そんな感じの26話、よーいスタートです。
「『好きな人とペアを組んでください』という言葉が何より怖い」
「どうして?好きな人とペアになれるなんて嬉しいことじゃないか」
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結果から言うと。
堕姫は死ななかった。
これは失敗だと客観的には思われるだろうが、伊黒からしてみればこれが最適解。
奇怪な鬼に立ち向かう為の、最適解。
堕姫は、灰になることなく再び顔を再生した。ぐにょぐにょ。ぐにょぐにょと肉を畝らせながら不気味に。
だが、これは伊黒にとっては予想通りの展開だった。彼はこれで一体倒せるとは毛頭思っていない。
何故そう思っていたのか———それは、球磨川が眠っている最中のことだった。
今、伊黒が戦っている方でない鬼———
切ったはずの堕姫の首は、綺麗に元通りになっていたのだ。
美貌が蘇ったとも言える。
そこには必ず何か仕掛けがある。そう考えた伊黒は思考を重ねた。
抗争をしながら構想を練った。
そして、ついさっきある仮定にたどり着いたのだった。
もしかしたらこの二人の鬼は、「鬼にしては珍しく群れている」のではなく、元より「二人で一つ」なのではないか。
という仮定に。
ただし。
それを確認するためには、自分で妓夫太郎の首を切らなければならないというのが問題点。
もし妓夫太郎も堕姫と同じように首を切っても再生するのであれば———黒だ。
そう。
伊黒の目的、それは———
「冠石野ッ!交代だ!」そう伊黒が叫ぶと冠石野は「あっはい!」と軽めにそれに答えた。
そして二人は走り出し———跳躍。道を跨いで反対側の屋根に向かう。
必然的に、冠石野と伊黒の目が合う。
「...こいつには伝えとくか」
宙で丁度隣になった時、伊黒は小声でこういった。
「同時に倒せ」
冠石野は一瞬意味がわからないという顔をしたが、すぐに理解する。
屋根に飛び移った後、自分の顔を叩いて勇気を奮い立たせる。
『ふむ...同時にかぁ』
『球磨川さんがどう働くかによるけど』
『ま、なんとかなるでしょ』
『ね?お兄ちゃんに頼ってばっかのお姫様?』
「死ねっ!!!!!!!」
久しぶりに使った気がするが、良かったと冠石野は安堵する。
「挑発」の
そして
堕落させる。
丁度、球磨川の様に。
『さて、どうしようか』と吟味する冠石野。頭を自分の手で作った拳でグリグリし、思考を促す。
冠石野はまだ、善逸が壱ノ型以外を使えることを知らない(厳密には使えていないが)。だが、一人で堕姫と戦っている善逸を見て、一つだけわかる事があった。
尋常じゃない成長を遂げている、ということだ。
冠石野は彼にも———追い抜かされてしまった。
『...じゃ、私なりに頑張るとしようかな』
そう言いながら冠石野は、懐から何かを取り出した。
堕姫に気付かれないよう、こっそりと。
そして「
「はっ、芸が無いねぇ、全く」と嘲笑する堕姫は、先程地下で行ったように帯で弾こうとする———が。
軌道変更。
「はぁっ...!?」
帯にぶつかる寸前、弾丸が突如右に動いた。もう一度弾こうとする———しかしまた避けられる。
自由自在に、まるで弾丸自体に意思があるかのように堕姫を襲う。
そればかりに気を配っていると———今度は善逸が突然、光速で眼前に現れる。
(な...なんなのこの2人!)
そしてついに帯の防御を抜け、善逸の刃が堕姫に届きザクッと胴体を抉る。
もちろん倒せる訳ではないが。
「っしゃあやったな———胡桃!」
「...........!?うわっはぁ.......」
下の名前で呼ばれた衝撃で変な声が出た冠石野。真っ赤な顔を下に向け、プルプルし、小声で「そういうとこだって...」と呟く。
善逸には内容は分からなかったがギリギリ聞こえていたらしく、戦いながら聞く。
「え?なんて?胡桃?」
「..................」
「胡桃?できれば戦って欲しいんだけど...下の名前で呼ばれるの嫌だった?あそれだったらマジでごめんなさい本当に謝ります」
「...................」
「...冠石野ちゃー「ああああもう分かったよ本気出してやるよ!」
覚悟しとけ!と堕姫に指と鋭い目線を刺す冠石野。
「へぇ....久しぶりに面白い奴が来た」
『こっちの台詞だね、それは』
ここでようやく本気の戦いが始まった。
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球磨川が「嘘の呼吸」で妓夫太郎に応戦していると、道路の向かいの屋根から伊黒が飛んできた。
『お?あ、伊黒さん!』『ちょっとこいつ何とかしてくれない?息が臭くてさぁ』『あはは、そんなんじゃモテないよ君?』『女子LINEできっと悪口言われてるぜ』
「殺すぞ」と妓夫太郎。
「....」そんな二人の様子に伊黒は呆れ果てた。
ちなみに今は妓夫太郎が血鬼術で鎌に変えた腕で球磨川の持つ刀を押している状況。
勿論球磨川が押され気味である。
その状況でヘラヘラ笑う男、球磨川禊。
伊黒は、再び「とんでもない後輩が現れた」と思った。
先ほどとは違う意味で。
「弱い奴は死ね。俺は勝手に戦う」
『あれ?酷くない?』
「普通だ」その台詞を合図に妓夫太郎を切りに行く伊黒。
蛇の呼吸
スルスルと蛇が這うように相手の間合いへ入り込み———
「遅いなぁ」球磨川を封じているほうとは逆の鎌で伊黒の攻撃を受け止める。
「...それで拮抗状態にしたつもりか?」
『はっはは、それな!』
蛇の呼吸 参ノ型———
嘘の呼吸 陸ノ型———
伊黒は周囲をグルグルと周り、切り込みを入れながら相手の後ろへ。
球磨川はまるでそこに「いなかった」かのように後ろに瞬間移動。
二人は物理的に妓夫太郎の裏をかいた。そして———
球磨川が右腕を。
伊黒が左腕を切り落とす。
(な...なんなんだよぉこの2人!)
