011
「なんッッッだよ
魘夢がキレた。
あの常にヘラヘラ、幸せそうな表情をする、球磨川を彷彿とさせる鬼、魘夢が———マジギレした。
それは彼の「計画」には存在しない感情であり。
それはすなわち、彼の血鬼術の暴走を意味する。
『...へぇ、結構効くんだね、これ。おもしれー。』
とい言って舌を出した
その文字は———
「挑」
挑む。
もしくは———挑発。
『私はね。「挑戦者遣い」なんだよ...ごめん嘘ついた。「挑発使い」だよ。それもつい一昨日に編み出したばっかりのとびっきり新鮮な、ね。』
前者の方が強そうだな、と冠石野は思った。
『だから、君を怒らせるくらい、お茶の子サイサイなんだよね。赤子の手を捻ってるみたいっていうか。暖簾に腕押しっていうか何というか。』
『ま、要するに弱い君が悪いよね』
『ていうわけで』
『どんまーい。』
『精々、精進しなよ?』
「くそが。くそがくそがくそがくそが。...分かった。そこまでお望みなら君だけ先に殺してやるよ。じゃあな。」
そう言い放ち、彼が人差し指を冠石野に向けた途端。
列車が揺れ始めた。
否、これは。
『...変形、してる?』
ぐにょぐにょ、ぐにょぐにょと———
電車の壁から、床から、天井から、触手が現れた。
食べ物を口に入れている他人の口内を見せられたときの不快感のような感覚に襲われる。
ゾッとした。
『なんだこのぐにょぐにょ...気持ち悪いね』
『こんなことで動揺している君同様。』
「死ね。」
その発言と同時にその
気持ち悪い...
が。
『よ...っと!』
『
『触手を「無かったこと」にしたよ。』
あくまで気持ち悪いだけだった。
冠石野には、そんなものは通用しない。何せ「無い」も同然なのだから。
『..,おっかしいな。
『でもでも、勝てるね、これは...おっと、危ない危ない。発動が追いつかなかった。やっぱ、まだ慣れてないな。しかも、どうやら
『生き返れるかも分からないから。』
『ちょっとは頑張ろっかな』
『私は球磨川さんみたいに捻くれてないし、螺子なんかじゃなくてしっかりと日輪刀ですよ。太陽光をたっぷりたっぷり吸ってます。』
『じっくり見てください。』
『これが今から貴方の首を切る刀ですよ...っと!』
「...あ?何戯言ほざいて...あれ?」
なんだこれ。
体が傾いてくる———いや。
首だけだ。
首が下に落ちているんだ。
今、地面の感触がした。
...ってことは、まさか
まさかまさかまさか!
『貴方の首を切るまでにかかった時間を、
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!そんな訳ないだろうが!おい!何してくれてんだクソ野郎!ぶっ殺してやる!」
『ごめんね。もう遅いよ。本当に取り返しがつかないことをしてしまった。だからちゃんと罪を償って、ちゃんと君の分まで精一杯生きていくね。』
「嫌だ...こんな簡単に死ぬなんて...まだ1人も人間を食べてないのに...もう死ぬのか...」
『えぇ。可哀想なことに「———なんてね。」
『え?なんです?それ。負け犬の遠吠...え?』
というより、肉の触手から魘夢の顔が生えている、と言った方が適切かもしれない。
実に気持ち悪い。
『何です?それ。ちっちゃい頃の「電車になりたい」って夢が叶っちゃたんですか?』
『にしても、私しっかり首を切ったはずなんですがね』
あぁ。感触がしっかりとある。首を切った時の手応えが。
『———どういうことですか?』
「ふふふ、いいねぇその顔。焦りが出てるね。その変な術にも慣れてきたし。形成逆転、かな?」
『質問に答えろ』
「今度は正しいね。うん、今日の僕は機嫌が良いから教えてあげる。僕はね、今———」
この列車と、同化しているんだ。
つまり、この体は偽物で。
首を切ったところでどうにもならないんだ。
わーお。あめーじーんぐ。
♦︎♦︎♦︎
数分後。
差は一目瞭然だった。
もともと精神力の弱い冠石野は、球磨川を「真似る」ことで更に弱体化していた。
そして何より、最も球磨川と異なる点は。
やれやれ。こんなことなら死にかける練習でもしておけば良かったよ。
もう、服も体も心もボロッボロだなぁ...
「無かったこと」にしても、もう精神が保たないや。
やっぱ、
なら、それをやめればいいって思うけど。
でも、それは出来ない。
『...球磨川さんが起きる前、にさ。』
「うん?負け犬の遠吠えかい?」
『球磨川さんの全てを「真似」したんだよね。そしたらさ。私、どうなったと思う?』
「さぁねぇ。どうなったの?ちょっと気になるな、僕も」
『幸せになったよ。...嘘ついた。凄く泣きそうになったよ』
気持ち悪くて。
怖くて。
ぐちゃぐちゃで。
絶望的で。
壊滅的で。
真っ暗で。
混沌で。
でも。
あんなにヘラヘラしているのに、「
なのにいつまでも勝つことができなくて。
悔しくて、泣きそうになったんだ。
抱擁さえしてあげたくなった。
...結婚はお断りだけどね。
だから。
球磨川さんに証明してやりたいって思ってしまった。
『...どんな
我ながら、本当に自分は面倒くさい性格をしているな、と思った。
自分で言うのはなんだけど。
———私、ちょっとお人好しすぎるな。
あはは。
笑えねー。
「うんうん。とても良い話だ。感動したよ。最期の言葉として、何の申し分も無いね。それに、今日は満月が出ているし、絶好の死に日和だよ...っと!」
魘夢が人差し指で私を指さした。
あぁ。
次の攻撃が来る。
立たないと。
立たないと。
立たないと。
——————勝たないと。
...あ。
ううん。
もう駄目かも。
ごめん。
———ヒュン。
...ドッカーーーーーーン。
爆裂。爆音。爆風。爆風。爆熱。爆砕。爆発。
そして。
彼女は。
彼女は。
彼女は。
彼女は。
...
『月が出てる絶好の死に日和、か。良い考え方だ。』
『でもね、生憎僕には
『
そして。
「炎の呼吸」
「———雷の呼吸」
『やぁ胡桃ちゃん』『助けに来たぜ。』
あぁ。
まーじか...
あんなに括弧つけてたのに、助けられるだなんて、恥ずかしい..な...
...........................
.................
.........
....
..
「...え、どこかなここ。」
「やぁ冠石野ちゃん。久しぶり。」
「...
「あぁ。君が「真似た」
「あー、最ッ悪だね...」
じゃなくて。
最高だ。
「あ、ちなみに嘘な。君は今、緊張が解けてただ寝てるだけだぜ。」
「やめてくれませんそういうことするの!?」
ウザかったりひ弱でお人好しだったり。
言葉使いかと思えば過負荷だったり。
そんなよくわからない子が冠石野胡桃です。如何ですかね。感想、よろしければお願いします。
クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?
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ない
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ちょっとある
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めっちゃある