「到着いたしました。此方で御座います」その声を聞いてようやくたどり着いたのか、と久しぶりに前を向いた。
そこには———
『おぉ…!なかなか立派な建物じゃないか!』
球磨川が、きっと未来で凄い建造物を見ているであろう球磨川禊が感動するほどの、立派な建物があった。
摩天楼、と言って過言ではない大きい建物だった。
素晴らしい———はずなのに
(どこかがおかしい…?)
何処だろうか。
普通の住宅なら必ずあるものが、ない様な…
『なんというかさ』『ここまでくるとマンションって感じだよね』『いやぁ、流石の没落加減に僕でも凹んじゃうね』加えて球磨川はヘラヘラと、肩をすぼめてそう言った。
一切凹んでいないような笑顔で。
実際傷ついていないと思うしこいつが傷つくことは天地がひっくり返しても無いだろう。
虚勢でも。
虚勢でなくとも。
「あの…窓が無いんですけど…?」と善逸が権兵衛に尋ねる。
なるほど、おかしさの原因は窓か。
そこは『違和感操作』していなかったらしく善逸でさえ気付いたようだった。
もしくは『でさえ』というよりもヘタレな善逸であるが故に気づけたのかもしれない。
どうでもいいか。
「えぇ、実は主人の希望でして…何しろ日光に当たれないという大変な奇病———難病なので御座います。故に窓は無くして紫外線を防いでおります」権兵衛は語った。
———日光に当たれない奇病、か。
………鬼の可能性って、どれくらいだろうか?
流石にそれは無いと願いたいんだけれど。
これはあくまで日常パートだ。戦闘シーンなんて望んでいない。
フリじゃないよ、本当なんだよ。やめてくれ。
正直甘露寺さんのショックが未だ抜け切れていない部分があるのだ。
もし、善逸や禊が死んだら、と思うと。
おぉ怖い怖い。
ま、いざとなったら——余裕の表情で勝たせていただくけどね。
余裕のよっちゃんである。
そういえばこの『余裕のよっちゃん』という言葉は一体誰が使い始めたのだろうか。
そして何故、わざわざ『よっちゃん』とつけたのか———そのせいで一体古今東西何人ものよっちゃんが揶揄われたことか…いや、知らないけど。
おどけることで余裕さを強調しているとかそんなところかな?うん、適当に考えたにしては割とありそうだ。
そういうことにしておこう。
うぅむ、なかなかに深いな。
…閑話休題。
「それで、一番気になることを聞き忘れていたんですけど、アポなんて取っていないのにどうして私たちを待っていたんですか…?」
と、ここで道中気になったことを聞いてみた。
疲れ切っていたせいで聞く気力も無かったからね。
「……それはお答えできかねますな」
あれ?
さっきまでどんな質問でも簡単に答えてくれていたのに…。
禊のどんなに失礼な質問であっても。
歴代彼女人数なんて聞きやがって。君のメンタルが羨ましいんだよ。全くもう。
「それでは、どうぞお入りください。私めは少々しておかなければならぬことがありまして…」
「あ、了解です」善逸が代表して返事をした。
上を見上げると先程より近づいたからか、より一層高く見える。今からこの屋敷に入るのかと思うと緊張してしまうものだ。
球磨川禊の家———。
嫌な予感は、その話を聞いた時からあったのだが、見て見ぬふりをしていた。
勘違いだったら恥ずかしいし。
「…まぁ、気のせいだよね?」
『ん』禊が私の顔を覗く。『どうしたんだい、胡桃ちゃん?』
「なんでもないですよー」と気楽に返した。
さて。
そろそろ入室———というよりも入場といいたくなるような広い玄関扉を叩く事としよう。
そう覚悟を決め、私はギギギと音の鳴る大きな扉を動かした。
そこは—————————
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
広大な
広さは6畳ほどの部屋、そして。
ただそれだけがあった。
「うわぁ…罠っぽいなぁ…」と善逸が後ろで小声で言った。震えているのが振り返らずとも分かる。
そして善逸が言っていることもまた、とても理解できる。
明らかにおかしい。
外から見た時は奥行きはこんなものでは無かった。
少なくとも5倍はあっただろう。
扉と扉の間をコンコン、と叩いてみるが奥に空間がある気配はない。
…って、扉があるのに空間が無いってどういうことだ。
それはそれでおかしいんじゃないか?
