後日談。というか、今回のオチ。
語り部はこの私、冠石野胡桃です。いーえい。ぴーすぴーす。
とか、
『FuZAKEる』っつってね。何を言っているんだ私は。
何故ならこれが私らしさだからだ。アイデンティティだからだ。私は悪くない。
…話が逸れそうだ。ここであまりに早すぎる閑話休題をしておいた方がいいかもしれない。
というわけで。
閑話休題。
二人の鬼の首を同時に切断することに成功した私たち一行(+芥川)。
私たちはその首を見つけるために屋根から地上に降り立っていました。
久しぶりの全員集合に、いくら最低野郎である球磨川との再会であっても多少の感動を覚えた、のだが。
『もしかして君たち、僕のことを心配してくれていたのかい?』『はは、「江戸のピカソ」と呼ばれた僕も舐められたもんだぜ』『僕が死ぬ訳ないだろう?』
と、溜息混じりで言われたことでその感情は消え失せた。
むしろ殺意が湧いた。
あとピカソに強いイメージは無い。
と、まぁ和気藹々とした会話はここまでにしておいて(そろそろ伊黒さんもイライラしてきた)、堕姫と妓夫太郎の首探しへ向かった———と、大袈裟に言ったもののすぐ近くに着地していたようだった。
「…行ってみようか」
「いや、でもまた攻撃されたりとか…」
『あはは、善逸ちゃんはいくら強くなってもヘタレは変わんないんだな』
「うっせ」
というわけで首の元へ。善逸ががっしりと球磨川に抱きついていた。歩きづらそうだ、と他人事のように考えるう私はクズなのだろうか。そう考えると多少は凹む。
ザ、ザ、ザ、と砂の地面を蹴りながら少しずつ近づいていく。
「あ、なぁ冠石野ちゃん。そういえば、さっきの弾丸の方向転換は一体どういう手品なんだ?」と善逸が聞く。
そういえば説明していなかった気がする。私としたことがついうっかりしていた。
この、おもしろサーカス団の飼育員としてしっかりしなくては。
「手品いうな。…まぁ手品みたいなものですけどね。ただの糸だよ」
勿論、日光をたっぷり含んでいるためそれ自体でも殺傷能力はあるが流石に鬼の近くに来ると光を反射して気づかれるため、今回のような小道具としての役割が最も好ましいのだ。
これは、身近なもので出来る護身術として父に教わったものである。護身術を、鬼を殺めるために使ったと聞けば、父は怒るだろうか。その様子を思い浮かべるとつい笑ってしまった。しかも結構な音量で。
辺りを見回すと予想通り皆から白い目で見られている。お前にそうやって見られる筋合いはないよ、球磨川さん。
『ふーん、僕らにそんな凄いの隠してたんだー。信用されてないなー、悲しいなー』
「いや、球磨川さんは信用していませんよ?」
と、当たり前のように言ったら珍しく球磨川さんが肩を落とした。そんなこともあるんだな、と申し訳なさ2割感動8割の感情になる。
「あーはいはい、ごめんなさい冗談で———あ。」
そのとき。
「………………………?……!」
「…………….!」
何やら言い争いの声が聞こえた。予想通り同じ場所に着地できたようだ。
流石は兄弟、と言ったところか。いや関係ないかな。芥川さんの腕の良さだろう、おそらく。
「…ってあれ?芥川さんは?」
「首を切ったらすぐに消えたぞ。」伊黒さんが呆れ口調で言う。「全く、何者なんだアイツは。知人か?」
質問に答えたいところではあるが、それでは悪平等———もとい、安心院なじみについて説明しなければならない羽目になる。
誰でも引き摺り込んでいい界隈ではないのだ、あそこは。
知らなければ知らない方がいい。
なので私は「さぁ?」と軽く受け流した。ぎろりと睨まれたが気にしない。
『…ねぇ、芥川って、あの芥川龍之介?』
と聞く声がしたので振り返ってみると、まじまじとこちらを見つめる球磨川がいた。
なんだろう。いつものニコニコ笑顔ではないのに不思議とイラっとする顔だ。
ぶん殴りたくなる。…まぁ冗談だけど。
「えぇ、確か龍之介だった筈ですが———有名人なのかな」
『これから有名になるぜ、アイツは。僕が保証する』と、胸を叩いた。
じゃあならないんだろうな。
