ボーイミーツガールのお話です。
──90年代。それは長らく続いた極道の全盛の終わりの始まり。
盛者必衰。
第二次世界大戦時、仇敵を殺し尽くした極道は、長きにわたる繁栄の中にいた。
高度経済成長を遂げ、日本という国が隆盛を迎える中。彼等は栄華をその手にしていた。
女どもを連れ去りかの国に送り込み。
男どもを連れ去り臓器をまたかの国に送り込み。
建物に放火し土地の権利者を
極道にとって
五十年。
第二次大戦が終わり、そして日本という国が経済成長により大国と成長し、その絶頂の真っ只中にある中。
──彼等は、復活しようとしていた。
かつて極道により滅ぼされた、と。そう思われた存在が。
闇に生き。裏を知り。──罪なき者を
忍者。
人を超えた暴力を身に纏い、光当たる場所からは決してその存在を認知されぬ闇の生物。
極道にとっては、永劫の仇敵。
そしてかつて滅ぼしたはずの存在。
されど──彼等はたとえ草木捥ぎ取られようとも、それでもその根は生きていた。
第二次世界大戦時。東京が
市民の救助に奔走せし忍者を、市民ごと極道は忍者を滅した。
それでも──忍者は生きていた。
これは忍者が復活し、長らく続いた極道の栄華が終わるまでの物語である。
それは、一つの切っ掛けから始まる。
忍者と極道。
いずれ対峙する運命を抱えし男と女の出会いから──。
※
「──目が覚めましたか?」
柔らかな声が聞こえてきた。
暗澹に沈む意識の中。木陰から浮き出た日の光が染むような、そんな声だった。
「随分と長く
閉じていた瞼を開ける。
そこには、一人の女がいた。
眠たげに垂れ下がった目つきに、平行に結ばれた口の形。そこには表情らしき表情はない。
しかし──その
「アンタは──?」
「私は
「俺か....俺は、──
「.....では、火頭。何があって貴方は──あんなところで
その女──死乃原の声の調子も、やはりどこか平坦だ。
その平坦さは、恐らく意図して作っているものじゃない。元から、こういう声音しか作れない
だからこそ。
その平坦さの裏にある感情そのものは解らないからこそ。その言葉そのものを受け取るほかない。──この女は、純粋に心配しているのだろうか。
記憶を、辿る。
そうだ。
──雨が、降っていた。
──明日、ようやく
──雨の中。俺は必死になって
──組の皆、全員が
──多分、敵対する極道の連中が殺し屋を雇ったんだ。出会い頭に弾丸
──必死に逃げて。逃げ回って。逃げ回った先に階段があって。誰かの足で蹴躓いて。それで──
「俺は.....俺は....」
「はい」
「──家族が、死んじまった.....!」
──そうだ。
──組は、俺にとって家族同然だった。
──クソカスの親に
「みんな.....
家族が死んだ──。
その言葉を聞いても尚。女は表情を変えない。変えない──が。
死乃原は、火頭から一つ目を逸らした。
「.....ごめんなさい。本当は、一緒に悲しまなければならないと。そう。解っているのですけど....」
「.....すまねぇ。同情を誘うような事言っちまって。情けねぇったらありゃしねぇよ」
「いいえ。──辛いことがあったら、それを誰かに伝える事は、正しい。それだけは、間違いないですから」
「アンタも.....悲しい事、あったのか?」
「はい。私は──悲しみも。怒りも。喜びも。確かに私の中にはあります。ただ、それをどう表現すればいいか、解らない」
「解らない....」
悲しくても、悲嘆に暮れることはできない。
怒っても、それで顔面を紅潮させる事もできない。
喜んでも、笑みを浮かべる事も出来ない。
そういう、在り方。
それが、死乃原兎裳孤という女なのだと。
「──アンタの家族は?」
「もう、皆
死乃原はそう言った。
その言葉に、──今度は火頭が、表情を歪める。
こうして。大切な誰かの死を伝える時でさえ──彼女は、何も変えることが出来ない。
冷たく、平坦で、何もない無機質な声音を出力するほかない。
それは──どれほど残酷で、哀しい事なのだろう。
火頭は、それ故に──表情を歪めた。
目元を細めて。口元を吊り上げて。──死乃原の在り方に、哀しさを見出したのだ。
その表情を見て。