いや、でも流石に…とかうだうだ考えていた、その時。
『まぁとりあえず入ってみようぜ』と私たちの葛藤など一ミリも考えていないであろう禊が扉を———開けた。
「はっ…!?」驚いた我々は全力で後ろに逃げたが、特に何も起こらず。
その後に聞こえたのは、
『あれ、これ…』
『———エレベーターじゃないか』
という、禊の驚いた声だった。
「あ?なんだって?」と英語の知識が薄い善逸が問う。
「簡単に説明すると上へ上がる機械だね。西洋なんかじゃ使われてるはずだよ」そしてその返答を私がする。
「へぇ…なかなかハイカラなんだな、この屋敷」
ハイカラと言えばそうなのだろうが、西洋でもこんな違和感のある造りはしないだろう、恐らく。
真っ白な部屋にエレベーターだけ、だなんて。
勿論、窓も無い。
さて…。
「…3人で別れる?」
『別に付き合ってないけどね』
「黙れ」
『まぁいいんじゃないの?合理的選択ってやつだね』と言っても指をパチンと鳴らして見せる。実にウザったらしい。
だけどOKしてくれるだけ有難い。
問題は禊ではなく。
「ひ…!嫌だ嫌だ嫌だ!絶対怖いって!禊の家だぞ!?」と何気に酷いことを言う善逸だった。
いやまぁ怖いけどさ。
どうしようか。前回みたいに応援か?
でも使いすぎたらいずれ効かなくなるかもしれないし、このドーピングにはタイミングが重要だ。
難しい。
と、解決策を考えていると、またしてもしでかしたのは禊だった。
『ほら善逸ちゃん』『終わったら胡桃ちゃんが何でも一つお願い聞いてくれるってよ』
「へ!?」
なんでも!?
ていうかなんで!?
なんで私なの!?
馬鹿なの!?
「いや、男子の『何でも』は信用できないと言いますか、調子に乗ってエロ方面のお願いしてくる奴ばっかなのでお断りです」
『経験ある言い方だね…』
「忘れもしない、12歳の夜…」
『情感たっぷりにせつめしなくていいからさぁ、善逸ちゃんを何とかしてくれよ』
クイっと後ろで震えている善逸を親指で指す。その動作がまた癪に触るんだよなぁ。
それに、あんな語りが始まったら普通聞いてあげるよね。普通は。
普通であれば。
…うーん。
なんでも。なんでも。なんでも。
いやぁ…。
『それとも何だい?君は仲間を信用していないのかい?』
「うぐっ…」
何を言っているんだこいつ!?
頭おかしいのか!?
『それなら仕方ないけどね』『別の案を考えよっか』
「…………。」
『ほら、善逸ちゃん、どうやら君は信用されていないらし———』
「———あーもう分かりましたよ!受けて立つよもう!」
と、最終的にはヤケクソ気味に承諾した。
「…分かったよ、じゃあ行くよ」と私の声を聞いて渋々立ち上がる善逸。
そうだな、仲間を信用しないと。
小さなところから友情の崩壊は始まっていくんだ。
昔しっかりと学んだはずなのにさ、忘れてたよ。
気をつけよう。
「…じゃ、ご武運を」
『おっけー、またね』
「……頑張る」
そして私たちはエレベーターに乗る。
この先に何があるのか。
私の不安が間違っていて、扉が開いた先は美味しい料理が大量に用意されているのか。
もしくは、鬼の罠か。
何も分からない私は、兎に角『
3人で再会できることを祈りながら。
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「弓月君也です、えっと、まぁ…弓月くんとでも呼んでください」
そんな私こと冠石野胡桃を2階で待っていたのは、爽やかな———『the・青少年』と言う感じの毛先を遊ばせている中世的な男だった。
うわ。
あうっげー可愛い。
なんなら私より可愛いんじゃないのか、こいつ。
腹立つわぁ…。
その苛立ちとともに何故か「『也』は断定の助動詞なのかな…?」なんてどうでもいい疑問が脳裏に浮かんでしまったので頭をブンブン振って無理矢理消し去る。
今はギャグ方面はやめておこう。
一応ね。
「はぁ、弓月くんね。私は冠石野胡桃だよ。何とでも呼んでね。もしくは読んでね。———で、ここはなんなの?」
先程、壁の向こうには明らかに空間が無かった。
なのに今眼前にあるのは、外から見た時と同じくらいの奥行きのとてつもなく広い部屋。
まさに広場、という感じだ。
1階より2階の方が広いとは、これいかに。
…ってあれ。
この部屋だけでこの大きさなら、他の2部屋は一体どうなっているんだ?
