お久しぶりです。軽く(?)モチベが死んでおりました。
今回は2周年放送時に一目惚れしたネオユニヴァースの短編です。
シンボリクリスエスの育成ストーリーで僅かですが情報が追加された事で、何とか形に出来ました。
〜4/19追記〜
ネオユニヴァース実装おめでとうございます!!
トレーナーに甘える時は、語彙力が著しく下がるネオユニヴァース
『ネオユニヴァースについてどんな印象を持っている?』
という質問を投げかけた場合、どのような答えが返ってくるのだろうか?
学園に在籍する、あるウマ娘はこう言った。
曰く、「非常に頭が良く、定期試験ではいつも順位表先頭付近で名を見かける」と。
疑いようのない事実である。彼女は非常に頭脳明晰であり、1学年1000人を超える中央トレセン学園においてほぼ毎回1桁順位を取っている。全教科見渡しても穴がなく、欠点らしい欠点が見当たらない。
レースで結果を出しているが、学力面では未勝利クラス・・・・・・というウマ娘も少なからずいる中、彼女に関しては、赤点や補習といった単語とは無縁の存在である。
あるレースファンの人は、こう言った。
曰く、「現役では最強クラスのウマ娘だよなあ」と。
こちらもまた、事実である。シニア級夏の時点で、GⅠクラス2勝を挙げており、出走したレースほぼ全てで3着以内に入り込んでいる。
前走の天皇賞春では掲示板外に沈んでしまったものの、評価は揺るがない。このレース中に軽い怪我を負ったが、幸いにも経過は良好であり、現在は通常の練習メニューをこなせるほどまで回復している。
昨年よりも一回り成長した姿。秋の天皇賞に向けて調整は順調であり、出走する全てのレースで本命になるだろうと言われている。
このように文武両道を地で行くウマ娘、ネオユニヴァース。しかし、質問に答えてくれた2人は、その後言葉を選ぶように付け加えた。
曰く、「普段から何言っているのか分からない」と。
先に言っておくが、彼女が留学生で日本語を話せないというわけではない。生粋の日本生まれ、日本育ちである。
ただ、彼女の話し方に問題が・・・・・・というよりは、非常に癖があるのだ。
これはもう、実際に聞いてもらったほうが早いだろう。
昨年の宝塚記念、彼女はレース場に足を踏み入れるやいなや、辺りを見渡して徐に口を開いた。
「・・・・・・この場は、エントロピー。ネオユニヴァースには、アンコントローラブル、かな。」
「その原因はSIPTと摂理の相剋。・・・・・・観測が必要だね。」
・・・・・・こいつ何言ってるんだ?と思った人は多いだろう。安心してほしい。俺もそう思いかけた。
極度の緊張で言動がおかしくなったわけでもないし、某中二病を患ってしまったわけでもない。彼女は至って真面目に発言をした。
簡潔に言えば、彼女の頭が良すぎることが原因である。
常人よりも遥かに早く状況を分析し、対応できる頭脳。普通の人々より遥かに多い引き出しのある言語力。
その2つが合わさってしまった結果、先程のような難解で独特といえる表現を発してしまうのだ。
独り言の時だけでなく、会見やインタビューでもずっと同じ口調のため、必然的に自分がフォローすることとなる。
彼女の専任トレーナーを3年間やってきた俺という翻訳機がいなければ放送事故待ったなしのため、レース後でも割りと気が抜けない。
彼女が有名に成る程、『宇宙人のようだ』と評される機会が増えてきたが、的を得ているので何とも言えない。誹謗中傷絡みなら別だが、そんなキャラクター(?)込みで人気が高く、世間から愛されているため、それならば俺から言うことは特に無い。
ここまでが、世間から見たネオユニヴァースというウマ娘の印象だろう。
全て偽りのない事実であり、全てが彼女の一面である。
・・・・・・・その上でもう一つ、付け加える一面があるのだ。
