過負荷の刃   作:角刈りツインテール

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次回で遊郭編終了です。の予定です。ここまでとりあえずはありがとうございました。


027 夏疾風

安心院さんとの会話ののち、パチっと目を覚ました球磨川禊。体を眺めてみると、鎌による切り傷は一切合切消えていた。

しっかりと「無かったこと」になっていた。

『よっと』『お、おはよう伊黒さん。』『うーん、あまりいい目覚めとは言えないね』『ちょっとばかし頭が痛いや』

「あ!?お前死んで……ッ?」

球磨川が目醒めたその時、目の前では伊黒と妓夫太郎は北斗の拳を彷彿とさせる白熱の戦いを繰り広げていた。

力では妓夫太郎の方が上だが、それを巧みな戦術でカバーする伊黒。二人の戦いはほぼ互角だった。

そんな状況の中で球磨川の死体をこれ以上傷つけないように動いていたらしい伊黒。もしかすると、自分が思ってたより優しい人なのかな、と球磨川は感動する。

勿論嘘である。

まぁけど、人は見た目に寄らないって、本当だなぁ。

『あぁ、そういえば僕、死んだんだっけ?』『はは、そんなのは———』『「無かったこと」にしたよ』

 

返却された球磨川禊の過負荷(マイナス)大嘘憑き(オールフィクション)」。

全てを———無かったことにする能力。

 

安心院(あんしんいん)さんが「冠石野ちゃんの粗悪コピーと同じ威力になってるよ」と言っていたものの、そこの加減は適当だったようで胡桃ちゃんの「代入大嘘憑き(サブフィクション)」では不可能だった「蘇生」が出来たため安心院さんの手を煩わせることなく生き返ることができた。

『...まぁ、流石に多少は弱体化してるんだろうけどさ。』『そこら辺は許容範囲ってことで』そう言いながら、笑顔を作る球磨川。

何も知らない人から見れば子供らしい、可愛い人間だと思うような、そんな笑顔を———この戦場で。

 

———改めてよろしくね?妓夫太郎ちゃん。

 

球磨川のしがらみの無いその笑顔を前に———妓夫太郎は戦慄した。

「……お前、何者なんだよぉ」

『うーん、それは難しい質問だなぁ』『ま、強いて言うなら』『「悪の味方(ダークヒーロー)」といったところかな?』『ははっ、面白くなってきた!』

そういって、球磨川は大量の螺子を四方八方へ投げた———が、その軌道は誰にも見えなかった。

サクッ、という何かが刺さった音だけが聞こえる。

早すぎた、のではない。

()()()()()()にしたのだ。

そして、そのほんの一拍ののち、球磨川は下を向けていた顔を上げ、正面を見据える。勿論笑顔で。

そこには———

 

「カッ……く、くま、がわ……?」

 

螺子伏せられている妓夫太郎。そして。

 

小芭内伊黒。

 

伊黒にまでも、螺子が刺さっていた。

螺子伏せられていた。

心臓に、深々と刺さっており——————どちらも驚愕の表情を浮かべている。

『あぁ……ごめん、伊黒さん』『手が滑らなかった』

先程までとは打って変わって真面目そうな——————否、括弧付けた表情を見せた球磨川。口元だけは、微笑を浮かべている。

仲間を傷つけたというのに。

どこまでもどこまでも空虚な台詞を吐く球磨川に、伊黒は憤りを覚えた。

「なんの、つもりだ……」

『いやぁ、仕方なかったんだよ伊黒さん』『攻撃すると、どうやっても2人に当たってしまうんだ』『だから——————仕方がない』『これは僕なりの努力の結果さ。だから———』『僕は悪くない』

 

避けられなかった君が悪いと、伊黒に指を刺した。

これは、球磨川の始まりのスキル「却本作り(ブックメーカー)」。

妓夫太郎と伊黒、両者の髪が徐々に白くなって——————。

『が、その甘さ』『嫌いじゃないぜ』

そう言った瞬間、2人の心臓から螺子が抜けた。

「……は」

抜けただけではない。本来ならあるはずの胴体にできた空洞も、すっかり消えていた。無くなっていた。

『いやぁごめんごめん』『2対1なのに流石にこれを使うのはフェアじゃないよね!』『君は弱いからさぁ』『だから、正々堂々刃で勝負するよ』『この、鬼滅の刃でね』『よし、タイトル回収完了』