それとも、3階4階に着いたのか…憶測することしかできない。堂々巡りになりそうなのでやめておこう。
そして、弓月くんは部屋の奥の椅子に座っていた。
「何処、と言いましてもね…まぁ、今からするのはちょっとした遊戯です———えぇ、ちょっとした。簡単なゲームですよ。それに勝てば3階へ招待しますよ」
「遊戯?」
「うん。“きゅうぎ”———、と言ってもいいかな」
「なんで私が遊戯の漢字が分かって球技の漢字が分からないと思ったの…?」
球技。
ボールを使って行うスポーツの総称。
ターゲット型ゲーム
ネット・壁型ゲーム
ゴール・ポール型ゲーム
投・打球型ゲーム———ジャンル分けはそんな感じだったかな。
女子の中では筋力があるとはいえ球技はなかなかする機会がなかった———できるだろうか、私に。
まぁ、やるからには本気で。
鬼狩り程度には。
「それじゃ」
『いつも通り勝ちましょうか』
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「こんにちはなのだ!私は
2回に上がって早々、そんな声を聞いたのは僕———球磨川禊だった。
久しぶりの語り部だから緊張するぜ。
さて。
目の前にいるのは10歳程度の小柄な女の子。
小柄な割には気が強そうだけど。
人は見た目によらないんだなぁ、とこんな場面で実感する。
そしてそれだけではなく———広い———だけでなく———
メルヘンなベッド。
ピンク色の化粧台。
お洒落なライト。
そして、日本から西洋まで、多種多様な人形の数々。男の僕でも可愛いと思ってしまうような部屋だった。
『おやおや、なんて可愛らしい子なんだ!』『よろしくね、ロリちゃん!』
これはお世辞じゃないし嘘でもない。
凄く可愛い。
それこそ、一目惚れする程には。
…。
冗談だぜ?
「うふふ、ありがとっ!」とロリっちゃんは満面の笑みを僕に返してきた。
可愛いなおい。
抱きしめたくなるわ。
『ねぇ、後生だからハグしてもいい?』
僕は美しい土下座をかました。
何しろ、それは三代欲求の一つだ。
欲に素直なのは人間らしい、と言えるんだぜ?
そのためならどんなに美しい土下座だってするのを惜しまない。
美少年探偵団の仲間入りを果たしてしまうかもしれないな。
美謝の禊。
…いやダサいな。却下だ却下。どんな脚本よりも薄い物語になる自信がある。
「駄目なのだ」
そして駄目だった。
『…ま、そんな茶番は置いておいて』
「茶番って感じじゃなさそうな頼み方だったけど?」
『ここは何だい?』『窓もないしさ…』『ちゃんと日光に当たってるのかい、ロリちゃん?』
「えぇ、ボタンひとつで壁がもうね、すっごいガガガッって動いて日光に当たれるわ」
『最先端過ぎない?』なんてものに注いじゃっているんだ、その技術。
もっといい使い方があっただろうに。
「じゃあそろそろルール説明をするわよっ!」とロリちゃんが唐突に大きい声を出した。
『ルール?何の?』僕は問う。まぁそりゃあ知らないからね。
「え?もちろん決まって…って、もしかして権兵衛から聞いてないの?はぁ、あの執事はもう…あとで躾けておかないとね」
ちょっと待って。
階級がおかしくなかったか、今。
君の方が上なの?
