017
「はい、では皆さん体調良好なようなので、強化訓練を開始します。皆さんにはそもそもの体力が無いようですし。負傷後に普通行う機能回復訓練より少しきつい内容にしようと考えていますが、よろしいですね?」
朝7時。鶏が鳴く頃。
僕らへっぽこ隊(僕こと球磨川禊、我妻善逸ちゃん、冠石野胡桃ちゃんの3名)は、道場のような場所に集められ、この家の主であり、蟲柱であるエリートの胡蝶しのぶちゃんにそう告られた。
痛いところを突かれた、と球磨川禊は自身の体を眺める。
ひょろひょろの腕と脚。
太っても痩せてもいない微妙なお腹。
...うん、これは運動不足だな。
暇な時はいつも週刊少年ジャンプを読んでたからね。
これじゃ、鬼殺隊として周りについていけなくなるぜ。
...って。
あれ?
僕は確か物凄く嫌々だったはずなんだけど...年中無休のイヤイヤ期だったはずなんだけど。
ま、いっか。
どうせ
気にしない気にしない。
人間如きが気にしたら駄目だ。人外の行動なんて。
精神関与のスキルなんていくらでもあるだろうし。
に、してもだ。
機能回復訓練がどれ程のものかは知らないが、「訓練」と呼ばれているのだからキツいものなのは当然だろう。
ハッキリ言ってしまおう。
それこそ、僕が強くなろうだなんて魘夢ちゃんもびっくりするくらいの自意識過剰具合だ。
冠石野ちゃんが引くくらいの、とも言えるね。
美意識のかけらも無い。
うん。
だとしたら、僕が参加したところでただしのぶちゃんの苦労が増すだけじゃないのかい?
それよりも、胡桃ちゃんや善逸ちゃんを訓練した方が、よっぽど甲斐があるってもんだ。
だよね?
僕は可愛い女の子の味方だからね。こういう小さい気配りはしていきたいんだ。
そう、ギャルゲーだと思ってもらっていい。
この女の子を喜ばすためにはどうしたらいいのか、常に最適解を考えることが大事だ。
確かに先人たちはこう言った。
急がば回れ。
あれは嘘だ。
...よし、人生で一回は言いたい台詞の一つを言えたぞ。
言ってないけど。
ちなみに僕はジョジョが好きなんだ。いつか来る僕の誕生日のために覚えておいておくれよ。
閑話休題。
それで、だ。きっと僕だけじゃなくて、
———急いでんなら近道した方が良いに決まってる、ってな。
急がば回れだなんて、所詮アブノーマルなのだ。
異常性とも言えるね。
まぁそういうことで。
これらのことから、僕が言える結論はひとつだ。
———この僕がついていける訳ねぇだろ。
『っていうことで僕は今日、週刊少年ジャンプをコンビニで買わないといけないから!』『今日の訓練はお休みさせてもらうぜ!』『じゃあな皆!』『陰ながら応援して...る、よ。』『あ、あれ?しのぶちゃん?どうしたんだい?』
「...」
気付いたら後ろで僕の肩を掴んでいた。
もちろんとびっきりに笑顔で。
笑顔なのだが、そこに騙されてはいけない。強さが半端じゃ無い。
DSなら壊れてるぜ?これ。
『...』『僕は、悪くない。』
「さて、始めましょう!我妻さん、冠石野さん、———そして、球磨川さん!」
なんで一節置いたか、僕には全く理由が分からないが———
やれやれ。
いつも通りの、嫌な予感がするぜ。
♦︎♦︎♦︎
次の日。
僕、善逸ちゃん、胡桃ちゃんの3人は部屋のベッドで硬直していた。
硬直というか、死んでいた。
死後硬直である。
まぁ、強化訓練で何があったのかというのを説明しておこう。
訓練。
基礎の成っていない僕は、ただただ腹筋、背筋、スクワット等を行っただけである。
一日中。
そりゃあもちろん、
狂ってるわ。阿保か。
「だ、大丈夫か球磨川...あっ痛...」
因みに体はしっかり引き締まっている善逸ちゃんと胡桃ちゃんは(胡桃ちゃんの腹筋は見たことがないけど。いつか見る機会があることを祈る)、僕よりは肉体的苦痛は少ないだろうが、代わりに精神的な苦痛が加わった。
らしい。
『僕は大丈夫だぜ、善逸ちゃん。』『それにしても、君はよくもまぁあんな
「いや、お前さ、浅はかなんだよ...思考がさ...いやまぁ、俺も最初はそう思ってたけどさ...女の子に連敗しまくるのって、かなりヤバいぞ...」
ふむ。
まぁ負けっぱなしが苦痛というのは、
どんな内容の勝負か、詳しくは分からないが要するに真剣白羽取りのお茶バージョンみたいな感じだったと思う。
先にお茶を取った方が、相手にそれをぶっかけることができる。
あ、そうそう。それとマット運動(by girls)や、ごく普通の鬼ごっこもしていた。
因みに善逸ちゃんと胡桃ちゃんが戦った相手は
この子も例に倣ってかわい子ちゃんである。
此処には女の子が可愛くなる空気でも流れているのだろうか。
最高じゃねぇか。
『...でさ、胡桃ちゃん、君はどうしてそんなに元気なんだい?』
先程から会話に参加しない胡桃ちゃん。恐らくは疲労している僕らに「会話」という動きをさせないための優しさなのだろう。
先程から話していなかったため、読者からすると文字列では僕ら(ここでは僕と善逸ちゃんのことだ)と同じように疲れているのだと思うだろう。
が、実際はそんなことなく、元気な顔でロボットダンスをしていた。
...
