闇の固有武装のシールドパーツを、

一夏と未確認ISの間に投げ込んで発動させた事。

 

このシールドは小型のエネルギーシールドで、宵闇に数十枚搭載されている。

通常は長さ10センチくらいの棒状のパーツだけど、

展開すると直径1メートルくらいの六角形のエネルギーシールドになる。

これを10枚使って一夏に向かっていたビームを止めたんだ。

 

「さて、と。一夏。君は鈴さんを頼むよ。もうエネルギーもヤバいでしょ。

 こっちはいい加減ストレスが溜まってんだ。それに、友達に手を出されてるし。

 ここは僕がきっちり片ァ付けとく。早く行って、一夏」

「聡里、お前ちょっと口調変わってるぞ……?」

一夏に言われたけど、気にしてられない。

 

「いいから早く鈴を連れて行けよ、一夏!じゃないと僕の全力が出せない!」

「お、おう。聡里、すぐ戻ってくるからな!」

「いや、来ないで」

僕は、一夏の言葉を切り捨てて言う。

 

「居たら、巻き込んじゃうから」

 

そして、一夏が鈴を連れてグラウンドの端へ退避したのを見届けて、

僕はバススロットから、右手に威力重視型サブマシンガン『黒龍(こくりゅう)』を、

左手に連射重視型サブマシンガン『白虎(びゃっこ)』を展開し、

未確認ISに向け乱射する。

 

「お前の相手は僕。一夏たちのほうに行かせる余裕なんて、与えてやらないよ」

僕が言い放ち、マガジン満杯の弾丸をISに叩き込むと、

ようやくこっちに注意が逸れたらしい。

 

「弾切れ、次!」

僕は弾切れしたマシンガンを投げ捨て、銃剣付きライフル『疾風(はやて)』を、

左手にクロスボウ『射手(いて)』を展開、発射。

 

「いい加減喰らえって!」

また両手で武器を交互に連射する。

だが、一向に未確認ISはダメージを受けたような様子はなく、

ただ僕の弾丸だけが尽きていくだけだった。

 

「くそっ、やっぱ出力高い……やばっ!?」

僕が武器を展開しようとする隙を衝かれ、僕はビームを受ける羽目になった。

……が、しかし。僕にダメージは無い。

 

「え、なんで……あ」

僕が装着している宵闇のコンソールに、表示が出ている。

――フォーマットとフィッティングが完了しました。確認ボタンを押して下さい。

 

「……はは、このタイミングで、か。ありがとう、宵闇。

 ……いよっしゃあ!これで宵闇も、僕の専用機になったァ!」

気合を入れる意味でも僕は叫び、確認ボタンを押す。

 

そして、宵闇の装甲はより重厚になり、固有装備も強化されていた。

 

「固有装備……はやっぱシールドか、なるほど。じゃ、次はド派手に行きますか!」

僕は叫び、右手に連装ミサイルランチャー『炎(ほむら)』を、

左手にグレネードランチャー『轟(とどろき)』を同時展開。

 

「グレネードはピアッシングボム!いっけぇぇぇッ!!」

叫び声と共に発射される、ミサイルランチャーの四発のミサイル。

そして、ピアッシングボム(装甲を貫通するように爆風を発生させるグレネード)

が直撃し、未確認ISの右手と両足、頭をミサイルが吹き飛ばし、

胴体にグレネードが大穴を開けて機能を停止させた。

 

「どうにか終わった、か……。大丈夫だった?一夏、鳳さん」

「お、おう。助かった。お前のIS、まだ一次移行してなかったんだな」

「うん、なぜか、ね。じゃあ、先戻るよ。先生たちに報告してくる」

僕がいい、二人から離れピットに戻ろうとしたとき、僕らのISが警告を発した!

 

――警告!敵ISの再起動を確認、エネルギーチャージ完了済み!

 

僕が慌てて残骸を見ると、唯一無事な左腕を展開し、一夏たちを狙っていた!

 

「クッソ、ここからじゃ……一夏、コレ!!」

僕は叫び、宵闇の固有装備のエネルギーシールド『明鏡(めいきょう)』を投げ渡す。

一夏も反射的にそれを受け取り起動、ビームを受け止めたが、

シールドを持っていた右半身の装甲がシールドごと吹き飛ばされていた。

 

「り、鈴。大丈夫か?」

「あ、アタシは平気。それより一夏、あんた……」

「このくらい、平、気……」

それだけ言って、一夏は気絶してしまった。

 

「貴様ぁぁぁぁぁっ!!」

僕は叫び、無意識のうちに自分自身の『あるシステム』を起動し超高速機動に入ると、

銃剣付きライフル『疾風(はやて)』を展開し、銃剣でISの腕を切り落とす。

そして最後に相手の胴体に空けた大穴に再びグレネードを、

今度は炸裂弾で叩き込み吹き飛ばした。

一応、コアは残るように手加減しておいたけど。

 

「一夏……!?一夏!しっかりして!」

「鳳さん落ち着いて!まず医務室へ運ぼう!!」

一夏が怪我をして、パニックを起こしていた鳳さんは僕の言葉で我に返ったのか、

慌てて一夏を医務室へ連れて行った。

 

 

放課後、ISが一次移行したのでチェックを受け、

その後一夏のお見舞いに来た僕は、病室の外で鳳さんと鉢合わせた。

 

「あ、鳳さん。一夏の様子、どうだった?」

「いつも通りよ。鈍感なとこまでね。

 まったく、ずっと何をどう言おうか悩んでたアタシが馬鹿みたいね。

 で、アンタ。聡里、だっけ?アタシ達を助けてくれてありがと。

 アンタのISのシールドが無かったら、一夏はあの程度じゃ済まなかったって」

「そんな、当たり前のことをしただけさ。

 それに、僕としてもアイツは大切な友人だからさ。

 じゃ、僕も一夏のお見舞いをしてくるよ。鳳さん、またね」

そういい僕が一夏の病室に入ろうとすると、僕は呼び止められた。

 

「ちょっと聡里!」

「ん、何?鳳さん」

「その鳳さんっての、なんか違和感があんのよね。今度から、『鈴』で良いわよ」

と、ニカッと笑って言ってくる鳳さん。

 

「……ふふ、じゃ、これからはそう呼ばせてもらうよ、鈴さん」

「『さん』も無し!他人行儀だって言ってるでしょうが」

「はいはい、じゃ、鈴。一夏へのアタック、頑張りなよ?」

「バッ、何言ってるのよ!じゃ、じゃあまた!!」

と、僕が茶化すと真っ赤になって走っていった。

 

「……青春してるねぇ」

 

僕は呟き、一夏の病室へ入り、一夏と試合結果なんかのことを話した。

いい加減鈍感なのを矯正するのも諦めたので、こっちは脱力するだけだけど。

 

 

その頃、IS学園の地下50メートルに位置する研究室にて。

織斑千冬は同僚の山田真耶の報告を受けていた。

 

「あれは、無人機でした」

「そうか……やはりな」

そう一言言い、千冬はそのISの残骸に向き直る。

 

「コアは、どうだった?」

「はい……それが、登録されていないコアでした」

「そうか」

やはり、とひとりごちる千冬を怪訝そうに見る真耶。

 

「何か、心当たりがあるんですか?」

「いや、無い。――今はまだ、な」

その千冬の言葉を聴き、真耶はさらに混乱。

 

(まったく、何を考えているのだ。あの『天才[ばか]』は)

かつて地上最強と呼ばれた戦乙女(ヴァルキリー)が

胸の中でつぶやいていたことを知るものは、彼女自身の他に存在しない。

 

続く。

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