そこは見知らぬ世界でした……なのorz 作:dslprojecter
「ミュウちゃん、こっちも可愛いよ」
「いっぱい可愛い服があるなの。優花お姉ちゃんも似合ってるの。一つのに決められないの」
「お金に余裕があるからちょっと多めに買っても大丈夫だよ。我慢しないで買おう」
「ハイなの〜」
ミュウ達は色々な店を見廻りながら、必要な物を購入していく。ヘファイストスの武器屋に始まり服屋、パン屋、化粧品、医薬品と。最低限とはいえ荷物は嵩張っていたが、そこはデモンレンジャーの出番だ。二人には抱え切れない荷物でも7体のデモンレンジャーが居れば問題は無い。但し、周囲の視線はかなりイタかった優花は完全にミュウだけを見て話をしていたりする。
買い物は宝物庫に隠せば確かに問題は無い。だが買い物をしたという事実とストレス発散は別である。意外にもデモンレンジャーは購入した物を喜んで運んでいた。あたかも戦利品を持って行くような足取りで。ナニカ違わないか?
二人は一通りの買い物を楽しんだ後、ヘスティアの居るバイト先へと向かう。その頃には流石にデモンレンジャー達にお別れをして、荷物とともに宝物庫に戻ってもらっていた。
「ヘスティア様はちゃんとバイトしてるのかなぁ、なの」
「大丈夫じゃないかな?案外、しっかりした神様のようだし、エヒトみたいな傲慢な神様でないだけマシだと思うよ」
「ヘスティア様、優しそうなの〜」
「私達は運が良かったかもね」
「ハイなの〜」
そんな二人を物陰から観察する数人。
「アレが目標か」
「油断するな、冒険者登録前でガレス・ランドロックを一撃で意識不明にし、更にはベート・ローガを再起不能手前まで追い込んだヤツだ。事前の首尾通りいくぞ、それが我らに与えられた使命だ」
数人は頷き合い、ミュウ達との距離を縮めていく。そして他にも一組がミュウ達を眺めていた。
「アレが南雲ミュウか。我がギルドに欲しいな」
「ですが神ヘスティアの言葉では手を出してはならぬ、と」
「ただの戯言だ。他にもう一人いるようだな。やり方は任せたぞ」
「はっ、畏まりました」
恭しく一礼をし男はその場を離れる。残された者の瞳は、ミュウに叶わぬ恋をしている様であった。そしてミュウ達を含め全てを見渡せる場所に別の男女が見下ろしていた。
「ふむ、どうやら騒がしくなりそうだね。ヘスティアがあんなわかり易い嘘を言うとは思えない。暫くは様子を見ようか。真実であれば火中の栗を拾うどころじゃないからね。オラリオの存亡に関わるだろう」
「……また使いっ走りですか」
女は疲れた様な声をあげ、男を蔑んだ目で見つめる。男は溜息ひとつ、既に何度めかの決まった言葉を告げる。
「そう言わず、働いた働いた。働かないとご飯が食べられないんだから、さ」
パンパンッ、と両の手を軽く叩き男は女を送り出し、女は額に手を当て項垂れ肩を落とし去っていった。
☆☆☆☆☆
「ヘスティア様〜、来ちゃいました」
「お仕事頑張ってるの〜」
ミュウと優花は二人揃ってヘスティアのアルバイト先へと遊びに来た。さきほどまでは混んではいないが、まばらではあるがお客対応をしていたヘスティアを見て、たとえ神様でもアルバイトしなきゃ生活出来ないんだ、と哀しさが過ぎっていた二人。
そんな哀しさを出しては頑張っているヘスティアに申し訳ない、と明るい挨拶でいこうと二人で示し合わせた。
「やぁ、ミュウ君に優花君か。二人は街中散策かい?色んなところがあるから楽しいだろうが、変な処に行って迷子にならないでくれよ。因みに一番危険な場所はダイダロス通りだから覚えて置くと良いよ」
