ハーメルン内では最初のウマ娘作品とウルトラマンのクロスオーバーになります。
この新雪を踏む感じがなんとも好き。
とんちきな作品ですが、楽しんで頂けば幸いです。
どうぞ。
「マヤノ~~~! 用意はいい!?」
5月の気持ちいい陽気に包まれた練習用のトラック、そのゴール板近くの観客席から女性が声を張り上げる。
話しかけられた相手、遠くからでも識別できるほど眩しい栗毛の髪の女の子、マヤノトップガンはトラックのコース沿いで4ハロン(約800メートル)先の距離に佇んでいたが難なくその声に反応しこちらに向かって手を振っていた。
「大丈夫…みたいね。 いくわよ~~~!! ヨウイ……ドンッ!!!」
その合図を同意だとみなした女性はまたしても大きな声でスタートの合図を出す。
すると手を振っていた栗毛の女の子は合図と寸分狂うこと無く好ダッシュを決め走り始めた。
その速度はみるみる加速していく。
残り3ハロンの位置に到達すると同時に女性は手に持ったストップウォッチを押し、同じタイミングで走っている女の子もラストスパートをかけた。
一人とは思えぬ迫力を帯びたその走りに女性は目を奪われながらもその様子を冷静に、見逃さないようにしっかりと観察を忘れない。
やがて間もなく女の子がゴール板を駆けぬけたと同時に女性はストップウォッチを止め
た。
そしてあれだけのスピードで走り抜けたにも関わらず、マヤノトップガンは軽く息を整えると人懐っこい笑顔で女性の元へと駆け寄ってくる。
「ねえねえねえトレーナーちゃんッ! マヤの今の走りどうだった!?」
「凄い良かったわ! 見て! なんと新記録を3秒も更新よ!」
「いぇ~い!! トレーナーちゃん褒めて褒めて!」
「……あ~~もう可愛い!」
「わ!?……えへへへ♪」
好成績を残せたことに機嫌を良くしたマヤノトップガンのトレーナー、ヤナセ・レナは彼女をターフと観客席との間の柵を越しに抱え上げるとそのまま子犬を撫でるように抱き締め頭を撫でまわす。
マヤノトップガンは小柄な体格とは言え女性である自分のトレーナーにこうも軽々と持ち上げられるとは思わず驚きこそはしたが直ぐにそれを受け入れ、気持ちよさそうな表情でそれを受け入れていた。
それに連動するかのように、耳はぺたんと横に倒れ、尻尾も無意識のうちに揺れ動く。
それでも油断なく強かな彼女はこの非常に上機嫌になった自分のトレーナーに今度こそ聞き入れてもらいたいお願いをしれっと頼み込んでみようと画策し、タイミングを見計らって行動に移した。
「ねえねえトレーナーちゃん! マヤ、頑張ったご褒美がほしいなぁ~」
「なぁ~に? なんでもいいわよ~」
目を細め気持ちよさそうに彼女を撫でるレナトレーナー。
しめしめと心の内で笑うマヤノトップガン。
「あのね! マヤ、トレーナーちゃんが乗っていた戦闘機に乗せて飛んでほしいなぁ~!
「ん~~~だめぇ~~」
「えええ! さっきなんでも良いって言ったじゃん!」
それは傍から聞く分には奇妙な会話であった。
マヤノトップガンは年少ながら非常に聡いウマ娘である。
若干夢見がちな所はあるが現実が見えてないわけではなく、ましてや戦闘機に乗せて欲しいなどという非現実的なことを言う子ではない。
そしてそれに受け答えするレナトレーナーの答えもそうであった。
彼女は「無理」ではなく「駄目」と言ったのだ。
まるで乗せることが出来るような物言いである。
「ぶーぶーぶー」
「そんな顔してもだ~め。 飛ぶのはダメだけど今度文化祭で機体の展示をするの。 その時は特別にコックピットに乗せてあげるからそれで許して」
「ほんと!? 今度こそ約束だよ!?」
「ほんとほんと。 お姉ちゃんが嘘ついたことあったかしら?」
「さっきついた・・・・・あはははっはははははは!!? と、トレーナーちゃん! くすぐっちゃやだ~~~!」
「大人をからかう悪い子にはこうだ~! 待て~~!」
突然のくすぐり攻撃に驚きトレーナーから逃げ出したマヤノとそれを追いかけるレナ。
抗議を申し立てるマヤノトップガンであったが相手はまだ20代前半とは言えこの世界の住人が経験したことのないような場面と真っ向から対面してきたエリートでありツワモノである。
マヤノの可愛らしい抗議を涼し気に受け流し、かつ落としどころを提示し問題を鮮やかなに終決させた手腕はベテラントレーナーにも見劣りしない見事な手腕であった。
ここは日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。
馬のような耳と尻尾を有する女の子、ウマ娘たちが通う学校であり、生徒たちは日々の生活を此処で過ごし、馬に匹敵するその身体能力を生かしたレースに活躍できるよう努力している。
学園は東京府中市に存在し、その敷地面積は東京都内有数の広さを誇る。
というのも、ここは中高一貫の学校という側面も持ち合わせており、校舎らしい建物のすぐそばには競馬場さながらのレース場の他にも練習用の各種施設がそろっているなど、他の学校とは比べすこし奇妙な様相を呈している。
だが、それでは説明がつかないような更に奇妙なものが存在した。
マヤノとレナが走り出していった方向、先ほどまで二人が使用していた練習用トラック場の隅っこには明らかに校舎とは違う銀色の建造物]
があった。
見た目はクジラのように見えなくもない銀色の物体。
全長は150メートル程もあり、オブジェとしても学校施設としても非常に似つかわしくない。
見れば見るほど理解に苦しむこの物体、これをみて
しかしそんな者でもこの物体が空に浮かび、あまつさえ宇宙空間ですらも航行できるとは露ほども思わないであろう。
それほどこの世界では非常識な存在である母船、艦名は機体側面に英表記でこう記されていた。
「ARTDESSEI」