過負荷の刃   作:角刈りツインテール

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35話です、よろしくお願いします。最近やっと伏線とか考えられるようになりました。というわけで皆探してみてね。
そういえばいろんなところで投稿していますが、この小説に登場する冠石野胡桃ちゃんのキャラデザを描いてみました。理解の助けになればなと思います。それから、僕の友人(多分)がイラストを描いてくれているのでお楽しみに。




【挿絵表示】



035 そして五階にて誤解は解かれる。

「よくお越しくださいました、お二方」

そう言って拍手で我々を迎え入れたのは———私たちをこの屋敷へ導いた案内人、名梨野権兵衛だった。

あれ…?

何か用事があるって言ってた気がするんだけど…。

『…なるほどね』と何かを察したらしい球磨川が意味深な呟きをする。

なんだよ。この空間で分かってないの私だけかよ。

仲間外れはよしてくれ…普通に寂しいから。

あと、昔のトラウマが蘇る…いや、別にそんなものは無かった。

ここまで常に平和に生きてたなぁ、と自分の人生を振り返る———暇は今はない。

それくらいは流石の私でも分かる。もしくは流石私、と言うべきかな?

なんちゃって。

『で、善逸ちゃんはどこだい?』と私の思いに気付きもせずに問う。

「まだお越しではございませんが…」

あ、まだ来てないのか。

心配して損したわ———とか言う私ってかなりクズいのだろうか…?まぁ、横でニコニコしている気色悪い男よりかはマシだ。と信じたい。

信じよう。

『…今僕のこと考えてた?』

「うん、別に間違っては無いけどその言い方は語弊を生むよね」

べ、別に恥ずかしいわけじゃないんだからね!

「あの。今までのあの遊びって一体何だったんですか…?」

「あれはですな。所謂()()でございます」

戦抜と言った方が宜しいですかね、と言って口に手を当てつつ上品に笑う権兵衛。

上品な筈なのに、どこか不気味だった。

人畜無害そうなのに不気味な球磨川と通じるものがあるな、と思った。

『選抜っていうのは一体なんの目的だい?———僕の先祖さん』

「ふぇっ!?」

変な声出ちゃった。

この初老のお爺ちゃんが———球磨川家の人間?だから球磨川禊と似ているように感じている?そういうことなのだろうか。

「で、でも…証拠がないよ」と言って謎に権兵衛を庇う———いや別にこの点において彼は何も悪くは無いのだが———反論を試みた。

だが、それに返答したのは、球磨川ではなく、権兵衛のほう。

「証拠、ですか…では」『こんなのはどうでしょう?』

「お…?」

権兵衛はごく自然に括弧つけてみせた。

こんな喋り方ができるのは球磨川かそれを『真似』する私だけであって———それは言うまでもなく、彼が球磨川家の人間であることの証拠になる。

と、思う。

「…信じます」『じゃあノリで私も真似しますね』

『感謝申し上げます』

『待って待って待って権兵衛さん胡桃ちゃん』『流石にこれは僕も見逃せないカオスだよ』

『いや、でもよく考えて?小説では逆にこれが普通なんだよ?』

『そうでございますよ、禊様』

『まぁそう言われるとそうなんだけどね…』球磨川はため息をつく。『なんか、僕のアイデンティティがどんどん薄れていくぜ』

確かにそれは少し可哀想だった。

というわけで球磨川以外は普通の喋り方にすることにした。こいつに可哀想なんて感情を抱く日が来るとは…いや、出会った一番最初は思ってたんだったな、そういえば。

あれはもう過去の出来事だ。今はそんなこと微塵も…いや、多少は感じてるかな?

 

いつかはやっぱり、勝って欲しいと———そう思っているのは、借り物の過負荷に苛まれた私に残っている最後の良心なのだろうか。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「…で、目的って一体なんです?」私は問いかける。

「目的。その前に一つ宜しいでしょうか?」だが逆に、私は権兵衛に質問を返される。

「…?いいですけど」

正直、質問に質問で返されるのってちょっとイラついたりしちゃうけど、今回だけは許そう。今日はそういう気分だ。

「先ほどのゲーム、如何だったでしょうか、難易度は…」

ふむ、難易度———か。

最初、私ちゃんとゲームしてないからな…まぁけど、二つ目と三つ目は難しかったように思える。代入大嘘憑き(サブフィクション)を使ってはならない時、こうも苦戦するのか、と驚いた。