『あれ?コイツもしかして弱い?』『あはは、僕でも勝てるんじゃねーの?』
「お前は天下無勝の男だと聞いたが」
『そうだね。まぁそこはご愛嬌だ』
「....そうか」
伊黒は呆れ果て、会話を放棄する。勿論、これは攻撃しながらの会話だ。
『いや、でもさぁ』『こいつ鎌作るだけでしょ』『なんとかなるっしぃ!』
「言ったそばから攻撃受けてんじゃねぇか雑魚が。黙ってろ」
『はいはーい』球磨川は普段通り、軽く言う。
『じゃ、そろそろ本気出そうかなっと』『酷いことに幸せ者扱いされた訳だし』『それ相応の罰は必要だよね!』
そんな球磨川の台詞を無視した伊黒は攻撃しながら、ふと妓夫太郎が先程までと違う構えをしていることに気がついた。
微弱ながら、ほんの少しだけ違う。その
血鬼術
感じ取れなかった。
普段なら、確実に気がつく違いだったのに。
「......ッ!」
伊黒の左腕が———無くなっていた。
痛みが脳を支配する。気が狂いそうになる程に。だが流石は柱。呼吸を使って直ぐに止血し、球磨川を助けに向かう。
———が。
そこで伊黒が見たのは。
ぐちゃぐちゃに。
ぐちょぐちょに。
バラバラに。
ドロドロに。
見事に死んでいる———球磨川禊の姿だった。
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「よっ、久しぶりだね球磨川くん」その声でぼくは目を覚ます。
其処は見慣れた教室———とは言っても自分の教室、というわけではなく。
僕の目の前にいるのは、安心院なじみ。つまりここは。
安心院さんの
......ということは。
『...僕、また死んだんだ?』
「ピンポーン!」安心院さんが本当に楽しそうに答える。
暫く見ていなかったため、その笑顔に少しの懐かしさを覚える。
教卓に座って足をぶらぶらさせながらするその笑顔に。
「いったいどれだけ僕を放置すれば気が済むんだい?君の封印のせいで、僕は君が死なないと登場できないんだぜ?」
『分かってるよ...で、今回の死因は?』
「おいおい、つれないなぁ球磨川くん。泣いちゃいそうだよ」
よよよ、と泣き真似をする。江戸時代なら大爆笑を掻っ攫ってそうだ。
「まぁいいや。今回の君の死因は斬撃だねっ☆」
『いや、そんなライトノベルみたいな語尾...あ、あれも鎌だったんだ』血の、鎌。
「そういうことだぜ。あれは四方八方に血の斬撃を放つ血鬼術だ」
『....へぇ』
「あ、そうそう球磨川くん。僕を倒しうるスキルホルダーは見つけられた?」
安心院さんが、自分を倒す相手について聞いてきた。楽しそうに。
安心院さんは———死ねない。
最強故に。
故人になれない。そもそも人でもないし。
彼女は今、「死ぬ」という「出来ないことリスト」の中の一つに挑戦しているのだ———確かそういうことだったはず。
『...一人だけ、可能性がある人がいる』
「へぇ?誰誰?」
『胡桃ちゃん』
「ほう、その根拠は?」
『ま、勘だよ』
「勘かよ。あはは、嫌いじゃねーぜ、そういうの。まぁでも確かに胡桃ちゃんは強いよねぇ。びっくりしたよ。『
『あれなら、安心院さんの「相手より強いスキル」だって「神化」のスキルだってコピー出来る———もしかしたら、ね』
「なるほどねぇ?まぁけど、あれはあくまで粗悪コピーだってことを忘れないでほしいかな」
『だから可能性なんですよ。僕だって絶対出来るだなんて思ってない』
「そんなのじゃ駄目だぜ、球磨川くん。僕がご所望なのは絶対的な強さを持つ奴だ」
確率ではなく———確実に殺せる誰か。
安心院さんを、楽しませることができる人間。もしくは鬼。
果たしてそのような人間がいるのだろうか。
「まぁもう暫くは頑張っててくれよ。って、球磨川くん死んじゃったんだったね。あはは、どんまい」
『すごくいい笑顔ですね』
「ありがと」
『褒めてないです』
「安心してくれよ。大丈夫大丈夫。死者蘇生なんてチョチョイのちょいだぜ」
『...あれ、安心院さん、いつか死者を蘇らせることだけは出来ない、とか言ってたような...』
「あぁあれは嘘だよ。時間移動のスキルがあるんだからできない訳ないじゃーん。ばーかばーか」
そう言いながら教卓から床に降りる。
