過負荷の刃   作:角刈りツインテール

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はい、嵐タイトル縛り速攻で終わりました。そんな感じで37話、始まります。ロリちゃんいい子だったのになぁ…


037 ゆらゆら。

♦︎♦︎♦︎

 

ある日の暮れ方、主人から暇を出されて途方にくれる下人が、荒廃した羅生門の下で雨やみを待っていた。

彼が門の楼上に登ると、そこには女の死体の髪を抜く老婆がいた。

憎悪を抱き、力で老婆を押さえつけた下人だったが、老婆から生きる為の悪事を正当化する言葉を聞く。

「私は悪くない」

それによって下人の心に悪を肯定する勇気が湧き「自分もそうしなければ餓死する体なのだ」といい、老婆の衣服を剥ぎ取って夜の中に駆け去ってしまう———。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「……あーあ、ロリちゃん」

胡桃ちゃんはロリちゃん———高向玄理(たかむこくろり)の姿形も残らない死体を眺めながら、そう言った。

まるで、すっかり諦めているかのように。僕はその一言に違和感を感じ、そしてすぐにあることに思い当たった。

 

『胡桃ちゃん、ひょっとして』『「怒り」を「無かったこと」にしたのかい?』

 

そう、常人なら幼少期からの友人を殺されて、ここまで冷静さを保てる筈がない。もっと取り乱していいはず、というよりも取り乱すのが普通だ。

僕のような負完全でない限りはね。

「悪かった?」と胡桃ちゃんが問う。一般に質問に質問を返すのは悪手と言われているが僕にとっては握手のようなものなので気にならない。どころか過負荷的にかなり好感を持てた。テストなら100点———あぁいや、ここはあえて-100点とでも言っておこうかな。

 

『あぁ、最悪だぜ』『最悪———だが』『だが、嫌いじゃない』

 

僕の言葉に対して胡桃ちゃんはニヤリと微笑を浮かべる。かっこよすぎだろ。うん、流石はスキルのオールラウンダー・冠石野胡桃ちゃんである。なんというか……出会った頃から思っていたことだが僕の大嘘憑き(オールフィクション)にしても芥川の羅生門にしても飲み込みが異常に早いのだ。僕が安心院さんに勝てるかもしれないと思った所以はそこである。

安心院さんに能力をプレゼントされても僕ではそのほとんどを使えないように、誰にも向き不向きがある。

 

それなのに彼女はあらゆる能力を使いこなす。異常性(アブノーマル)も、過負荷(マイナス)も。

 

正直、僕よりも『大嘘憑き(オールフィクション)』を使いこなしていると感じる時が最近増えてきた。それは実際の過負荷(マイナス)の使い方とはかけ離れているものの、かなり有意義で、そして実に頼もしい。

……いや、ほんと僕の存在意義ってどこなんだろうね?まぁ別にどうだっていいけど。そんなの、誰かに決めてもらうようなものじゃない。

 

「な……なぁ。過負荷自体を『なかった』ことにすることって…出来るんだっけ?」善逸が声を震わせながら聞く。

『うーんと』『それは無理だね』

「…だよなぁ」善逸ちゃんが分かりやすく落胆する。

『だけど』『相殺することなら出来る』そう言って僕は笑う。普段通りな爽やかな笑みを。善逸は首を傾げる。

相殺、とは一体何の話かと言われば答えは単純、冠石野胡桃のことである。彼女の本来の能力は『付便な印撮機(トランシエンス キャパビリティ)』。コピーをする能力なのだ。自分では『こんなのは劣化品ですから』と謙遜しているものの、現物との違いはほとんど誤差と言って過言ではなく、それはどうにかすると、もしかすると安心院(あんしんいん)さんにも対抗できるのかもしれなかった。

『……ま、その「どうにかすると」ができないから困ってるんだけどね』

僕は誰に言うわけでもなくそう呟き、そして見上げた。

 

芥川龍之介を、そして冠石野胡桃を。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「あっ———複製能力か!」善逸がようやく『相殺』の意味を理解できたかのような口ぶりで言った。いや本気で分かってなかったっぽいなこいつ。