相手が弱いから、などというそれでは寧ろ相手にとっては有難い話なのではないかと思わせる、理解に苦しむ理論だったがお陰で助かった、と伊黒は安堵する。

もし、あのまま髪が白くなりきっていたら、どうなっていたのだろうか。考えると普段冷静な伊黒でも背中に汗が浮かんできた。

「舐めやがって。ふざけるなよぉ。赦さねぇからなぁああああッ!」そして妓夫太郎は、キレた。

 

 嘘の呼吸 漆ノ型——————嘘月。

 

2人同時に襲いかかってきた球磨川、

 

 蛇の呼吸 参ノ型——————塒締め(とぐろじめ)

 

そして少し遅れて伊黒。

その二人に対し、妓夫太郎は。

 

  血気術 円斬旋回(えんざんせんかい)・飛び血鎌

 

 

業ッ!と凄まじい音をたてながら腕の振りも呼び動作も無しで繰り出した。

跳び血鎌を腕の周りに螺旋状に出しその場で広範囲に攻撃を与える———だが。

『よっと』「……ふっ」

勿論ギリギリではあったが二人は、綺麗にそれをかわした。

球磨川は奇跡だったが——————伊黒は良い意味でも悪い意味でも、球磨川の先程の行動に影響を受けた。

あの攻撃に比べれば、遅い。

そう考えるようになった。

あれに比べれば——————馬鹿みたいに遅い。

勝てる、と。そう伊黒は確信した。

 

待ってろ蜜璃。

これが終わったら祝いに君のパンケーキをたらふく食べさせてくれよ。

そう胸で唱えながら、再び攻撃を仕掛ける。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方その頃、善逸・冠石野ペアは。

『...いや、貴方弱すぎませんか...』

()()7()()()()()()()()()

強くなった冠石野と善逸にとって、堕姫一人ではまだ勝てる確率は低いものの、二人では余裕で勝てる存在だった。

「…あぁ、でも問題がある」

『うん、そうだね』冠石野はチラリと横の屋根を見る。

そう。球磨川と伊黒さんが、中々妓夫太郎を倒してくれない。

一体なんなんだ、この2人の鬼の間にあるとんでもない力量の差は。怖いくらいだ。何か、裏があるのではないかと思わせるくらいに、弱い。

『何かの異常性(アブノーマル)...いや、過負荷(マイナス)...?』

冠石野は考える———が、答えは出ない。

なら、ただこの堕姫が兄に頼りきっているだけ———?