と、そんな下らない話をしている間に目的地に辿り着いた。
「私お兄ちゃんに合図したよね!?なんで無視したの!?」
「分かるわけねぇだろそんなの!この出来損ないが!」
やはり首だけになった兄妹が喧嘩をしている。
後ろで善逸と球磨川が「合図とかあったっけ…?」『さぁ』と小声で話していた。私も全く気がつかなかった。一体何処でしていたのだろうか…。
「それになんで首切られちゃうのよ!弱すぎるでしょ!」
喧嘩は続く。
「お前が言えることか!?何回切られてたよお前!」
喧嘩は続く。サラサラと体が少しずつ灰になって消えていく。
「私はいいの!お兄ちゃんは私を守れよ!!」
「いつもいつも自分勝手だよなお前!」
「もう———お兄ちゃんなんて大嫌い!!!」
二人が消えるまで終わらなそうなその口喧嘩。その終止符を打つ空気の読めない男がいた。
『おや、喧嘩かい?』『人生最後に寂しいねぇ』『折角だから僕が救済措置を与えようか?』『うん、それがいいね。そうしよう』
勿論、球磨川禊である。
ヘラヘラと堕姫、妓夫太郎部話しかける。
———2人のこめかみに深く螺子を刺しながら。
後ろで善逸が「ひっ!?」と怯えているのが聞こえる。私も出来ることならそうしたい———が。
体が動かない。
まさか、この男に恐怖しているのだろうか。何を考えているか全く分からない、この3枚目の男に?
まっさかー。
それにこの私だぜ?冠石野胡桃だぜ?うん。そういうことよ。
と、自分に語りかける———何故か効果はあったようで体は動き始めた。なんであるんだ、効果。
「え…と、何してるのかな」
『え?』『あー、いや』『喧嘩してるからさ』『仲直りの機会が必要かなと思ってさ』『「
その思考に、ゾッとした。相手は鬼である。勿論攻撃という観点からすれば、球磨川さんの行動は大いに正しい。
が。
球磨川さんは、それを優しさと———慈悲と呼んだ。
慈悲。そのはずなのに、心は一切こもっていない。
これでは茲非である。
『さて、お二人さん』『早く仲直り出来るといいね』
「ま、待って!お兄ちゃんどうなるの!」
「堕姫!」
「助けてよお兄ちゃん!」
「———梅!」
そして、二人の髪は真っ白になり———突如。
蝋燭の煙のように儚く消えた。
『?あれ』『何処に行ったんだろ』『…まぁ安心院さんが便宜を図ってくれたってことにしとくか』『うんうん、それがベストだ』『じゃ、行こっかみん…あれ?皆?』
伊黒を除いて(勿論驚きはしていたがそんなことは表情には出さない)全員、球磨川を見て立ちすくんでいた。
「…行きましょうか」私が先陣を切って動く。すると、伊黒、善逸も動き出す。
一体彼は何者なのだろうか。
安心院さんは彼のことを未来人と言っていたけど。
こんな人ばかりの未来しかないのだろうか、地球は。
だったら今、鬼に全員喰われてしまったほうがいいのではとか思ってしまう。
嘘つきで。
剽軽者で。
空虚で。
馬鹿で。
弱くて。
敗北者で。
そんな人間しかいない世界。
「うーん、それはちょっとやだなぁ」
『どうしたんだい?胡桃ちゃん』
お前のことだよ、とは言えない。私は思慮深い人間なのだ。大人なのだ。
だから「何でもないんだよ」と答える。
そんな感じで、私は一歩一歩重い足を動かしていった。
『全く、僕も甘いなぁ』『鬼に仲直りの手助けをしちゃうなんてさ』『ま、兄弟愛が認められない世の中なんて救えないし』『今回ばかりは許容することとしよう』『つまるところ———』
『また勝てなかった』
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そしてしのぶ亭へ帰宅。
私たちは広間で濃いお茶を飲んでいた。暑さと旨さが体に染み渡る。美味しい。
シェフを呼んで欲しい…と、葵ちゃんか。
あとで褒めまくっておこう。
「…それにしても」と辺りを見渡す。
訓練をした広間。
昨日までここにいたのに、随分とあの訓練が昔のことのように思える。
大変だった、と素直に思う。
時間こそ無限列車のときより短かったが、強さで言えばこちらの方が倍は強い。