今度、日輪刀の素材でできた糸でも作ってもらおうかしら。

「まぁ、難しかったんじゃないです?」

『僕は楽勝だったけどね』『あれ?胡桃ちゃんともあろうお方が、あれ如きのゲームで死にかけていたのかい?』『君も、随分と弱くなったものだ』

「はは、禊は一体何を言っているのかな?あんな雑魚みたいなゲームで私が苦戦すると本気で思ってるの?大爆笑させて呼吸困難で殺すつもり?」

チョロかった。

最近、みんなどんどんキャラが変わっていっている気がするのだけれど、大丈夫なのだろうか。

最初の私、もっとウザいキャラだった気がするんだけど…。

まぁいっか。これも成長の一つだということで。

それに、あの頃は黒歴史でもあるしね。

「で、それが何か?」

「いえ…今後の参考にと」

『今後?』『もしかして、またするつもりかい?』

「皆様が無理だったら、ですがね」

「無理?何が———」と聞こうとしたその時。

 

「———悪い、遅れた!」

 

突然扉が開き、暗かった部屋に光が溢れ、そして声がした。

『ドン!「ひいっ!」』というふたつの音がしてから再び暗くなる。

だが顔が見れない程ではなく、その声の主が一体何者なのかという質問は愚問に等しかった。

 

即ち、我妻善逸である。

 

意外にも彼はあまり傷ついておらず、正直に言って私は驚いた。もっと死にかけになって来ると思ってた…なんて言うまい、と思っていたら善逸に「冠石野ちゃんの思ってること分かりやすすぎるんだよ…」と言われた。

あう。

そんなに顔に出るっけ、私。

『お』『おかえり善逸ちゃん!』『全く待ちくたびれたぜ』『君は約束の時間も守れないのかい?』球磨川がまたウザイ感じで嘲笑する。

「いや、別に時間指定とかねぇし…てか、なんで権兵衛さんがここにいるんだよ…」暗いなここ灯りはないのか?と重ねて聞く。

「ない。それがね、善逸——————」

以降、説明。

 

♦︎♦︎♦︎

「かくかくしかじかこうこうで…」

『こういう時ギャグ小説って便利だよね』

♦︎♦︎♦︎

 

「なるほど、こいつが球磨川家の人間…じゃあどうして嘘ついてたんだ?」

「それを今から話そうと思っていたのでございますよ、我妻様。まず、私の名前は球磨川(はらえ)と申します。このような選別を勝手ながら行ったことをお詫びしたいと思います…」

して、と咳をした。

どうやら、長話になりそうだったので、私たちは床に座った。

え、危機感がないって?

立ち疲れていた方が戦闘に支障が出るでしょう?

というわけで。

東西東西、お立ち合い。

 

♦︎♦︎♦︎

「私はある人間を倒しうる人間を探していたのでございます。

「その男の名前は———球磨川禊。

「と言っても、あなたのことではございません。

「私の息子———名を、球磨川禊とお申すのです。

「我が子ゆえに思っているだけかもしれませんが———彼は、天才でした。

「絵を描けば大成し。

「勉学も励み。

「小説を書けば売れる。

「そんな、私とは対照的な人間だったのです。

「まぁ近頃は紫外線が苦手になったようで日中に外出することはなくなりましたが。

「私?私は———出来損ないでしたよ。何も出来ませんでした。

「だから、私は嫉妬したのです。

「嫉妬し———そして()()()()()を彼に設けたのです。

「あぁおっと…そういえば私の能力の説明がまだでしたね。

「『いざ尋常に勝負あり(フェアプレイ)』———ルールを作るスキルです。

「私はその力で、彼を縛りました。

「ここにいる禊様はすでに理解しているのでしょうか。

「あぁ、わかっていませんでしたか…失礼しました。

「私が取り付けた『ルール』。それは『球磨川禊は一生勝てない』というものでした。

「私は。

「こんな名前の人間、後にも先にも彼しか存在しないと思っていたのです。

「だから、労力を抑えるために人物指定を名前だけにした。

「それが間違いだったのです。

「まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()…。

「禊様はこれまでに一度も勝ったことがないと伺いしております。

「それは———私の責任なのでございます。

「大変申し訳ございません。

「だから。

「きっと能力の持ち主である私が死ねば、ここで全てが解決するでしょう。

「だから———

「これは、私からの切実な頼みでございます。聞き受けてもらわなくてもかまいません。無理強いはしません。

「我が子、球磨川禊共々———

「ここで全てを終わらせてほしいのです」

 