すっくと、死乃原は立ち上がった。
そして。
ベッドに横たわる火頭に、手を差し伸べる。
「立てますか? 一緒に外を見てみましょう」
その柔らかそうな手を取ると、じんわりとした生温かな体温が体の芯まで浸透していく。
そこで、ようやく死乃原の部屋の全貌が見えた。
それは、この一室だけで完結した小屋だった。
木製の壁には、大量の動物の人形がある。それはファンシー趣味のものではなく、リアルめな造形の人形であった。中でも多かったのが、──カラスの人形。
狭い室内から、扉を開けたその時。
そこには、一面に広がる緑の光景と、青空があった。
深緑の緑が、背丈の高い木々の間を埋めていて。その隙間から青空が覗いていて。葉が風に吹かれるたびに揺らめく光があって。
「.....これは。私が一生をかけて
鳥の声が聞こえる。
水がせせらぐ音が聞こえる。
柔らかく、静謐で、泰然。
そんな感覚が、火頭の全身を駆け巡る。
「東京にも──こんな所があるんですよ。珍しいでしょう?」
「....」
この感覚が、あまりにも鮮やかで。
火頭は、ただ口を開けて呆けていた。
「今。日本は経済成長を遂げて。そして土地の価値が上がって。ここだって、何度も何度も地上げの危機にあってきました。──そういう、”
「.....難しいコト言うんだな」
「要は。お金によって値打ちされる価値が多くなってきているという事です。ここ一帯の土地も、毎年高騰していて。そのたびに地上げの危機に遭ってきました。──それでも私は負けなかった。私にとって、ここはお金に左右されない”
「”
「そう。──火頭にとって、亡くしてしまった家族は、どれだけお金が積まれても変わらない価値があったはずです。だからこそ失って悲しむ。だからこそ取り返しがつかない」
「.....」
その通りだ。
──俺を
「.....今は悲しみに暮れていても。それでも火頭はこれから生きていかねばならない。家族を喪った現実と向き合って、戦っていかねばならないのです。その時、どうしても自分が生きる意味は何なのか、と。そう
「.....」
「私は。それでも──”
「......なあ」
「はい」
「俺にも.....見つかるのかな」
火頭は、──ぽつり。涙を流すように、自らの意識外からの
「家族もいなくなって。何の価値もなくなっちまった、俺でも.....そういう、本気で
その言葉を受けて。
死乃原は──強く、頷いた。
「──きっと見つかる。大切なものを失ってしまった火頭は、これから出会う価値の尊さに、きっと気付けるはずです。だから──」
冷淡──に聞こえる。
平坦──に聞こえる。
でも。
何も変化が感じられない死乃原の言葉の、その奥底にある価値が。
火頭の心に、じんわりと染むように。
「生きることを、諦めないで」
この言葉に乗せられた価値。
彼女の想い。そして誠意。
そういったすべての価値が──全て理解できた。
ああ、と思った。
これが。
これが──自らの生きる理由だと。
この暖かさを。
この価値を。
生み出せる人間になる事が──きっと、自らがこれから生きる意味なのだと。
「──見つける事が、出来たよ。アンタの言葉で」
「それはよかった」
「俺の家族は──血の繋がっていない俺を、家族として迎えてくれた人たちだったんだ」
「.....素敵な人たちですね」
そう。
あの人たちは、血の繋がっていない自分を
だから──本当の家族になれたんだ。
「だからよぉ。今度は──俺が、
火頭は、スッと死乃原に手を差し伸べた。
「ありがとう。──改めて。俺の名前は火頭賭燃鬼だ。どうか、覚えてくれていたら嬉しい」
「.....死乃原兎裳孤です。貴方の、これからの
その瞬間。
一瞬だけ。
微かな静電気でも流れるかのように──死乃原の口元がぴくりと動いたような、気がした。
※
「──送らなくて大丈夫ですか?」
「おう。平気だぜ。駅の方角は解っているからよ。──本当に
火頭と名乗る少年は、そう言うと弾けるような笑顔を浮かべた。
小屋を出て。森を抜けて。
火頭は、死乃原と向かい合う。
「そういや、アンタ、
「いいえ。もう二十歳を超えてしまいました」
「アンタ年上だったのか!