芥川さんがいなければ、きっと今も戦っていただろう。
時間は午前2時。見かねた葵ちゃんが伊黒さんも泊まらせる。
うーん、いい子だ。
是非お嫁に欲しい。
「お前らは今回は良く頑張ったと思っている。だが問題点もある。善逸、お前は………」
と、一人10分くらいの小言が始まった。ネチネチ、ネチネチと。
3人で顔を見合わせてクスッと笑う。先程まで球磨川さんに疑念を抱いていたはずの善逸も私も、球磨川を見て笑った。
単純だなぁ、私。
「あ、伊黒さん。甘露寺さんはいました?」
「いないな。明日甘露寺の家に向かってみる」
『確か誰かの手助けだったんだよね?誰なの?その人』
「タメ口…まぁいい。確か竈門炭治郎、嘴平伊之助と言ったか。功績は上がっているが俺はまだアイツらを認めてねぇ。何たって鬼と共に鬼狩りをしているんだぞ。もしそいつが人を食ったらどうするつもりなんだ」
鬼と一緒に鬼狩りを。それは一体どう言う状況なのだろうか。
伊黒さんの言葉から察するに、未だ被害は出ていないようだけど。少し心配だ。
「竈門…嘴平…どっかで聞いたんだよなぁ。何処だっけなぁ」と善逸が唸っている。昔の知り合いなのだろうか?
と、そんな雑談をしていると
『お』『あれ何?』
1人の客が来た。
だが、それは甘露寺ちゃんではなく———というか、人でもなく。
「カァー!カァー!」
一羽。
見覚えがないので恐らくは伊黒さんのもの。
こんな夜更けにどうしたのだろうか、と次の言葉を待つ。
———静寂。
「……」
「…… 」
『……』
「……」
早く言えよ!
ここにいる誰もが思った。意味もなく額に汗が流れるほどの謎の緊張感。
こういうのは苦手なんだよね。
本当に早く言ってく「カァー、甘露寺蜜璃が死亡!」
え?
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「は…!?」
それは伊黒さんの声だった。
その表情は、驚愕、悲しみ、怒り———色々な感情で染まっている。
善逸はもちろんの事、あの球磨川でさえ驚愕していた。
あの、球磨川でさえ。
そして、私も。
自然と涙が浮かんでくる———泣くべきは伊黒さんと分かっていながら。
こんなに涙が出る人だったかな、私。
初めて出会った時の笑顔。
共に料理をした時の笑顔。
一緒にナシゴレンを食べた時の幸せそうな笑顔。
自然と甘露寺さんのあの屈託のない笑顔が脳裏に浮かぶ。
話したのはほんの僅かな時間だったが。
でも。それでも———
「…他の二人はどうなった。鬼は倒せたのか」
伊黒が声を絞り出して聞く。
そうだ。
もしこの2人が生き残っていれば
もし鬼を倒せていれば
讃えることができる。
甘露寺の死は無駄ではない。
そう思える。
諦めもつくかもしれない。
前を向けるかもしれない。
そう思っての質問だろう。
藁にも縋るような問い。
だが。
「竈門炭治郎、死亡!嘴平伊之助、行方不明!カァー!」
ドンッと。
伊黒さんが机を叩いた———そこにはヒビが入っていた。
怒り。
それは何に対してのものなのか。
鬼か。
世界か。
はたまた、何もできなかった自分への怒りか。
相棒の蛇、鏑丸が慰めようとするも(恐らく)伊黒さんは聞く耳を持たない。
私たち3人は伊黒さんに何も言い出せなかった。
『……。』球磨川だけは先程までの驚愕の色を既に消していたが。
「…今回は、ハッピーエンドだと思ったんだけどね」と呟いてみる。
誰にも聞こえないように言ったつもりだったが横から「そうだな」という返事が聞こえた。
いい人だな、と思う。
それからしばらく経って、伊黒は突然立ち上がった。
追いかけられないようにだろうか。「便所だ」とこちらを見ずに言ってから襖の向こうへ行った。そして襖を開けつつ、もう一言呟く。
「俺は信じない」
バタン、と襖が閉まり、伊黒の姿が見えなくなる。
「……。」
『……。』
「……。」
沈黙。
「…なぁ、伊黒さんの
善逸が、顔を伏せながら、伊黒さんと同じように涙声で問う。
「カァー!鬼の名前は———」
童磨!上弦の弍だ!