『おいおい勘弁してくれよ』『その推理力でよく僕の相棒をできているね?』

「いや、お前の相棒はしてない」

『そんなバナナっ!』僕は美少年探偵団の美脚顔負けの美しいフォームで駆け出した。そして飛び上がり。

『———「却本作り(ブックメーカー)」』

いつも通りに、芥川龍之介の胸を目掛けて螺子を差し込んだ。

螺子伏せた。

はずだった。

「———温い」

『!?』

はらりと螺子が落ち、地面にぶつかって金属音がする。今何が起きたのか、僕には全く見えなかった。あれは…そう。まるで、()()()()()()()()()()()ような...。疑問が僕の頭の中をぐるぐると巡る。芥川はそれに気がついたのだろうか、質問もしていないのに答えを出してくれた。

 

 

(やつがれ)の能力は『羅生門』。あらゆるものを断然する———それは空間も同じこと」

 

空間断絶。なんてカッコいい響きなんだ。

これには素直に驚いたと言う他あるまい。弾丸のような速度の螺子を受け止めるとは…ていうか、それ自体能力云々の問題ではなく、反射神経がとんでもない気がする。どれだけ練習すればそこまでの極地に至るのだろうか……やれやれ、この世にはまだ化け物がいっぱいいるんだなぁ。

……もし、スキルを断絶できるとすれば…いや、流石に無理か。安心院さんの前では動体視力なんて何の意味も持たないし、きっと倒せない。僕は再び失望した。ここにもいない。なら一体どこにいけば———

『———にしても』『君、いつから鬼になってたんだい?』

「え?」

僕が何の気なしに尋ねたら芥川とは違う人の声が聞こえた。先程から芥川のスキルをコピーしてふわふわと浮遊している胡桃ちゃんである。

そう、芥川は明らかに鬼になっていた。善逸だって、僕だって分かっているからここにいいる全員が分かっているものと思っていたが、これはどういうことだ?

「え、うそこいつ人間じゃん」

初めはいつもの冗談かと思った。だが胡桃ちゃんの顔を見れば見るほど、彼女が本心を言っているようにしか見えなくなる。

「何言ってんだよ、冠石野ちゃん…ありゃどっからどう見ても鬼だろ」善逸も僕に肯定する。そりゃそうだ。だってこんなに禍々しい様子の男が人間なはずがないだろうに。一体何を———あ。

『…違和感操作、か』僕は不意に気がつく。違和感使いである弓月君也は、僕の視線を受けて爽やかに笑った。なるほど、彼は一度胡桃ちゃんに敗北している。しかも外道な方法で。あ、外道の『道』って方法って意味なのかな……まぁいいや。だから弓月くんは胡桃ちゃんを警戒している。芥川を『人間』と思わせることで油断させて———といったところだろうか。

そして恐らく大勢の『違和感』を操るよりも一人のを操るほうが精度が高くなって、バレにくくなるのだと思う。そうでなければ僕らにスキルをかけない意味がない。

『なかったこと』にするまでもないね。

その根拠に俺たちがどれだけあいつは鬼だ、と言っても『は?何言ってるんですか、ついに人間と鬼の違いもつかなくなりました?可哀想に……嘘です、別に可哀想だなんて思ってませーん』と謎に過去のキャラクターに戻ってまで全力の煽りをしてきている。

