そこは見知らぬ世界でした……なのorz 作:dslprojecter
(まだだ、まだ終わらんよ。俺はフィン・ディムナ、ロキ・ファミリアの団長だ)
「そう、人生は過去から未来へと繋がっている。確かにそうだ、人は経験という知識を糧にあらゆるモノを克服してきた。かつて冒険者は未知を探求し既知としてきた。それは何故だ?ソレは彼等が冒険者だからだ!ボクはミュウくん、君達の世界にある迷宮に挑んでみたい。例え、力及ばずとしても経験が全てを克服出来るだろう。ボクの後に続く者も出てくる筈だ…………」
なんかフィンさんが語りだした、ミュウちゃんはフィンの熱意に手を握りしめ感動しているようだ。ゴメン、私にはムリ。隠れた意図が見え過ぎるんだもん。
切々と身振り手振りを交えミュウちゃんに訴えるフィンさん、それを見て呆れてる私とリヴェリアさん、ガレスさん。ミュウちゃんは珍しさもあってかフィンさんに同意している。
「ミュウもだんちょーさん達と迷宮攻略してみたい、なの。パパ達はまだ早いって言うだけなの。ミュウも頑張るの」
あっ、コレはヤっちゃいましたねぇ、フィンさん。南雲に怒られなきゃ良いけど。ミュウちゃんをノセたら駄目でしょ。
フィンさんは同士を得た充実感と不確定ながらミュウの同意を得られもしかしたら千載一遇の武器が手に入れられるかもしれないという高揚感、ミュウちゃんは未知の迷宮を探索したい期待感がお互いの感情を共有していた。話に聞く大迷宮ってかなりヤバいんだけど。
「あ〜、フィンさん?とりあえず未知を既知に変えたいのは理解しましたが、大迷宮はかなり危険ですよ?特にオルクス大迷宮は南雲とユエさん二人がかりで死にかけたらしいですし……」
ちょっとだけ意地悪をしてみたくなった。
「ふむ、確かに未知を既知に変えるには実力が現状足りてないかも知れないね。でも何事もやってみなければわからないだろう。ボクはコレでも勇者を目指しているんだ」
「えっ?勇者を目指してる?」
「あんな残念なのを目指してるんですか、なの?だんちょーさんにはもっとマトモな目標を持って欲しいです、なの」
「……残念?」
「ハイなの〜、残念なの」
光輝を知っている私とミュウちゃん、今でこそ、ちょっとはマトモに成りつつあるが、以前の彼を知っているだけに『勇者』というモノを過小評価している。
勇者と聞いたミュウちゃんも冷静に成りつつ、私達とフィンさん達でかなりの温度差を感じた。
リヴェリアさんから『説明はよ』とちょっと睨まれた。何故、ワタシを睨むんですか?
「あのですね。勇者というのは少数を犠牲にしてでも大勢を救う人を言うんです。その少数に自分が大切にしている人が居ようともです。私達の仲間には『勇者』が居ます。今でこそマトモですが、最初の頃はかなり独善的な思考をしていましたよ」
フィン達は優花の話を静かに聞いていた。
「『力があるなら正しい事の為に使うべきじゃないか』この言葉は勇者が南雲達に言った言葉で、南雲の返答は『そんなだからいつもお前は肝心な処で地面に這い蹲る事になるんだ。力があるから何かを成すんじゃなく、何かを成したいから力を求め使うんだ』と。私も強大な力は無闇矢鱈と使うべきではないと思うんです」
「ミュウもそう思うの〜」
「……ふむ、一理あるか。ただ言わせて貰えるなら力を求める為の努力も必要だとは思わないかい?必要な時に必要な力が無ければ何も成す事は出来ないだろう?火中の栗を拾う努力は必要なんじゃないかな?」キラッ
(ミュウくんにはちょっと遠回し過ぎたが、優花くんには理解出来た筈だ。優花くんの助言で魔王謹製の武器が手に入るなら問題はない)
(とか思っているんだろうなぁ。しかも無駄に煌めいてるみたいだし。南雲の事だからメンドイ、とかで終わりそうだけど。たはははっ)
フィンさんは私に期待を込めた眼差しを送っていたが、当の私は「あ〜ぁ」という残念な気持ちが内心に渦巻いていた。顔には出さないけどねぇ。だってリヴェリアさんやガレスさんもちょっとソノ気になってるみたいだし。
まぁ、ミュウちゃん次第かな。私はミュウちゃんを見つつ微笑んだ。ミュウちゃんは首を傾げて不思議そうにしていたが、私に微笑み返しをした。(遊んでる訳でないんだけど)
☆☆☆☆☆
(何がどうなったら私がフィンさんと対戦する事になるんだろう?誰か教えて)
眼前には槍を構え、いざ参るといったフィンさんが居る。私は当初、どうして私?と断り続けたのだが、勝負の賭けに南雲への取次ぎを願われ受けざるを得なかった。仕方ないので危険度の低いトランプを使用しての対戦と相成った。因みにトランプは216枚(4セット)とした。ナイフや野菜スティックでは貫通するが槍を無効化するのは難しいからね。私も怪我とかしたくないし危ないので槍を斬り刻みましょうかね。
私とフィンさんの距離は20メドル離した。コレは私は中距離から長距離、フィンさんが近距離から中距離が間合いだからだ。
フィンさんの顔には並々ならない気迫を感じてるのだが、ソレが南雲に凄い武器を造って欲しいと下心が見え見えなので、なんとも言えなくなってしまった。
お互いに立ち位置も決まり、リヴェリアさんの合図を待つ。
「はじめっ」
号令が掛かりフィンさんは突進から槍を突き出す。私はこういったモノは不得手だから、接近させまいと弾幕を張った。片手で108枚、両手で216枚のカードが、さながら桜吹雪の様に順次に解き放たれる。
「優花お姉ちゃん凄いの〜、もっとやってなの〜」
上下左右、前後も関係なく208枚のカードが舞いフィンさんを襲う。フィンさんは槍を回転させたり凪いだり、移動を繰り返しながらも接近戦を狙って居るようなので、危険な穂先は排除しとこうかな。
「…コレで終わらせます」
私はコレでも投術師、貫通させるだけなら野菜スティックでも大丈夫だし。かなり硬い金属らしい槍には既に百枚以上のトランプが刺さっている。
此方の手持ちのトランプは既に半減し、かなりの苦戦だ。ちょっと卑怯ではあるのだが、私なりにアレンジした技を披露してみよう。
そう私は投術師なのだから。