私だけのトレーナー   作:青い隕石

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新作シリーズです。2~3話で終われば・・・いいなあ。

予定ではマンハッタンカフェを書くつもりでしたが、先に今回のウマ娘の構想が浮かんできたため急遽変更。
 
今回のウマ娘ですが、忠実では
・非常に小柄であった
・性格は臆病であった

というのを見て、性格にびっくりした記憶があります。アニメやアプリでは非常に明るいキャラだったので。


注意事項として
・ツインターボ実装前に執筆
・キャラの性格改変

があります。ご了承下さい。


ツインターボ短編
この気持ちからは、逃げたくない(1)


 

 トレセン学園の敷地内にある一棟、トレーナー室。そこの一室で俺はパソコンや資料に書かれているデータと格闘しながら来年度に向けてのプランを考えていた。

 

 冷めたコーヒーを流し込み、安物のコーヒーサーバーを手に取る。空になったカップに再び満タン近くまで注いだ後、一口飲み込む。

 

 「・・・・・・ふぅ」

 

 肌寒い2月。その暖かさが身にしみる。今までは二人分用意していたが、その必要はなくなった。

 

 ちらっと机に立て掛けた写真に目を見やる。そこには俺と、一人のウマ娘が肩を組んで笑顔で映っていた。その混じりっ気のない光景に、自然と笑みが出る。

 

 なんてことはない。3年間担当し、来月卒業を迎えることになったウマ娘だ。

 

 新人として彼女と向き合った3年間は、まあ色々あったが二人三脚で駆け抜けてこれたと自負している。

 

 重賞で4勝。G1での勝利にこそ手は届かなかったが、入学当初の彼女の目標であった晴れ舞台での勝負服という夢を叶えさせることはできた。最後のレース、G1マイルチャンピオンシップで3着を取り最初で最後の勝負服によるウイニングライブを披露した彼女は輝いていた。

 

 感極まったのか、控室に戻ってきた彼女に抱きつかれて感謝されたのは少し予想外では合ったが。

 

 彼女は卒業後、地方トレセン学園への就職が決まっている。まずはサブトレーナーとして、いずれは地方トレーナー、ゆくゆくは俺みたいに中央で指揮を振るうことが目標だと目を輝かせて熱く語っていた。

 

 「トレーナーさんに勝つことが目標ですから!待っててくださいね!」

 

 と宣戦布告までされたら、こちらも下手な姿は見せられない。面倒見がいいのに加え、勉学の成績で常に最上位にいた彼女のことだ。そう遠くない未来、俺の前に立ちはだかることになると予感している。

 

 卒業、就職間近となって忙しさも増しており、1週間ほど会えていない。この先、もしかすれば数年単位で会えなくなるのだろう。それが少しさみしくもあった。子が社会に旅立っていくのを見守る親の気持ちはこんな感じなのかなと感慨深くなった。

 

 とはいえ俺としても、一介のトレーナーとして教え子に先を越されるわけには行かない。立ちはだかる壁として、一層精進していく必要がある。

 

 

 ・・・・・・そのためには大前提として、担当のウマ娘を勝たせる必要があるのだが。

 

 

 「うーん・・・・・・」

 

 頭を抱えながら、資料とにらめっこして2時間。眉間のシワがより深くなるのを実感した。

 

 先程も言ったとおり、今までの3年間は彼女と二人三脚で頑張ってきた。そんな彼女が来月卒業となる。

 

 ・・・・・・つまるところ、今の自分に担当ウマ娘はいない。

 正確には書類上、3月末まで彼女との契約は続いているのだが、だからといってその時まで動かず、4月頭から初めて動くだなんて周回遅れのことはできない。

 

 だからこそ、再来月に入学することになるウマ娘の資料を読み漁っている。

 

 入学したウマ娘は、選抜レースが終わった直後からスカウト解禁となる。好成績を収めた子に人気が集中するのは当たり前だが、たまたま当日全力を出せずに終わってしまう子もいる。

 

 『レース本番で実力を発揮できないのならそれまでのウマ娘』・・・・・・それは一理あるが、だからといって候補から外してしまうのはあまりにももったいない。

 

そのため、予めデータを取り寄せて精査しているのだが・・・・・・。

 

 「・・・・・・分っかんねぇ」

 

 十数分にらめっこした後、頭を抱えて机に突っ伏してしまう。

 

 当然のことだが、レースに挑むこととなるウマ娘といえど、思春期の子たちだ。個人情報の管理には人一倍(ウマ一倍?)厳しく管理されており、入学するまではトレーナーの手元に伝わる情報は一部のみとなっている。

 

 ベテラントレーナーならその僅かな情報から判断することもできるのだろうが、生憎自分は3年目の若手である。いくら分析をした所でそう簡単に分かるものではない。

 

 はぁ・・・とため息を付き、再びコーヒーを流し込む。肌寒さを感じながら窓に目をやる。

 