♦︎♦︎♦︎

 

「そんな重い頼みに囚われずに強者を探すために名前も明かさずこのような場を設けました。何にしろ私」

強いもので、と恥ずかしげもなく言った。

おそらく事実なのだろうな、と思った。

「は…?」

私はその簡潔な一人語りの情報量の多さに絶句していた。

球磨川の『敗北』が『性質』ではなく———『過負荷』であって、名梨野権兵衛———もとい、球磨川祓を殺すことでそれが消える?

うーん…。

こんな簡単なことでいいのだろうか。

というか、本当に治るものなのだろうか。

『いいのかい、祓さん?』『僕が生まれている時代に君は死んでいるんだぜ?』『今存在しないはずの人間に———命を差し出すなんて』『それは———すごく偽善者(マイナス)的だね?』と球磨川は尋ねる。身内だと知った途端に砕けた口調で話し始める。

お前、お爺ちゃんにそんな喋り方してんの?計算できないから何世代前なのか知らないけど…。

それと、切り返しが早すぎる…まぁ、それが球磨川の美点とも言えるが。

だが祓はにこりと微笑を見せてから「構いません」と言った。

球磨川の態度のことだろうか。それとも———

 

「少し前の話になりますが———彼は持ち前のスキルで人助けをしたそうです。私はそれを聞いて、勝たなくても、サポートしかできなくても戦ってやるという強い意志を感じました。同時に、自分の浅ましさを理解しまして…私の能力は取り返しがつかないのですよ」

貴方の大嘘憑き(オールフィクション)のようにね、と言った。

後者だった。

うーん…

想像以上に、普通以上にいい人だった。

ていうか、私だってやつあたりとかしてしまうことは良くある。そんなことで逐一、命をかけていてはいくつ命があっても足りないではないか。

まぁ、球磨川曰く『過負荷はなかったことにできない』そうなので解決策を考えるまでには至らないが…改めて自分の代入大嘘憑き(サブフィクション)への依存を感じた。少し抑えたほうがいいのかもしれない。

とにかく。

私は彼を許し『了解、祓さん』『じゃあね』『また明日とか!』

 

———え?

 

そう言って———括弧つけて、球磨川は指を『パチン』と小気味よく鳴らした。その瞬間、球磨川祓の姿は消えた。

 

———『無かったこと』になった。

 

最後の祓の表情は、笑顔だったように思われる。

「「…………。」」

いやいやいや…。

私は言いたいことを飲み込もうとして、でもやっぱり我慢できずに大きく息を吸い、そして告げる。

 

 

「お前も大概クズだな!!!」

 

 

『え?何が?』

私の叫びに球磨川は笑顔で返す。私だってさっきそれやって流石に罪悪感を覚えていたよ?

いやまぁ、やったのはやったんだけど…。

『だって、殺せって言ってたし…』『それに、僕の敗北体質が消えるんだったら万々歳だぜ?』『君たちにとってもそうじゃ無いのかい?』

「まぁ…そうだけどよ」善逸は息を飲んだ「可哀想とか思わねぇのか?」

『ん?』『なんで?』と球磨川は首を傾げた。

善逸は絶句した。

私はまぁ、体の半分が過負荷みたいなものなので免疫は生まれているものの、やはり好きにはなれない。

慣れない。

だが、私たちには仕事があった。

もう存在しない『球磨川祓』の、最後の願い。

私たちは。

「…じゃ、行こっか」

『オッケー』

「わかった」

祓の息子———球磨川禊を殺さなければならない。

私たちは覚悟を決めて———ん?

あれ?覚悟を決めたはいいものの…。

 

 

扉とかないけど、こっからどうすんの?