空元気のような、明るい鴉の声が広間に響く。
上弦の、弍。
「そんなに、強いのか」
上から2番目というのは。
『…ねぇ、皆』『一応聞くけどさ』『今の僕らでそいつを倒せると思うかい?』
「無理だよ」即答した。無理に決まっている。
『そっか』『いやー、今実はさ』『僕、甘露寺さんを殺されて許せないと思っているんだ』球磨川さんが肩をすぼめて言う。『まるで悪い夢を見ているみたいだぜ』
こいつもこいつなりに悲しんでいるのか。
なんか意外だな。
「ふう。…じゃあ、結局鍛錬しないとか」
『そうだね。』『あ、また煉獄さんのお世話になるのもいいかもね!』
「はは…アイツは熱血そうだからやだ」
『あー!あいつって言った!』『いーけないんだいけないんだー!』『あとであいつに言いつけてやる!』
「お前も言ってんじゃねぇか」
はは、と善逸が笑う。
つられて球磨川さんと私も笑う。
完全体の「
甘露寺さんは、全力を尽くした。
その姿勢を見せて———人間を守る、という強い思いを後輩に見せつけてから死んだのだろう。
だったら私たちにできることは。
その意志を———遺志を、継ぐことだ。
「じゃあ、明日から頑張りましょう?善逸、球磨川さん!」私は、涙で赤くなった目を擦りながら言った。善逸も同じような感じなので恥をかかずに済んだ。ありがとう善逸。
『あのさぁ善逸ちゃんだけ下の名前で呼ぶって言うのはどうかと思うぜ?』『胡桃ちゃんは僕の気持ちを考えたことがあるのかな?』
「無い、というしかありませんけど…嘘ですよ」
———禊。
そう言うと、球磨川さんは感動したのだろうか、涙を浮かべ始めた。タイミングそこじゃないぞ、禊。
あ、なんかこれ恥ずかしいな。
「おっけー、じゃあ甘露寺さんの仇とるぞー!」
「『「おー!!!」』」
私たちの団結が深まった夜だった。
『…と、その前に』『一つ提案があるんだけど…』
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そのとき。
小芭内伊黒は宣言通りトイレにいた。
目的は用を足すこと———ではなく。
「…蜜璃…!」
泣くこと。
未だ信じきれていないのは事実だ。だが鴉がそう言った。
だったら———そうなのだろう。
それが事実なのだろう。
助けてやりたかった。
帰って一緒に甘いものを食べたかった。
最期に立ち会ってやりたかった。
無惨を倒した後は、一緒に幸せに暮らしたかった。
一緒に、死にたかった。
それだけ。
「…それだけのことが…できないのか俺はッ!」
叫ぶ。トイレの個室に虚しく響き渡った。それがさらに自分の惨めさ。そして孤独さを引き立たせた。
もう、あの子には会えないのだ、と。
あの笑顔を見ることは二度と無いのだ、と。
もう、あの声を聞くことは———
と、その時。
「伊黒さん」
声がした。高い女性の声だった。
聴き慣れた、あの声。伊黒はツー、と涙を流しながら、彼女の名を呼ぶ。
「蜜璃…!?」
「…そうだよ、伊黒さん」
「やっぱり生きて…!待ってろ、今開けるから」ガチャガチャと鍵を開けようとする。だが手が震えて上手く開けれない。
「…開けないでいてくれると嬉しいかな。ほら、私今死んじゃってるからさ」
死んでいる、そう言った。ということは今話しているのは———
「幽霊、か?」
「そんな感じかな?ふふ、あの子達、ほんといい子だなぁ。好きになっちゃいそう」
いつも通りの口調で言った。
いつも通り、笑った。
死んだはずの女の子が。
もう2度と聞けないはずの、その笑い声が確かに耳に届いた。
あの子達、とは誰のことだろうか。
「…ごめん、助けに行けなくて。俺女の子一人の命も救えねぇんだな」
「ううん。大丈夫だよ。私が弱かっただけ。それに、伊黒さんは勝てたんでしょう?なら誇ってよ、もっと」
「そんな、」
お前のことを馬鹿にするような、と続けようとした。
「私ね、伊黒さんのその優しい目が好きなの」
だがその台詞甘露寺の言葉で遮られる。
「伊黒さんの、その優しい言葉が好き」
