そこは見知らぬ世界でした……なのorz 作:dslprojecter
「報告しなさい」
「はっ、南雲ミュウともう一人の異世界人と思われる人物がダンジョン攻略に動きました。一部始終を観察していましたが、有り得ない事ばかりでした。」
「簡単で良いからに言ってみて」
「はい、何も無い処からいきなり聞いていた護衛が出現したり、投げたナイフが手元に戻ってきたり、17階層のゴライアスを鍛冶と魔法を組み合わせた様な武器で攻撃、両腕を落としたのちゴライアスは逃走、土下座したのちに薬品を振り掛け両腕を繋げ巨大な魔石をゴライアスより進呈されました」
「魔物が魔石を進呈って……なにか要領を得ないけど、もう何でもありなのね。……はぁ、魔王が溺愛する娘だから何が出てくるかわからないわね」
「フレイヤ様、対応を間違えれば一大事どころでは無いと具申します」
「そうね、とりあえずロキのトコロの様に友好から始めないと駄目かもね。オッタル、観察はもういいわ。ガリバー兄弟を南雲ミュウへの牽制に友好関係を築かせなさい」
「はっ」
恭しく一礼をして去っていくオッタルを眺めた後、月明かりを眺め今後を憂うフレイヤ。
「……神殺しの魔王ねぇ」
不敵な笑みを浮かべつつも、思い通りにはならないだろう事は明白である。ならば被害を最小限に抑えるべく動くしかない、と思案に耽る。南雲ミュウを身近に置ければ良し、但し魅了を使った場合、溺愛している娘が神に魅了されたと魔王に看破された場合、被害甚大果ては自身の消滅まであるだろう。フレイヤは月明かりの中、テーブルにあったワインを一口嗜んだ。
☆☆☆☆☆
ゴライアスから貰った魔石を意気揚揚と掲げ、ミュウ達はギルドへと戻ってきた。途中、何を勘違いしたのか他の冒険者が幾人か「売って欲しい」と言ってきたのだが、実売価格がわからないのでギルドで買い取りして貰う事にした。
余りにもその幾人かがシツコイのでちょっとだけビリビリして貰ったのだが、日本に居た時でも色々なトラブルを引き寄せて居たので対応はバッチリであった。
「優花お姉ちゃん、コレってパパにあげると喜ぶかなぁ?」
「確かに……南雲は珍しいモノに目が無いし……ただ、今は私達の現状の生活維持が先ね。南雲ならもっと良いものも手に入れられるだろうし……」
ミュウ達は替えの衣服も無く明日の食費にも事欠く現状を打破しなければ、普通の生活など出来ない。使い続けていれば優香の持っているナイフですら錆や劣化が起こるだろう。ミュウにしてもいつまでも同じ服を着ていたら綻びが目立ってくる。
二人は女の子なのだ。新しい服も着てみたいし、大好きなパパの前では可愛く在りたい、と願っている。そんなこんなで換金後は衣服や武器等を買うため、ショッピングを楽しもう、と意気投合していた。
階段を上がった先にはギルドの受付が見えていた。周囲には数多の冒険者が立ち並び、一斉に……ミュウ達を凝視していた。
それもそのはずである。
魔石は巨大でミュウ達にはとても持てるモノでは無く、かと言って宝物庫に入れるには冒険をした後の気分的に嫌だった。では魔石を持っているのは誰だろうか?
ーガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、キュイーン、グルグル
そう云わずと知れた多脚砲台のさーちゃんだ。しかも1体だけで無く、7体全てがミュウ達の周りを警戒していた。それもこれもビリビリさせた冒険者達の賜物であった。シツコイ冒険者を排除したのは良いが、今後、この手の手合が出ないとはいえず、まぁ、しょうがないよね、となったのだ。
優花は気にしたら負けだ、と冷や汗が背中を伝い、ミュウはおっきな魔石、どーだ、と言わんばかりに胸を張っていた(慎ましい胸ではあったが)。
「買い取りお願いしますなの〜」
ミュウは受付の女性を捕まえて魔石の買い取りをお願いした。しかし、女性には別の疑問が頭を過ぎった。
「えーと、南雲ミュウちゃんでしたよね。たしか昨日、冒険者登録したばかりでしたよね?そちらは今日、登録したばかりの園部優花さんですよね?その魔石はどうされたんですか?」
「「?」」
二人は受付の女性が何を不審がっているのかがわからなかった。それもそのはず、一般的なレベル1の冒険者は大抵、5階層くらいまでが攻略出来る階層なのだ。間違っても17階層には行かないし、行けないはずである。また、数多いる普通の冒険者は魔物を土下座させてから、魔石を譲渡もされる事は一度として無いだろう。それら全てを二人が理解出来たのは、受付女性とのやり取りの後であった。
「ボスから貰ったの〜」
「はっ?……すいません、聞き間違えたかも知れないので、もう一度お願いします」
「ボスから貰ったの〜」
「…………すいません、園部様、詳しくお聞かせ願いますか?」
「たはははっ」
流石にミュウちゃんの説明では理解出来ないだろう、と空笑いを浮かべた優花。
「実は17階層のボスから進呈された魔石なんです。まさかボスが土下座するとは思わなかったので……たははっ」
「はっ?土下座?誰が?」
有り得ない事を平然と言っている事に気付かない優花と受付嬢との温度差。そして聞き耳を立てていた周囲の冒険者達。
嘘だろ、アリエネェ、夢かな?と現実逃避さながらにざわめきが周囲に湧き立つ。
「って言うか、17階層ってなんです?何故、レベル1の冒険者がそこまで行ってるんですか。有り得ないですよ、死んだらどうするんです」
受付嬢、激おこを通り越して激おこぷんぷん丸でした。ここにきて漸くミュウ達にも理解出来た。そういえばミュウは昨日、優花に至っては今日、冒険者登録したばっかりだった、と。
「あー、すいません」
優花は素直に謝った。ミュウは何故?と不思議な顔で首を傾げた。
「ここのモンスター、オルクスに比べて弱っちぃの〜。雑魚なの〜」
ミュウに悪気は無かった。但し、周囲の冒険者、受付嬢からはドン引きされ人外認定されてしまった。