『何者なんだよ、君は』
「んー、なんですかね…うん、わかんねっ!」てへぺろ、と舌を出す。
か〜〜〜〜わ〜〜〜〜い〜〜〜〜い〜〜〜〜!
じゃなくて。
「じゃあ簡単に説明するとね。貴方には私と勝負をしてもらうわ。勝てたら上へ上がれるって訳」
『ふむ。で、その種目は?』
「ふふん、それはねぇ…」
と、少し勿体つけてから、彼女はそのゲームの名前を言った。
「しりとりなのだ!」
『そこまで勿体つけるほど革新的な遊びでは無ぇよ』
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「…ロックです」
「なんでここだけ外国人でしかもキャラ薄いんだよ」
「なんです…?」
「いえ何でも」
そんな『ロックだぜ!』って感じの会話をエレベーターの先で行っていたのは、俺こと我妻善逸だった。
うーん、当たりといえば当たりなんだけど、何故か損をした気分になるな…。
人間とはつくづく贅沢な生き物だ。
「え…なんなの、ここ」と、俺は周囲を見渡す。
大量の本棚。
壁一面に本が敷き詰められていた。
一体どんな本が置いてあるのかと確認してみると、フィッツジェラルドから紫式部まで多種多様な古今東西の文豪の書物が不規則に並べられていた。
あまり綺麗好きな人ではないのかな。
「2階…です」
「んなこと分かってるよ!?何の目的だって聞いてんの!」
「あぁ…目的…」
「そうだ」
「目的…目的…目的…。 ………あ、思い出した」
忘れていただって?
いくらなんでもそれはかなり重症な気がするぞ。
「そう、目的…それは君との勝負…君が勝てば…3階へ…招待します…」
「勝負」
なるほど、そういうことか。
ここの主人はかなりの遊び人だと思われる。…あくまでこれがロックの独断で無ければの話だが。
一体何者なのだろうか、禊の祖先は。
彼と同じように狂っているのだろうか?そうやって推測を立ててみるとちょっとは楽しみになってくるものだ。
知らないものを知れることは嬉しいもんね。
知らぬが花という言葉はあまり信じていない。
あとついでに言っておくと急がば回れもあまり信じていない。
「えぇ、勝負…この階での勝負は…鬼ごっこ…」
「ゲーム内容も他の二人と違ってしょぼい…」いや、しりとりよりはマシか?
「我妻さん…さっきからメタ発言が過ぎますね…」
おっと、失礼。ついつい言ってしまった。
一番楽に笑いが取れるからな、メタ発言って。けど今後は控える事としよう。
「てか、俺あんまりビビらなくなったなぁ…」とぼやく。
ちょっと前までは命令を受けるたびにギャン泣きしていたというのに。
今では最初に少し駄々をこねるくらいだ。いやそれもどうかとは思うが。
さて。
兄弟子探しからは多少脱線するものの、たまにはこういう遊びで本気になるのも良いだろう。
どんなことでも、いずれは生かされる。
球磨川が言っていたが———人間は遊びと共に進化してきたんだ。
だから。
いつか鬼になった兄弟子———
「———勝たせてもらうぜ、ロック」
ここで、勝ち癖をつけておくこととしよう。
「うん…よろしく、我妻」
そんなロックな会話と供にゲームがはじまった。
…いや、どこがロックなんだ。
[現在]
冠石野胡桃vs弓月君也(2F) 球技(?)
球磨川禊vs高向玄理(2F) しりとり(?)
我妻善逸vsロック(2F) 鬼ごっこ(?)
と言うわけで唐突にいかにもめだかボックスって感じの遊びが始まりました。ここからどうなるんでしょうか、さっぱり分かりませんが頑張ります。
クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?
-
ない
-
ちょっとある
-
めっちゃある