そこは見知らぬ世界でした……なのorz 作:dslprojecter
ミュウ達はヘファイストスに連れられ、ヘファイストスのギルド兼武器・防具店に半ば無理矢理、連行されていた。
「そこらにある武器とか見ていても良いわよ。その代わり後でミュウちゃんと貴女の事を少し聞いても良いかしら?」
ミュウと優花はお互いを見合わせ、この世界に召喚された原因を探す為にも、他の神ともコミュニケーションを作りたい、と思っていたので頷きあった。
「わかりました、なの〜」
「話せる事なら大丈夫です」
ミュウはもの珍しいのか武器の色々商品棚を見廻していた。優花は今後の為にもナイフの補充を念頭に置き、手頃なモノを探そうかと見ていたが、有り得ない金額が見えていたので躊躇していた。
「あの〜ヘファイストス様、なんか平気でナイフ一本3千万とかするんですが、もっと安いナイフは無いですか?」
「それなら鍛冶師見習いの子達が造って販売してるトコロがあるわね。案内させるわ」
優花はミュウに用事を済ませてから戻ると告げ、ギルドの販売員に連れられ部屋から立ち去っていった。ミュウは空気が読める子である。ここで自分も、と言ったら一人残されるヘファイストスが凹むのは目に見えて想像出来た。
「お姉さん、ここにある武器でどんな事が出来るんですか?なの」
ヘファイストスはミュウが話しかけてくれた事には喜んだが、ナニカ質問が可怪しい。どんな事?魔物を倒す以外無いでしょ、と極々、一般的な事を思った。
「?……魔物を倒して魔石を得る事が出来るわ。因みに今、ミュウちゃんが見てるのは
「魔物を倒す
魔物倒す以外に武器って必要なの?ミュウちゃんが言ってる事がわからない。オラリオの極々、一般的な知識で考えていたヘファイストスは武器とは、軽くて丈夫、壊れにくく魔物を容易く倒せるモノ、超重量で圧潰したりするモノである。けして魔物以外を倒す事に使うモノでは無い。
「魔物を倒せれば問題ない、と思うわ?」
ミュウの言おうとしている事が理解出来ないヘファイストスは、オラリオでは魔物を倒して魔石を得て生活出来れば充分だろう、と考えていた。むしろソレ以外ではギルド同士の抗争程度でしか使用しない。
「雫お姉ちゃんのは空間斬ったり、相手の意識切れる、なの」
「…………」
「シアお姉ちゃんのドリュッケンには色んな神様が入ってるの〜」
「…………」
ここに来てヘファイストスはヘスティアが言わんとしていた事が、真の意味で理解出来た。異世界……オラリオの常識が全く通用しない、という事を。もしヘファイストスが自分達が使う武器に他の神を宿らせたとしたら、宿らせた神から盛大な報復が待っているだろう。また武器で空間を斬ったり、相手の意識を切るというのは既に神の力の行使をしなければ不可能だろう。しかもヘファイストス自身の鍛冶能力だけでは到底なし得ず、他の神との共同合作が常である。
宝物庫って、その程度だったのね、という軽い落胆がヘファイストスを襲っていた。因みにハジメは宝物庫の中に既に『箱庭』を作っていたりする。それを知ったヘファイストスがどういう反応をするのか見てみたい、とチラッとミュウは思っていた。
「パパは宝物庫に箱庭作ったの〜」
「箱庭ってなに?」
「お空と山とか海とかいっぱいなの〜、龍とか妖精も住んでいるの〜」
「…………」
なんか世界の創造めいた事を言い出したミュウ。おそらくヘファイストスが考えている事に間違えはないだろう。ミュウちゃんのパパは魔王じゃなくて魔神、いや異世界転移出来るというのなら超越神か。魔王以上でしょ、と不意にヘスティアを殴りたい気持ちで満たされていた。
「因みにミュウちゃんと優花さんはどんな関係なのかしら?」
ナニカ疲れる事でもあったのだろうか、ヘファイストスの声には梁がなかった。
「優花お姉ちゃんはパパの愛人さんなの〜」ガクッ
優花ちゃん、お前もか。この二人を保護しなければ後が怖い。そしてコレ以上、ミュウちゃんの話の先が怖くなったヘファイストスである。優花早く戻ってきて。タイミングが良いのか、丁度、買い物を終えた優花が戻ってきた。ヘファイストスには優花が天使に見えた瞬間だった。
☆☆☆☆
ミュウとヘファイストスが話をしている間に、武器の補充を済ませた優花が戻り、ヘファイストスの自室を退室した。そしてミュウを伴って衣服を購入しようと市場へ向っている最中の出来事であった。
「犬、お手」ペタッ
「おすわり」スタッ
「…………」
この時点で皆さんには予想がついただろう。実は魔法少女になったベートは精神的治療の為、ギルドに通って来ていたのだ。あたかも神に懺悔する敬虔な教徒の様に。そしてギルドへと向かうベートと
市場へ向かうミュウ達、すれ違う様にお互い対峙した出来事である。
ミュウを見たベートは自然に「お手」をしていた。周囲には数多の冒険者や商人、市民が未だに居たのにである。うん、壊れてるね。
「……ベート」
治療の付き添いにはリヴェリアが付き添っていたのだが、相手がミュウであり、この間の件に関しても一方的に悪いのはベートであった。現状成すすべもなく躾けられているベートを残念に思うしか無かったのだが、ミュウの隣の優花を見咎めたリヴェリアが助けを求める眼差しを優花に送った。優花はリヴェリアの眼差しを受け、ミュウを止めに入った。
「ミュウちゃん、そろそろ行こっか。色々と用意しなきゃいけない物もあるし。今度、一緒に遊べるよう、この人に頼んでみようよ」
優花は何気にリヴェリアを巻き込みつつ、現在の事態の収拾に罹った。死なば諸共の精神である。リヴェリアは仕方ないとため息を尽きつつも笑顔で対応を決め込んだ。
「了解した。今度、ロキ・ファミリアに遊びに来ると良い。案内してやろう、私はロキ・ファミリアの副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ」
「私は園部優花って言います。今はヘスティア・ファミリアです」
「ミュウもヘスティア・ファミリアなの〜」
「ミュウちゃんは有名だから知っている。君の事は今、知った。一応、聞くがヘスティア・ファミリアは団員は君達だけで良いのか?」
リヴェリアはミュウの頭を優しげに撫でながら優花に問いただす。ミュウは気持ち良いのか、はたまたリヴェリアがママ(レミア)に似た感じを醸し出しているのか、目を細めてリヴェリアに張り付いていた。
「今後はわかりませんが、そうですね。何があったかは聞きませんが、今度伺います。見るとミュウちゃんも貴女と離れたくなさそうなので。ミュウちゃん、今度、このお姉ちゃんのトコに遊びに行くから、今はやる事をやろう。その時は宜しくお願いします」
優花は日本人特有の挨拶を返し、リヴェリアも頷いた。ミュウだけが名残り惜しそうではあったが、気を取り直し優花と市場へと消えていった。
リヴェリアは去っていく優花達を見届けてから、ベートへ向き直り哀しげな眼差しを送った。未だにオスワリをしているベートであった。