太陽がカンカン照りの快晴日。エアコンが効いたトレーナー室で、俺は淡々とキーボードを打ち込んでいた。
休日出勤となった本日ではあるが、残っていた仕事はそんなに多くなかったため、パソコンと向かい合って2時間もしない内に片付けることが出来た。
正午までの出勤報告をしていたためそこから手持ち無沙汰となったが、どうせなら担当バのために使おう。
そう考えついたのが1時間前のこと。
現在、時計の短針がようやく11の数字に差し掛かろうかという所。パソコンの画面に表示されているのは、中期的なトレーニングメニュー表。
右手に持ったマウスで、表示範囲を変えつつ見通す作業。
そして、左手はというと。
正面から抱きついてきているネオユニヴァースの頭に添えられていた。
「ん~・・・・・・♪」
「いや、ユニ。ん~、じゃなくて」
椅子に座る俺に対し、ぎゅうううううう、と両手両足でハグを継続中の担当バ、ネオユニヴァース。
30分程前、突然トレーナー室まで来たかと思えばいきなり抱きついてきて、その後ずっとこの体勢である。
俺の肩に顎を乗せ、時折身体全身をグリグリと押し付けてくる。その度に、幸せそうな声を届けてくれる。
「・・・・・いつからこんな甘えん坊になったんだろ」
「~♪」
呆れの混じった俺の小声。それを綺麗に無視して、彼女は更に密着してくる。
始まりは1年前くらいだっただろうか?ようやく担当バとの信頼関係も築けてきたかなあと思っていた時期、今回と同じシチュエーションでいきなり抱きついてきたのだ。
そりゃあもうビックリした。あの時、大声を上げなかった自分を褒めてほしい。
ウマ娘の力に敵うはずもなく、彼女が満足するまでハグされた後、暴れる心臓を抑えつつ理由を聞くと
「・・・・・・こうしたくなったから?」
と首を傾げ、表情を変えずに答えてきた。トレーナー室で本当に良かった、仮に往来の場だったら間違いなく大惨事となっていた。
その後、二人きりの状況になった場合は定期的に彼女のハグを受けることとなった。
普段、俺の指示にほぼほぼ従ってくれる彼女なのに、この時ばかりはどこ吹く風で忠告を無視し続けている。
結局、今では苦言を示す程度に留めて彼女のハグを受け入れてしまっている。
当然、嫌というわけではない。むしろ逆だ。今現在も、トレーニングメニューに目を通しつつ彼女を思い切り抱きしめたい欲と戦っている。
冷静に考えて、ネオユニヴァースほどの美少女に、多少痛みを感じるほどの強さでハグされて何も感じない男がいるだろうか?
1年間幾度となく体験して、流石に当初よりは慣れた。それでも、彼女の匂いや感触を感じる度に、理性がガリガリと削られるのは仕方ない。
(・・・・・・きっと、ユニも甘えたいんだ。燦然たる成績を残しても、レースから一歩離れれば普通の少女。親元から離れた寮生活に身を置き、誰かに寄り掛かりたくなる気持ちも芽生えるだろう)
心の中で構築される。どうしようもない言い訳。
だから、彼女のこの行為を受け止める必要がある、と自分勝手な大義名分を振りかざして、この状況を享受してしまう。
「・・・・・・トレーナー」
「ん?」
「耳も、撫でて」
考え込むのを遮るように発せられた、担当バの声。
要望通りに、柔らかな耳を優しく撫でる。
「あ~・・・・・・♪」
余程気持ちいいのか、トロンとした無防備な表情になる彼女。
いつもの独特な表現はなく、ただただ己の率直な感情をそのまま言葉に出し、寄りかかってくる。
(はじめは、ユニの走りに惚れたはずだったんだけどなあ・・・・・・)
作業を進めながらも、考えてしまうのは目の前の担当バのこと。
選抜レースで発揮された、抜群の末脚に魅せられてスカウトし、山あり谷ありの二人三脚。
気づけば、『担当バ』という枠組み以上の感情を抱えてしまっている自分がいた。
幸せそうに甘えてくる彼女を撫でつつ、休日の時間はゆっくりと過ぎていった。