そこは見知らぬ世界でした……なのorz 作:dslprojecter
ミュウ達から語られた話はかなり衝撃的であり、悍ましくも目新しさもある物語であった。詳細はハジメ達にしかわからないという話であったが、片鱗だけの話であってもフィン達には到底、容認出来るモノではなかった。
「しかし人を操作して玩具にした神か、僕達でも操られたら抵抗は出来ないんだろうな。ミュウ君のお父さん達はよく対抗出来たものだ」
「パパは強くて格好いいの、大好きなの」
「まぁ、あの二人には誰も敵わないわね」
フィンからハジメ達に対して過大な賞賛を貰い嬉しがるミュウ。優花はハジメとユエの関係を羨ましいとは思いつつも、ユエには絶対に敵わない事も自身の中では認めていた。
「しかし、7つの大迷宮に神代魔法か。私達でも神代魔法を習得する事は可能なのだろうか?」
「ん〜、多分、無理だと思うの。パパ達でも死にそうな目にあったって言ってたの。とりあえず、エンドウに勝てないとやるだけ無駄死にするの」
「???ミュウ君、さっきも聞いたけどエンドウって何だい?」
「パパの手下なの。黒くてウネウネしていっぱい居て増えるの」
「エッッ?黒くてウネウネしていっぱいで増える?それって魔王の使い魔か何かなのかい?」
「フィンさん、違うからちゃんとした人間だから。ミュウちゃん、遠藤を何気にディスらない」
手下=人類のはずなのだが人類(?)に入るのか怪しい発言を聞いたフィン達、話の流れを聞き咎め修正する優花だった。最終的には台所のアレになるような話が出ただろう事は察せられた。
「ミュウ、ならばどのくらいの実力ならば迷宮を制覇出来るのだ?目安くらいは教えて貰えんか?何を目標とすれば良い?」
あまり饒舌ではないガレスであったが、七大迷宮と神代魔法に興味を持ったのか、普段のガレスを知っているフィン達も真剣にミュウを見つめていた。
「ん〜、どのくらいって言うと困るの〜、イナバさんでも迷宮制覇は無理だと思う、なの」
「「「イナバさん?」」」
「イナバさんもパパが好きなの、いっつもシアお姉ちゃんと喧嘩してるの〜」
脈略の無いミュウの話を理解出来ず、フィン達は優花に対して「詳しい説明はよ」と一斉に眼を向けた。流石に一同に睨めつけられた優花は少したじろいだ。
「あ〜、イナバさんと言うのは七大迷宮の一つオルクス大迷宮のモンスターだったんだけど、南雲を追いかけて自力で地下1階層から90階層まで辿り着いたらしいのよ。流石に詳しい経緯は鈴達からは聞いてないけど、鈴達って言うのは私達の仲間の一人なの。で、そのイナバさんなんだけど神話大戦後は脚撃王イナバと人類全体に呼ばれるくらいにはなっていたわ」
「ただの地下1階層のモンスターが人類全体から脚撃王とまで呼ばれたのか!?」
これにはフィンを始めリヴェリア、ガレスも驚きを隠せない。モンスターとは一匹だけのはずはないのだから。この世界ではモンスターとは常にダンジョンから絶え間なく湧いて出てくる。それを倒し魔石を回収するまでが討伐なのだから。進化するモンスター、この世界では強化種にあたるだろうが、話を聞くだけでもかなりヤバい。想像してみて欲しい1階層のゴブリンが誰の助けも借りず地力で90階層に辿り着くような事を、そんな進化するモンスターがいる世界を。
「すまない、続けてくれないか」
フィン達が冷や汗を隠しつつも迷宮制覇を行う目安を確認しようと優花を促す。優香も首肯し話を続ける。
「一応、七大迷宮攻略に関して言うなら、ホントに遠藤君並の実力は要ると思うわ。実際、神代魔法を自力で会得出来たのは南雲達を除けば彼しか居ないから」
「では、その遠藤君とやらの実力はどんなモノなのだ?詳しく教えてくれないだろうか」
リヴェリアも神代魔法に興味はあったのだろう、真剣な眼をしていた。そして優花は現実を突き付けた。
「先ず彼は分身が出来ます」
「はぁ???」
「分身が出来ます。大事な事なので二度言いました」