いや、胡桃ちゃんがロボット知ってる訳ないよな...
何ダンスのつもりだろう。
まぁでもこれもまた、硬直、であると言えよう。
死後では無いにしても。
ていうか、横でそんなことをしていた方が休めないということに気付いていないのだろうか、この子は。
優しいんだけどね。ちょっと空振りすぎだね。僕から言わせてみれば、まだまだ甘ちゃんだ。
...が、その甘さ、嫌いじゃないぜ。
「ま、凄く難しいな事なので分からなくて大丈夫ですよ、球磨川さん。...嘘です。至極簡単なことですよ、球磨川さん。ばーかばーか。」
イラッときた。
『hahaha、愉快なジョークだね!』『今から君のお口で図画工作してやろうか、
「それじゃ化物語になっちゃいますよ、球磨川さん。お口にホッチキスを入れるのは戦場ヶ原ちゃんの専売特許だよ、兄さん?」
「いや、誰であってもしたらいけないだろそれ...あと誰だ戦場ヶ原さん。」
『あぁ、体重が無い女の子だぜ。』
「なんだそれ」と、最後の一言で作り話だと判断したのか、目を閉じて眠る準備をした。
『おいおい、信じてくれないのかい?』『親友の言葉を。』『酷いなぁ全く。』『何か良いことでもあったのかい?』
まぁ、作り話なんだけどね。
閑話休題。
「まぁ、どうして疲れていないのかって、ただ私がかなり鍛えているだけなんですけどね。...嘘です。「
「ついに俺にまで毒牙を向けてきたな」と、唐突に目を開いて善逸ちゃんが言った。
起きてたのかよ。
「いや、うるさいわ。眠れる訳ないだろこの状況下。」
『そうかい?僕なら床でも廊下でも外でも眠れるけどね』
「お前はもっと危機感を持て」
善逸ちゃんは危機感を持ちすぎだと思うけど。
まぁいいや。
『ふぅん。じゃ、訓練での「疲労」を「無かったこと」にしたってことかい?』
「や、違いますよ。訓練中です。『コップを掴むまでの時間』を『無かったこと』にしたりとか...」
『なるほどねぇ...』『僕よりも上手い使い方してるじゃねぇか。』『流石胡桃ちゃんだ。』『僕なんか君の足元にも及ばないぜ』
「球磨川ってよく誰かの靴下になるよな...」
その言い方はどうかと思うけど。
まぁ、要するに僕ら(胡桃ちゃんを除く)は相当に疲弊していた。
いくら大量の貨幣を貰ったとしても、この疲れが癒えるとは言えないだろう。
なんちゃって。
ちなみに今日は休憩。訓練は無い日だ。
幸せの絶頂である。
...
本当は、これを療養と言うはずなんだけどね...
あ、療養はもうしたんだっけか。失敬失敬。
そしてベッドに寝転がる。
それにしても、今日は暇だな(休むと言う選択肢は僕の中には無い)と、ぼーっと窓から見える青空を見上げながら思う。
今日は強化訓練(凶)が無いからね———
あ。
そうだ。そういえば。そうだった。そうなんだ。そうなんですけど。
する事が———しなければならない事が一つあった。
僕はそう思いたってすぐスっと立ち上がり、バッと宙に自分の学ランを広げ、そのまま羽織った。
そして、いつものように
『———ナシゴレン、作るぜ』
「...あぁやっぱそうだよねぇもう最ッ悪だお前!!!!!」善逸ちゃんが叫ぶの声が響いた。
...おいおい、そんなに騒いだら、またしのぶちゃんが来るぜ?
っと、ほら見たことか。こっちに向かってくる音が聞こえる。
ま、この音が葵ちゃんの足音じゃ無かったら、無視することとしようかな。
僕は悪くないしね。
ということでナシゴレン作り後編、はっじまーるよー!
ちょっとずつ僕ですらよく分からない伏線を積み立てていって、いつかそれらを崩そうかなっていう作戦です。
我ながら策士ですね...!
はい。
次回、番外編後篇です。原作で人気のあの子が出るよ。
クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?
-
ない
-
ちょっとある
-
めっちゃある