「「ダイダロス通り?」」
「あぁ、一度入ると街中が迷宮の様になっているらしく、出てこれないともっぱらの噂だよ」
「ご忠告ありがとうございます、ヘスティア様。絶対近づきません」
「き、気をつけるなの〜」
優花は元気よくヘスティアにそう返したのだが、ミュウに至ってはハジメの娘という事もあり『フラグ』の様に感じ内心冷や汗ものだった。そんなミュウ達を他所にお客が一人やって来た。
「……ジャガ丸くん3つ」
清廉な声がミュウ達の耳朶を打つ。
そこには金髪、金眼でエルフ並に整った顔立ちを持ち、体型もスレンダーではあるが美少女が一人立っていた。ミュウ達も美少女度では並以上ではあるが、其処にはミュウ達を凌ぐ美少女がいた。
そんな美少女が『ジャガ丸くん』を購入しに来ている。ミュウ達は凄い違和感に囚われた。日本であれば普通に高級カフェで一人、優雅なひとときを愉しんでいそうな美少女だ。
そんな美少女が『ジャガ丸くん』を食べる。
うん、異世界バンザイ。
ヘスティアは美少女に『ジャガ丸くん』を渡し、お代を受け取っていた。美少女は目的の品を嬉しそう(?)に受け取ったのだが、ちょうどその時ミュウと目線が合ってしまった。
「……!……こないだの子」
美少女は何かを口ずさんだのだが、ミュウには聞こえなかったようだが、美少女の瞳はミュウにロックオンされていた。流石に美少女から見つめられ続ける、というのはミュウにとっても羞恥に耐えられない。
「綺麗なお姉さん、ミュウに何か用なんですか、なの〜」
とりあえず『綺麗なお姉さんという言葉』と『可愛い笑顔と仕草』でこの場を乗り切ろうと考えた。大抵の揉め事は小さな女の子の何気ない無邪気さで凌げるのだよ、ワトソンくん。
黒ミュウ降臨しました。
「……とりあえず対戦しよ。場所は私のホームで出来るから」
「ちょっと聞き取れなかったの〜、もう一度言ってくださいなの〜」
美少女からのいきなりの挑戦に聞き間違いか、と思い笑顔でもう一度尋ねた。
「私のホームで対戦しよう」
どうやら聞き間違いでは無かったようだ。ミュウは冷や汗を隠しつつ、コレもパパの娘の宿命なの〜、と半ば諦めていた。傍で聞いていた優香ですらミュウに憐憫の眼差しを送っている。
「南雲ミュウを貴様のホームへは渡さん。どこへとも去れ」
「みゅ?」
なんだか小さい子供が4人出てきた。4人は美少女に対して高圧的に出ているが、ミュウはなんだかより美少女に共感を持ってしまった。
それも仕方のない事かもしれない。
脈絡もなく話を進めるのは南雲家の常套手段だ。大抵、家族の誰かが問題を起こして、誰かが慰めるか対処に負われている。
そしてなんとなくだが美少女はユエお姉ちゃんにどことなく似ていたのだ。金髪で言葉が少なく近寄りがたい雰囲気などが。
ただ小さなお子様達を邪険にする気もないミュウは、お子様達に向けあからさまに告げた。
「お母さんかお父さんを探してたの?迷子ならギルドに行って探してもらえる、なの。アッチにあるの、ヘスティア様、この子達をギルドまで送ってください、なの。私はこのお姉さんと用事が有ります、なの」
ミュウはヘスティアに会釈をし、ギルドを指差し子供達を託す事にした。ミュウ自身は対応は間違ってはいなかったはず、と内心奮起していたのだが、言われた子供達は何故か涙を流して駆け足で去っていった。
優花とヘスティア、ミュウは訳が分からずに見送り、美少女だけは変わらずに佇んでいた。
一部始終を見ていた他の神、街中の通行人達は揃って「あちゃー」と目頭を抑えていた。