 

 

締まらないなぁ、と3人で笑ってからあちこちを調べ、結果それを打開したのはエレベーター付近を調べていた球磨川だった。

『あ、見て見て』『エレベーターのボタンに地下一階のボタンがあるぜ』『…でもおかしいな』『こんなボタン、前からあったっけ?』

「え?」

そう球磨川が言ったので善逸と共に見てみると、そこには確かに『地下一階』というボタンがあった。

 

「いやいや、これは普通にあったよ?なんで覚えてないの?馬鹿なの?死ぬの?…嘘だよ。()()()()()()()()()()

『うわぁ懐かしい』『その口癖久しぶりすぎて設定から消えてたよね』

「設定言うな。…まぁ、あれだよ。最近ちょっと恥ずかしくなっちゃって…」

『あぁ…どんまい』と球磨川に慰められた。

 

正直「〇〇…嘘だよ、◇◇」という台詞は私の中で黒歴史認定されている。今使ったのはちょっとしたその場のノリだ。

きっともう2度と使わない。

まぁ、それは置いておいて…。

 

どういうことだ?

さっぱりわかんねぇ。

あいにく私には学がなくてね。あるのは美学だけさ。

 

…って、あれ?

思い出そう。

登る時、いつもボタンは一つだった。

3階へ行くときには3階のボタンが。

4階へ行くときは4階のボタンしか無かったはずだ。

 

 

なのに、()()()()()5()()()()()()()()()()()()()

 

 

どうして、と考えようとした時。

「あ、あのさ」

とほとんど空気になっていた善逸が声をかけた。

かっこいい。

じゃなくて。

「どうしたの?」

「うっわかわ…じゃなくて。それってもしかして、『違和感操作』の能力が解除されたんじゃないのか?」

「あー…名梨野権兵衛が能力を二つ持ってたってこと?」

「うん。権兵衛じゃなくて祓さんだけどな」と善逸が訂正したその時、球磨川はある仮説を述べ始めた。

『———ま、捻くれ者の僕からはもう一段階嫌な答えを提唱したいけどね』

「いや?いやってどういう…げほっげほっ」

「おい、大丈夫か?」

「げっほげっほげっほ!!!!!ごほっ!!げっほげっほ!!!ごっふ!!!」

「本当に大丈夫か!?」

「ご..ごめんごめん大丈夫。続けて?禊」

『うん』と球磨川は私の心配など無しに言葉を紡いだ。…まぁこいつに気配りなんてハナから求めてないけどね。

それ以前に何も求めていない。

是非そこら辺で———底らへんですみっこぐらししていてください。

それで、球磨川の見解は何だろうか。

こいつのことだ。きっと見当外れなものだろうが、精々検討して健闘してほしい(何さまだ)。

そんな軽い感じで聞いてみたのだが———

 

 

 

『———()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だぜ』

 

 

 

うわぁ、すっごいあり得そう。

私は嫌な予感がして、背中に冷や汗をかいてしまった。これが伏線にならないことを祈る。

 

まぁ何はともあれ、頑張るぞい。

…でも。

だとしたら誰が、『いざ尋常に勝負あり(フェアプレイ)』の能力者なんだ…?

 

 

♦︎おまけ♦︎

『ねぇ、ややこしいから呼び名変えない?』

「まぁそれは私も思ってた…どうすればいいかな。なんか案ある?無いか。無いよね皆独創性ないし」

『クマーとかどうだい?』

「あ、お前の方なの?変えるのは」

「センスはともかく禊には合ってないよ」

『可愛い賢い?』

「唐突にスクールアイドルになるのはやめろ」

『えぇ…!?』『お前、優木あんじゅちゃんの良さがわからないのかい?』『それは日本男児としてどうかと思うぜ?』

「いや分かるけど今はその話してねぇだろ」

「分かるんだ」

 

 




呼び方は主人公の禊が『禊』、敵(?)の方が『ミソギ』になりました。
というわけで次回、ミソギとの対面です。
ちなみにおまけの『可愛い賢い?』への最適解は『僕は悪くない』でした。決して『エリーチカ』とか『ミソーチカ』とかではありません。なんだミソーチカって。

あ、そういえば名梨野権兵衛、センチメンタルな感情に囚われて全く気づいていませんが、誰が来たって『名梨野を殺す』という違和感を消せばいいだけの話なんですよね。まぁそれ故に最期に懺悔の時間が出来たのかもしれませんが。

クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?

  • ない
  • ちょっとある
  • めっちゃある
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