「がはっ…!」鬼が胴体を真っ二つにされ、口から血を吐く。

「あっちにもう一人いればいいんだが…」善逸も何かいいアイデアは無いかと試行錯誤しているようだ。

『…善逸さん、鬼の方をお願いできますか』冠石野が善逸を見つめながら言った。

「は…いやそれじゃあ流石にく…冠石野ちゃんが無理だろ!?」

『大丈夫ですよ、善逸。ほら、私って強いですから』

「聞きたいのは空元気じゃなくてさぁ…!行けるわけねぇだろお前が死ぬかもしれないのに!」善逸は泣きそうな顔で叫ぶ。

『いやいや、大事ですよ空元気は。それが出来てるうちは余裕ってことです』対照的に冠石野はニコッと笑う。

「……でもさ冠石野ちゃ…っとあぶねぇ。ほんとに出来る…..ってあれ、なんだありゃ…」

善逸が鬼から目を離し、後ろの冠石野を見たその時。

冠石野から後ろ10メートル辺り。

何か、黒いものが走ってくるのが見えた。

「ひっ…待ってこれ以上敵増えたらまじで無理だって!!」善逸は叫ぶ。

冠石野も同じく振り返り———同じものを視界に捉える。

『な、なんですか、あれ…?堕姫さんの仲間ですか?』

そう鬼に問いかけてみるが———

「———ああっ!?知らないわよもう!」半ギレ気味でよく見ずにそう返答した。

なら、つまりあれは私達の仲間。…と思いたいところだが。

『たたずまいが味方じゃないんだけど…』

その人影は、黒い何かを周囲に畝らせながら、それを器用に足として用いて此方に向かってきていた。

どちらかと言うとキャプテンアメリカというよりはヴェノムのような感じだ。

ヴェノムとはmarvel史上最悪の悪役である。

冠石野が銃口の向きを変え、攻撃の構えをする。

軽快な動きでここまで高速で移動して、そしてしばらくしてようやくここまで来た。

「…………………..。」だが何も喋らない。

さらに目の前で見ると迫力が凄いのもあり、冠石野は完全にビビっていた。肩が震えている。

ウネウネと動かしている真っ黒なそれは———一体何なのだろうか。

まるで球磨川の心を具現化しているような、気持ち悪さを感じた冠石野は、ブルっと身を震わせる。

10秒程見つめあった末、目の前に男が口を開いた。

「…安心院(あんしんいん)さんからの遣いだ」

予想外の人物名に、驚く冠石野。

『え、安心院さんから….の?ってことは貴方も端末———悪平等(ノットイコール)ですか...?』

「然り」

そう言ったと思えば、気づけば冠石野の後ろへ———即ち堕姫の元へ走った。

それと同時に、自己紹介も済ませる。

 

 

(やつがれ)は、芥川龍之介。しがない作家だ。」

———羅生門・(アギト)

 

 

どす黒い顎のような影が堕姫を襲う。まるでそれ自体に意思があり噛み砕こうとするように。

だがそれを見切った彼女は、帯で応戦しようとする。

しかし。

「….はぁ!?」

「笑止」それらは全て切り裂かれた。美しい布の断面が見える。奇しくも、堕姫の容貌と合わさってこの世のものとは思えないほど美しい光景になった。

そしてその場にいた全員が確信する。

 

こいつは、柱並みに強い。

 

『…あの、芥川さん。もう一体の鬼をお願いしたいです』

「ゴホッゴホッ。…承知した」芥川がキツそうに咳をしたのち、了承する。

そして、再び刃(刃?)で飛び立つ。その姿は、禍々しい死神を彷彿とさせた。

そして、冠石野、善逸、そして堕姫までもその姿に釘付けになっており———なっていたのに、その光景を目視出来なかった。

妓夫太郎の血鎌と、芥川の刃で視界が、あまりにも黒くなりすぎて。

これには球磨川と伊黒も驚いたようで、呆然とするのみだった。

そして、ついに——————。

 

——————斬。

 

妓夫太郎の首が、切れる。

その首を芥川が刃で受け止めると同時に芥川が此方を向く。

「此奴は(やつがれ)が引き受ける。早く其奴をやれ」

安心院から聞いたのだろうか。どうやら現状は把握しているようで、早く堕姫の首も切るように促した。

やれ———殺せ。

そう言った。

『安心院さんも、なかなか酷いことをするね……』

「そうか?普通に有難いと思うけど」

『そう思わせといて後で大どんでん返しが待ってるんだよ。そういう人だからね』

「どう言う人だ……まぁいいや。行くぞ」

『うん』そして、最後の戦いの火蓋が切られる。

「……今まで、どんだけ苦労したと思ってんのよ!こんなところで易々と死ねないの私はッ!」

妓夫太郎の首が切られたことで焦りを見せた墜姫は、最後の力を最大限に振り絞り、先ほどまでとは比べものにならないほどの密度の———おびただしい量の帯を繰り出してきた。

それらが球体になり、堕姫を守る盾になる。

「うおっあぶね!」

それだけでなく、時折攻撃までも仕掛けてくる。

これでは、触れずに堕姫のもとへ行くことが出来ない——————善逸の高速、もとい光速移動では重傷を負ってしまう。これで2人は完全に拘束され、八方塞がりとなった。

『——————な訳、無いよね』冠石野は、唐突にニヤリと笑う。

不気味に。

『善逸』

「あ?なんだ胡桃」

『それまじでやめて恥ずいから……まぁそれでさ、善逸。君って林檎剥いたことある?』

「なんだそりゃ。まぁ剥いたことあるけど……」

『じゃあ出来るよね?これを突破すること』

「ど、どうい——————あ」

気づいたか、と冠石野は嬉しそうな顔をする。

『正解!よろしくお願いするよ』

「……やってみる」

そういって善逸は構える。

慣れ親しんだ壱ノ型で、慣れ親しんだ何の工夫も凝らさない正々堂々の攻撃を。

経験を。

苦労を。

我妻善逸の全てを。

そこに燃やす。

即ち。

 

 

    雷の呼吸 壱ノ型———霹靂一閃

      六十連ッ!