初めて胡桃ちゃんに会った時から、誰かに似てるなと思っていたが今ようやくその謎が解けた。
目の前の人外だ。
着地した勢いで後ろに束ねた長い髪がフワッと揺れる。柑橘系の匂いが僕の鼻腔をくすぐった。
こういうのってやっぱり少しドキッとするよね。
「でもさ球磨川くん。
『まぁ、そうですけど』
「けど?」
そんなことは理解している。
けど。
だけど。
『安心院さん』
僕は。
「———勝ちたいんだけなんですよ、僕は」
そう、括弧つけずに言った。
カッコつけず、本心を語った。
勝ちたい、と。
「嫌われ者でも、憎まれっ子でも、やられ役でも。...主役を張れるって証明したいんだ。ただそれだけさ」
ほんの少しの静寂。
そして。
「面白い」
安心院さんが唐突に僕にキスをした。何度目だろうか。流石にもうこれで動揺するようなウブさは捨ててしまった。
慣れって恐ろしい。
せっかくいい台詞を言っていたのに「ただそ」ぐらいで被せられたためちょっとダサくなってしまったのは是非とも謝罪してほしいところである。
まぁいいや。
別に、括弧つけたいわけではないんだし。勝ちたい。ただその一心だ。
そして10秒くらい経過したのち、ゆっくりと柔らかい唇が離れていく。少し残念な気もする。
...いや。
すっごい残念!
もうちょっとしてたかった!
まぁそれは置いといて。
このキスの意味はというと、勿論僕のことが好き、というわけではなく(悲しいことに)。
「....
「せいかーい」安心院さんはそう言って拍手をする。かなり尊大な感じで音を響かせながら。
...異様に音が大きい気もするが、これも一京分の1のスキルなのだろうか。
拍手の音を大きくするスキル。
いらないな、それは。
閑話休題。
そう、そのキスが意味するのは全てを「無かったこと」にする
「でも、なんで?」
「いや、この前返してもらったのだってただの悪戯だったわけだし別にいつ返しても良かったんだぜ?」
「最悪だ...」と頭を掻く。
「そして物語を面白くするために威力は冠石野ちゃんの
「悪魔だ!」
「だから神だってば」そう言って安心院さんはニヤリと嗤う。
いつだってこの人は、性悪だ。性根が腐っている。
この人外は———人でなしだ。
「じゃ、行ってきなよ球磨川くん。あ、そうそう。必要か知らないけど、一応助っ人呼んでおいたぜ。君と似た属性の人間だから、仲良くするといいよ」
『へぇ、安心院さんにしては優しいな。...って、これもストーリーを面白くするためか』再び括弧つけながらそう独り言を言う。
『ツンデレ属性ですか?』
「君が自分のことをそう思ってるんだったら今からツンデレを呼んであげてもいいけど」
『遠慮しておきます』
僕はツンデレではない。どちらかと言えばツンドラって感じかな?あはは。
「じゃ、新婚さん行ってらっしゃ〜い」手をヒラヒラと振り、教室から出て行く僕を見送る。誰が新婚さんだ。何のテレビ番組だよ。
そしてそれに対して僕は振り返ることなく、たった一言で別れを済ます。
我ながら冷たい人間だぜ。さながらツンドラ気候だ。
さてと。
『いってきます』
勝とうかな。
ドロドロした遊郭に、過負荷の花を咲かせよう。
「
さて、助っ人とは一体誰なのか。皆さんも知ってる人物ですぜぃ。楽しみにしててくだせぇ。
というわけで今後もよろしくお願いします!感想・評価・アンケート等もよろしければ。
あ、そうそう。
オリジナル作品も書いているので暇な方はご覧になってみてください。
囲碁部の日常を描いたものです。まだ二話だけど。
https://syosetu.org/novel/264926/
クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?
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ない
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ちょっとある
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めっちゃある