 遠くに見える桜の木々、その花が咲く兆候はまだ見られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、たづなさん」

 

 中央トレセン学園第一運動場。ジャケットを着込んで赴いた俺は、観客席に見知った先客がいるのを確認し、声を掛けた。

 

 緑を基調とした服装を纏った彼女・・・・・・たづなさんが俺の声に反応し振り返る。

 

 「あら、トレーナーさん。先週ぶりですね」

 

 にこっ、と笑顔で微笑む彼女の姿にこちらも癒やされる。いつ見ても輝いている人だ。多忙な身であるためいつもせわしなく動いている姿ばかり見ており、このように落ち着いて話せる機会は滅多に無い。正食な所、これだけで足を運んだ価値があるというものだ。

 

 ・・・・・・まあ、今は勤務時間真っ只中のため、たづなさんも『目の前』の出来事のために来ているのだろうが。

 

 ターフに目を向けると、いつもならたくさんの生徒、トレーナーで賑わっているターフが閑散としている。そればかりかゲート、名称で言えば発バ機が運び込まれており、今からレースをするのかという状態となっている。

 

 いや、実際レースはするのだが。

 

 「珍しいですね、この時期に来られるなんて」

 

 「ははは・・・・・・まあ、息抜きといいますか」

 

 たづなさんの問いに鼻を掻きながら、お茶を濁した返答をする。

 

 一層冷たい風が吹き、ブルっと身体が震える。いくら関東とはいえ、やはり冬は寒い。ターフではゼッケンを付けた十数人のウマ娘が入念にストレッチを行っている。幾人かはレースに支障が出ない範囲でダッシュを行い身体をほぐしていた。この寒さだ、準備を怠れば即故障につながるため、当然の行為だろう。

 

 首にかけた双眼鏡をいじりながら、彼女らの様子を観察する。

 

 『珍しいですね、この時期に』

 

 たづなさんのセリフは的を射ている。模擬レースとは言え、ウマ娘の真剣勝負を見られる機会だ。トレーナーが集まっていてもおかしくないのだが、観客席にはほぼ人がいない。万を超える人を収容できる場所には俺とたづなさんを含め、両手で足りるほどの観戦者しか見受けられない。

 

 ・・・・・・まあ、それもそのはずだ。今から走るウマ娘たちは、現時点でトレーナーと契約していない子ばかりなのだ。

 

 入学当初ならまだしも、進級しようかという時に担当トレーナーがいない。悲しい事実だが、それだけで彼女たちの実力が説明できてしまう。

 

 1年近くずっと契約できていない者。契約はできたが解消され、新しい担当に巡り会えなかった者。

 

 事情は様々だが、いずれも現在教官の所属となっている彼女たちには焦りの色が濃く浮かんでいる。何せ、再来月には新入生が入学してくる。今でも担当が見つからないのだ、1年間燻っていた自分らと新しい風とともにやってくる期待の新人。トレーナーがどちらに惹かれるかなど、火を見るより明らかである。

 

 距離は1600m。ゲートに入る彼女たちは一縷の望みに賭けている。この模擬レースでアピールし、トレーナーとの契約を勝ち取ること。

 

 彼女たちからも観客席の様子は見えている。閑古鳥すらいない状態。未勝利戦ですらそこそこの観客が集まるレースと違い、勝っても負けても声援の一つも貰えない勝負。勝った所で、自身の望むものが手に入る可能性は低い。

 

 それでも挑むのは、夢があるから。中央トレセン学園で結果を出せない彼女たちも、地方に編入すれば常勝不敗のエースとして君臨することが出来るだろう。それだけの差が、両者の間には存在する。それでもその選択肢を取らない。理由なんてわざわざ説明する必要もない。

 

 (・・・・・・担当を決めきれなかった息抜きに、なんて理由で来た自分が恥ずかしくなるな)

 

 資料との格闘から逃げる気持ちでこの場所にたどり着いた自分を恥じる。10分前の自分を殴りたくなった。タブレットを持ちながらデータを入力しているたづなさんも、真剣な表情をしてターフに目をやっていた。そこには仕事だから、という理由以上の感情があるように見えた。

 

 『ガコンッ!!』

 

 ゲートが開く音がする。一斉に飛び出すウマ娘達。ややばらついたスタートになりながらも、必死に前を、先頭を目指す彼女らを見て、俺も真剣にそのレースを見ることに決めた。

 

 書類上の記録にしか残らないレースが進んでいく。トレーナーがいないとはいえ中央トレセン学園の試験に合格した子たちだ、オープン戦と言われても違和感を覚えないくらいのレベルがある。

 

 向こう正面から第3コーナーに入り、双眼鏡越しにその様子を見る。バラバラだった隊列が、徐々に狭まってくる。第4コーナーを迎えた後は最終直線のみ。そこのラストスパートですべてが決まる。

 

 ・・・・・・一人のウマ娘に対して違和感を覚えたのは、その時だった。

 

 (・・・・・・ん?)