ほんと、よく無限列車で我慢できてたよね、僕……。

「ま、別に鬼とか人とか関係なしに殺すけどね」

「———え」

これは僕でも善逸ちゃんの声でもなく———弓月くんの声。

目を大きく見開いていた。

『ふふふ』『人間だと思わせていたことで油断したな!』『だが残念!甘い!いちごミルクのように甘ったるい!』『こいつのクズさをなめるなよ!低脳が!』

「何でお前がそんなイキれるの!?被害が及ぶのこっちなんだからな!?」善逸が僕の煽りを必死で止めようとする。が、僕は止まらない。

『そうやっていつも安全圏から呑気に戦いを見ているんだろう?』『だから胡桃ちゃんの奇襲にも気がつかないのさ』『だから君はいつまで経っても弱いままだ』

「いや、私の話なんで知ってんの」

「確かに」

横と上で何か聞こえたが気にしない。

『本当に君は甘ちゃんだね。だが———』『その甘さ、嫌いじゃな』

「砕け散れ」

僕のはいつもの決め台詞を中断した。理由は簡単、それどころじゃなくなったから。

「ひっ———」善逸が僕の顔を見て小さな悲鳴をあげる。えっ何僕の顔そんなに不細工?…って、まぁ何を見て怖がっているのかなんて分かりきっているけどね。

 

「禊———!」

「球磨川ッ!」

 

 

『あ———あれ』『なんだこれ』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そりゃあ誰だってビビるよね。うん、仕方ない仕方ない。僕は君たちを責めるようなことはしないぜ。

ってことは、またあの人と会うことになるのかな……はぁ、やだなぁ。全然安心できねぇ。

 

『……それにしても』

また勝てなかった。

そう言う前に僕の足が砕けて立つことが困難になり、どさり、と地面に倒れる。

二人が何かを言っているのが聞こえたがそれも段々聞こえにくくなり、そして視界が霞む。

これが一体どういう目的だったのか———それは彼の冷静さを欠くことである。どうしてロリちゃんたちの『違和感』、そして『ルール』が敗れたのか。 僕はそこに意味を見出した。冷静さ。それがキーポイントなのではないか、というのが僕の根拠のない考察だ。……まぁ、そのせいでこうなったんだけど…てか、なんで違和感操作でこんなことができるんだ?

何か違和感がある気がするが、まぁ何はともあれ。

 

 

『あとは……よろしく』

 

最後にそう念じ、僕は意識を失った。




安心院さんの!これで安心ステータスまとめ!

・球磨川禊
劣化大嘘憑き(マイナスオールフィクション)
全てを無かったことにする過負荷(マイナス)大嘘憑き(オールフィクション)が弱体化したもので、今は幸せになりすぎたことで他人の死を無かったことにできなかったり正確性に欠けていたりと色々面倒が多い。
却本作り(ブックメーカー)
螺子を差し込んだ相手のステータスを球磨川と同レベルにする過負荷(マイナス)。球磨川曰く『最近受け止める人が多くて困っている』

そのほかの攻撃方法…嘘の呼吸
1 戯言
2 虚いゆく景色
3 嘘八百
4虚影心
5 無味魍魎
6 裏切(うらぎり)
7 嘘月

・我妻善逸
①過去の明星
死者を体に憑依させる異常性(アブノーマル)。前はよく使っていたが彼自身が強くなった今、使い所はほとんどない。甘露寺を憑依させたのが一番最後の使用。善逸曰く「なんか使うと罪悪感がある」

そのほかの攻撃方法…雷の呼吸

・冠石野胡桃
付便な印撮機(トランシエンス キャパビリティ)
カービィの上位互換みたいなコピー能力。目を合わせるだけで複製が可能。多少劣化するものの、本物とほとんど変わりない。また、コピーした能力を消すことはできない。冠石野曰く「覚えるのが大変」
〜以降、コピーしたスキル〜
代入大嘘憑き(サブフィクション)
大嘘憑き(オールフィクション)をコピーしたもの。劣化のため他人の死は無かったことにできないものの、現在の球磨川よりは強い。
銃版(テンプレート)
10個の銃を形成し浮遊させるスキル。劣化のため時々6個だったりする。弾丸は無限に湧いてくる。
差異欠陥(モーターパンク)
『異常』を生み出すスキル。正直あんま使わないので詳細不明。
⑤血鬼術 羅生門
服を刃や竜にする血鬼術。その刃、牙はあらゆるものを切り裂き、空間でさえ断絶できる。

そのほかの攻撃方法…糸(日輪刀と同じように日光を吸収した特殊な素材からできている)

クロスオーバー作品としてそれぞれのキャラに違和感はありますか?

  • ない
  • ちょっとある
  • めっちゃある
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