 

 

バババババババババババッと光が帯で出来た球体を囲む。

まるで、花火を真正面から見ているような、そんな光景だった。

横から球磨川だけの視線を感じる。いや、お前はもっと動け。

伊黒さんだって頑張っているだろうに。

少しづつ、球が小さくなっていく。計画通りだ、と冠石野は笑う。

そう、これは。

『「林檎の皮剥き」、だね。』

果物を外側から回して切っていけば、皮を剥くことができる。そんな簡単な理論だ。

ならば———同じようにすればこの帯だって、削っていける。

「「ああああ「「ああああああああああああああああ「ああああ「あああああああ」ああああ」あああああああ」」ああああああ」あああ!!!」」

善逸と堕姫の叫び声が混同して聞こえる。恐らく善逸ももう既に限界を超えているのだろう。

頑張れ、善逸と祈る。

そして最後に一回だけ喝を入れようと目論む。

息をしっかり吸って。

深呼吸。

スゥー。

 

『帰ったら膝枕してあげるよーーーーーー!!!』

「よっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

更にスピードが増した。そんなに嬉しいのか、と冠石野は少し呆れた表情を見せる。

『なんか、ラノベみたいな空気感になってしまったけど…っと』

そろそろかな、と緩んでいた表情を真面目なものに変え、弾丸を再度堕姫に向け直す。

林檎が剥けるタイミングを見計らい———

 

 

………………。

 

 

………………。

 

 

………………。

 

 

………………。

 

 

そして、その時が訪れた。

 

堕姫の顔がチラッと覗く。その表情は。

 

まさしく「絶望」。

 

『やぁ』『さっきぶり』

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

 

 

そう格好つけながら冠石野は、首を狙って弾丸を集中砲火する。

「なんなの、あんたら……なんなのよおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああッ!」

叫び声と発砲音で、耳がおかしくなりそうだった。だがアドレナリンが出まくっている冠石野はそんなことはお構いなしに、弾丸をぶっ放す。

『ああああああああああああああああああああああああああああッ!』

「『ああああああああああああああああああああああああああッ!」』

 

ぶっ放す。

『ああああああああああああああああああああああああああああッ!』

 

「『ああ、ああ……!!わああああああ!!!わあああああああ!嫌だ…嫌だ死にたくない!」』

 

ぶっ放す。

『ああああああああああああああああああああああああああああッ!』

「あああああ….死に、たく………..ッ」

ぶっ放す。ぶっ放す。ぶっ放す。ぶっ放す。ぶっ放す。

『……何人食ったんだよ…それで自分だけ死にたくないなんて自分勝手にも程があるよねッ!如何なんだよ!ちょっとでも人間(こっち)の気持ち考えたことあんのかよっ!!!』冠石野は——ひたすらに叫んだ。

理由は冠石野にも分からなかった。その叫びはもはや反射のような——魂そのものだった。

「わ……私だって……ッ!あぁ……..あ」

そしてついに首が、弾け飛んだ。

横を見ると、妓夫太郎の首も飛ばされていた。軌道から察するに同じ場所に落ちていきそうだ。

偶然か、それとも芥川さんの粋な計らいか。どちらだろうか。

まぁどちらにせよ。

「か、勝ったのか?」

「……はは、そうだよ、善逸」「私の———いや。」「私達の、勝ちだ。」

冠石野は疲労の中、しわがれた声で、括弧つけずにありのままの自分を囁いた。

「……あー、疲れた」

『おーい胡桃ちゃん!善逸ちゃーん!』

どこかの馬鹿が手を振ってくる。冠石野と善逸は、顔を合わせてついつい苦笑いをしてしまう。

そして球磨川に目を向ける。

どうだい、球磨川さん。

お前を真似した私が勝てたんだから———お前だって勝てるんだよ。

だから———だから、頑張れよ。

球磨川にそんなメッセージを伝えるために親指を立ててニカっと笑い、そして、疲労が祟ってその場にばたりと倒れる。

「……伝わってなさそうだなぁ」

 




原作「鬼滅の刃」にて実在人物は出てこなかったのでちょっと芥川龍之介を出してみました。設定は「文豪ストレイドッグス」の芥川龍之介とまんま同じです。

クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?

  • ない
  • ちょっとある
  • めっちゃある
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