 

 彼女は出走しているウマ娘の中でも、一際身体が小さかった。ウマ娘として珍しい、特徴的な髪の色をしていたため、レース序盤から後方に位置取っていたことは覚えている。

 

 最終コーナーでどんどん加速してきて、前の集団を捉えるか・・・・・・そう思った時、彼女に急ブレーキが掛かったように見えた。そのまま、バ群から離れるように外へ外へと流れていく。

 

 脚の動きなどから、故障をしたというわけではない。スタミナが切れたという動きでもない。あれはまるで・・・・・・

 

 (前に出るのを、躊躇うような・・・・・・)

 

 思考している内に、ウマ娘たちが次々とゴールラインを超えていった。自身が違和感を覚えた彼女は9着。急ブレーキがかからなければ、上位入賞は固かった。1着も射程圏内だった。それだけに、彼女のことが気になってしまった。

 

 「・・・・・・・レースが終わりましたね」

 

 タブレットの操作を止めたたづなさんがつぶやく。その視線は俺にではなく、ウマ娘たちに注がれていた。

 

 声援はない。1着を取った子も、淡々とターフから離れていく。あたりを見渡すと、こちらも淡々と観客席を後にする数少ないトレーナー達。この先彼ら、彼女らがウマ娘に話しかけるのかどうかはまだ分からない。

 

 「いかがでしたか、トレーナーさん」

 

 俺の方を向く。その目には勝負を終えたウマ娘たちに対する思いやりが見て取れた。

 

 たづなさんは俺以上に認識しているはずだ。彼女たちが非常に厳しい立場であることを。それでも、いや、だからこそ何とか輝いてほしいと思っているのだろう。

 

 トレーナーが求めるのは、突き詰めれば勝てるウマ娘だ。G1レース常連、常勝のウマ娘となれば、レースだけで年間で億は稼ぐ。勿論、その担当トレーナーにも億とは行かないまでもかなりの金額が入り込む。それがチームを持っているとなれば、トップアスリート並みの年俸と名誉を手に入れられる。

 

 トレーナーであれば全員が、純粋な気持ちでウマ娘を勝たせたいという気持ちを持っている。それは当然だ。それと同時に、仕事をするならなるべく高い給料がほしいという気持ちもまた、人であるなら当然のものである。

 

 だからこそ、『そうでない』『そうなる見込みの少ない』ウマ娘たちに手が伸びることはない。勝負の世界だ、厳しいのは百も承知である。

 

 たづなさんが俺に訪ねてきた理由も、ウマ娘に担当がついてほしいと思ってのことだろう。友人という程度には話してきた仲である。俺が4月に入学する新入生の調査を進めていることなど、とっくに知っている。それでも万が一の可能性にかけて、聞いてきたのだろう。

 

 ・・・・・・正直、ただ見に来ただけのつもりだった。しかし、今は出走した一人のウマ娘に関心を抱いてしまっている。

 

 1着を狙える実力はあったはずなのに、不自然に失速していった、小柄なウマ娘のことを。

 

 トレーナーとしては、期待の新入生に全神経を注ぐべきなのだろう。勝てるウマ娘をもとめるなら、それが当然だ。批判されることではないし、むしろその選択肢を選ばなければトレーナーとしてどうなのか?と言われる可能性まである。 

 

 それでも、彼女の最後の追い込みに魅せられた気持ちがある。もしかすれば、あの末脚は化けるのではないか。

 

 「・・・・・・一人。気になった子がいます。データを見せていただけませんか?」

 

 「・・・!!本当ですかっ!ええっと、一着のローレンクロイツでしょうか?それとも二着の・・・・・・」

 

 俺が発言をした瞬間、たづなさんの顔に笑顔が咲いた。ほとんど諦めていたのだろう。その喜びようは想像以上のものだった。上位のウマ娘を挙げていく彼女に再び言葉をかける。

 

 「ああいえ、ゼッケン6番だった子です。かなり小柄な子です」

 

 「ゼッケン6番ですね、少々お待ちを。・・・・・・はい、この子ですね」

 

 データを見つけ、俺にタブレットの画面を見せる。

 

 そこには、俺が関心をいだいたウマ娘の詳細なデータが載っていた。様々な資料とともに、彼女の名前が画面に大きく表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ツインターボ』と。

 

 

 




FGO2部6章終わりました。・・・・・・終わったんです。

ほんと奈須きのこさん人の心が無い、という気持ちと天才かよ、という二つの気持ちでいっぱいです。情緒を木っ端微塵にされました。最高だった2部5章のアトランティスを軽く超えてきました。奈須さんのような文章を書けるようになりたい・・・。

トリ子は絶対に、絶対に幸せにします。
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