「…俺はそんな人間じゃない」
「伊黒さんのさりげない思いやりが好き」
「…俺は」
「伊黒さんが———」
「俺はそんな人間じゃねぇッ!!!」
つい叫んでしまった。蜜璃がビクッと驚いたことが壁越しでも分かる。
あぁ、俺はやっぱり最低な男だ。やっぱり。
「貴方の優しさに、救われている人が必ずいる。だからさ、そんなこと言わないで、自分に胸を張ってよ」
蜜璃まで泣きそうになりながら、そう言う。
瞳を潤ませた蜜璃の姿が浮かぶ。
こんなにも克明に。
でも、そんな優しさはお前にだけだった———そう思っているのに、それは何故かストンと空虚だった胸に何かがはまるような言葉だった。
だから俺は。小芭内伊黒は。
「分かった」と言った。
「あのさ。来世では私のこと、お嫁さんにしてくれるかな」
それはあまりにも唐突な愛の告白だった。
脈略も雰囲気も何もない。
出来れば生きている間に聞きたかった、そう思わざるを得ない言葉。
だが。
「———勿論だ」それにも、俺は即座に肯定した。
「君が僕でいいと言ってくれるのなら。絶対に、君を幸せにする。今度こそ死なせない。必ず、守る———」
「…うん」壁越しに、鼻を啜る声が聞こえる。衝動的に扉を開けたくなるが、それをグッと堪える。
「じゃあね、伊黒さん。大好きだよ」
「…あぁ、俺も、好きだ」
「…ははっ」
その笑い声を境に、何も聞こえなくなった。
静寂。
蝉の音だけが聞こえる。
恐る恐る扉を開け、外に出てみるも、そこには誰もいない。
もしかしたら、ただの幻聴だったのかもしれない。だが———
「…助けられたな」
そういう、ことなのだろう。
ふと頬に触れると、顔がとても熱いことに気付いた。
きっと今、鏡を見たら真っ赤になっていることだろう。
ウブな自分に、微笑を浮かべる。
恥ずかしさを紛らわすためにも、涙を落とさないためにも俺は星を見上げてこう呟く。
「———あぁ、末永く、よろしく」
初恋は始まったばかりだ。
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「はぁ…ただいま」善逸が、涙目で私と禊のもとへ戻ってきた。
そう。
禊が提案した計画とは今後もう使い道が無くなったであろう、「過去の明星」を使うことだ。
安心院さんが善逸に渡した、死者を憑依させるスキル。
これで、甘露寺さんを憑依させたのだ。
「たまには良いこと言うじゃん、禊?」
『おいおい、たまにはって』『いつも言ってるだろうに』
「言ってねーよ」
『そんな馬鹿なッ!?』
「自覚症状なしか…貴方バカなことしか言ってないよ」
『…嘘だよね?』
「うん、嘘…ではないよ」
『えぇ…』
部屋に笑う声が響く。
今度は、空虚ではない。
暖かい音だった。
どうか、甘露寺蜜璃と小芭内伊黒がまたいつか出逢えますように。
《Merry Bad End》is C”LOSE”D
I love you!
この二人には幸せになってほしいですね。
最初は「お、これ凄い西尾維新展開じゃん…!」って思いついてからここを書くのにワクワクしっぱなしだったんですが書きながら泣きそうになってました。いや、もうね、うん。
ここまで読んでいただきありがとうございました。アンケートから察するに、恐らく球磨川メインの話になりそうです。「禊がば祓え編」ってとこですかね?とりあえずはここまで読んでいただきありがとうございます。そして出来ればこれからもよろしくお願いします。
クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?
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ない
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ちょっとある
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めっちゃある