ミドリが初めてシャーレの当番になる話   作:のりし炉

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09 少しだけ変化した日常

ミドリ「……んん……ここは、もうちょっと……ぼかし、て……」

 

モモイ「食らえ! の~みそコネコネぇ――アターーック!」

 

アリス「頭部の部位破壊を確認! 目標も既に瀕死のようです!」

 

ミドリ「……あ、ここ線切れてるじゃん。もう……」

 

モモイ「むむ! アリス二等兵、目標は我々に背を向けて逃走した! 我々も(まん)(しん)(そう)()だが、敵前逃亡は許されない! 追撃だぁ!」

 

アリス「はい隊長! アリスたちの手で、里を守りましょう!」

 

ミドリ「……」

 

モモイ「あ、でもその前に尻尾()ぐの忘れないようにね。あと落とし物」

 

アリス「わかりました隊長!」

 

ミドリ「…………ねえ、お姉ちゃん」

 

モモイ「んん? なぁに〜?」

 

ミドリ「ちょっと休憩~って言ってから、もうだいぶ遊んじゃってるけど。次の部内コンペほんとに大丈夫なの? あと三日しかないよ?」

 

モモイ「え~? 大丈夫大丈夫! ミレニアムプライスの時だって六日で完成まで行けたんだし、その半分もネタ出しだけに貰えるんならもうヨユーでしょ、ヨ・ユ・ウ!」

 

ミドリ「ああ、崖っぷちの成功体験が姉をダメにしている……」

 

モモイ「私、やればできる子だから!」

 

ミドリ「それは基本やらない子の(じょう)(とう)()なんだよ、お姉ちゃん……」

 

(トントン)

 

モモイ「んん? 誰だろ? ――あ、ごめんミドリ、ちょっと出てくんない? マルチだと一時停止効かなくて」

 

ミドリ「……しょうがないなあ、っと。もう……はぁーい?」

 

(ガチャ)

 

ミドリ「あれ、カリン先輩」

 

カリン「やあ。邪魔するよ」

 

モモイ「――ん、カリン? え角楯カリン!? メイド部!? なんで!?」

 

アリス「ひぃっ!?」

 

(ヒューン)(ガチャ)

 

ユズ「ひえっ!? え、あ、アリスちゃ――むぎゅ」

 

(バタン)

 

モモイ「えええっ!? ちょ、アリス!? 里の未来は!?」

 

ミドリ「わ、ユズちゃんの入ってたロッカーに無理やり――あ、お姉ちゃん死んじゃうよ」

 

モモイ「だえっ!? ウソっ、あっヤバ――」

 

【モモタローが倒れました】【報酬が0zになりました】【クエストから帰還します】

 

モモイ「ぎゃーーーー!!」

 

カリン「……すまない、もしかして本当に邪魔だったか?」

 

ミドリ「いえ、あれは四字熟語をランダムに体現するトレーニングでして。今日のお題がたまたま『因果応報』だっただけなので、気にしないで下さい」

 

カリン「? ……そうなのか?」

 

ミドリ「ええ。お姉ちゃんはああ見えてもウチのシナリオライターなので、一見ただ遊んでいるように見えても、常にゲーム制作のことを考えているんです。いやーさすがお姉ちゃんだなー尊敬しちゃうなー」

 

モモイ「……はい……いい加減作業に戻らせて頂きます……」

 

カリン「……」

 

ミドリ「それでその……今日は、どうされたんですか? 廃部の事なら、まだ期間には(ゆう)()があったと思うんですが……もしかして、また何かトラブルでも……?」

 

カリン「……いや、そっちの方は何も問題ないよ。そもそも私はもう生徒会(セミナー)じゃないし、用事もゲーム開発部じゃなくて、ミドリ個人にね。……はい、ありがとう。面白かったよ」

 

ミドリ「え、わ、もうクリアしちゃったんですか? これそんなに短いゲームじゃなかったと思うんですけど……と、こっちの紙袋は?」

 

カリン「ほら、前にシャーレの帰りで寄ったカフェ。あそこでこっちのカップケーキも食べたそうに見てたの覚えてたから、適当に何個か見つくろってきたんだ」

 