でもよ、と。そう呟いて──。
「俺。絶対に諦めねぇ。血反吐吐いても。泥ォ啜っても。絶対に──俺だけの価値ってやつを見つけてやる」
「ええ。私も楽しみにしています」
「
「ええ。......必ず」
「また──また、何処かで会おうぜ!」
それじゃあ、と一言呟いて。
火頭は──走り去っていった。
「.....強く生きてくださいね」
そう呟き、死乃原は再度小屋に戻った。
「あ....電話」
玄関を開くと同時──固定電話が鳴り響いていた。
「.....はい」
電話を手に取る。
「──応。兎裳孤か。ワシじゃ。神賽惨蔵じゃあ」
受話器の向こう。非常に若々しく、張りのある声が聞こえてくる。
聞いたことのない声。
しかし、聞いたことがない故に、その声の主がすぐに判別できる。
「お久しぶりです”長”。今日は随分若々しい声音ですね」
「おお。今日中々に気に入った体が見つかって
「成程.....して。何の御用でありますか?」
「馬鹿が
「極道ですか?」
「応。当然じゃァ」
「かしこまりました。──それでは。そちらも手筈の程。よろしくお願いします」
「当然じゃあ。──
電話を切り。
すぅ、と死乃原は息を吸い込む。
さて。
「──よぉ、姉チャン。アンタがここの”
小屋の玄関を開けると。
多種多様なスーツを着込んだ、大柄な男共がいた。
どいつもこいつも同じような
眼前にいるのは、五人。だが、どうせこの周辺にもっと人を配置しているのだろう。
「アンタにゃあ幾つか選択肢があるんだ。ここを”
「
「あー? 相場なんざ関係ねェー。要はテメェの命が惜しくねぇかどうか聞いてんんだよぉ~~」
「あぁ。
そう死乃原が言うと。
げひゃげひゃと──スーツ姿の男共が笑う。
「周りの
それは、土地を奪う専門の極道の事。
土地の権利者の家族を
「アンタ、無表情だけどいい
その台詞と共に、周囲の極道共も同意しぎゃははと笑う。
軽い調子の言葉に反し。この極道は──恐らくそれを実行するつもりなのだろう。この連中は子供が思い付きで何かの遊びをするように、いとも容易く
思う。
この極道共は、別の倫理と別の
だから。
殺さなければいけない。
「──へ?」
極道の一人の肩に。
カラスが一匹、乗っかっている。
「んだこのクソ鳥──」
そして。
極道がその鳥を追い払わんと手を上げるよりも早く。
その硬い嘴が。
極道の頸動脈目掛けて
「あ.....あぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」
極道の首元より鮮血が舞う。
その中──無表情のまま、死乃原はその様を見つめていた。
「──とある映画を見ていて思ったのです。人間にとって、一番脅威となる動物は何かといえば──それは鳥なんだろうな、って」
ばさ。
ばさばさばさ。
ばさばさばさばさばさばさばさばさ。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ。
鳥が。
森の木々を埋め尽くしていく。
木々を埋め。空を埋め。──最終的には光一つ通さぬほどの集団となって、現れる。
けたたましい羽音と、鳴き声と共に。
「銃を持っていた所で、ロクに当てられない。当てた所で数の暴力には対抗できない。空を飛び、いつでも死角から襲撃することが出来る。対抗手段が中々見つからないでしょう──ああ、一つ勘違いを正しておきましょうか」
暗闇に沈む森の中。
死乃原の眼は──極道の視界の中、夜の獣の如く妖しく光っていた。
「他の
「な....なん、で...」
「価値のある土地を持っていれば──それに釣られて貴方たちのような極道がわざわざやって来てくれるじゃないですか。今の時代、極道の方々もスマートになってきている。貴方たちのように──不動産会社に身分を偽って活動している極道もいる事ですし。極道がこの社会を隠れ蓑にしているならば、我々もまた蓑から引きずり出す甘い罠を張るしかありませんから」
「ま.....まさか。まさか!」
カァカァと喧しく喚くカラスの鳴き声。そして周りもロクに見えない暗がりの中。
極道は──全身を恐怖に振るわせながらも、言った。
「まさか.....忍者、か」
「ええ。──とはいえ、まだまだ雌伏の時ではありますが」
かつて──忍者百人が
「故に──まだ忍者の存在を、
まだまだ。
まだまだ忍者は、力が足りない。
闇の中で──その力を蓄えていかなければならない。
「だから──貴方達は、そのまま、誰にも知られず、何も残さず。ただただ、無為に死んでください」
闇が蠢く。
暗闇の中。その暗闇の輪郭が、薄く広がった。
それは──木々に止まったカラス共が、翼を拡げ飛びだった光景だと。そう極道たちは理解できた。
「あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああがあああああがあああああああああああああああああああああ‼」
果ての無い絶叫が響き渡る。
全身の皮膚が。肉が。その奥底にある骨が。眼球が。首筋が。脳内が。神経が。内臓が。
啄まれていく。
ぐちゃぐちゃと音を鳴らしながら。もしくがガンガンと骨を鳴らしながら。
嘴により全身が啄まれ──ついには叫ぶための喉や舌先すらも千切り取られ、声を上げる事すらも許されず。
「死体も残す訳にはいかないですからね。骨まで食べてください」
かあかあ。
絶叫の果て。残されたのは──血まみれのカラスが肉と血で少しくぐもった鳴き声だけだった。
「極道──ブッ殺しました」
※
「──首尾はどうでしたか、長?」
骨一つ残さず、森に
小屋に戻り、再度──長と連絡を取っていた。
「応。何の問題もない。──奴等の
「それはよかった。──しかし。これでも、アリの巣一つ潰しているようなものですよね」
「悔しいが喃。──まだ我々が本格的に極道ぶっ殺すには、準備が足りない。まだまだ隠れている必要がある」
コクリ、と死乃原は頷く。
「忍者は復活する。──その為には、お前の力もまだまだ借りねばならぬ。お前もまた、頼みの綱の一つだ。解っておるな、兎裳孤」
「ええ。──極道をこの世から消し去るまで。この──”鳥獣技我”の力。思うままに振るわせて頂きます」
死乃原兎裳孤には、一つ能力があった。
それは──己が肉体の血を動物に分け与えることにより。その動物の脳を操り、支配下に置く能力。
鳥獣技我、と長により名付けられたその能力。
それは──東京の忍を統括せし、神賽惨蔵にとって待ちに待った能力であった。
忍者は、諜報の手段として言葉を仕込んだカラス──”べしゃり
これまで神賽の手によって直接調教を施す事で一匹一匹を用意していたが。
彼女の異能が手に入った事により──べしゃり
「後は──”帝都八忍”全員を揃える。これで、極道を直接
「.....忍者の悲願は、私にとっての夢。必ずや果たしましょう」
極道は、許さない。
一切の容赦はない。
──自らの人生を歪めたあの者共をブッ殺してはじめて。己が人生というものをもう一度始められる。そんな気がしている。
──俺。絶対に諦めねぇ。血反吐吐いても。泥ォ啜っても。絶対に──俺だけの価値ってやつを見つけてやる
「.....待っていてくださいね」
家族が死んでしまったというあの少年も。
それでも歯を食いしばって、生きていくのだ。
彼が、彼だけの価値を見出せる場所を見つけられる世界を。何の危険もなく生きて、踏みしめられる場所を。与えてあげたい。
だからこそ──極道は全員、ブッ殺さねばならないのだ。
※
──どうしてよ。
ある日。そんな事を聞いたことがある。
──そりゃあ。お前。当然の事だろ? ガキが親に殺されていい理由なんざあるわけねぇじゃねぇか。
ポンポン、と肩を叩きながら。
──しかも
互いに命を預けられる関係。
それこそが、──家族というものだと。
──俺達は、所詮は野良犬よ。何処のきったねぇ股座から生まれたかも解らねぇ。だったらよぉ。同じ野良犬で集まるしかねぇんだよ。血が繋がっていなかろうが。世間から爪弾きにされようが。それでも俺達の居場所は俺達が作る。たとえ血が繋がっていなくてもな。そんなものよりよっぽど強くて、信じられる絆が俺達にはあるんだぜ。──お前は、俺達の家族だ。誰が何と言おうとな。
そうだ。
あの温もりを。俺はもう知ってしまった。
ごめんよ、
俺は、皆を
それでも──俺はもう一度家族を作るよ。
そして。
もう二度と誰も喪わなくて済むような力を手に入れてよ。
今度は──誰かを
はじめての家族は、殺されちまった。
最早──姿すら見えなかった襲撃者によって。
とんでもねぇスピードで事務所の中を駆けまわって、銃を
あの連中に勝てるだけの力が、要る。
「道を、極める。それが──極道」
ならば。
まずは俺が──俺の道を極める。その先にしか、道はねぇ。
──きっと見つかる。大切なものを失ってしまった火頭は、これから出会う価値の尊さに、きっと気付けるはずです。
「おう。有難う、死乃原兎裳孤。──俺はもう、生きることを
先程別れたばかりの女性の顔を思い浮かべて、笑む。
決して笑みを浮かべられないというあの女性。
でも──だからこそ伝わったものもある。
だから。
次に何かをあの人に返せるなら──思い切り、笑わせてやりたい。
「これからだ。これから──俺の道は、始まっていくんだ」
※
こうして。
忍者と極道が交わった。
決して許されざる二つの存在が。
相克する中にありながらも、互いの存在に確かな楔を打って。
これは、忍者と極道の物語。
そして。