いきなり難題を突き付けられたフィン達。この世界に於いて、力が強くなる、速く動ける等の身体強化、または独自魔法の発現はよくあるのだが、分身とか有り得ないのである。せいぜい分身に見せかけた幻影や超高速での移動で分身に見えるくらいだろうか。
「因みにその分身は実体なのか?」
「彼曰く、【深淵を覗くとき、深淵もまたお前を覗いているのだ】という事らしいわ。まぁ、簡単に言えば、全てが実体で全てが幻影らしいわよ。任意で痛覚遮断とか出来るらしいし。因みに、神話大戦時には1000体に分身出来たらしいし、こないだ聞いたけど10000体に分身出来る様になったらしいわよ」
「ソレハジンルイナノカ?」
「アビスゲートなの〜」
「遠藤君は呼び名がいくつか在るのよ。アビスゲートとか深淵卿とか」
カタコト言葉で返したリヴェリア、かなり驚愕であった事は見た目からも伺える。フィンやガレス、ロキに至っても二の句を継げない様だ。
七大迷宮制覇はほぼ潰えたといった感じが辺りを漂う。居た堪れない空気がソコにはあった。
「そんな彼でも制覇、私達は攻略と言ってるけど出来たのは一つだけ。唯一、七大迷宮全てを攻略出来たのは南雲とユエさんだけね。まぁ、多分、今ならシアさんなら余裕で攻略出来るんじゃないかなぁ、あはははっ」
優花の脳裏にバグったウサギが過る。怒らしたらユエですら恐れるのだから。可愛いウサギは何処行った。更に過るのは首刈りウサギ、これ以上は考えないようにしようと心に決めた優花であった。
「シアお姉ちゃん、料理上手だし凄く強いの〜、エンドウなんて目じゃないの〜」
何気に遠藤君を軽くディスるミュウ。彼に怨みでも在るのか心配になった優花である。
ただでさえ分身が出来る遠藤という人物。ソレを超えるシアお姉ちゃんがどのくらい強いのか想像すらつかないフィン達。会話がカオスに突入してきましたw
「まぁ、流石にボク達は分身までは出来ないね。でも一人では無理だろうとパーティーを組んで攻略ならばどうだろうか?」
「うーん、多分、この世界の人には無理だと思います。なにせ迷宮全部のコンセプトが神を信じるな、ですから」
優花から告げられた事実、確かにフィン達、いやこの世界の人類全てが無理である。ファルナは神の恩恵であり神を信じるなとは恩恵に縋るな、という本末転倒だったからだ。
「それはどうしようもないね。諦めるよ。」
「でも強さの目安ならコレで解決なの〜」
ミュウが取り出したのは一つのメモリーカードであった。タイトルには『神話大戦-格好いいハジメも好き編-』と書いてある。タイトルからしてどうやらユエお手製らしい、と優花は呆れた。
そしてかつての映像が室内に流れていく。その映像内容はフィン達そしてロキですら冷や汗モノの大作であった。絶え間なく溢れ出すモンスターと天使、それにも劣らないソレ等を駆逐する武器の数々。戦闘序盤からの山崩しはフィン達の想像すら超越していた。ほんの一部分ではあった映像ではあるが、自分達との隔絶した戦闘力がそこにはあった。
見終わったフィン、リヴェリア、ガレス、ロキには一言も言葉が出せなかった。山崩しを行った天より降り注ぐ岩塊の数々、モンスターや天使を駆逐する天からの光や地上にいくつもの太陽すら生み出す爆発。一般兵士達の持っていた未知の兵器等々。
対してフィン達はどうだろうか、この世界の有り様は良く言えば正々堂々、悪く言えば効率が悪いと言わざるを得ない。一対一というのがオラリオを含む、この世界の在り方だからだ。一対多なんてものは魔法でなければ無理なのがこの世界だ。ミュウの取り出したメモリーカードは意図せずフィン達に目安では無く絶望を与えていた。
「格好いいパパ大好きなの〜♡」
「………す、すまない。言葉が出なかったがコレが君達の戦い方なのかい?」
久々に見たハジメの姿に眼を潤ませているミュウ、これでは話にならないと優花に質問を切り替えたフィンであった。ミュウは平常運転を誇示していた。
「かなり当てにならない目安だけど山崩しも天からの光も爆発も南雲だけの実力よ」
優花は事実だけを突き付けた。フィン達の顔色がみるみる青褪めていく。ホントに全く目安になりようが無かった事だけは理解出来ただろう。