ミドリ「あ、これ『ミルフィーユ』のですか!? うわあ、すみませんわざわざ……!」

 

カリン「ううん、ただのお礼だよ。買ったのは昨日なんだけど……焼き菓子だし、生クリームとか使ってるのは入ってないから。良かったらみんなで食べて」

 

ミドリ「あ、ありがとうございます! ……あの、私が言うのも何なんですけど、お仕事とかお勉強とか、大丈夫ですか? 無理されてませんか?」

 

カリン「いや……それがほんと、笑っちゃうくらい大丈夫じゃなくて……」

 

ミドリ「えっ」

 

カリン「ああいや、仕事は別に大丈夫なんだけど。成績の方がどうもね……最近は先生に無理を聞いてもらって、放課後によく補習受けてるんだ」

 

ミドリ「……じゃあ、これからシャーレに?」

 

カリン「いや。今日は先生、午後から外回りだったみたいで。ちょうどミレニアムにも用事があったらしくて、今からこっちで教えてもらう予定」

 

ミドリ「先生が来てるんですか? ウチに?」

 

カリン「うん、さっき連絡が来たよ。先に図書室で待ってるって」

 

ミドリ「そ、そうですか。そうなんですね……へえー、ふうーん……」

 

カリン「……一緒に来る?」

 

ミドリ「いいんですか!?」

 

カリン「ふふ、うん。ミドリならいいよ」

 

ミドリ「や、やった……あ、私タブレット持っていきます! ちょっと待ってて下さい……あ、お姉ちゃんこれ、カップケーキ。美味しいとこのヤツだよ。後でちゃんとお礼言っときなよ」

 

モモイ「ぅえ? あ、ありがとう?」

 

ミドリ「もう、私に言ってどうするの。カリン先輩にだよ。……じゃあ私、図書室で作業進めてくるから。ゲームばっかりしてないで、ちゃんとプロット考えといてよね、絶対だからね。……すみませんお待たせしました、行きましょう!」

 

カリン「ああ。……邪魔をしたな、少しミドリを借りていくよ。何時間かしたら返しにくるから」

 

(バタン)

 

モモイ「……」

 

(ガチャ――ギィィ)

 

アリス「……行きましたか? もう強制エンカウントは終わりましたか?」

 

ユズ「うう……つ、潰れるかと思った……」

 

モモイ「ああ、うん。なんか、ミドリも一緒に出てっちゃったけど……」

 

アリス「……ミドリも? ど、どうしてですか?」

 

モモイ「今ウチに先生が来てて、そっちで作業進めてくるって。でもあの子、いつの間にカリン先輩とあんなに仲良くなったんだろ……?」

 

アリス「……! モ、モモイ! もしかしてミドリは、メイド部から洗脳を受けているのでは!?」

 

モモイ「せ、洗脳!?」

 

アリス「はい……! このままだとミドリは、ゲーム開発部を抜けてメイド部の新しいエージェントに……!」

 

モモイ「そ、そんなのダメ! ミドリは大事なゲーム開発部の仲間で、私の妹なんだから! そんなこと絶対にさせない!」

 

ユズ「え、ええ……? でもこの前、シャーレの当番でカリン先輩と一緒になったって言ってたよね。わたしたちの新作もすごく褒めてもらえたって言ってたし、そもそも洗脳なんて――」

 

アリス「! そ、それです! きっとそれは罠で、ミドリはその時に洗脳を受けたんです!」

 

モモイ「うう……こうしちゃいられないよ! 私たちも図書室に行こう! ミドリの目を覚まさせなきゃ!」

 

アリス「はい! みんなでミドリを連れ戻しましょう!」

 

ユズ「ええっ? わ、わたしは――ひゃあっ!? まっ待ってアリスちゃん、こんな米俵みたいな、担いで持ってこうとしないで――!」

 

(ガチャ! ――バタン!)

 

 ……こうして図書室で大騒ぎしたゲーム開発部一行は、当然図書委員の生徒に注意を受け、つまみ出されてしまい。

 特にモモイは「なんであんなことしたの!」とミドリにまで怒られ、しばらく口を利いてもらえなかったのだった。

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